2010年度グッドデザイン大賞決定、「リーフ」と「CR-Z」は金賞

グッドデザイン大賞を受賞したダイソンのデザインマネージャー エイドリアン・ニロ氏(中央)と審査委員長の深澤直人氏(右)、日本産業デザイン振興会理事長の飯塚和憲氏(左)

2010年11月10日開催



 
 日本産業デザイン振興会は11月10日、「2010年度グッドデザイン大賞(内閣総理大臣賞)」にダイソンのエアマルチプライアー[AMO1、AMO2、AMO3]を選出した。自動車関連では本田技研工業「CR-Z」、日産自動車「リーフ」が大賞を逃したもの金賞として表彰された。

世界で評価されるグッドデザイン賞へ
 大賞は、10月に発表された「グッドデザイン賞ベスト15」の中から選定。当日、会場に来た1110件の「グッドデザイン賞」の受賞者と、審査委員によって投票が行われ、その場で発表された。

 始めに、主催者である日本産業デザイン振興会会長の岡村正氏があいさつに立ち「グローバル化はデザインの分野でも避けては通れない。グッドデザイン賞が、世界的に評価されるよう、自己満足でなく第三者からの評価を受け入れながら、グローバルな視点で尽力しなくてはならない」と述べた。

 審査委員長の深澤直人氏は「グッドデザイン賞自体をグッドデザインにしようと目的を掲げてやってきた。外に向かって胸を張れるような賞にしたい」と述べ、投票を行う会場の人に対しては「参加者が、自分の企業に投票しなければならないルールはないので、一生活者になって、今年の大賞はどんなものであるべきかと考えて選んでほしい」と訴えた。

開催のあいさつを行う日本産業デザイン振興会会長の岡村正氏審査委員長の深澤直人氏(左)と審査副委員長の佐藤卓氏(右)
ベスト15に選ばれ大賞候補の日産「リーフ」同じく大賞候補のホンダ「CR-Z」

投票前に、最後のプレゼンテーション
 ベスト15の担当者による最後のプレゼンテーションは、各4分間。スライドや動画を使い、モノやサービスの紹介が行われた。

 日産の出展は電気自動車(EV)の「リーフ」単体ではなく「電気自動車 日産リーフの普及と、ゼロエミッション社会の推進のための包括的な取り組み」。日産自動車 常務執行役員チーフクリエイティブオフィサーの中村史郎氏は「CO2の削減が急務、その中で100%のEVをコア技術として位置づけた」と日産の取り組みを説明し、「バッテリー会社やバッテリーのリユースなどをマネジメントする会社を設立、充電器を内製し、充電インフラをサポートする会社も立ち上げた。全国の自治体と提携して充電ネットワーク。グローバルでも80以上のパートナーシップ。海外生産も計画」と“包括的な取り組み”の実践を強調した。

 また、中村氏は「EVの車両提供にとどまらず、サスティナブルなモビリティ社会を総合的に提供する会社でありたい」と述べ、日産はただEVを作るだけにとどまらないことを訴えた。

 「CR-Z」は本田技術研究所 四輪R&Dセンターデザイン開発室主任研究員の名倉隆氏が最終プレゼンテーションを行った、ハイブリッドカーでスポーツカーを作る意義を語った上で「CR-Zを作るにあたって、大切にしたことがある。人の手によって丹念に作ることによってできる心地よい歪。人の心に迫る造形ができる。愚直なまでに精魂込めてモノづくりをする、それによって、物が、そのもの自体が語りかける」と話した。

 名倉氏はまた、もの作りに対する持論も訴えた「企画も大事だが、最終的なアウトプットが“もの”である限り、そのものが持つ力、語りかける力が大切だと考えた。それが今、日本の産業にとって大事なことではないか。先進性を兼ね備え、それを地道な作業で積み重ねる。私たちはこれからも魅力的な製品を作りたいと思う」と話し、プレゼンをまとめた。

 そのほか、ベスト15の担当者がさまざまなプレゼンテーションを行った。担当者による熱い説明や、あらかじめ用意した動画を流すだけのプレゼンを行うところなどさまざま。ものではなく“プロジェクトデザイン”として大賞候補となって注目された「AKB48」は、AKB48メンバーの登壇はなく、プロデューサーの秋元康氏がビデオ映像で登場、AKB48のコンセプトを語った。

日産は常務執行役員チーフクリエイティブオフィサーの中村史郎氏がプレゼンを行ったバッテリーのリサイクルまでも包括的にデザインEVの走行に必要な充電器も内製した
グローバルなパートナーシップも強調静かに走行できるEVゆえに風切音のしない空力デザインプロモーションデザインも包括的に
ホンダは本田技術研究所 四輪R&Dセンターデザイン開発室主任研究員の名倉隆氏が登壇もの作りの原点を強調スポーツカーの低迷という背景からCR-Zは生まれた
CR-Zの佇まい(たたずまい)人の手で造形したことを強調したCR-Zの作り込みも強調
ダイソン「エアマルチプライヤー」のプレゼンテーションはビデオメッセージを交えて行われたプロジェクトの“デザイン”、AKB48メンバーの登場はなく、秋元氏のビデオメッセージでプレゼン

第1回投票で「CR-Z」が落選、「リーフ」がベスト5に入るが大賞逃す
 ベスト15のプレゼンテーションの後は、すぐに第1回投票が行われた。投票は会場に集まった1110組の受賞者と審査委員に無線電子端末が渡され、ボタン投票で即集計され発表する仕組み。

 この投票でベスト5に絞り込み、さらに第2回投票として5つの中から大賞を選ぶ。5つの中から選ぶ投票では1位と2位の得票差が100票以上なら決定となり、100票未満の差の場合には決戦投票を行う。

 1回目の投票では、日産「リーフ」は4位となり、第2回投票へ進んだ。ホンダ「CR-Z」は8位となり残念ながら第2回投票へ進めなかった。

 2回目の投票では「リーフ」は111票を集めるものの残念ながら5位。1位のダイソン「エアマルチプライヤー」が437票を集め、300票を集めた「カプセルホテル9h」と100票以上の差があったために大賞が決定した。

 なお、「リーフ」と「CR-Z」ともにベスト15となっていたため、2010年度グッドデザイン金賞(生活領域)を受賞した。

第1回目の投票結果。CR-Zは5位以内に入ることができなかった会場では投票用の無線電子端末が渡され、ボタンで投票した
第2回目の投票を待つ、各担当者第2回投票の結果、ダイソン「エアマルチプライヤー」が大賞に決定

表彰
 表彰式では、ダイソンへ内閣総理大臣名の賞状、審査委員長からはトロフィーが贈られた。

 賞状を授与した経済産業省 大臣政務官の田嶋要氏はグッドデザイン賞を「アワードという域を超えて、まさに、新たなな産業と未来の新たな生活を提示するプラットフォームである」と讃えた。

 受賞したダイソンのデザインマネージャーのエイドリアン・ニロ氏は「イギリスの会社である私たちが、日本でこのような賞を受賞できたのは、大きな意義のあることで光栄だ」と喜びを語った。

 審査委員長の深澤直人氏は「ダイソンのエアマルチプライヤーが選ばれたのは、グッドデザイン賞らしいなという印象を受けた」と感想を語り「カテゴリーが別れたものに優劣をつけるのは難しかった」と経緯を振り返った。

賞状とトロフィーを受け取るダイソンのデザインマネージャー エイドリアン・ニロ氏経済産業省 大臣政務官の田嶋要氏が受賞者に祝辞を述べた
喜びを語るダイソンのデザインマネージャー エイドリアン・ニロ氏審査を振り返る審査委員長の深澤直人氏受賞したダイソンのデザインマネージャー エイドリアン・ニロ氏らは、報道陣からのフォトセッションに応えた
大賞は逃したものの、金賞を受賞した日産「リーフ」担当の中村史郎氏金賞を受賞したホンダ「CR-Z」担当の名倉隆氏2010年度グッドデザイン金賞受賞者たち
表彰式の別室では受賞製品などが展示された。発売前の日産「リーフ」を間近で見ることができ、充電も試すことができたホンダ「CR-Z」も展示されたホンダ「CR-Z」担当の名倉隆氏は参加者たちと歓談。受賞を逃したことについて「クルマは伸びシロが少なく“異種格闘技”では受賞は難しい」とコメントしてくれた

(正田拓也)
2010年 11月 11日