ニュース

藤島知子の「KYOJO VITA」参戦レポート

第5回:2026年シーズン第2戦は豪雨のレースで何とか10位フィニッシュ!

2026年9月6日 開催
FCR-VITA 2026シーズン 第2戦に参戦してきました!

滑る路面と焦る気持ちで空まわりして予選は11番手

 2026年9月6日、KYOJO-VITA Rd.2が富士スピードウェイで開催された。

 今年は8月~9月上旬にかけて、日本列島は度重なる台風の発生や各地で集中豪雨に見舞われるなど不安定な天候が続いているが、富士スピードウェイは富士山の裾野の地とあって、麓の御殿場市街は雨が降っていなくても、サーキットに到着したら路面がウエットだったということもよくある。レースウィークの走行は曇りや雨が交互にやってくる気まぐれな天候だったので、予選も決勝も雨になることを覚悟していた。

VITAにヘッドライトは装備されておらず、リアにバックランプのみを備えている

 雨をチャンスと捉えるか? それともリスクとして捉えるのか?

 スキルや自信も関係するとは思うが、気持ちの持ち方1つで結果は変わってしまう。漠然とした不安を抱くことよりも、皆が平等に与えられたコンディションでやるべきことをイメージすることを心掛けた。

予選開始とともに雨が降り出してきた

 予選は7時50分から20分間で行なわれる。いつもは他のカテゴリーの車両が走ったあとにVITAの予選が行なわれることが多いが、今回は私たちの走行が朝イチの枠となる。予選開始直前にパラパラと舞い始めていた雨は、次第にポツポツ、パチパチと私のヘルメットバイザーに打ち付けて、次第に雨量が増していることが分かる。

予選は皮むきをしていないニュータイヤだったためとても滑りやすい

 前日の土曜日に男女のドライバーが混走するFCR-VITAのレースが行なわれたが、私は参加しなかったため、KYOJO-VITAの予選はニュータイヤで走行を開始することになった。気温は20℃以上で暑からず、寒からずではあるものの、皮むきしていないタイヤで雨が降り始めた路面を走ると滑ってしまうところもあり、雨が少ない序盤にタイムを出したい気持ちとは裏腹に2回もスピンしてしまった。ブレーキを強く踏みすぎればロックもするし、前に行きたい焦りもあって、アクセルを多めに踏みすぎてしまうとフロントが逃げてしまったり、挙動を乱したりする。

予選ではスリッピーなウェット路面との格闘が続く

 タイヤ自体は温まれば感触がよくなるハズが、滑り始めた嫌な記憶ばかりが頭をよぎり始め、抑えどころと攻めどころをコントロールできていない。スリッピーな路面で余裕を失うと、思うようなラインを描けず、余計にアクセルペダルを踏み込めなくなっていく負のスパイラルに陥ってしまう。

次第にタイヤが巻き上げる水しぶきの量も増えていく

 深呼吸して気持ちをリセットし、改めてブレーキの前後バランスを調整したりしながら走行を続けた。前のクルマについていこうと意気込むものの、残念ながらそう簡単にいかせてくれない。予選は11番手のタイム。あともうひと踏みしていければ、前に行けたかもと思う一方で、余裕を失い、冷静さも足らず、状況に応じて走りをアジャストできていない自分の弱さを恨んだ。難しいコンディションの中、ポールポジションは昨年2度の表彰台を獲得していた714号車 FinalLapRacing VITAの金本きれい選手が獲得した。

ポールポジションを獲得したのは、714号車 FinalLapRacing VITAの金本きれい選手

決勝は天候不良で50分前倒しでスタート

 10時すぎになると、ドライバートークショーがピットの建屋2階のクリスタルルームで行なわれることになった。それぞれのドライバーにマイクがまわされ、各々雨の路面におののいた様子とともに、決勝レースに向けた意気込みが語られた。

今回も大勢のKYOJO CUPファンが、富士スピードウェイへ足を運んでくれたことに感謝しかない

 本来のタイムスケジュールではピットウォークを行ない、お昼すぎに決勝レースが実施される予定だったが、豪雨の予報が出たため、KYOJO-VITAの決勝レースのコースインは50分ほど前倒しされることになって、ピットはマシンを暖気し始めたりと、慌ただしくなっていく。予報通り、雨量は予選の時よりもさらに増していき、グリッド上に並ぶ頃にはコックピットで傘を差して雨を凌ぐかたちに。強い風で吹き込む雨はヘルメットのバイザーに水を滴らせ、視界が曇ってきた。

雨が強いためセーフティカー先導のローリングスタートに変更となった

 スタンディングスタートはリスクがあることを考慮して、セーフティカー(SC)スタートが決まった。タイヤが温まるまで各車は一筋の隊列となって周回を重ねていく。4LAP目を前にしたタイミングで先導するセーフティーカーのランプが消灯し、いよいよレースのリスタートが切られた。

決勝レースでは、路面に川が流れるほどの豪雨

 ストレートに差し掛かるや否や、コントロールラインに向けて皆が一斉に車速を増していくが、タイヤが巻き上げるウォータースクリーンで 50m先が全く見えない。VITA-01のマシンはウエットコンディションで「Light on」のボードが提示された際にリアのバックランプを点灯することになっているが、水の飛沫で前の車両の位置が把握できない。コース脇のフェンスに設置されたコーナーまでの距離を示す看板を頼りにブレーキングをして、先行する車両の背後を追いかけていく。

前車の巻き上げる水しぶきでほとんど前が見えないが引くわけにもいかない

 1コーナーを立ち上がり、コカ・コーラコーナーに向かう下り坂には川が流れ、タイヤが通った後の溝が分かるほどの水の深さになっている。高めの車速で飛び込み大きくまわり込む100Rでは、タイヤが今にも滑り始める限界に達しそうになりながらアクセルを開けていくコーナーだ。少しでもボトムスピードを落とさずにすむラインを辿っていこうとするが、ちょっとでもアクセルを多く踏みすぎてしまうと挙動を乱す。

スリッピーな路面でも抜きつ抜かれつの激しいバトルは続く

 抜いたはずのマシンにヘアピンで抜き返され、そこからまたセクター3のGR GTコーナーでインから抜いて最終コーナーへ。雨でもスリップストリームを使って前に滑り出たいところだが、なかなか前に出られない。レース序盤で前方からスタートした車両がスピンして順位を大きく落としていたが、ラップタイムは速く、後半の追い上げを抑え込めずにあっさりと抜かれてしまった。

第2戦で見事優勝した31号車 A-PEX☆VITAの永井歩夢選手
714号車 Final Lap Racing VITAの金本きれい選手(右)と、66号車 SKILL DRVN VITAのLOKE YIN YI選手(左)が激しいバトルを繰り広げていたが、金本選手が先にチェッカーを受けた

 自分の弱さに負けてしまった今回のレース。最終的には10位でチェッカーを受ける結果となった。次戦は11月1日に同じく富士スピードウェイで開催される。今季のKYOJO-VITAとしては最終戦。もっと強くなれる自分を目指して、課題を洗い出して挑みたいと思う。

第2戦は、31号車 A-PEX☆VITAの永井歩夢選手が優勝(中)、2位は悔しさが隠せなかった714号車 Final Lap Racing VITAの金本きれい選手(左)、3位は66号車 SKILL DRVN VITAのLOKE YIN YI選手(右)

714号車 Final Lap Racing VITAを操る金本きれい選手インタビュー

 今回のKYOJO-VITA Rd.2で見事ポールポジションを獲得した714号車 Final Lap Racing VITAを操る金本きれい選手。このレースウィークはKYOJO-VITAでポールポジションを獲得しただけでなく、男女混走のFCR-VITAの予選では2番手。フォーミュラカーで競うKYOJO CUPにフル参戦するという最もタフなドライバーだ。3つのレースを戦う原動力は一体どこから来るのか? お話を伺ってみた。

藤島:今シーズンの金本選手はトリプルエントリーしていると聞いて驚きました。3つのレースそれぞれにスポーツ走行、予選、決勝をこなすのは相当なモチベーションが求められると思いますが、どんな思いで参加されているのですか?

金本選手:VITA-01のレースはもう5、6年参加していますが、なかなかチームに優勝を届けられなくて。フォーミュラカーのKYOJO CUPと併催になることが多いので、無理を言ってVITAのレースにも参戦させてもらっています。土曜日のFCR-VITAは男性が大半という中に紛れて走っていますが、自分の中では表彰台に登ることは最低目標で、FCR-VITAもKYOJO-VITAも優勝するために頑張っています。もちろん、KYOJO CUPについても上位を目指していきたいです。

今回お話を聞いた714号車 Final Lap Racing VITAの金本きれい選手

藤島:女性ドライバーが活躍する道筋が考えられたKYOJOのレースシリーズは、KYOJO-KART、KYOJO-VITA、KYOJO CUPという3つのステージが用意されています。その頂点に位置するフォーミュラカーのKYOJO CUPは相当集中して取り組まないと結果が出せないレースだと思いますが、金本選手としては、VITAのレース自体に何か魅力とか、やる意味を感じているのでしょうか?

金本選手:そうですね。基本的な運転操作は、どのマシンでも一緒かなっていうのがあります。フォーミュラカーはもちろんダウンフォースが効いて、タイヤのグリップもいいし、車体の剛性も高いので、速度も速いし、タイムも速いし、曲がりやすい。そうした違いはもちろんあるのですが、やっぱりVITAの1.5リッターエンジンのパワーの中で、HパターンのMT操作で操るというのも面白いところです。

藤島:カートからステップアップしてきた若手のドライバーが、初めて体験するMTの操作に苦戦する姿を見かけることがありますね。

金本選手:私も最初は苦手だったのですが、操作で人がミスをするとか、自分がミスするっていうのもレースの駆け引きの1つだと思います。足まわりについては、バネの硬さやアライメントなど、VITA-01は幅広くセッティングを変えられるので、自分の好みに合わせたマシンの作り方とか、自分がそのマシンにどうやって走らせ方を合わせるかという点では引き出しをすごく増やしてくれます。「これからもVITAのレースはやめたくないな」という気持ちでいます。

藤島:金本選手がレースを始めたキッカケは何ですか?

金本選手:4歳からレーシングカートを始めました。実家は普通の一般家庭で自営業。レースはカート時代にすごくお金がかかってしまったので、もうそこでチャンピオンをとってやめようかなっていうところまで考えていました。

 ところが、そんなタイミングでカートの先輩でKYOJO CUPに出場していた斎藤愛未選手が、「無料で4輪のレーシングカーの体験会があるから来てみない?」と声をかけてくれたのです。そのときはKYOJO CUPのこともあまり知らないまま1人で初めて富士スピードウェイを訪れたのですが、じつはそれがオーディションだったのです。

 そのとき、KYOJO CUPの発起人である関谷正徳さんと初めてお会いしました。「これからどうしていきたいか?」という本音を交えながら、現実としてできるのかといったことを話し合った時に、そこから「じゃあ、KYOJO CUPをやっていこう」ということになりました。

この日はポールポジションを獲得したが、決勝レースでは2位となった金本選手

 カートのレースから四輪へステップを踏めたのは、VITA-01でKYOJO CUPが行なわれていたから実現できました。金銭的にみると、四輪レースの世界は本当に計り知れないぐらいお金が掛かってしまう中で、「VITA-01のランニングコストは安いほうで、誰でも参戦できるカテゴリーの1つだよ」と言っていただいて。

 チームの人もそうですし、関谷さんたちからも協力していただいて、初めはもう本当に安い金額でレースをさせてもらうことができたのが私のきっかけ。それが「これから 4輪レースをやっていきたい」っていう気持ちに火をつけました。

藤島:今回のレースではポールポジションを獲られましたが、どんなお気持ちですか?

金本選手:本当は今年、全部優勝してチャンピオン取るつもりでいたのですが、開幕戦では1コーナーの接触でレースを落としてしまいまいした。今回は雨の走りで調子がよかったこともあり、絶対に予選はトップを取ろうと思っていたので、ホッとしたというのが正直な感想です。

藤島:私は金本選手と同じピットでしたが、そこで会った時の金本選手の表情がなんか今回やりそうだなっていう感じが伝わってきました。やっぱり練習とか、そこまで組み立てていく気持ちの整理とか色々やってきてここに来ているという感じなのでしょうか?

金本選手:今週は木曜日から練習をしていましたが、実はVITAもフォーミュラも全然上手く走れていなくて……。自分が乗りこなせていないことに、走行中に泣いてしまうくらい落ち込んでいたのですが、その夜に考えて、次の日は雨が降ったこともあって、気持ちを切り替えたところから調子がよくなりました。自分のメンタルの弱さはスタートの失敗に全部出てしまっているので、そこの向き合い方は今後もっと考えないといけないと思っています。

藤島:金本選手はカートからVITAのレース、そこからフォーミュラへ。いまどんな気持ちでフォーミュラのカテゴリーにチャレンジしているのでしょうか?

金本選手のKYOJO CUP参戦マシン「32号車 ミハラ自動車エムクラフトKC-MG01」、同日の決勝レースでは9位

金本選手:フォーミュラのKYOJO CUPは昨年から始まりましたが、マシンの仕様がちょっとずつ変わってきている中で、自分がどこまでできるのかを知りたかったし、自分の引き出しが本当に少ないと感じています。他の選手の成長具合と比べると、自分の成長の遅さを凄く痛感していて、今はその壁を破ることで上位グループに食い込めるのではないかと、苦戦しながら上位を目指し、自分の課題と向き合いながらレースをしているという感じです。フォーミュラカーでも、常に上位にいるイメージを皆さんに持ってもらえるぐらいの位置で走りたいし、その自分の小さなミスをちょっとずつ減らしていかないと、この先の道は厳しいなっていうことを今回も感じました。

藤島:そんな金本選手たちの活躍を見て、カートで走るドライバーがこれから四輪を目指して頑張りたいという人が出てくると思います。そうした人たちに向けてメッセージをお願いします。

金本選手:私がカートで走っていた時もそうでしたが、4輪のレースは全く世界が違うので、分からないことが多いと思います。もしも興味があるのであれば、選手たちにどんどん声をかけてみてもいいと思うし、声をかけてもらえたら嬉しいと思います。目標を持つことは絶対に成長する糧になるはず。カートで走っている何人かの女の子に「ちょっと教えてください」って声かけてもらうこともありますが、悩まずに飛び込んできてもらうのが一番かなと。KYOJO-KARTが始まって、女子の中でステップアップの道が拓ければ、もっと女の子のレース人口が増えて、発展していくのではないかと思います。

藤島:素晴らしいお話をありがとうございました。KYOJO-VITAでは私もライバルではありますが、今後の活躍を期待しています。