日本製鉄とマツダ、新型SUV「CX-60」に新接合技術を用いて開発した軽量Bピラーを採用

マツダの新型SUV「CX-60」に日本製鉄とマツダが共同で開発した軽量Bピラーが採用された。画像は欧州仕様

　日本製鉄は6月22日、マツダと共同で1.8GPa級および1.3GPa級アルミめっきホットスタンプ鋼板（AL-HS鋼板）を使用したTWB（テーラードウェルドブランク）構造の軽量Bピラーを開発し、マツダの新型SUV「CX-60」に採用されたと発表した。

　TWBとは、板厚や材質の異なる鋼板をレーザ溶接で接合して一枚の鋼板（ブランク材）にし、プレスする加工技術。車体の強度や板厚の最適化による性能向上、軽量化、およびコスト低減を図ることが可能で、主にBピラーなどの部品に適用され、客室空間保護のため上部に高強度材を、側面衝突時の必要性能確保のため下部に低強度材が用いられる。

　日本製鉄とマツダは今回開発した軽量Bピラーの実車適用を目指し、日本製鉄の次世代鋼製自動車コンセプトNSAC（NSafe-AutoConcept）技術である「AL-HS鋼板のTWB接合技術」「差厚パッチワーク技術」「直水冷高生産ホットスタンプ技術」を活用し、「直水冷ホットスタンプの実機設備化に向けての流体解析などによる最適化」および「衝突解析・多機能衝突試験などによる板厚最適化」による量産化に着手していた。

34％の軽量化および衝突安全性の向上を実現させたという新開発のBピラー

　ただしホットスタンプは、熱間成形で高強度な部品を得る工法として、また自動車の軽量化において冷間プレス成形が難しい高強度領域に適しているが、冷却時間が長く生産性が低いほか、これまでAL-HS鋼板をTWB技術で接合すると、溶接部へアルミニウムが混入しホットスタンプ後の継手強度が低下する課題や、異強度・異厚のTWBは部品の品質精度ばらつき（焼入れ性や寸法精度）が生じる課題があり、TWB技術で接合したAL-HS鋼板の自動車車体への適用は困難だったという。

　そこで日本製鉄は、九州製鉄所八幡地区で事業化している独自開発の「TWB接合技術」で高い継手強度を実現させたことで、TWBレーザ接合技術の自動車車体への適用が可能になったとしている。そして今回採用された軽量Bピラーは、TWBと部分パッチワーク技術の適用により、従来の一体型Bピラーからレインフォース部品の省略が可能となり、34％の軽量化および衝突安全性の向上を実現させているという。

マツダの新型SUV「CX-60」

　また、今回採用している直水冷ホットスタンプ工法では、金型表面と鋼板の隙間に冷却水を流入し、鋼板を直接水で冷却するとともに、金型内の流体解析から冷却水の流速最適化を実施。これにより焼入れ性、寸法精度ばらつきなどの品質安定化、部品製造時の生産性も向上（従来の4倍）し、製造時、走行時の温室効果ガス排出量が削減されるとしている。

　日本製鉄は、NSAC技術の適用および適用範囲を拡大することが、社会的共通課題である自動車安全性能の向上とカーボンニュートラル社会を実現する解決策の1つだと考え、今後も自動車のより一層の軽量化、衝突安全性能向上、および温室効果ガス排出量の削減に貢献していくとしている。