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スバルの目指すクルマづくりとは? 開発期間短縮やコスト削減、新エンジンやプラットフォームなどの取り組みを紹介
2026年10月30日 07:30
スバルの車両開発の取り組みを学ぶ!
スバルは2025年11月に、「SUBARU 2025方針」を発表した。これは先行き不透明な現在の自動車市場において、電動化やユーザーニーズの変化に柔軟に対応しながら、スバル車らしい商品を生産するための開発戦略方針だ。
そしてスバルは、この2025方針における具体的な開発内容を、栃木県佐野市にある「スバル研究実験センター」で公開。合わせて2台の開発車両に試乗する機会を与えてくれた。
ということでここでは、まずSUBARU 2025方針における3つのコア技術「次世代プラットフォーム」「次世代パワーソース」「制御統合ECU E/Eアーキテクチャ」について説明をしていくこととしよう。
スバルの次世代プラットフォームが目指すもの
トップバッターは、「次世代プラットフォーム」だ。
現在スバルはそのプラットフォームを「スバルグローバルプラットフォーム」と名付けているが、今回公開されたのはその次世代版に投入する技術である。そして、次世代SGPが目指すのは、「動的質感」の向上だという。スバルといえば「安全性」だが、これはいわずもがなだ。
当日、スバルはこの指標を説明するために、2つのグラフを用意した。
1つは縦軸に「動的質感」、横軸に「価格・セグメント」を取ったグラフで、第三者評価機関が集計した公表値をもとに、自社で分析した数値をプロットした。このグラフで現行スバル車は、ライバルと比べて、より低価格で高い質感が得られていると示されていた。動的質感を構成する要素はステアリングフィールや乗り心地、NVH(騒音・振動・突き上げ)で、これを数値化した。
そしてスバルは今後、現在の領域からさらに一歩飛び出し、動的質感のコストパフォーマンスを他社の追従を許さない領域まで高めると目標に掲げた。具体的には価格を変えず、より高額な車両たちの領域にまで踏み込むことに挑戦したいと、開発陣は意気込みを語った。
動的質感の高いプラットフォームを作る。その方法としてスバルは、まず車両重量の削減を目指す。車体が軽くなれば衝突時の安全性とともに、運動性能が向上するからだ。
縦軸に車両重量、横軸にボディサイズを示したグラフには、現行スバル車が、全体のどこに分布しているかが示されていた。これを見る限り現状でもスバル車は車重が軽いゾーンに位置していたが、ここから最大で約100kg軽いゾーンを目標にするという。
2つ目は、プラットフォーム(ボディ)の磨き上げだ。スバルはこれを「ダイナミック スティフネス コンセプト」と銘打った。車体の動的質感を高める上で大切なのは、路面状況を効率よく車体へ、ひいてはドライバーへと伝えること。そのために開発陣は、「ボディに伝わるエネルギーを可視化する技術」を開発した。
ちなみに、従来スバルでは静的に試作車のボディをねじり、その剛性値を目標値に近づける開発を行なっていた。しかし、実際のユーザーは、静的なクルマではなく、動的な状況でクルマの応答性や、乗り心地を感じ取っている。
そこで開発陣は、動的な剛性バランスを直接コントロールする方法を考えた。具体的には現行プラットフォームに数多くのセンサーを取り付け、車体に伝播するエネルギーの流れや強さ、そして伝播時間を可視化。CAEモデル(コンピューター エイデッド エンジニアリングモデル:シミュレーター上で再現されたモデル)でそのエネルギーフローを再現し、これをコントロールすることで、プラットフォームの改良を目指した。
この可視化技術によって得られたメリットは、試作車の開発時間短縮と、コストの大幅削減だ。特に試作車の作成時間が短縮されたことで、その後の開発により多くの時間を割くことが可能になった。
例えばドライバーがステアリングを切る。そのとき生まれたエネルギーは車体を伝播し、後輪に伝わってクルマは旋回を開始する。その伝播時間を従来より早めることができれば、より位相遅れの少ないハンドリングが得られるようになる。また不快な振動や騒音を発生させるエネルギーを減衰・低減し、必要な入力だけをドライバーに伝えることができれば、動的質感が大きく向上する。
次世代プラットフォームにおける目標は、このエネルギー伝播時間を、従来比で約30%短縮させることだという。そしてこの生まれたばかりの技術を磨き上げる場所としては、スーパー耐久の現場が活用されている。また、スバルが長年培ってきた4WD技術も、その動的質感を高める要素だと開発陣は強調した。
ちなみに今回試乗したバッテリEVも、このシミュレーション技術によって作り出された試作車だ。インプレッションは別項に譲るが、確かにその完成度は、データだけで作り出した車両とは思えないほど、高いレベルにまとまっていた。
電動化技術だけでなく、新たな水平対向ガソリンエンジンも開発中
2つめは、「次世代パワーソース」だ。興味深かったのは新ガソリンエンジンの開発で、なんとスバルは将来的に、新型水平対向エンジンで熱効率50%を目指すという。
ご存じの通り燃費と出力は、トレードオフの関係だ。では十分な出力を発揮させながら燃費をよくするには、どうすればよいのか。この問いに対して開発陣は、出力と燃費のトレードオフラインそのものを引き上げると説明した。具体的には培った過給技術と作り込みでトルクレベルを向上させながら、熱効率50%を目指す。この言葉からもわかる通り、スバルは今後もターボエンジンを継続するようだ。
燃費がよく、パワフルなエンジン。これを作るために現状まず必要なのは、筒内に強いガス流動を作り出すことだという。一般的に水平対向エンジンは、ショートストロークゆえ直列エンジンに比べピストンスピードが遅い。またボア径が広くなるため、特に低回転や乗用回転域では、吸気速度が遅く、吸い込みも弱くなる。
そのため、新型エンジンの開発においても、プラットフォームと同じくCAE技術が活用された。これまで積み重ねてきた実測データをもとにエンジンのCAEモデルをつくり、吸気ポート形状を改善。その結果、従来より強い筒内ガス流動が造り出せるようになり、筒内の混合気がより均質になったという。また、こうしたCAE技術は3次元燃焼解析をも可能にし、異常燃焼の発生状況までもデジタルで再現できるようになった。
スバルのエンジンは、お世辞にも燃費がよいとはいえない。そこには4WDとの関連性もあるが、直列4気筒に比べ表面積が大きく、補機類の抵抗が多いこともデメリットだ。
対してメリットとしては、水平対向エンジンならではの静粛性やエンジン単体としての重心の低さ、ショートストロークエンジンならではの、高回転までストレスなく回るフィーリングのよさがある。そしてここに、燃費のよさが加われば……。
新開発エンジンの登場が、今から待ち遠しい。
次世代パワーソースの2つめは、EV用パワーユニットの開発についてだ。
具体的にはバッテリパックの進化で、従来比25%の薄型化が可能になった。また、セルを緻密に配置することで、重量に対するエネルギー密度も、同容量のバッテリを搭載するセグメントでトップクラスに位置している。
そして車両の前後に搭載されるeAxle(eアクスル)も、クラストップの小型・軽量化を狙った。それは重量の削減のみならずボンネット高を下げることにも貢献しており、結果、バンパーやグリルまわりを含めた前面投影面積の縮小や、Cd値の向上が可能になるという。
これらの開発は、バッテリではパナソニック、eAxleではアイシンとの協業で開発が行なわれる。サプライヤーをも巻き込んでの「大部屋開発」も、開発時間とコストの高効率化を推進する、新開発戦略における特徴の1つだ。そしてこうした努力の積み重ねが、前述した最大100kgの軽量化にも生きてくる。
柔軟に進化させるECU&E/Eアーキテクチャ
トリを務めるのは、「制御統合ECU」と「E/Eアーキテクチャ」だ。いわゆる現代の花形技術だが、ここにもスバルの独自性が表れていた。
これまでスバルはECU開発において、パワーユニットから始まり車両制御を行ない、これらを使いながらアイサイトを制御するといった、順序立てたECUの開発が行なわれてきた。
しかし、バッテリEVの開発から、すべてが一斉にスタートするようになった。その上で重要となるのが、統合制御ECUの存在だ。そこでスバルは、統合運動制御とアイサイト制御を合体させたECUユニットを作った。
ここで課題となったのは、価格を抑えることだった。ADAS(先進運転支援システム)は現状AIが主流になりつつあり、これとアイサイトの両方を動かすとともに、アフォーダブルな価格に抑えなくてはならない。
そこでコンペティションをした結果、半導体のサプライヤーには「AMD」(Advanced Micro Devices)が選ばれた。
さらに半導体自体では、自動車に必要ない機能を大幅に省いた。筐体自体も現状は空冷式でまかなえると判断し、ファンを搭載するなどした。通常半導体メーカーは製品のカスタムを受け入れないが、そこで協調できたのもAMDを選んだ理由の1つだ。
さらにその統合制御ECUは、エンジン車/ハイブリッド車でも使えるプラットフォームとして、コスト低減を図った。車両制御やアイサイト制御、そして通信系ユニットを共通搭載しながら、ジャンルごとに必要なコントロールユニットを付け加えていくやり方だ。
通信系ユニットを標準としたのは、OTA(オーバー・ジ・エアー:通信アップデート)によって発売後も、最新の機能を搭載可能とするためだ。これによってスバルの細かい年次改良にもソフト面での追従が可能となり、たとえばアプライドA型を購入しても、長くその価値が保てるようになるという。
具体的には「E/Eアーキテクチャ」、つまりアイサイトの安全機能を常に最新にアップデートできるようにして、衝突回避機能を高める。また新しい法規制にも、素早く柔軟に対応できるようにする。
一方、アイサイトでは自動運転機能(現状はレベル2+もしくはレベル2++)も開発しているが、こちらはマーケティングの要素も絡むため、プライオリティは低くなる。もしくは有償でアップデートといった状況になるのだろう。
また、当初の設計では盛り込めなかった新技術などは、「アクティブ・ダンパー e-Tune」のようにディーラーでのインストールやチップの追加などで対応することが考えられる。
デジタルが車両開発にもたらしたもの
こうして見ると、スバルの車両開発において、デジタル領域が大きく広がったことがわかる。だが、いまやCAEモデルによる製品開発は、特別先進的な手法ではないというのも事実だ。
ではスバルのデジタル開発で、一体何が独特なのか? と質問すると、「担当部署のエンジニアが、直接CAEモデルを構築して開発を進められること」だという答えが返ってきた。
その実例としてスバルは、衝突実験の様子を見せてくれた。驚いたのは、CADモデルと実車モデルの側面衝突時の様子が、非常に酷似していたことだ。そしてCAEモデルで先行してシミュレーションした車体荷重変形特性グラフも、実証実験で得たグラフとかなりの一致を見せていた。
スバルいわく、製品の機能を熟知したエンジニアだからこそ、より専門的なCAEモデルの製作が可能になる。そして実際の実験結果を見たときにも、その現象がより深く理解できるようになったのだという。
ちなみにCAEモデル導入によって試作車の開発時間は、従来から約30%短縮された。そして将来的に開発陣はその時間を、40%にまで短縮しようとしている。
こうして創出された時間は、さらなる車両開発の時間に充てられるのだという。





























