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2014 鈴鹿8時間耐久ロードレースは634号車 MuSASHi RT HARC-PROが2連覇

豪雨、転倒、セーフティカーと波乱のレース展開。2位は34号車 ヨシムラスズキ シェルアドバンス

 7月27日、鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)で「2014 FIM世界耐久選手権シリーズ第2戦 “コカ・コーラ ゼロ”鈴鹿8時間耐久ロードレース 第37回大会(鈴鹿8耐)」の決勝レースが開催された。スタート直前の豪雨でレーススタートが1時間5分遅れ、レース時間は6時間55分に短縮。レース中にセーフティカーが4回導入されるなど波乱の展開となったが、残り時間が2時間半の時点でトップに立った634号車 MuSASHi RT HARC-PRO(高橋巧/レオン・ハスラム/マイケル・ファン・デル・マーク)が逆転で優勝。2013年に続き2連覇を飾った。

優勝した634号車 MuSASHi RT HARC-PRO

 オートバイレースの夏の祭典“コカ・コーラ ゼロ”鈴鹿8時間耐久ロードレースは、通常のスケジュールでは11時30分にレースがスタートし、日が暮れた8時間後の19時30分にゴールとなる。しかし、今回は11時30分のスタート直前に天候が急変。スタート1分前にスタートディレイが発表されると、空から大粒の雨が落ちてきた。雨はあっという間に豪雨となってレース開始が大幅に遅れた。予定より1時間5分遅れの12時35分、6時間55分に短縮された2014年の鈴鹿8耐がスタートした。

 木曜日の練習走行から続いていた猛暑が嘘のような雨のなか、ウェットタイヤを装着したマシンが、伝統の“ル・マン式スタート”でコースに飛び出していく。スタートダッシュを決めてホールショットを奪ったのは、数日前にCar Watch編集部を訪ねてくれた(http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20140723_659078.html)17号車 Team KAGAYAMA with Verity(ドミニク・エガーター)だ。

ル・マン式スタートでレースは始まった
1コーナーに最初に飛び込んだのは17号車 Team KAGAYAMA with Verity

 ところが、直後のS字で104号車 TOHO Racing with MORIWAKI(山口辰也)がトップを奪い、予選1位の34号車 ヨシムラスズキ シェルアドバンス(津田拓也)が2位に浮上。17号車 Team KAGAYAMA with Verityは後続グループに飲み込まれていった。

11号車 F.C.C. TSR Hondaがトップへ

 ウェットコンディションのなか、快走を見せたのは「中勢バイパス開通イベント(http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20140324_641014.html)」で豪快なウィリーを見せてくれた11号車 F.C.C. TSR Honda(秋吉耕佑)だ。オープニングラップのヘアピンで3位に浮上すると、シケインで2位、2周目のS字でトップに立ち、そのまま後続との差を広げて行った。

2周目からレースを引っ張った11号車 F.C.C. TSR Honda

 6周目。3位に後退した34号車 ヨシムラスズキ シェルアドバンスの後方に、12号車 Legend of ヨシムラスズキ シェルアドバンス(青木宣篤)が迫ってきた。12号車 Legend of ヨシムラスズキ シェルアドバンスはケビン・シュワンツ、辻本聡という“8耐レジェンド”が乗る今大会注目のチーム。Car Watch編集部を訪れた際(http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20140709_657068.html)にも「優勝を狙う」と宣言していた。

ヨシムラ同士の3位争い。この後にまさかの悲劇が

12号車 Legend of ヨシムラスズキ シェルアドバンスに悲劇

 ヘアピン、2輪専用シケインで2台は肉薄。同チームでの接触すれすれのバトルに緊張が走った。西ストレートで12号車 Legend of ヨシムラスズキ シェルアドバンスがイン側から先行。そのまま130Rに進入してオーバーテイク成功と思われた直後、12号車 Legend of ヨシムラスズキ シェルアドバンスはオーバースピードでコースアウト。マシンはタイヤがホイールから外れてピットまで押して戻ることもできず、スタートからわずか15分、レジェンド2人の走りを見せることなくリタイヤとなった。

12号車 Legend of ヨシムラスズキ シェルアドバンスのシュワンツ選手は決勝を走ることができなかった(写真は決勝当日、朝の練習走行時のもの)

 サーキットが悲壮感に包まれた直後、34号車 ヨシムラスズキ シェルアドバンスの背後に迫ったのは634号車 MuSASHi RT HARC-PRO(高橋巧)。7周目のシケインでテール・トゥ・ノーズに持ち込むと、8周目の2コーナーでオーバーテイクして3位に浮上。快調に飛ばす634号車 MuSASHi RT HARC-PROは、12周目に104号車 TOHO Racing with MORIWAKIも抜いて2位にポジションアップした。

 15周を過ぎたころには日差しが戻り、20周を過ぎるとレコードラインは乾き始めた。スタートから1時間、25周を前後して各車がウェットタイヤからスリックタイヤにタイヤ交換を行う。スリックタイヤへの交換が終わると、トップの11号車 F.C.C. TSR Hondaは2位の634号車 MuSASHi RT HARC-PROに33秒の差を付け独走。3位は34号車 ヨシムラスズキ シェルアドバンス、4位は104号車 TOHO Racing with MORIWAKI、5位は17号車 Team KAGAYAMA with Verityとなった。

3位の34号車 ヨシムラスズキ シェルアドバンス
4位の104号車 TOHO Racing with MORIWAKI
104号車と競り合う17号車 Team KAGAYAMA with Verity。このあと104号車に抜かれて5位に後退

豪雨再来。SC導入へ

 スタートから2時間、周回数が50周に近付くと再び雨が降り出した。雨は徐々に強まっていき、スタート前と同じくらいの豪雨となる。41周目に4位に浮上した87号車 Team GREEN(渡辺一樹)は、49周目に34号車 ヨシムラスズキ シェルアドバンス(ジョシュ・ウォーター)と634号車 MuSASHi RT HARC-PRO(レオン・ハスラム)を立て続けに抜き去って2位となった。

再び豪雨に見舞われた鈴鹿サーキット

 2位争いをしていた87号車 Team GREEN、634号車 MuSASHi RT HARC-PRO、34号車 ヨシムラスズキ シェルアドバンスはスリックタイヤのままコースにステイしていたが、トップの11号車 F.C.C. TSR Hondaはすぐにピットイン。レインタイヤに交換してコースに復帰する。

 2位に浮上した87号車 Team GREENだが、直後のS字でコースを外れて4位に後退。すぐに復帰するもヘアピンで転倒し、さらに5位までポジションを落とした。634号車 MuSASHi RT HARC-PROは次の周もステイアウト。34号車 ヨシムラスズキ シェルアドバンスと87号車 Team GREENはピットイン。87号車 Team GREENはマシンを修復したため20位まで後退した。ようやく次の周に634号車 MuSASHi RT HARC-PROもピットイン。判断の遅れで2位のポジションから周回遅れの6位となってしまった。

 雨によるピットインで順位が入れ替わった。スタートから2時間10分を経過した時点でトップは11号車 F.C.C. TSR Honda。2分30秒遅れの2位は17号車 Team KAGAYAMA with Verity。ピットインの判断が遅れた34号車 ヨシムラスズキ シェルアドバンスが3位。ほぼ1周遅れ、トップから2分40秒差の4位が07号車 MONSTER ENERGY YAMAHA with YSP。以下周回遅れで25号車 Honda鈴鹿レーシングチームが5位、634号車 MuSASHi RT HARC-PROが6位、104号車 TOHO Racing with MORIWAKIが7位。今年はSUPER GTを欠場しているエヴァンゲリオンレーシングの01号車 EVA RT TEST TYPE-01SynergyForceTRICKSTARが8位となっている。

 転倒したマシンの影響からセーフティカー(SC)が導入された。鈴鹿8耐のSCはコースを2分割するように2台が導入され、必ずしもトップのマシンの前に入るわけではない。元々2分以上の大差となっていたが、同一周回の2位、3位、4位と同じSCの集団に11号車 F.C.C. TSR Hondaも入ったので、2位から4位がトップの11号車 F.C.C. TSR Hondaの目の前を走るという位置関係になった。

セーフティカーが導入された

 レースが再開されると、11号車 F.C.C. TSR Hondaは立て続けに4位から2位のマシンをパス。全車を周回遅れにする独走態勢を築いた。そこから雨はすぐに止み、20分ほどで日差しが戻ってきた。スタートから3時間が経過したころには再びスリックタイヤに交換し、レースは後半戦に突入する。

 2位を走行していた17号車 Team KAGAYAMA with Verityはタイヤ交換のタイミングでリアシートを修復。この間に34号車 ヨシムラスズキ シェルアドバンスが先行し、アウトラップで634号車 MuSASHi RT HARC-PROに抜かれた17号車 Team KAGAYAMA with Verityは4位に後退した。

 これでトップは11号車 F.C.C. TSR Honda。周回遅れの2位が34号車 ヨシムラスズキ シェルアドバンス。3位634号車 MuSASHi RT HARC-PRO、4位17号車 Team KAGAYAMA with Verity、5位07号車 MONSTER ENERGY YAMAHA with YSPとなった。ピットインのタイミングが遅れ、一時は6位まで後退した634号車 MuSASHi RT HARC-PROだったが徐々にポジションを回復。6時間55分のレースが折返しを過ぎたころには、2位の34号車 ヨシムラスズキ シェルアドバンスに迫ってきた。

 90周目を過ぎると2位争いは肉薄状態。94周目のヘアピンで634号車 MuSASHi RT HARC-PRO(マイケル・ファン・デル・マーク)が34号車 ヨシムラスズキ シェルアドバンス(ランディ・ド・プニエ)を抜いて2位に浮上。周回遅れながらトップの11号車 F.C.C. TSR Hondaを追った。

2位に浮上した634号車 MuSASHi RT HARC-PRO(マイケル・ファン・デル・マーク)
34号車 ヨシムラスズキ シェルアドバンス(ランディ・ド・プニエ)は3位に後退

2回目のSC導入。レースの流れが変わった

 周回数100周。ゴールまで3時間となったころ、下位を走るマシンが2輪シケインで転倒した。これをきっかけにレースが大きく動くこととなる。転倒したマシンはオフィシャルが駆け付けてすぐに撤去されたが、2輪シケインをショートカットするように転倒したため砂利がコース上に撒き散らされた。このため、この日2回目のSCが導入される。

 SCはトップの11号車 F.C.C. TSR Hondaの前に入った。そのため1周半ほど後方にいた2位の634号車 MuSASHi RT HARC-PROと3位の34号車 ヨシムラスズキ シェルアドバンスは同じ隊列の後方に並び、その差は1周チョットに縮まった。

 34号車 ヨシムラスズキ シェルアドバンスはここでピットイン。通常、SCが1台の場合は隊列の最後尾に追い付くことでピットロスを減らすことができるが、鈴鹿8耐はSCが2台入るので、もう1台のSCが通過するまではピット出口がクローズとなる。タイヤ交換、給油、ライダー交代をしてピット出口で足止めされ、半周遅れのSCが通過して隊列の最後尾に復帰すると半周後方の集団にポジションダウンとなった。

 2位の634号車 MuSASHi RT HARC-PROはレース再開と同時にピットイン。コースに復帰すると34号車 ヨシムラスズキ シェルアドバンスに対して40秒のマージンを稼いだ。さらに次の周にトップの11号車 F.C.C. TSR Hondaもピットイン。11号車 F.C.C. TSR Honda(秋吉耕佑)がコースに戻ると、すぐ後ろに634号車 MuSASHi RT HARC-PRO(高橋巧)が迫ってきた。

 SCのおかげで差を縮めた634号車 MuSASHi RT HARC-PROは、デグナーで11号車 F.C.C. TSR Hondaをオーバーテイク。ほぼ1周遅れながら同一周回に戻すことができた。

 抜かれた11号車 F.C.C. TSR Hondaだが無理に追うことはせず、2台の差は徐々に広がっていく(正しくは約1周差が徐々に縮まる)。11号車 F.C.C. TSR Hondaのラップタイムも、ピットイン前の2分8秒台と比べてやや遅めの2分11秒台。2位との差が2分以上あるので無理せず走行を続けていると思われた。

コースインした11号車 F.C.C. TSR Honda(秋吉耕佑)は無理せず走行しているように見えたが……

秋吉選手転倒! 634号車 MuSASHi RT HARC-PROがトップへ

 ところがコースインから4周目、周回数108周の130Rで11号車 F.C.C. TSR Hondaがフロントタイヤを滑らせてコースアウト。秋吉耕佑選手は担架でコース外に運ばれた。チェッカーまで残り2時間35分。634号車 MuSASHi RT HARC-PROがトップに立ち、34号車 ヨシムラスズキ シェルアドバンス(津田拓也)、17号車 Team KAGAYAMA with Verity(芳賀紀行)が2位、3位に浮上する。

ついにトップに立った634号車 MuSASHi RT HARC-PRO
2位は34号車 ヨシムラスズキ シェルアドバンス
3位は17号車 Team KAGAYAMA with Verity

 転倒した11号車 F.C.C. TSR Hondaは10分後、傷ついたマシンに秋吉選手が乗りピットへと戻ってきた。秋吉選手は左大腿骨に骨折の恐れがありライダー交代。マシンは20分ほどかけて修復し、コースに復帰。ポジションは50位まで落としたがチェッカーを目指すこととなった。

 太陽が沈み、チェッカーまで残り1時間を切ったところで、1コーナーと2コーナーでマシンがクラッシュ。この日3回目のSCが導入された。残り40分でレースが再開されるものの、1周後のS字で3台のマシンが立て続けにコースアウト。そのなかの1台は8位を走行していた01号車 EVA RT TEST TYPE-01SynergyForceTRICKSTAR。人気チームだけにサーキットでは悲鳴が上がった。これで4回目のSCが導入。01号車 EVA RT TEST TYPE-01SynergyForceTRICKSTARはピットに戻ってマシンを修復。残り13分でコースに復帰すると、グランドスタンドは拍手と歓声に包まれた。

残り40分まで8位を走行していた01号車 EVA RT TEST TYPE-01SynergyForceTRICKSTAR

 19時30分にスタートから6時間55分が経過。2位を1分以上引き離した634号車 MuSASHi RT HARC-PROが172周目を周回し、トップでチェッカー受けた。2位は34号車 ヨシムラスズキ シェルアドバンス。3位は17号車 Team KAGAYAMA with Verity。634号車 MuSASHi RT HARC-PROは2013年に続いて鈴鹿8耐2連覇を果たした。転倒した11号車 F.C.C. TSR Hondaは40位、01号車 EVA RT TEST TYPE-01SynergyForceTRICKSTARは24位でチェッカーを受けている。

ウイニングラップを終えたマシンをファンが出迎えた
ゴール後に恒例の花火

2014 FIM世界耐久選手権シリーズ第2戦 “コカ・コーラ ゼロ”鈴鹿8時間耐久ロードレースの最終結果
1位 634号車 MuSASHi RT HARC-PRO 172周
2位 34号車 ヨシムラスズキ シェルアドバンス 172周
3位 17号車 Team KAGAYAMA with Verity 171周
4位 07号車 MONSTER ENERGY YAMAHA with YSP 171周
5位 104号車 TOHO Racing with MORIWAKI 170周
6位 25号車 Honda鈴鹿レーシングチーム 170周
7位 22号車 Honda Team Asia 169周
8位 1号車 SUZUKI ENDURANCE RACING TEAM 169周
9位 94号車 Yamaha Racing GMT94 Michelin 168周
10位 7号車 MONSTER ENERGY YAMAHA -YART 168周

2014年鈴鹿8耐の表彰式

(奥川浩彦)