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JAL、羽田空港国内線手荷物預かりの裏側を見る
1日約2万点の手荷物を旅客機へ搭載する流れとは?
(2013/6/11 16:13)
JAL(日本航空)は6月7日、乗客から預かった手荷物をどのようにして旅客機に搭載するのか、その様子を報道陣に公開した。今回公開されたのは、羽田空港第1ターミナル国内線のJALカウンター。手荷物が流通する個数としては国内最大規模の個所になる。
飛行機をよく利用する人でも、機内に持ち込めない手荷物などを航空会社に預けた後、それがどのように扱われ、飛行機に搭載されていくのか、普段はなかなかその様子を知ることはない。乗客の立場からすると、出発空港のカウンターに預けた手荷物が、到着空港でしっかり受け取ることができればよいだけだ。この工程は、どのように実現されているのか気になっている人もいるのではないだろうか。今回は、その一連の流れを取材することができたので、順を追ってリポートしていきたい。
JALの国内線で通常預けることが可能な手荷物は、サイズが50×120×60cm(幅×奥行き×高さ)以内、重量は20kgまでで個数制限はない。これを超える重量を運ぶ場合は別途手数料がかかる。ただし、国内線ファーストクラスの場合は1個あたり32kg、合計45kgまで無料で預けることができる。いずれにしろ、100kgを超える総重量の制限がある。これは、航空会社ごとに異なり、JALも国内線と国際線では異なるルールが適用されている。
国内線で手荷物を預けるためにはまず「手荷物お預かりカウンター」で手続きを行う。ここでは手荷物の個数や重量のチェックのほか、危険物の有無も確認する。危険物のチェックはX線を使用したチェックとなるが、これは乗客が手荷物を預けたあとに実施される。
地方空港や格安航空会社などでは手荷物預かりカウンターの前にX線検査機が設置されており、荷物を預ける前にX線チェックを行うことが多い。当然ながらこの方法では乗客にとって一手間余計に掛かけることになるが、JALの羽田空港のカウンターではインライン検査と呼ばれる方式を採用し、手続きの時間短縮に一役かっている。
この方式では乗客はカウンターに付いたらそのまま荷物を預け、手続きをするだけでよい。手荷物はその後、カウンターベルトと呼ばれるベルトコンベアに乗せられて運ばれることになるが、ここに設置された検査機によって行き先を管理するバーコードの読み取りとX線による危険物のチェックが実施されるのだ。乗客は荷物チェックで待たされることはないよう工夫されている。
X線による検査に問題がなければそのまま荷物は旅客機に搭載されるが、万が一荷物に危険物と疑われる物が発見された場合は、係員が旅客機の搭乗口にまで荷物を持っていき、そこで乗客立ち会いのもとで荷物を開封してチェックすることになる。国内線においては乗客が立ち会わずにJALのスタッフが勝手に荷物を開封することはないそうだ。ここでチェックに引っかかる荷物は1日に1、2便程度発生しているが、ライターなどが荷物の中に発見された場合などがほとんどと言うことだ。
先にも述べた通り、通常の荷物は「カウンターベルト」と呼ばれるベルトコンベアに載せられて移動する。これは行き先を示すバーコードから自動的に搭載予定のコンテナに向けて仕分け、移動させるものだ。
手荷物カウンターからカウンターベルトに載せられた荷物は、カウンターのすぐ裏手にある「出発ソーティングエリア」に移動。そこで出発便に搭載予定のコンテナが待つ「メイク」と呼ばれるエリアまで運ばれ、そこからは係員が手作業でコンテナに荷物を収納することになる。メイクには複数の出発便向けのコンテナが待機しているが、搭載時にはバーコードによる2重のチェックがされており、搭載ミスが起こる確率は極めて低いという。
また、コンテナへの搭載は、荷物の強度や重量などを考慮して最大限の配慮をしながら収納していく。重い物やハードケースに入ったものを下側に、そうでないものを上に乗せていく要領だ。到着したものから無計画に山積みしていくわけではない。あらかじめ「壊れ物」という指定が有る場合などはコンテナに入れず別途機内に固定するようなこともしてくれる。とにかく「荷物を傷つけない」ことに細心の注意が払われているのだ。
ここまでは通常の荷物の流れとなるが、カウンターベルトには乗せられない大型の荷物というものがある。これにはどう対処しているのだろうか。カウンターベルトは仕分けをして各メイクに振り分けるという構造上、どうしても各所で右に左に曲がる構造となっているため大きな荷物(とくに長尺物)を乗せることが難しいのだ。
そこで登場するのが、カウンターから一直線に荷物を下ろすことができる「直線ベルト」と呼ばれるものだ。その名のとおり、カウンターからまっすぐに荷物を下ろすことができるため、荷物の幅さえ問題なければ、長さがある物でも速やかにソーティングエリアに下ろすことができる。楽器(コントラバス)などの大型の荷物を運ぶための専用コンテナも用意されており、そうした大型の荷物はこの直線ベルトを使用して運ぶことになる。直線ベルトにもカウンターベルトと同様にインライン検査機が設置されX線での荷物検査は通常の荷物同様に実施される。
また、ペットと旅行をしたい、というニーズに応えるためペットも専用カーゴで運ぶことが可能だが、ペットも直線ベルトの搬入口を使う。しかし、ペットを他の荷物と同様の流れでX線照射するわけにはいかない。そのため、ペットを運ぶ場合は入り口は同じ直線ベルトだが、途中でX線検査機を経由しない専用ベルトに振り分けられるようになっている。直線ベルトではこのほかサーフボードや釣り竿なども取り扱う。
コンテナへの積み込みが終わると、コンテナを連結したトーイングトラクターにより旅客機へ運ばれ、機体の貨物室への積み込みが開始される。積み込みは搭載する航空機の重量バランスなども考慮しながら慎重に行われる。
飛行機が目的地に着くと、直ちに荷物を降ろす作業が始まる。ベルトコンベアにより次々と地上のパレットに降ろされ固定されたコンテナは、再びトーイングトラクターによって牽引され、「到着ソーティングエリア」という場所に運ばれる。ここには到着ロビーの手荷物受取所に直結したターンテーブルが設置されており、この上に到着便の手荷物を置いていく。ターンテーブルに載せる作業はやはり手作業。一つ一つ丁寧にターンテーブルに乗せていく。この際、取っ手をターンテーブル外側に向けて流すことで乗客が荷物を取りやすくするのもポイントという。
JALが1日に手がける手荷物は羽田空港国内線の往復便で約2万点。機械による自動化と最終段階では人の手による細やかな気配りをすることによって、乗客が安心して荷物を預けることができるシステムを構築している。日本は特にものを大切にする文化が根付いており、そのための気配りも自然と行われているようだ。
JALのスタッフによると、預かり手荷物のトラブルで多いのが、手荷物受取所による荷物の取り違え。他人の手荷物を間違えて持って行ってしまうケースがあるとのこと。国内線の場合、出口での手荷物検査は行われないため、このようなケースが起きてしまう。対策としては、人と異なる旅行鞄にするために、ベルトを巻く、ネームタグを付けるなどの方法が効果的とのこと。楽しい旅行とするためにも、ちょっとした工夫は自分なりに行っておこう。