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トヨタレーシング、ル・マン24時間で世界初の液体水素レーシングプロトタイプカーの走行に成功 V型6気筒3.5リッターツインターボの水素燃焼エンジン

ル・マン24時間の開催されるフランス サルトサーキット。トヨタレーシングはこの地で、世界で初めて液体水素レーシングプロトタイプカーの走行に成功した

世界で初めて成功した水素燃焼エンジンによるプロトタイプカーのル・マンにおけるデモラン

 トヨタレーシングは6月11日12時50分(現地時間、日本時間11日19時50分)、ル・マン24時間レースウィークとなっているサルトサーキットにおいて、液体水素を燃料とするレーシングプロトタイプカー「TR LH2 Racing Prototype」の走行に成功した。このデモランはスケジュールが公開されていたもので、決勝レース前の6月13日12時30分(現地時間、日本時間13日19時30分)に、本格的なデモランが行なわれるという。

 液体水素を燃料とし、燃焼させるプロトタイプカーがデモランを行なうのは世界で初めてのこととなり、トヨタ自動車レーシング部門として「モータースポーツの先端技術を通じて、長期的にトヨタの技術開発を支える基盤を強化していく」を掲げるトヨタレーシングとして、大きなチャレンジに成功した。

液体水素レーシングプロトタイプカー「TR LH2 Racing Prototype」をドライブしたのは中嶋一貴氏。ル・マンの優勝ドライバーでもあり、欧州での人気も高い

 液体水素を燃料とする乗り物として実用化されているものでは、宇宙ロケットが代表的なモビリティになる。宇宙ロケットは空気のない宇宙を飛ぶため、液体水素に加え、液体酸素を搭載。酸素を供給しつつ水素を燃焼させ爆発的な推進力を得ている。

 このロケット、とくに液体燃料ロケットはロシアのコンスタンチン・ツィオルコフスキー氏によって着想され、「ロケットの父」とも呼ばれるアメリカのロバート・ゴダード氏が初の実験。その後、後にV2ロケットとなるドイツのA4ロケットがヴェルナー・フォン・ブラウン氏らによって設計され、ミサイルとして量産。フォン・ブラウン氏は戦後アメリカに亡命し、サターンロケットを開発。このサターンV型ロケットによって、人類をイーグル宇宙船(コロンビア司令船)で月に運ぶアポロ計画は実施されたのはよく知られている話だ。

 トヨタは、液体水素のモビリティの先進地域である欧州において、クルマ、それも世界三大レースの一つであるル・マン24時間レースの場で成功させたことになる。

 このデモには、将来的に水素レーシングカーによるレースを計画しているル・マン24時間を運営するACO(Automobile Club de l'Ouest、フランス西部自動車クラブ)のピエール・フィヨン会長も立ち会い、ル・マン ウィナーでもある中嶋一貴氏のドライビングを見守っていた。

ピエール・フィヨン会長(左)と、中嶋一貴氏(右)。水素ビレッジでレーシングプロトタイプカー「TR LH2 Racing Prototype」をお披露目した

水素燃焼GRカローラと異なるエンジンを搭載

 この液体水素を燃料とするレーシングプロトタイプカー「TR LH2 Racing Prototype」に搭載されているエンジンは、トヨタのプロトタイプカーであるTR010ハイブリッドと同様なV型6気筒3.5リッターツインターボエンジンになる。

 日本の富士24時間レースで走った水素GRカローラは、直列3気筒1.6リッターターボエンジンを使用していたが、こちらは純レーシングエンジンを水素コンバージョンしたものになる。

 液体水素の燃焼システムは液体水素GRカローラと同様で、インジェクターに水素対応のものを使用している。マイナス253℃の液体水素を真空二重槽の燃料タンクに保存し、トヨタが独自開発した液体水素中で動く燃料ポンプでエンジンに供給していく。その際に、熱交換器を装備しており液体水素を気化。燃料ポンプで加圧することで直噴機構を成り立たせ、ターボによって燃焼に必要な大量の空気も送り込む。

 一般的なガソリンエンジンが、理論空燃比であるストイキオメトリーの14.7で燃やすのが効率的によいのに対し、水素の理論空燃比は34.3。ストイキ燃焼には圧倒的な空気の量が必要で、ターボが必要な背景となっている。

 トヨタレーシングとドライバーである中嶋一貴氏は、ル・マン24時間レースの開催されているサルトサーキットで、この新型水素エンジンを搭載するプロトタイプカーのテストランに成功。さらに多くのお客さんが入る土曜日に、水素エンジンの燃焼音を届けていくことになる。