試乗インプレッション
フォルクスワーゲン「ゴルフ」にディーゼル仕様追加。ガソリン車と比べてどうか?
150PS/340Nm仕様の「ゴルフ ヴァリアント TDI」試乗
2019年10月1日 11:00
ゴルフのTDI仕様が登場
2012年に欧州で発表され、日本には2013年から導入された現行「ゴルフ7」。モデル中期ではマイナーチェンジが行なわれ、灯火類やメーターを改めて現代化を図り、通称ゴルフ7.5を投入することで新鮮味をキープしていた。そんなゴルフ7に新たな仲間が加わる。それがディーゼルエンジン搭載車のTDIモデルだ。実はこのTDIユニットは、基本的にはSUVの「ティグアン」に搭載されていたものと同様だ。ティグアンではTDIに7速DSG+4WDという組み合わせであったが、今回のゴルフは駆動方式を2WD(FF)としている。
2.0リッターディーゼルターボとなるゴルフ TDIは、最高出力110kW(150PS)、最大トルク340Nmの仕様となる。今回のTDIは「トゥーラン」や「シャラン」にも搭載されるが、シャランのみ高トルクバージョン。そちらの最大トルクは380Nmを発生させている。多人数ミニバン+スライドドアも搭載しているということで、重量も増すことからの対策のようだ。ちなみに今回はこのシャランにも試乗したが、その仕上がりはかなり力強く、動力性能面でどの領域でも不満の残らないものだった。本音を言えば、ゴルフにもこのユニットが欲しい気もしてくる。
とはいえ、ゴルフでも重量が増していることは否めない。ガソリンモデルのTSIで今回のクルマと同等のグレード(TSI Highline系)の場合、車重は1320kgだ。最高出力は103kW(140PS)、最大トルクは250NmとTDIより劣る。だが、TDIの車重は1430kgと110kgも重くなっていて前述した出力である。このバランスがどう出るのかは興味深いところだ。
グランドツーリング的な使い方が合っている
早速TDIを走らせてみれば、TSIに比べてかなりドッシリとした感覚があることに気付く。重量増の配分はフロント90kg、リア20kg。おかげで安定感はかなり増している。
スタンディングスタートこそタイヤの転がりはじめでやや重い感覚があるものの、ターボの過給が始まれば常用域はTSIよりも力強く、扱いやすい仕上がりだ。ただ、高速道路の合流時における中間加速では、驚くような力強さではないことも事実だ。回転数が高まるほど過給を絞っているかのような感覚で、あくまで実用エンジンといったフィーリングがそこにある。決してスポーツエンジンのようにどの領域でも力強いというわけではないのだ。
おかげでTSIモデルと同様の環境で燃費比較をすると、1割ほど好燃費を記録していたことが印象的。高速巡行が続くのであれば、その差はもっと大きく広がりそうだ。高速移動が多いユーザーにはマッチしているだろう。常用回転も低く、ディーゼルとはいっても振動が少ないところも好感触。静粛性に関しても良好だった。
それはシャシーの仕立にも感じるところだ。今回はTSIと基本的には変更がない足まわりを利用し、タイヤのエアプレッシャーを40kPa引き上げることで対応している。同銘柄のタイヤを装着している状況で乗り心地を比較したが、低速でのハーシュネスは当然ながら強めに出てくる。
また、細かいワインディングロードを走るとノーズの重量アップがマイルドな方向に改まっており、キビキビとしたフィーリングは薄れていた。そんな乗り味を大切にしたい人にはTSIがオススメ。TDIは真っ直ぐな高速道路をひたすら突き進むグランドツーリング的な使い方が合っているように感じた。いずれにしてもユーザーニーズに細かく対応し、グレードを充実させようというゴルフ7の考えは凄い。なにせ、このほかにEV(電気自動車)やPHV(プラグインハイブリッド)、そして本国には天然ガスやサトウキビをベースに走るハイブリッドだって存在するほどなのだ。
あらゆる燃料に対応し、次世代を見つめ続けているその真面目な姿が光って見える。間もなく欧州では次期ゴルフ8が発表となり、それが1年ほど後になって日本に導入されるということも周知の事実。だが、その前に完熟のゴルフ7を味わっておくのもわるくないだろう。