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新型「iX3」に採用された「Snapdragon Ride Pilot」 クアルコムとBMWのリーダーが「IAAモビリティ2025」会場でトークセッション
2025年9月11日 17:59
- 2025年9月9日(現地時間) 開催
BMWが新世代車両へ展開する「ノイエ・クラッセ」テクノロジーを採用する初代モデル、新型「iX3」が「IAAモビリティ2025」でデビューした。
新型「iX3」には、BMWとクアルコムの共同開発により誕生したADAS(先進運転支援システム)/AD(自動運転)システム「Snapdragon Ride Pilot」が採用されている。
この「Snapdragon Ride Pilot」に向けた取り組みについて、クアルコムのGroup General Manager, Automotive and Industrial & Embedded IoTのNakul Duggal氏、BMWグループのSenior Vice President Driving Experience Mihiar Ayoubi氏によるトークセッションが「IAAモビリティ2025」の会場で展開された。
BMWの新世代モデルに展開される「ノイエ・クラッセ」の価値を支える要素の1つは、SDV(ソフトウェア定義車両)へと進化したことである。このノイエ・クラッセについて、BMW AG取締役会会長オリバー・ツィプセ氏は「ノイエ・クラッセは、当社の将来に向けた最大のプロジェクトであり、テクノロジー、ドライビングエクスペリエンス、そしてデザインにおいて飛躍的な進歩を遂げています。実質的にすべてが刷新されています。駆動技術に関わらず、当社の全製品ラインがノイエ・クラッセのイノベーションの恩恵を受けることになります」と位置付けている。
新型「iX3」に採用されるADAS/ADシステムの「Snapdragon Ride Pilot」では、自動車安全度水準(ASIL)、機能安全(FuSa)規格、NCAP、FMVSS 127、DCASなどの最新の安全規制への準拠をサポートする。トークセッションの中で、BMWとの取り組みについて説明したDuggal氏は「家族や親族に安心して購入してもらうには、規制を通過する必要がありました。ですから、私たちの基準は非常に高かったのです。BMWとの提携が極めて重要となったのは、自動車安全分野で非常に長い歴史を持ち、ハードウェアだけでなくソフトウェアシステムも自社開発で膨大な実績を築き、世界規模で継続的に革新を推進してきた実績を持つパートナーが必要だったからです。率直に言って、私たちはそこから非常に多くを学びました」とプロジェクトを振り返った。
BMWはSDVに向けクルマを1から再設計
BMWの歴史において「ノイエ・クラッセ」プロジェクトは、特別な意味を持つという。
Ayoubi氏は「BMWのエンジニアたちはクルマを1から再設計しました。エンジニアにとって、白紙の状態からスタートすることが最大の夢であると想像してください。今回、私たちはまったく新しいボディ全体のプラットフォームを開発しました。全く新しいエレクトロニクスの基盤(バックボーン)や機能的なアーキテクチャも備えています。そして車両用の新しいソフトウェアアーキテクチャも構築し、高度な4つの制御ユニット『スーパーブレイン』を搭載しています。そのうちの1つは加算処理を担うスーパーブレインで、すべての機能を統合しています」と明かした。
ノイエ・クラッセ初代モデルとなる新型「iX3」には、BMWとクアルコムの共同開発により誕生したADAS/ADシステムの「Snapdragon Ride Pilot」が採用された。
Ayoubi氏は「私たちは3つの柱に基づいて開発をスタートしましたが、最も重要な柱は『責任』です。ご存知のように、他社は技術のブームを経験し革新的な技術を導入して最先端の応用者になろうと試みてきたのです。しかし、これは顧客、モデル、市場、走行距離を超えるスケールで考えるべきで、ユニークな運転体験を提供するだけでなく、ドライバーと環境そのものに対する責任も果たさなければなりません」と、開発におけるポリシーを示した。
続けて、Ayoubi氏は「安全性を確保する機能性を提供すること。これはまさにBMWの哲学の核心です。なぜなら、顧客に追加機能を導入すれば、快適性は向上する一方で、車内に注意散漫を招く要素を持ち込むことになるからです。ここで重要なのは、顧客に解放感と安心感を与えつつ、不要な状況を回避するために常に状況を把握させ続ける方法を見出すことです」と話した。
こうしたポリシーをもとに、BMWのADAS/ADシステムでは「共生型運転」を掲げている。新型iX3に搭載される4つのスーパーブレインのうち、車両のダイナミクスを担当するスーパーブレイン「Heart of Joy」は、中央で動作するスーパーブレインと常に通信し、シームレスで快適な体験を提供するという。
Ayoubi氏は「私たちは当初、BMWのドライビング体験とは何かを自問しました。自らクルマを運転する場合、BMWとは何かという問いへの答えは単純です。それは単にクルマを体験することです。しかし、(システムに)運転を任せて乗っている場合のドライビング体験とは何でしょうか? レベル2およびレベル2+機能について議論している限り、運転の責任は明らかにドライバー自身にあります。このため、私たちはドライバーと車両の相互作用を再考し始めました。そして、ドライバーを巻き込む最良の方法は、車両とドライバー自身との間に共生関係を作り出すことだと気づいたのです。他のシステムがサポートされている状況でも、ドライバーが常に主導権を握れるようにすることです。他の製品では、自分で運転するか、他のシステムが運転するかのどちらかです。しかしこの共生型運転こそが、車載技術の相互活用による共生形態です」と説明した。
クアルコムとBMWによる「Snapdragon Ride Pilot」におけるAD(自動運転)ソフトウェアの開発は、ドイツ、米国、スウェーデン、ルーマニア、チェコ共和国のBMW ADテストセンターなど、さまざまな場所の1400人を超える専門家が3年間にわたって協力して、このテクノロジーを実現したという。
BMWとのプロジェクトについて、Duggal氏は「自動運転技術への投資だけでなく、最先端技術の水準や必要な取り組みを迅速に把握する企業としての学びがあると思います。様々な技術スタックを目の当たりにする中で、この開発にはプロセスが不可欠だと強く実感しています。なぜなら、この開発はデモ用でも、見世物用の走行でもありません。これは購入する製品のためであり、家族の安全を託す製品のためです。そしてそれは、継続的に機能するシステムでなければなりません。その観点から、BMWとのパートナーシップには非常に感謝しています。技術企業として、私たちが自らに課す基準は非常に高いものです。この業界に参入する際には、この基準こそが重要だと教えてくれる人々との連携が不可欠です」と振り返った。
そして、Duggal氏は「この業界に参入しようとする多くの人々へのアドバイスは何でしょうか? 技術面はもちろん、製品面も重要です。周囲を見渡せば、私たちが直面している複雑さがわかります。長年この業界に携わってきた経営者として、あなたの視野の先には何が見えていますか?」と問いかけた。
Ayoubi氏は「最も重要なのは、専門家同士が同じ姿勢を共有することでしょう。パートナーシップを検討する際には、双方が互いに補完し合うスキルを持ち、品質や法規制といったわれわれが掲げる価値観に対する姿勢や考え方を共有していることを確認する必要があります。言うまでもなく、パートナーはプロセスやツール、製品を扱う上で最高の実力者であるべきです。そして、このパートナーシップを結び、3年でこれほどの飛躍を遂げられたのは、クアルコムが私たちが見つけることができた最高のパートナーだったからだと確信しています。これが、私の視点から見たこの3~4年間の総括です」とこのプロジェクトを総括した。











