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NVIDIA、2000TOPSを実現した車載向け新半導体搭載「DRIVE Thor」を2024年に投入 2025年の新型車に採用

2022年9月20日(現地時間) 発表

NVIDIAが発表した「DRIVE Thor」。1チップ半導体であるSoCにHopper世代のGPU、次世代GPU、Grace CPUと2GPUと1CPUが統合されており、2000TOPSの性能を実現するという

 NVIDIAは、9月20日(現地時間)から年次イベントのGTCをオンラインで開催しており、8時からはNVIDIA CEO ジェンスン・フアン氏による基調講演が行なわれ、同社の最新ソリューションが紹介された。

 その中でNVIDIAは自動車関連のロードマップをアップデート。2024年に導入する計画だった、1000TOPSのAI演算性能を持つ新半導体「DRIVE Atlan(ドライブ アトラン)」の製品計画を破棄し、同時期に倍の性能となる2000TOPSを実現する新半導体を搭載する「DRIVE Thor(ドライブ トワー)」を導入する計画であることを明らかにした。

1000TOPSを実現するはずだったDRIVE Atlanからその倍の性能を持つDRIVE Thorに一気にジャンプ

 NVIDIAは2021年の4月に行なわれたプライベート年次イベント「GTC 2021」において、DRIVE Atlanと呼ぶSoC(System on a Chip)を2024年に導入する計画であることを明らかにした。その時点の発表ではDRIVE Atlanは、1000TOPSという性能を実現すると説明されていた。

 それから1年半が経過し、製品化まで約2年になったこの段階でNVIDIAはDRIVE Atlanの1000TOPSという性能では十分ではないと判断したようで、その倍の性能となる2000TOPSを持つDRIVE Thorを、DRIVE Atlanに変えて2024年に投入すると明らかにした。

 NVIDIA 副社長 兼 自動車事業部 事業部長 ダニー・シャピーロ氏は「最初にAtlanを紹介した2021年4月から、われわれも多数のイノベーションを市場にもたらしてきた。例えば、Graceの開発コードネームで知られるCPUはその1つだし、HopperというGPUアーキテクチャもその1つだ。そのため我々はAtlanに変えて、それらの技術を採用したThorを導入することにした」と説明した。

 NVIDIAのDRIVEシリーズは、ソフトウエア的に伸長可能な設計になっており、自動車メーカーがDRIVE Orinなどの現行世代向けに開発したソフトウエア資産は、そのまま将来製品で利用することが可能となっている。このため、DRIVE Atlan向けにソフトウエアの開発を行なっていた自動車メーカーやティアワンの部品メーカーも、そのままDRIVE Thorに移行することが可能だとシャピーロ氏は説明した。NVIDIAによれば、DRIVE Thorではレベル2~レベル5までの自動運転ないしはADASに対応可能。どのレベルの自動運転を採用するかはOEMメーカーの実装次第となる。

 なお、DRIVE Thorにどのプロセスノード(製造技術世代)やどのファウンダリ(委託製造工場)を利用するのか、現時点でNVIDIAは明らかにしていない。

これまでのNVIDIAのロードマップ。Atlanが1000TOPSでマップされていた
新しいNVIDIAのロードマップ。2000TOPSのThor

GPUはHopper世代とAda Lovelace GPUの2つ、CPUはArm Poseidon AEというデータセンター向けを採用

NVIDIAが3月のGTCで発表したHopperアーキテクチャのGPU「NVIDIA H100 GPU」、DRIVE ThorにはこれをベースにしたGPUが統合される

 NVIDIAによれば、DRIVE Thorは2つのGPUと1つのCPUを搭載。2つのGPUはそれぞれ2022年3月のGTCで発表されたHoppeという開発コードネームのものと、NVIDIAがAda Lovelaceと呼んでいる次世代GPUになる。Hopper世代GPUでは「Transformer Engine」という推論用の演算エンジンが搭載されており、画像認識などのAI推論をより効率よく行なうことが可能となっている。これがDRIVE Thorが高いAI演算性能を持つ理由の1つになっている。

 DRIVE ThorのCPUは、NVIDIAがGraceの開発コードネームで開発している製品の改良版となる。NVIDIAが2023年にGraceの開発コードネームでHPC(High Performance Computing)用に投入するCPUは、Armが開発したCPU IPデザイン「Neoverse V2」を採用しているが、DRIVE Thorに搭載されるGrace GPUはNeoverse V2の後継として開発しているArm Poseidon AEになるという計画が明らかにされている。Graceよりもさらに演算性能や電力効率が改善されたCPU IPデザインとなる。

 このように、より強力な演算性能が求められるデータセンター用に開発されたGPU・CPUの技術をDRIVE Thorに採用するのがNVIDIAの計画で、FP8を利用したAI演算時のスループットが2000TFLOPSという自動車向けのSoCとしては驚異的な性能を、1チップで実現することにつながっている。

マルチドメイン、チップ間インターコネクトなどの拡張性を備えているDRIVE Thor

 DRIVE Thorの特徴は、強力なGPUやCPUを備えているだけでなく、それらのGPUやCPUをマルチドメインに利用可能なことにもある。

 DRIVE ThorのGPUとCPUは、仮想化技術を活用して複数のドメイン(領域)に分割して動作させることが可能になっており、それぞれのメモリ領域を独立させて動作させることができ、1つのSoCで、Linux、QNX、AndroidなどのOSを同時に、それぞれ独立して走らせることができる。これにより、例えばQNXやオートモーティブLinuxなどにはメーターなどの機能安全を実現する領域を担当させ、Androidには車載情報システム(IVI)を担当させるなどの使い方を1チップで実現することが可能になっている。

 また、DRIVE ThorはNVLink-C2Cと呼ばれるチップ間インターコネクトをサポートしている。これを利用すると、性能を低下させることなく、2つのDRIVE Thorを接続して性能を引き上げることに利用できるほか、1つのチップに障害が起きても自動運転のシステムを継続させるフェールセーフ環境を実現するといったことも可能になる。

 さらに、NVIDIAによればDRIVE ThorはISO 26262に準拠しており、ソフトウエアスタックもISO 26262/ASPICE準拠となっているなど機能安全を実現している。

 なお、NVIDIAはDRIVE Thorを2024年に投入する計画だが、中国の自動車メーカーのZeekr(吉利汽車のプレミアムブランド)が2025年に生産を開始する予定のバッテリEVに採用される計画になっていることを明らかにしている。

 Zeekr CEO 安聪慧氏は「Zeekrのユーザーは最新の技術と安全機能を含む素晴らしいユーザー体験を求めている。NVIDIAの DRIVE Thorはわれわれが最先端の技術で顧客の要望を満たすことをサポートし、Zeekrが明日のイノベーションを実現するフロントランナーであり続けることを実現してくれるだろう」と述べ、DRIVE Thorの持つ高い処理能力がZeekrの顧客のニーズを満足させるような自動運転や安全装置などを設計可能とすることに期待感を表明している。