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住友ゴム、2023年度決算説明会 「タイヤ事業の売上が創業以来初の1兆円超えを達成」と山本悟社長

2024年2月14日 実施

第132期(2023年1月1日~12月31日)の決算説明を行なった住友ゴム工業株式会社 代表取締役社長 山本悟氏。パネルは2月7日に発表した「タイヤ空力シミュレーション」の解説

タイヤ事業初の売上1兆円超えだけでなくスポーツ事業でも過去最高益を達成

 住友ゴム工業は2月14日、2023年12月期(2023年1月1日~12月31日)決算説明会を実施した。登壇したのは代表取締役社長の山本悟氏、代表取締役 専務執行役員の西口豪一氏、取締役 常務執行役員の大川直記氏、経理財務本部長の日野仁氏の4名。

 山本社長によると、2023年度は利益水準が急速に回復したことで、事業利益率が6.6%まで改善したほか、606億円という下期として過去最高益を達成。またタイヤ事業の売り上げが創業以来初となる1兆円超えを実現したという。さらに2023年12月に発売したゴルフ用品「ゼクシオXIII」が好調な滑り出しをみせ、スポーツ事業も過去最高益を達成している。加えて、フリー・キャッシュ・フローも初の1000億円超えとなった。

2023年度(2023年1月1日~12月31日)連結業績
連結売上収益・利益の推移
2023年度 セグメント別 連結売上収益・事業利益

 前期の事業利益220億円に対して今期は777億円。この増益557億円のうち513億円はタイヤ事業が生み出していて、主に海上運賃と天然ゴムや石油系原材料の価格が落ち着いたことや、価格改定(値上げ)による増益が大きな要因となっている。

2023年度 連結事業利益 増減要因イメージ

 中期計画で掲げている構造改革については、2027年を目標年度として取り組んでいる「既存事業の選択と集中」について山本社長は言及。「2023年10月にガス管事業からの撤退を決定、さらに2023年12月にはスイスに本社がある医療用ゴム製品の製造販売子会社の売却を決定し、2024年1月に売却手続きも完了。これらに投入していたリソース(資源)は成長が見込まれる事業へとシフトして収益性向上を図る」と説明した。加えて産業品事業では、国内のメディカルラバー事業と制振ダンパーにシフトさせていく予定を明かした。

 住友ゴムは構造改革の対象に約10の事業を挙げていて、2023年に2事業の撤退と売却を実施したが、今後は中期計画に沿って2024年中に4事業、2025年までにその他の事業ついても目途を付けるとしている。

構造改革事業の取り組み

 続けて「北米事業は最優先の課題と位置付けて改善してきた」と山本社長は言い、2023年は当初計画以上に収益性が向上し、狙い通り黒字化を達成。販売面では、北米市場でファルケンブランドのオールテレーンタイヤ「ワイルドピーク」シリーズが好調で、輸入品の採算が改善し、事業利益が大幅に向上したとしている。

 また、米国工場も改善に取り組んでいるが、立て直しはまだ道半ばとし「本年は新商品ワイルドピークA/T4Wの拡販など、さらなる収益向上を計画している」と説明した。

北米事業の取り組み

 また山本社長は、「成長事業の基盤作りにも注力した」と語り、水や温度などの外部環境にシンクロして性質がスイッチする独自ゴム技術“アクティブトレッド”を搭載したコンセプトタイヤを、2023年11月に開催されたジャパンモビリティショーで初公開したことを報告。

 山本社長もすでに試乗した経験があり、「1月に当社のテストコースで自らハンドルを握りまして、その性能と完成度を確認して参りました。1年前にも乗っていますが、そのときよりも完成度が高まりました。雪や氷のうえで、カーブにおける横方向のグリップ精度、ブレーキを踏んだときの止まり具合や感覚、実際に止まるまでの距離が従来のオールシーズンタイヤを凌駕することはもちろんですけれども、さらにはスタッドレスタイヤと近いレベルの性能が達成できていると思っております。一般ドライバーの方でも進化した性能を実感いただけるものと確信できました。私もワクワクしている」と期待感をあらわにした。

アクティブトレッド技術の開発

 成長事業の基盤作りのもう1つは、2024年1月にアメリカ・ラスベガスで開催された世界最大級のハイテク技術見本市「CES2024」に初出展した独自先進技術“センシングコア”で、「たくさんの来場者を前にプレゼンテーションを行ない、われわれの夢を一緒に実現するためのパートナーを探したいという思いを直接伝えて参りました」と山本社長。

 現地ではこれまで接点のなかった、新たな技術を持つさまざまな企業スタッフ900人ぐらいと接触でき、ビジネスチャンス拡大の手応えを実感したという。そしてCESをパートナー探しの場として今後も積極的に活用しようと、「すでに来年のCES出展も決めた」と明かした。

 このセンシングコアは2024年からビジネスとして本格稼働させ、2030年には最低でも事業利益100億円以上を目指すとしている。

センシングコアの事業化

 また、2024年のCESではセンシングコアの展示とは別に、AIを活用した車両故障予知ソリューションサービスを提供する米国のベンチャー企業「バイアダクト(Viaduct)」への出資も発表。すでに共同実証実験を開始していて、この出資によりバイアダクトとの戦略的パートナーシップをさらに強固にして、タイヤを含む車両全体の故障予知ソリューションサービス展開の加速を目指すという。

CES2024に初出展

 2023年3月に発表した限りある資源を循環させて、住友ゴム独自のビッグデータを活用することで、新たな価値を提供して、住友ゴムの企業理念体系“アウアフィロソフィー”の具現化を推進するための独自サーキュラーエコノミー型構想「トワノワ(TOWANOWA)」について山本社長は、「次世代EVタイヤの開発にとても重要で、AIを活用したタイヤ空気シミュレーション、白河工場(福島県)で行なっている水素の活用、4月に仙台で稼働開始する最先端研究施設ナノテラスを活用したゴムの性能持続研究、サステナブル原材料の活用なども着実に進めます」としている。

トワノワ(TOWANOWA:永遠の輪)の取り組み

 タイヤ以外のスポーツ事業では、新型コロナに伴う外出制限で2020年は年間業績が赤字になっていたが、ゼクシオの新しいゴルフクラブを2023年12月から日本を皮切りにグローバルで発売を開始したところ好調なスタートを切ることができたほか、特に最大のゴルフ市場として注力している北米市場で大きく売り上げが伸びたことで、2023年度は事業利益率が約10%にまで向上した。

決算説明を行なう山本社長

 また、産業品事業の1つ「制振ダンパー」では、特に新築住宅用の「ミライエ(MIRAIE)」について実物大の実験で震度7の揺れに14回耐えられることが確認されていて、「能登半島の地震でも設置してよかったといった声をいただき、制振ダンパーが社会から求められていることを改めて実感し、さらに社会の安心安全に貢献したいという思いが強くなった」と語る。

スポーツ事業
産業品事業

 2024年度通期の業績予想について山本社長は、「物価上昇による金融引き締め策、ウクライナや中東における地政学的緊張の影響など、世界経済の見通しは引き続き不確実性の高い状況が予想される」と言及。また、「原材料価格高やエネルギーコスト高に一服感があり、海上輸送コストの影響も限定的であることから、売上収益は前期比102%の1兆2000億円。事業利益は前期比103%の800億円。営業利益は前期比95%の610億円。当期利益は前期比100%の370億円と前期並みの売上および利益と予想している」と説明した。

2024年度(2024年1月1日~12月31日)連結業績予想
2024年度 セグメント別 連結売上収益・事業利益予想
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