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日産、2025年度通期決算で純利益の赤字額を5330億9500万円に縮小 2026年度は純利益を200億円に黒字化の見通し

2026年5月13日 開催
2025年度 通期の決算説明会に出席した日産自動車株式会社 社長兼CEO イヴァン・エスピノーサ氏

 日産自動車は5月13日、2025年度 通期(2025年4月1日~2026年3月31日)の決算を発表した。

 2025年度 通期の売上高は前年同期(12兆6332億1400万円)から4.9%減となる12兆78億8800万円、営業利益は前年同期(697億9800万円)から16.9%減となる580億500万円、営業利益率は0.5%、経常利益は前年同期(2101億6800万円)から99.5%減となる10億8100万円、当期純利益は前年同期(-6708億9800万円)から赤字額を縮小して-5330億9500万円。また、グローバル販売台数は前年同期(334万6000台)から19万5000台減の315万1000台となった。

2025年度 通期の日産自動車財務実績

売上高4.9%減の12兆79億円、営業利益16.9%減の580億円、当期純利益は赤字額を縮小して-5331億円

日産自動車株式会社 CFO(最高財務責任者)ジョージ・レオンディス氏

 同日開催された決算説明会では、4月1日付けで前任のジェレミー・パパン氏に替わって日産自動車のCFO(最高財務責任者)に就任したジョージ・レオンディス氏が2025年度 通期の決算内容について解説。

 財務実績では、2025年5月に発表した経営再建計画「Re:Nissan」によるコスト削減改善が大きく寄与したことで、営業利益が当初の想定を上まわる580億円の黒字となった一方、生産体制の統廃合と減損処理を中心とする一過性の減益要因により、当期純損失は5330億円になっていると説明。資本配分ではRe:Nissanで行なった優先順位付けに従い、設備投資は前年度比13.5%減、研究開発費は前年度比9.1%減となっているが、研究開発プロジェクトについては大きく削減していないと述べた。

 前年同期比で5.8%減の315万1000台となったグローバル販売台数は、不透明で厳しい競争環境と各市場の販売状況のばらつきが影響しているという。

2025年度 通期の市場別販売台数

 市場別では、中国市場における2025年度通期の販売台数は前年から6.3%減少しているが、下期は新たな新エネルギー車が販売を牽引して台数が伸びており、第4四半期の3か月間で見ると減少は同1.9%の減少に留まっている。

 日本国内でも販売台数は前年から13.5%減少しているものの、「ルークス」や「リーフ」といった新型車が新規の顧客を獲得したことで、第4四半期の3か月は減少幅が縮小している。

 北米市場は前年並みの販売台数を維持して、第4四半期の3か月ではフリート向け販売の減少を受けて前年から6%減となっているが、小売販売では台数が増加して小売シェアが伸びているという。欧州市場では2025年度通期の販売台数が前年比9.7%減、その他地域での販売台数は前年比8.1%減となっている。

2025年度 通期で見た営業利益の増減分析。米国での関税影響は2860億円の減益要因となっている

 580億円の黒字となった営業利益の増減要因では、米国での関税影響による2860億円、インフレの影響による950億円、販売パフォーマンスによる350億円、為替変動による217億円を主な減益要因として紹介。

 一方で生産、物流、研究開発、購買コストの改善を進めたモノづくりコストによる2270億円、米国と英国の環境規制に関わるコストとサービス保証費の改善を含む一過性の項目で1480億円、販売金融、リマーケティング、一般管理費等の費用を低減したその他項目で556億円を増益要因としている。

2026年度は売上高13兆円、営業利益2000億円、当期純利益は黒字化して200億円の見通し

2026年度の通期見通し

 続いて2026年度の通期見通しも解説。グローバル販売で複数の新型車投入やモデルチェンジの実施により、重点市場のすべてで販売台数と市場シェアを伸ばことを計画し、この販売増を支えるため、生産台数も295万台に拡大。これにより、グローバル販売台数を4.7%増の330万台と想定している。

 この販売増を背景に、売上高は9921億円増の13兆円、営業利益は1420億円増の2000億円、当期純利益は黒字化して200億円としている。

2026年度は重点市場のすべてで販売台数と市場シェアを伸ばし、全体で330万台の販売を計画している
2025年度 通期決算と2026年度見通しのサマリー

2026年度は米国生産の「ムラーノ」を逆輸入して日本で販売

経営再建計画「Re:Nissan」の進捗状況について説明するエスピノーサ社長

 レオンディスCEOによる決算説明に続き、日産自動車 社長兼CEO イヴァン・エスピノーサ氏がプレゼンテーションを実施。2025年度~2026年度の2か年で、ビジネス環境の変化に迅速に対応できるスリムで強靭な事業構造の実現を目指しているRe:Nissanの進捗状況について説明した。

 すでに説明されているように、Re:Nissanは「コスト削減」「市場・商品戦略の再定義」「パートナーシップの強化」という3つの柱で構成されている。まずはコストの改善に集中し、固定費の削減と効率化を図り、財務規律を徹底するため対策を実施。この活動を行ないつつ、今後の成長に向けた次の段階に軸足を移していくため、市場に対するアプローチの見直し、より市場に合った商品計画、重点市場における新型車の投入、モデルの刷新の加速をそれぞれ進めていく。そして同時に、重要な役割を果たしているパートナーシップについても拡大・強化を図っている。

Re:Nissanは「コスト削減」「市場・商品戦略の再定義」「パートナーシップの強化」という3つの柱で構成

「コスト削減」では、原価低減に向けて「固定費と変動費を合わせて5000億円削減する」という目標を設定。固定費の削減は予定を上まわるペースで進んでおり、すでに2000億円を達成している。

 コストベース改善の要となる生産体制の見直しでは、「グローバルで生産能力を100万台削減する」ことを目指し、世界各地にある生産拠点を17拠点から10拠点に削減することを決定。すでに最初の10か月で7拠点すべてを発表し、2026年度中には7つのうち6つの拠点の統廃合を完了する予定となっている。

固定費の削減はすでに2000億円を達成
統廃合を行なう世界の7拠点をすでに発表

 研究開発では開発の効率化を優先課題と位置付け、労務費単価を平均で20%改善することを目標として設定。この点も最初の10か月で18%改善しており、同時に重要な車両プログラムは支障なく開発を進めていると語った。

 変動費用もすでに5000件を超える改善案を洗い出し、想定効果額が2700億円になると試算。2025年度で550億円のコスト削減を行なっており、これから発売する新型車にも改善案を盛り込み、2026年度以降のコスト削減につなげていく。

労務費単価はすでに18%改善している
変動費の削減は2025年度で550億円をコスト削減
2025年度中の実績と2026年度の予定について

 エンドユーザーにも関係が深い「市場・商品戦略の再定義」では、多様な市場のニーズに合わせ、よりターゲットを絞った商品展開を計画している。

 2025年度には、中国で年度の初めにBEV(バッテリ電気自動車)の「N7」を市場投入。そのほかにも中国では、第3四半期に「フロンティア プロ」とファーウェイの技術を搭載した「ティアナ」を発売し、年度末にはPHEV(プラグインハイブリッドカー)である「N6」をリリースした。欧州では「キャシュカイ e-POWER」とBEVの「マイクラ」を市場投入し、日本では新型ルークスを発売して軽自動車におけるプレゼンスを高めている。

 米国では新型「セントラ」によって販売台数の増加を目指し、SUVの「パスファインダー」といった重点モデルの刷新も行なった。インドではインド国内に加え、輸出も視野に入れたコンパクトMPVの「グラバイト」を発売。これらの活動により、エスピノーサ社長は「当社の市場、および商品戦略が今まで以上に明確になった」とアピールした。

2025年度にグローバル市場で発売したニューモデル

 また、米国では事業の質を向上させるため、継続的に小売りに集中。意図的に採算性の高い販売チャネルにシフトすることで販売を強化している。日本では市場ニーズに対応する商品投入でシェアを回復し、マーケティング活動の強化を図ったことで販売店の集客力が戻ってきているという。中国ではよりターゲットを絞り込んだアプローチを行ない、日産の新エネルギー車がより明確なポジショニングを確立しつつあるなど、重点市場において戦略的なプレゼンス向上を図っている。

重点市場での販売活動について

 2026年度もこの勢いを継続させるため、日本では「キックス」と「エルグランド」を市場投入するほか、米国生産の「ムラーノ」を逆輸入。米国でもインフィニティブランドから「QX65」のリリースが控え、その後も「ローグ e-POWER」を発売予定。中国には「NX8」を市場投入するほか、1年以内に「テラノ PHEV コンセプト」と「アーバンSUVコンセプト」をベースとした生産モデルの発表を予定。中国からはN7とフロンティア プロの輸出をスタートさせて商品構成の拡大を図る。また、インドでは「テクトン」を販売する。

2026年度も市場ニーズに合わせた多彩なモデルを発売予定

 3本目の柱となる「パートナーシップの強化」では、すでに結んでいる複数のパートナーシップを活かし、革新と成長につなげていく。

 AI自動運転の分野ではウェイモとの協業を拡大するほか、ウェイモに加えてウーバーと3社で協力し、ロボットタクシーの試験運行を実施するための準備を進めている。中国ではファーウェイと協力して「インテリジェントコックピット」を開発。これらと同時にアライアンスパートナーであるルノー、三菱自動車工業とも協業を続け、重点市場におけるスケールや補完性を確保している。

協業を進めているパートナーとの取り組みについて

 3つの柱の解説に続き、エスピノーサ社長は日産が目指す今後の方向性についても説明。Re:Nissanは業績改善にとどまらず、日産の足場を固め、会社を次の段階に導く力強い土台作りを目的とする取り組みだと語り、「モビリティの知能化で毎日を新たな体験に」が今後の道筋になるとコメントした。

 2025年度は営業利益の黒字化を果たし、下期は自動車事業のフリーキャッシュフローをプラスに転じることも実現した。2026年度はRe:Nissanの最終年度となり、これからも取り組みの徹底で目標達成を目指していく。この勢いを使って業績改善から持続可能性へと軸足を移し、よりしなやかで確かな事業基盤を構築。そして持続可能性を成長につなげ、日産の持つ力を高いパフォーマンスに変えて「モビリティと知能化で毎日を新たな体験に」を実現していくと締めくくった。

「モビリティの知能化で毎日を新たな体験に」が今後の道筋になるとエスピノーサ社長
日産自動車 2025年度 決算発表記者会見(48分7秒)