【グッドウッド2009】コースガイド
ヒル・クライムを中心とした会場構成

その年のホスト・メーカーが建てるグッドウッド・ハウス前のモニュメントは、車が宙を舞う大がかりなもの。今年はアウディが制作、同社の100年を表現した

英国ウェスト・サセックス州グッドウッド
2009年7月3日~7月5日(現地時間)



 7月3日~7月5日(現地時間)に英国ウェスト・サセックス州で開催された「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」。ヒストリック・レーシングカーから最新鋭のコンペティション・マシンまで約350台が揃い、これらのマシンを、ジョン・サーティース、スターリング・モスといった伝説のレーサーから、ルイス・ハミルトン、ジェンソン・バトンら現役トップドライバーがドライブするのを目の当たりにできる。モータースポーツ・ファンには堪えられない、まさに「お祭り」で、3日間にイギリス全土と世界から150万人が訪れる。

 また、過去には日産が発表前のGT-Rを走らせるなど、自動車メーカーにとっては絶好のプロモーションの場ともなっている。

 ここでは、フェスティバル・オブ・スピードの会場の構造と、その様子を紹介する。

フェスティバル・オブ・スピードの会場図。下がスタート、上がゴール。上下を結ぶ折れ曲がった線がヒル・クライムのコース

ヒル・クライムを中心とした構成
 フェスティバル・オブ・スピードの会場は、主催者であるマーチ卿の屋敷「グッド・ウッド・ハウス」の周辺の牧草地だ。

 会場の“背骨”にあたるのが、メイン・イベントたるヒル・クライムのコースだ。ヒル・クライムというだけあって、麓からスタートして、丘の頂上がゴールまで駆け上がる、全長約1.8km、標高差200mのコースだ。

 ヒル・クライムは「スーパーカー・ラン」「ヒストリックF1」「スポーツ・プロトタイプ」などいくつかのカテゴリーに分けて行われ、1台ずつスタートする。タイムを計測して勝ち負けを決めるエントラントと、デモ走行扱いでタイムを計測しないエントラントがいて、2009年のトップ・タイムはジャスティン・ロウがドライブするジャガーXJR8/9の44秒40だった。

 タイム計測にしろデモ走行にしろ、伝説のドライバーが走ったり、ホイールスピンなどがサービスされたりすればコース脇の観客は拍手喝采で迎える。

 ゴールからさらに上に「トップ・パドック」という広場がある。ゴールした車はここでカテゴリーの全車が到着するのを待ち、そのカテゴリーの走行が終わると、折り返してコースを下って、それぞれのパドックに帰る。パドックは丘の下や中腹のコース脇に何カ所か設けられていて、観客はここで出場車が整備されたり展示されているのを見ることができる。

 コースの両脇に、パドックや観戦スタンド、各種アトラクションやホスピタリティが設けられている。特にピクニックのためのスペースや食べ物・飲み物の売店、トイレは多数設けられていて、日本のイベントにありがちな、何かを買ったりトイレに入るのに、10分以上並ぶ、というようなことはない。観客が快適に過ごせるよう、よく配慮されていると言える。

 ではスタート地点からコースに沿って丘を登って行こう。

ゴール側から見たスタート地点。写真奥がスタートライン。スタートから数百mは平坦なストレートで、その後、右コーナーが現れる1コーナーを内側(左側)から見たところ。緩やかな右の高速コーナー。この写真で分かるように、観戦ポイントには多数のイスとテーブルが用意されていて、ゆったりとヒル・クライムを観覧できるようになっている1コーナーを抜けると数十mの短いストレートの後に、やはり緩やかな右の2コーナーが続く。これは2コーナーをゴール側から見下ろしたところ。このコーナーを抜けると上り勾配が付き始める
2コーナーの外側(右側)にはヒストリックカーのパドック(カセドラル・パドック)やスーパーカー・パドック、コンクール・デレガンスの会場、ライブステージなどがある1、2コーナー内側には多数の売店が並ぶエリアや、子ども向けの「チキチキマシン猛レース」のアトラクションなどがある
2コーナーを抜けると何カ所かの緩いコーナーをつなぐ長いストレート。出走車はこのストレートにあるブリッジをくぐる。基本的にコースを渡る場所はブリッジしかないのだが、各カテゴリーの走行の合間に数分間、コースを歩いて横切ることができる「トラック・クロッシング」ポイントが何カ所か設けられている。この写真はスタート側からゴール側を見上げたところ。人がコース上にいるがこれはイベントが終了してコースがクローズされた後だからブリッジの左脇にマーチ卿の屋敷、グッドウッド・ハウスがあり、その前にモニュメントが建てられている。グッドウッド・ハウスの前はピクニック広場
ブリッジをゴール側から見下ろしたところ。コースの両脇には藁ブロックのバリアが置かれ、数mの緩衝地帯を挟んで観覧スペースとなるグッドウッド・ハウス前は全イベント終了後に各カテゴリーのトップタイム車を集め、表彰式が行われる白いスーツの人がマーチ卿。トップタイムのエントラントを祝福
コースを挟んでグッドウッド・ハウスの反対側には自動車メーカーなどのパビリオンが設けられるブリッジからゴール方向を見上げたところ。要所要所に有料の観戦スタンドが設けられている
グッドウッド・ハウスより上(ゴール側)、左側にあるのが「F1パドック」。F1以外にもスポーツ・プロトタイプやバイクが置かれている。パドックは観客も出入り自由だから、ごく至近でマシンを見たり、ドライバーにサインをもらえる。写真右端はWRCで活躍したワルター・ロール
ストレートを抜けると「モールコム・コーナー」と呼ばれる左コーナーがある。ザ・コーナーをスタート側から見上げたところモールコム・コーナーをゴール側から見下ろしたところ。ヒル・クライムのハイライトの1つモールコム・コーナーの右脇にはポルシェがブースを出し、カイエンの試乗などを行っていた

 ちなみにこの会場全体で、舗装されているのはヒル・クライムのコースとパドックだけ。ほかはみな牧草地なので、雨が降るとぬかるむ。イギリスは曇りがちでしょっちゅう雨が降る地として知られているので、さぞかし歩きにくいのではと覚悟していたのだが、今年のフェスティバル・オブ・スピードの間に雨が降ったのは、合計で30分に満たず、あとは晴天。地元の人々が「今年は異常気象」と言うほどの天候だった。

モールコム・コーナーの後にまた数百mのストレートが続く。その先は緩いシケイン状の「ザ・ウォール」と呼ばれるコーナー。ここは左側が石垣、右側が林になっていて、観客は立ち入れないザ・ウォールの出口をゴール側から見下ろしたところこのあたりから勾配がきつくなる。ザ・ウォールの右脇にはアウディやボウラー(オフロードレーサーのコンストラクター)がオフロード試乗コースを設けている
シケインの右脇からは、頂上のトップパドックやフォレスト・ラリー・ステージへ観客を運ぶ無料トラクター・シャトルが出ている。もちろん、シャトルを使わずに歩いて上ることもできるシケインの出口から短いストレートを駆け上がり、左コーナーを超えるとゴール
ゴールから数十m上に、トップパドックがある。ゴールしたマシンはそのカテゴリの全車が走り終えるのをここで待つ。ここでスピンターンを見せたり、サインをしたりするサービスも。写真右はサインするティモ・グロックトップパドックで折り返し、全車1列になってコースを下っていく。観客の声援に応えるドライバーもいて、下りのパレードを見るのも楽しめる
トップパドックからゴール下の左コーナーにかけてのあたり、コース右脇の森の中に、フォレスト・ラリー・ステージが作られている。ここでは1周2.5kmのコースを走る各種ラリーマシンを見ることができる丘の頂上にはフォレスト・ラリー・ステージのマシンのパドックがあり、ここも出入り自由
これはWRCマシンのドライブ体験ができるシミュレーター。こうしたシミュレーターが会場の何カ所かにある大型のスクリーンが何カ所かに設置されていて、コースの走行の様子や、ドライバーのインタビューを見ることができる。写真はインタビューを受けるジャッキー・スチュワート(左)とスターリング・モスの両御大コースの向こうに見えるテラスは、メルセデス・ベンツが設けた特別な顧客用のテントのテラス。こうしたエクスクルーシブな観客席がいくつかあって、テラスでシャンパン片手に観戦する人々もいる。これもまたグッドウッドの風景
フォレスト・ラリー・ステージだけでなく、ヒル・クライムに参加するラリーカーもいて、そうしたチームはF1パドックの上にテントを構える。シトロエンはWRCのサービスそのままの光景を展開広大な観客用駐車場がいくつか用意されている。ヒストリックカーが堂々と幹線道路を走る英国だけに、来場者のクルマにも興味深いものがいっぱいある。また、キャンプサイトも用意されている
「エアディスプレイ」もグッドウッドの名物。今年は英空軍、英海軍のアクロバットチームが演技を披露。写真は英空軍のレッドアロウズ

(編集部:田中真一郎)
2009年 7月 13日