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JAIA、輸入オートバイを一堂に会した試乗会開催
輸入ブランド7車種を一気に乗り比べ
(2015/4/13 10:35)
- 2015年4月7日~8日開催
JAIA(日本自動車輸入組合)は、4月7日~8日の2日間にわたって輸入オートバイの試乗会をメディア向けに開催した。これまでにもJAIAは自動車の試乗会をたびたび開催しているが、オートバイの試乗会を開催するのはこれが初。BMW Motorrad、BRP、Ducati、Harley-Davidson、aprilia、MOTO GUZZI、Vespa、Piaggio、Triumph、Indian、Victoryという11ブランド40車種をそろえ、複数の車種を乗り比べできる形で用意した。
主催者であるJAIA二輪車委員会の委員長 秋葉芳之氏は、2014年8月に浜松で開催した「インポートバイクショー in 浜松」において輸入2輪車の最新モデルを多数展示した際、メーカー単独で行うイベントよりも多くの来場者からポジティブな反響があり、「メーカーが集まるとアピール力が違う」ことを実感。競合を意識して手をこまねいているよりも、「2輪ユーザーのマーケットが広がらないと」という考えから、メーカー合同の試乗会を企画したと話す。
今までは主に2輪車や市場における規制緩和に向けて活動してきたJAIAだが、今後は2輪車のユーザーやマーケットの開拓にもフォーカスし、一般ユーザー向けの試乗会開催なども視野に入れながら取り組んでいく方針。リターンライダーの増加などで回復傾向にある2輪市場のさらなる活性化を目指すとしている。
今回はこのイベントで試乗できた車両のうち、7車種について簡単な紹介と試乗レビューをお届けしたい。最後の動画も合わせてご覧いただければと思う。
BRP Can-Am Spyder RT Limited
排気量:1330cc
最高出力:85.8kW(約115馬力)/7250rpm
最大トルク:130.1Nm/5000rpm
URL:http://www.brp-jp.com/
「BRP」は、カナダに本拠を置く企業Bombardier Recreational Productsの略であり、航空機等の製造で知られるボンバルディアにルーツをもつ会社だ。創業者のボンバルディア氏はスノーモービルを世界で初めて開発した人物とされ、現在もBRPはスノーモービルを製造しているほか、水上バイクや4輪バギー(ATV)、そしてトライクの開発にも携わっている。
したがって、この特徴的な前2輪、後ろ1輪の「Can-Am Spyder」シリーズを目の前にして、直感的にスノーモービルのにおいを感じ取ったとしても不思議ではないだろう。前がスキー板ではなく車輪であることを除けば、シルエットはスノーモービルによく似ている。実際に乗車してみると、ハンドル操作の方法もスノーモービルのそれにかなり近い。コーナリング時にバンクすることがないため、姿勢はほとんど変化せず、ハンドルだけを切って曲がっていくスタイルだ。
グリップしにくい雪上を滑るスノーモービルでは、方向転換のために姿勢を積極的に動かさなければならず、腕力や体力が必要になるが、Can-Am Spyderは2つの車輪でしっかり路面を捕らえ、思った通りの方向に曲がっていくことができる。ハンドル操作にも力はそれほど必要ない。安定した前輪に頼りきり、タイヤをきしらせながらグイグイ急旋回していく時の横Gの感覚は、オートバイでは得られないものだ。また、視認しやすい前輪部分が通過できれば、その後ハンドルを大きく切っても、幅が絞り込まれた車体後方は障害物を引っかけることがないため、一般的な後輪2輪のトライクより安心して狭路走行できるメリットもある。
直線走行の安心感も、当然ながらオートバイとは比べものにならない。ハンドルとリアシートのグラブバーにビルトインされたグリップヒーターと、速度を細かく調整可能なクルーズコントロール、ボタン操作で上下に可動する電動式フロントガラス、iPhone/iPodをはじめとするオーディオプレーヤーの接続も考慮されたオーディオシステムなど、ラグジュアリーな装備の数々が盛り込まれ、ロングツーリングを快適にこなせる仕様となっている。
リアサスペンションが電子制御式エアサスである点も特徴。好みに応じてボタン操作で減衰力を調整できるほか、パッセンジャーの乗車を検知して自動調整するようにもなっている。Can-Am Spyder RT Limitedはツアラーモデルではあるが、リアサスの調整の仕方によっては車体の挙動やハンドリングが大きく変化し、ゆったりとした乗り心地にも、クイックでスポーティな乗り味にも変えられるのが面白いところだ。
一般的なオートバイと異なり戸惑いそうになるのは、走行前の乗車手順とハンドル以外の操作方法。キーを回すとフロントのインフォメーションディスプレイに「セーフティカードを読んでください」という注意文が表示され、ディスプレイ上部に差し込まれているセーフティカードを引き出して走行時における注意点を理解した後、ボタン操作をして初めてエンジンをかけられるようになる。
セミオートマチックで、ブレーキは右足下のペダルしかないため、オートバイにあるようなクラッチレバーやフロントブレーキレバーはどちらも存在しない。シフト操作はハンドル左のスイッチボックスに設けられた「+」「ー」レバーで行う仕組みだ。
まずはボタンでパーキングブレーキを解除し、ブレーキを踏みながら「+」でニュートラルから1速へ入れ、発進後は「+」を押すたびに2速、3速とシフトアップしていく。シフトダウンは「ー」だ。バックギヤも装備され、ニュートラル時に左スイッチボックス上部の「R」ボタンを押しながら「ー」を押せばアクセル操作で後退が可能となる。エンジンを切る時はパーキングブレーキをセットしないと警告音が鳴るなど、安全にも配慮されている。
この一連の操作を覚えてスムーズにこなせるようになるまでは、なんとなく公道を走るのに怖じ気づいてしまいそうになる。が、いったん走り出せば、ロータックスエンジンの滑らかな吹け上がりと気持ちのいい加速感、優れた操縦安定性を味わえるCan-Am Spyder RT Limitedの魅力を、誰でも思う存分に引き出して楽しめるはずだ。
BMW Motorrad S1000RR
排気量:999cc
最高出力:146kW(199PS)/13500rpm
最大トルク:113Nm/10500rpm
価格:215万円
URL:http://www.bmw-motorrad.jp/jp/ja/index.html
スーパーバイク世界選手権参戦に向け開発され、2009年に登場したBMWのスーパースポーツ「S1000RR」。初のフルモデルチェンジとなった2015年式モデルを試乗することができた。エンジン出力は先代の193PS(欧州モデル)から6PSアップとなる199PSを達成した一方で、車重は約2kg減の204kgに。他メーカーのライバル車両と比較しても同等かいち段上の性能を獲得した。
S1000RRの最大の特徴は、てんこ盛りの最新テクノロジーにある。路面などの環境に応じてRain/Sport/Race/Slickなどからパワーモードを選択できる「ライディングモード Pro」、圧側・伸び側の減衰力をマシンの状況に応じて的確に自動制御する「ダイナミック・ダンピング・コントロール」を備えた電子式フロントサスペンション、スリップ制御などによって安定した挙動をもたらす「オートマチック・スタビリティー・コントロール(ASC)」と「ダイナミック・トラクション・コントロール(DTC)」、シフトアップ方向とダウン方向の両方に適用されるクイックシフター「シフトアシスト Pro」、サーキット走行にもマッチするブレーキシステム「Race ABS」というように、現在考えうるあらゆる電子制御が詰め込まれている。
これらのテクノロジーは、基本的にサーキットでのレースやスポーツ走行で車両性能を最大限に発揮させるためのものだが、実際に試乗してみて、街乗りやツーリングがメインのライダーであっても十分に活かすことができると感じた。その理由の1つは、単純ではあるが、まずはパワー・モード。試乗会当日はあいにくの雨で路面がフルウェット状態だったため、パワー・モードをRainに設定することで、199PSの強大なパワーのマシンでも不安なく走り出すことができた。
さらにシフトアシスト Proにより、両手でグリップをしっかり支えながら、左足首をわずかに動かすだけで軽いショックとともにシフトアップとダウンがきれいにつながっていく。シフトアシスト Proは、単にシフト操作が楽になるだけでなく、交差点の右左折時のように、安全確認、アクセル、ブレーキ、ウインカー、シフトと、オートバイにおけるほとんどの動作・操作を短時間にまとめてこなす必要がある場面にも有効だ。
シフトチェンジを考慮して左手をクラッチレバーに添えたり、握ったりする必要がなくなるだけで、他の重要な操作にこれほどまでに集中できるのかと意外な効能に驚く。Race ABSやASC、DTCといった制御は、速く走るためだけのものではなく、転倒リスクを大幅に低減してくれる機能でもある。数多くの電子制御は、公道走行時の安全にも役立つものであることを必ず実感できるだろう。
水冷並列4気筒エンジンの、低回転から高回転まで間断なく耳に届く小気味よいサウンドも、ずっと走り続けていたいと思わせる。ポジションは決して楽ではないが、ハンドルを切った時のタンクとの隙間にも余裕があり、Uターン時にアクセル操作が不安定になって怖い思いをすることも少なそうだ。ただ1点、グリップヒーターが装備されているのが純粋なスーパースポーツとしてのパッケージングに水を差しているような気がしないでもないが、ツアラーとしても利用したい人にとってはありがたい機能ではないだろうか。
Indian Scout
排気量:1130cc
最高出力:74.7kW(100PS)
最大トルク:97.7Nm/5900rpm
価格:154万円
URL:https://www.indianmotorcycle.co.jp/
“THEアメリカンバイク”といえば、今やハーレー・ダビッドソンがオートバイ乗りにも、そうでない人にとっても代名詞的存在になっている。ただ歴史的に見ると、実はIndian Motorcycleが1901年に米国初のオートバイ、つまり名目上はアメリカンバイクと言ってもよいであろう車両を開発したメーカーなのである。
そんな伝説的な歴史あるメーカーでありながら、およそ60年前、第二次世界大戦終戦後の不況の煽りで倒産の憂き目に遭い、その後長期にわたって新モデルが発売されることはなかった。ところが、2008年になって
復活を果たし、ATVなどの製造を手がけるポラリス傘下で再スタートを切ることになる。日本上陸はわずか4年前の2011年であり、そのためIndianというメーカー名を初めて耳にする人も多いかもしれないが、映画「世界最速のインディアン」のモデルとなったオートバイがこの「Indian Scout」であることを聞けば、なんとなく親しみを感じるのではないだろうか。
2015年から発売するIndian Scoutは、映画のモデルとなったかつてのIndian Scoutの復刻版として、当時の車両をほうふつさせるレーシーなフレームディメンションを受け継ぎつつ、完全新設計の水冷V型エンジンと鋳造アルミフレーム、昨今の安全性の要求に応えるABSなどの技術を投入し、トラディショナルなテイストと現代のテクノロジーの融合を果たした新しいビンテージアメリカンバイクだ。
車両重量は253kgで、このクラス・カテゴリーのオートバイとしては非常に軽量に仕上げられた。またがってみても、外観から受ける印象とは違ってハンドルが近くに感じ、コンパクトに扱える。水冷V型エンジンのサウンドは高音を伴った現代的で滑らかな響きだが、排気音のリズミカルな鼓動はまさにアメリカンに乗っているという気持ちにさせてくれる。
大排気量からくる加速のトルク感とスムーズさ、直線走行時の安定性は言うまでもないが、極低速でもしっかり粘り、小回りでも不安を感じることはない。アメリカンならではの重心の低さもあり、試乗会当日の濡れた路面でも、転倒の心配をすることは一切なかった。エンジンをはじめ各部パーツの造形は美しく、所有感が味わえる上質な作りで、見ていても、乗っていても飽きがこない1台だ。
正規ディーラーが国内には東京、名古屋、福岡の3拠点しかなく(取扱販売店自体は全国にある)、実車を見る機会はまだそう多くはないだろうけれど、ディーラーで見かけた際にはぜひ間近で触れてみて、元祖アメリカンとも言えるIndianの品質の高さを体感してほしい。
Triumph Rocket III Roadster
排気量:2294cc
最高出力:148PS/5750rpm
最大トルク:221Nm/2750rpm
希望小売価格:230万円
URL:http://www.triumphmotorcycles.jp/
2004年の初登場時は、オートバイとしては群を抜く大排気量と、強烈なパワーで話題をさらったモンスタークルーザー「Rocket III」。2300cc近い排気量もさることながら、Triumphのアイデンティティになりつつある3気筒エンジンを採用しているのも特徴だ。エンジンも、タイヤも、タンクもすべてが巨大に見え、またがっても「デカいバイクに乗っている」ことを実感させてくれる。
昨今の騒音規制に適合するためか、その巨大な図体とは裏腹に、比較的おとなしい、3気筒ならではのフィーリングを感じるエンジン音と排気音。わずかに重めに調整されたアクセルをじっくり開けていくと、実に滑らかなパワーカーブを描くようにナチュラルに加速していく。低速時も巡航時も敏感なところは何一つなく、「完璧に調教されたモンスターマシン」だ。
もちろんアクセルをさらに開けていけば、全身が後ろに持って行かれるような怒濤の加速を発揮するが、あふれんばかりのトルクを抱えながら、2000rpm前後でくつろぎつつ走らせている時が最も気持ちがいい。最新スーパースポーツに引けを取らない加速力をいつでも引き出せるけれど、そんな鋭い爪は終始隠し通しながらツーリングをこなしたくなる。
Ducati Superbike 899 Panigale
排気量:898cc
最高出力:87kW(118HP)/8500rpm
最大トルク:98Nm/8500rpm
価格:182万3148円
URL:http://www.ducati.co.jp/index.do
モデルチェンジごとに排気量をわずかずつアップさせてきているDucatiのスーパースポーツモデルのラインアップのうち、ミドルスポーツカテゴリーに相当するモデルが「Superbike 899 Panigale」だ。シフトアップ側に適用されるクイックシフター「ドゥカティ・クイック・シフト」、スリップを抑制する「ドゥカティ・トラクション・コントロール」、路面状況に合わせて選択できるパワー・モード、ABSなど最新技術を装備。国内仕様は騒音規制に対応するため、大きなクラッチカバーと、テルミニョーニ製のサイレンサーが装着される。
水冷L型2気筒のエンジンは、ドゥカティらしいメカニカル音を奏でながら軽々と吹け上がるが、暴力的ではなく、ミドルクラスらしい扱える範囲内のキレのいい加速を見せてくれる。巨大なクラッチカバーによって右足の位置が完全に決まってしまい、シートへの体重の預け方、ハンドルの構え方なども「これしかないでしょ」と言わんばかりのポジションにぴたっと収められるこのスタイルは、体の自由度は少ないものの、それでいて不満に感じることのないエキサイティングな乗り味だ。
シートが高く、身長177cmの筆者が両足つま先立ちになるほどで、万人におすすめできるオートバイではないかもしれないが、試乗会当日は悪天候の影響で不可能だったワインディングでの走行を、今回試乗した中では最も試してみたくなった1台だった。
Ducati Diavel Carbon
排気量:1198.4cc
最高出力:82kW(112HP)/6500rpm
最大トルク:122.5Nm/6250rpm
価格:231万3889円
URL:http://www.ducati.co.jp/index.do
クルーザーとも、ネイキッドスポーツとも言えない独特のスタイリングが見る者を引きつけるオートバイが「Diavel Carbon」だ。下位モデルの「Diavel」をベースに、フロントフェンダー、タンクカバー、シートカウルなど各所にカーボン複合素材を用い、マルケジーニ鍛造ホイールを装備して軽量に仕上げたモデルとなる。出力特性を変化させられるライディング・モードやDTC、ABSも装備。キーは差しっぱなしにするのではなく、持っているだけでエンジンをかけられるスマートエントリーとなっている。
一見すると重量級マシンに思えるが、軽量パーツのおかげか、走り出した瞬間に思わず「えっ」と声が出るほどの軽さ。車重は205kgあるとはいえ、バッテリーを腹下に収め、リアサスペンションもスイングアームの下にセットするなど、徹底的な低重心化を図ったことにより、見かけからは信じられないくらいの軽快感を実現している。ハンドルの切れ角もドゥカティにしては大きく、ホイールベースが1580mmもありながら、驚くほど小回りが利いた。とにかくスタイリングのユニークさが際立つが、街乗りだけでも十分に楽しめる万人向けの印象だ。
Harley-Davidson STREET 750
排気量:749cc
最高出力:-
最大トルク:59Nm/3750rpm
価格:85万円(ビビッドブラック)
URL:http://www.harley-davidson.com/content/h-d/ja_JP/home.html
高齢のユーザーに人気があるというイメージの強いハーレーだが、より幅広い層を狙って開発された“ナナハン”仕様のモデルが「STREET 750」だ。749ccの水冷V型2気筒エンジンと400cc並みのコンパクトな車体で、最初の1台目のハーレー、あるいは取り回しを重視したい女性にも向いている。すでにハーレーを乗り回しているユーザーにとっては選択肢に入りにくいかと思いきや、担当者によれば、街乗り用の2台目のハーレーとしても引き合いが強いとのこと。
一応は大排気量車に分類されるナナハンではあるものの、たしかに乗り出しの気楽さと操りやすさがあり、それでいてゆったり構えてクルージングできるアメリカンの醍醐味もしっかり堪能できる。反面、カウルがないことなどから長距離ツーリングについては他のツアラーモデルと比較するとやや苦手。振動が抑えられスムーズに回る水冷エンジンで、鼓動感の強いハーレーを期待している人にとっては物足りなさもあるかもしれない。