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JAL、ジェットエンジン整備場「エンジンメンテナンスセンター」を公開
安全運航を支えるエンジン整備の現場をリポート
(2014/2/27 14:48)
JAL(日本航空)は、成田空港の敷地内にある同社のエンジン整備場「エンジンメンテナンスセンター」を報道関係者に対して公開した。
エンジンメンテナンスセンターは、JALのエンジン整備全般を担当するほか、他社のエンジン整備なども受け持っている施設。エンジンだけでなく、APU(補助動力装置)の整備も行っている。JALでは通常は3~4年、最新の機体でも4~5年に1度の頻度でエンジンのオーバーホールを行っており、国内線、国際線すべてのエンジンが本施設内で整備され、万全な状態で再び空へ戻っていく。
航空機の整備は、大きく分けて「機体整備」と「工場整備」の2種類があり、エンジンメンテナンスセンターは後者を担当する施設だ。工場整備はさらに「部品整備部」と「エンジン整備部」に大別される。部品整備部は300万個に及ぶエンジンを構成するパーツ類の洗浄やメンテナンスなどを行う部署。エンジン整備部はエンジンの分解、組み立てや、整備が終わったエンジンをテストする仕事を担う。
ちなみに、エンジンが取り外された機体には、代わりに予備のエンジンが取り付けられてすぐに運航可能な状態になる。エンジン整備が行われるといっても、運航できない機体が発生するわけではない。
取り外されたエンジンはエンジンメンテナンスセンターへの搬入後、まず分解前検査として内視鏡などを使った大まかな検査が実施される。この検査後に分解され、洗浄を受ける。汚れを落とすことで不具合を見つけやすくするためだ。ここではアルカリや酸を使った科学洗浄と、「グラスビーズ」と呼ばれる極小のプラスチック製ビーズを高速でパーツに吹き付けて洗浄する機械洗浄と呼ばれる方式が使われている。
その後、パーツは検査工程に移行する。ここでは「浸透探傷検査」「超音波探傷検査」「渦流探傷検査」の3種類の非破壊検査法が用いられる。浸透探傷検査では「蛍光浸透探傷検査」と呼ばれる方法が用いられる。これはブラックライトを当てると発光する浸透液にパーツを浸け、毛細管現象によってクラックなどの傷口に入りこんだ浸透液をブラックライトを照射して発光させ、損傷を発見するもの。傷があればその部分が発光するので一目瞭然だ。
超音波探傷検査は、パーツに超音波を照射して、その反射を測定して損傷の有無を確認する検査。パーツのどこかに損傷があれば、それが波形として現れる。
渦流探傷検査は、パーツ表面に渦電流を発生させて検査を行うもの。欠陥があると渦電流が乱れるため、それを数値化することで問題点を発見する。パーツの表面などの検査に用いられる。
ここで発見された損傷は、必要であれば修理工程に回されることになる。今回は修理工程のなかでエンジンのファンブレードの研磨作業を見学した。ファンブレードは高速で回転を続けるうちに、エッジ部分が空気と圧力によって徐々に浸食(エロージョン)されてくるそうで、燃費が徐々に悪化してくるという。実際に浸食されたブレードを触らせてもらったが、表面がざらついているのがすぐに分かる。これを磨いて元どおりにする。ファンブレードの寿命としてはだいたい6000回フライトしたらブレード交換となり、それまでは研磨処理を行って再生させるのだという。研磨は専用の研磨機を使い、削り角を見ながら慎重に行われる。1枚磨き上げるのに15分から20分かかるという。
すべての整備が完了すると再びエンジンは組み立てられ、試運転によってエンジンの状態を確認する。エンジンの試運転室では、離陸や上昇、巡航推力での回転数をモニターし、規定推力が出ているかチェックする。エンジン搬入から試運転が完了するまで早くて30日。エンジンによっては80日近くかかることもある。
ジェットエンジンは航空機の心臓部であり、過酷な状況下で完璧な動作が求められる精密機器だ。その整備作業には豊富な知識と経験が必須になる。今回の取材はそんな厳しい要求に応える整備士たちの日常の一部を垣間見る貴重な体験となった。