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国内初、トヨタと岩谷産業が街の水素ステーションで液体水素カローラに給水素 高圧水素と液体水素を1つのステーションで

2024年10月24日 実施

液体水素カローラへの給水素を街の水素ステーションで実証実験。後方にはミライやFCEVクラウンセダンがあり、高圧水素と液体水素の両対応ステーションを象徴する

国内初、トヨタと岩谷産業が街の水素ステーションで液体水素を給水素

 トヨタ自動車と岩谷産業は10月24日、国内初のコンビニエンスストア併設型水素ステーション「イワタニ水素ステーション 愛知刈谷」において、液体水素を充填する実証実験を行なった。液体水素の給水素を街の水素ステーションでクルマに行なった例はこれまでになく、国内初の実証実験となる。

 現在、MIRAI(ミライ)やFCEVバスなどで用いられる高圧水素充填の充填を行なっている水素ステーションだが、岩谷産業の水素ステーションでは全国51か所の8割が液体水素から充填するために高圧水素を作り出しているタイプになる。これは液体水素のほうが体積的に有利なため(気体水素と比べると800倍、70MPaの高圧水素と比べると約1.7倍)で、輸送やステーション保管には液体水素が用いられている。

実証実験イメージ。高圧気体水素充填、常圧液体水素充填を1つのステーションで

 岩谷のステーションではこの液体水素をイオニックコンプレッサーで5段階昇圧。最終的に82MPaの高圧水素を作り出して、70MPaの高圧水素を用いるミライなどFCEVに充填していることになる。水素ステーションの液体水素を直接給水素できれば、マイナス253℃という極低温を扱う難しさはあるものの、昇圧する必要はなく、エネルギー的にもメリットがある。

 今回、そのメリットを実際にデータとして計測するため、液体水素で走るGRカローラを愛知刈谷ステーションに持ち込み、移動式の液体水素給水素ユニットを使って水素充填する実証実験が行なわれた。

液体水素充填中。スーパー耐久の過酷な現場で行なわれている作業なので、街中での安定性は高そう
実証実験に用いられた水素カローラは、昨年まで使用していた丸形水素タンク。今シーズンの車両は楕円タンクに進化している

 トヨタ自動車 GR車両開発部 主査 伊東直昭氏によると、国内で街中において液体水素を給水素するための法律はまだなく、スーパー耐久での給水素実績や愛知県の特別な許可によって今回の実証実験は行なわれているとのこと。1日だけの特別免許(午前1回、午後1回)の元で行なっており、今回の実証実験のデータを将来のために提出していく。

トヨタ自動車株式会社 GR車両開発部 主査 伊東直昭氏

 液体水素の給水素そのものは、スーパー耐久というレースで鍛えられているだけあってトラブルもなく数分で終了。無事にデータが取れたかどうかを確認する作業を行なっていた。

 岩谷産業 カーボンニュートラル部 玉谷亘氏によると、今回水素ステーションの液体水素タンクから液体水素を取り出せる三つ叉を増設し、それを移動式の移動式の液体水素給水素ユニットにつなげているという。

岩谷産業株式会社 カーボンニュートラル部 玉谷亘氏。後方に見えるのは水素ステーションの液体水素タンク
水素充填設備について
液体水素の収まるタンク。タンク右下に見えるのが、今回増設された液体水素の通路

 ポイントは、水素を気体に変えたり圧力を上げたりするユニットが不要になり、ステーション自体もコンパクトになることだという。もちろん、従来タイプの水素ステーションに併設することもでき、すでに市販車として存在している高圧水素を用いたFCEV、将来の市販が期待される液体水素を用いた水素自動車の両対応も容易となっている。

 伊東氏は、液体水素を用いて走るGRカローラでよく出る質問として「さらに液体水素のインフラが必要になるのでは?」という例を挙げ、従来の水素ステーションの多くが液体水素ベースであり、分岐部の増設と給水素ユニットの装備だけで成り立つことを実証して見せた。

 液体水素車両が街へ走り出す日はまだ先だが、1つの懸念として挙げられていた液体水素の給水素問題に関しては、実証実験によってデータをそろえ、解決していこうとしている。