ニュース

マツダ、2026年3月期第1四半期決算は営業赤字461億円に 通期見通しは営業利益500億円を目指す

2025年8月5日 開催
マツダの2026年3月期 第1四半期決算説明会には、マツダ株式会社の代表取締役社長兼CEO 毛籠勝弘氏、同代表取締役 専務執行役員兼CFO ジェフリー・H・ガイトン氏、同専務執行役員 藤本哲也氏の3人が出席した

 マツダは8月5日、2026年3月期 第1四半期(2025年4月1日~6月30日)の決算内容を発表した。

 第1四半期の売上高は前年同期(1兆2055億6300万円)から8.8%減の1兆997億7000万円、営業利益は前年同期の503億6000万円から461億1500万円の赤字に、営業利益率は-4.2%、経常利益も前年同期802億6700万円から342億5500万円の赤字に、当期純利益は前年同期の498億1400万円から421億400万円の赤字となった。

 また、連結出荷台数は前年同期(29万1000台)から2万5000台減の26万6000台で、グローバル販売台数は前年同期(30万9000台)から8000台減の30万1000台。

2026年3月期 第1四半期の財務指標
生産台数とグローバル販売台数の内訳

コスト削減などの積み重ねで関税影響を通期では約60%相当まで巻き返す

マツダ株式会社 代表取締役 専務執行役員兼CFO ジェフリー・H・ガイトン氏

 決算説明会では最初に、マツダ 代表取締役 専務執行役員兼CFO ジェフリー・H・ガイトン氏から事業環境の大きな変化に対応するために求められる今期の目標と主な施策について説明された。

 今期の目標としては「厳しい事業環境の中、サプライチェーンを守ることを優先し、販売台数を維持」「経営のレジリエンシー強化と効率化に継続的に取り組み、第2四半期からの反転を図る」「営業利益500億円、当期純利益200億円、キャッシュフローの黒字化を目指す」という3点を提示。

 米国での関税がサプライチェーンに与える影響を最小限に抑えるため全力で取り組んでおり、ここで示すサプライチェーンにはサプライヤーや販売ディーラー、ビジネスパートナー、従業員、さらに車両を購入するユーザーまで含めていると説明。このために、各地にある生産拠点に対して可能な限り安定的に生産台数の見通しを提供していくことを例として挙げたほか、従来から取り組んでいる変動費と固定費の削減は関税の影響によって重要度が増していると語り、今期中の目標達成に向けて着実に進捗しているものの、第1四半期では大きな効果は出ておらず、これが損失という結果につながっていると分析。一方でこの状況を反転させ、通期では営業利益500億円、当期純利益とキャッシュフローの黒字化を目指すとした。

2026年3月期で目指していく3つの目標

 こうした目標を達成するための施策として、米国市場での販売減をその他市場での販売増によってオフセット。ラージ商品群の成長を推進して、米国・アラバマ工場で生産している「CX-50」の販売最大化を図って、生産車両の95%を米国内で販売していく。また、新たに市場導入する新型「CX-5」については欧州から販売を始め、その欧州では9月から初のBEV(バッテリ電気自動車)となる「MAZDA6e」も導入する。

 日本ではブランドとビジネスを強化する取り組みを開始しており、販売台数は第1四半期実績に加え、通期見通しでも対前年増としている。米国については市場での全体需要は想定以上に堅調に推移しており、競争環境は厳しい環境となっているが、インセンティブ(販売奨励金)は前年の高い水準から削減することに成功しており、日々新たなオポチュニティを追求していると説明。

 このほか、さまざまなコスト削減に取り組んで今期から成果が出はじめており、これらの取り組みの積み重ねによって通期では関税影響の約60%に相当する巻き返しを図ると述べた。

通期での黒字に向けた施策

 第1四半期の解説では、前年同期から2万4000台減となった生産台数については米国における不透明な経済情勢と関税影響に加え、ディーラーの在庫が十分なレベルとなっていたことを踏まえて生産台数を抑えたことが主な要因だと説明。

 前年同期から8000台減となったグローバル販売台数は、新型CX-5生産開始前の現行モデル売り切りなどが要因で減少となったが、一方で日本と北米のカナダ市場で対前年で増加となる販売実績となり、メキシコでは過去最高となる販売シェアを達成。ラージ商品は第1四半期にグローバルで対前年41%増となっていることもアピールしている。

日本市場での販売状況
北米市場での販売状況
欧州市場での販売状況
中国市場での販売状況
その他市場での販売状況
市場別の連結出荷台数実績

 営業利益の変動要因では、前期の実績をベースとして試算した関税影響は697億円となっていたが、仕向地の変更やCX-50について米国内販売の最大化といった対応を行なったことにより、影響を201億円オフセットして関税負担を496億円に圧縮した。また、「台数・構成」の項目では、出荷台数が減少した影響を米国におけるインセンティブ抑制で補っているという。さらに「為替」で米ドルなど主要通貨が円高になったことで268億円の減益となっている。

営業利益の変動要因

2026年3月期の通期見通し

2026年3月期の通期見通し

 2026年3月期の通期見通しでは販売台数を前年同期とほぼ同水準の130万台と設定。財務指標では売上高は4兆9000億円、営業利益は500億円、営業利益率は1.0%、当期純利益は200億円とした。それぞれ対前年比で減益となるが、これは米国の関税見直しの影響と説明している。

販売台数は前年同期とほぼ同水準の130万台と設定
通期見通しにおける営業利益の変動要因

マツダの強みは「現場の創意工夫」と「困難に立ち向かうしなやかな意思」

マツダ株式会社 代表取締役社長兼CEO 毛籠勝弘氏

 ガイトンCFOによる決算説明に続き、マツダ 代表取締役社長兼CEO 毛籠勝弘氏がまとめとして今後の活動について説明した。

 毛籠社長は「第1四半期は米国政府による輸入車に対する追加関税や、北米通商枠組みに対する関税適用など極めて不透明な環境下での事業運営となりました。結果としては前年同期比での減収、大幅な減益、営業赤字に転じる厳しい決算となりました。4~6月は米国関税約700億円という追加コストの影響を受けました。短期的に即効性のあるインセンティブ抑制や収益的に厳しい車種の出荷抑制といった対策を講じて、うち約200億円、関税影響の30%をオフセットいたしましたが、約500億円の関税影響が減益の主因となりました」。

「一方、ガイトンからも説明がありましたとおり、グローバル販売は全体として底堅く推移しました。『MAZDA2』やCX-5の売り切りフェーズであった欧州は前年割れを見込んでいましたが、主要市場の北米、日本は対前年比で増加、中国は98%と計画に沿った進捗を示しております。車種では『CX-30』やMAZDA2などの販売・出荷調整もありましたが、CX-50やラージ商品群が対前年比で41%増加するなど継続的な成長軌道にあり、『MAZDA EZ-6』などの環境対応モデルの拡大も着実に進みました」。

「生産・出荷につきましては、需給バランス、収益性、在庫適正化を重視して、日本、メキシコで抑制、アラバマ、中国では増産となりました。第2四半期以降は価格転嫁や競争環境の変化を見極めつつ、関税コストや台数・収益のバランスを取りながら、市場に俊敏に対応してグローバルで前年並みの販売を目指していきます」。

「通期の決算公表時に『合理的に算定できる環境にはない』と未定としていた通期見通しに関しまして、今回は日米関税交渉の合意といった進展を受けまして、不確実性はいまだに高いものの経営環境に一定の前提を置けるようになったと判断し、通期見通しについて『黒字確保』という内容を示すことで、当社とお取引先全体が一丸となって目標達成に向けて、さらなる努力を傾注していけるよう取り組みたいとの経営意思を示させていただきました」。

「今後、追加関税の税率変更、あるいは各種対応策の効果が累積的に現れて反発力は高まる見通しであり、通期では関税コスト年間約2300億円の60%をオフセットして、500億円の営業黒字、ボトムラインの黒字を確保すべく、あらゆる手段を講じてまいります。こうした取り組みの中に、当社の基本方針としている地域経済、雇用の責任を果たすべく、国内生産70万台を基準として、サプライチェーンの維持のため、取引先さまと連携しながら損益分岐点を引き下げる努力、安定的な生産・販売の確保に注力してまいります」。

「日米間の関税は、従来の2.5%から15%となり、その負担は企業経営にとって短期的には非常に重く、また、北米地域内における通商政策の行方には今後も注視が必要な状況にあります。したがって、収益構造改革のアクションを緩めることなく、徹底して加速させていきます。現在進行形で構造的な原価低減、固定費削減に聖域なく取り組みを進めております。原価低減はフェーズ2期間の1000億円の目標に対して60%程度のめどを持っていますが、その刈り取りタイミングから今年度の原価低減は合計400億円程度、固定費も明確化された400億円のロードマップを刈り取り、合わせて800億円のコスト低減を目指してまいります」。

「営業面の努力としては、価格価値、仕向地、仕様ミックスの最適化アクション、新型CX-5の導入成功に向けた取り組み、また、関税影響を最小化するアクションなどで600億円を計画しており、コスト改善と合わせて約2300億円という関税影響のうち、今季は6割オフセットを実現して通期営業利益500億円を確保するよう取り組んでまいります」と説明した。

第1四半期の実績と通期見通しについてのまとめ

 また、今後に向けた取り組みについて毛籠社長は、「電動化の進展は、グローバルで時間軸の見直しが進みつつあります。当社の『意思あるフォロワー』という戦略、ライトアセットの戦略方針は実効性を発揮し始めています。市場の変化に合わせて柔軟かつ機動的に修正を行なって、ブランド価値と成長領域への選択と集中を進めてまいります」。

「また、当社の生産性と競争力を向上させるために、生成AIを活用した業務改革にも本格着手してまいります。4月より全社横断で約400名の生成AI活用専任組織を立ち上げ、オペレーションのスピード倍速、生産性の劇的向上を全社組織の隅々まで行き渡らせ、次世代の競争力の礎を築くべく果敢に取り組んでいきます。マツダの強みは『現場の創意工夫』と『困難に立ち向かうしなやかな意思』にあります。経営と現場が一体になって、この難局を必ず乗り越えていきます。ひるまず、恐れず、やるべきことをやり抜く。この覚悟を持って取り組んでまいります」と意気込みを語った。

中間配当は25円、年間配当は未定で、適切なタイミングで公表するとのこと