試乗レポート

無限パーツ装着の新型「シビック」「ヴェゼル」、その実力をレポート

ノーマルのよさを引き出す外観と走り

 無限(M-TEC)、STI(スバルテクニカインターナショナル)、TRD(トヨタカスタマイジング&ディベロップメント)、NISMO(ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル)の4社で構成されるワークスチューニンググループ。その4社による合同試乗会がツインリンクもてぎ南コースで行なわれ、無限(M-TEC)は9月発売の「シビック」と4月発売の「ヴェゼル」をベースに、現状でラインアップするパーツを装着した2台のデモカーを用意した。

 シビック用無限パーツは「ダイナミック&スポーツ」がコンセプト。前後およびテールゲートスポイラー、サイドガーニッシュ、ドアミラーカバーなどエクステリアパーツのほか、鍛造アルミホイール、ブレーキ関連、エキゾースト系、パフォーマンスダンパーなど走りにこだわるシビックユーザーにも喜んでもらえるラインアップを揃えている。

 エアロパーツは、シンプルになったノーマルの雰囲気をあえて大きく変えず、そのよさを活かしつつ無限テイストを表現するため、小ぶりなエアロに黒の差し色を入れて、よりロー&ワイドさを強調している。カラードも選べるが、スポーティな引き締まった印象を与える黒をあえて推奨色にしているという。

 アルミ鍛造の切削加工品ゆえ1本で14万円と高価な18インチアルミホイール「FS10」は見てのとおりデザイン性も高く、リム幅をノーマルより0.5Jワイドにするとともに1本あたり実に4kgもの軽量化を実現している。このクラスでは異例の235/45R18という純正サイズをそのままに、もともと攻めたインセットをさらにギリギリまで攻めた。

 足まわりはノーマルでも完成されているところを、さらにどう振っていくかが悩みどころだったそうだが、ストリートでは十分でも、サーキットでテクニカルなコースをオーバーアクション気味に攻めるとキャパが足りず足まわりが負けてしまう。そこでパフォーマンスダンパーを装着し、バネ下の軽量化と併せてシャープなハンドリングと走りの質の向上を狙ったという。

無限パーツを装着した新型シビック。「ダイナミック&スポーツ」をコンセプトに、スタイリングや走行性能といったクルマの本質にこだわるシビックユーザーに向けて、無限らしいスポーティさを高めるこだわりを込めたパーツをラインアップしたという
フロントマスクにアクセントを加えるフロントグリルデカール(1万9800円)。カーボン調の塩ビ製
ロー&ワイドな造形を強調する「フロントアンダースポイラー」(7万2000円[カラード仕上げ])、フロントからリアへ流れるような形状と張り出した造形の「サイドガーニッシュ」(9万3000円[カラード仕上げ])、フィン形状を施しスポーティさを演出する左右分割タイプの「リアアンダースポイラー」(8万5000円[カラード仕上げ])。この3点をセットにした「スタイリングセット」(24万5000円[カラード仕上げ])も用意
フロントマスクの印象を精悍に際立たせる「ロアアイラインデカール」(1万5000円)
フィン形状を施した「ドアミラーカバー」(3万5000円[カラード仕上げ])
リアビューにスポーティな存在感を与える「テールゲートスポイラー」はカラード仕上げで9万9000円

 開発に際しては、フロントの応答性を上げてノーズの向きを変えやすくすることを軸に考え、ベース車でも剛性はかなり高いが、ハッチバックなのでリアにもパフォーマンスダンパーを装着し、前後バランスで挙動を整えるべく、いろいろ試した中から最適な減衰特性を探ったという。

 ブレーキについては、前後のパッドとフロントをスリットローターに交換したほか、メッシュホースを装着してカッチリとしたフィーリングを狙った。熱ダレに対してもある程度はカバーできるようにし、ワインディングからちょっとしたサーキットでのスポーツ走行にも対応できるように仕上げられている。

18インチ鍛造アルミホイール「FS10」(14万円/本)。切削鍛造とすることで、高い剛性と軽量化を図り約4㎏/本の軽量化を実現。カラーは切削面とツヤ消しブラック塗装の2トーン仕上げとしたフラットブラックミラーフェイス。サイズは18×8.5J インセット50。推奨タイヤサイズは235/40R18

 ドライブすると、なんと走りやすいことかと感心した。今回、何台も乗った中でも、もっとも意のまま感が高い。バネ下の軽さも効いてか動きがスッキリしている。シビックがコンセプトとしている“爽快”をさらに引き上げたような、本当に気持ちのよい走り味だ。ブレーキも初期からしっかり効いて、奥でもコントロールしやすい。日常使いを考えても、ちょうどよい味付けかと思う。

 エキゾーストは中間から後ろまでごっそり交換するタイプで、出力特性の問題でトルク不足にならないようパイプ径を少しだけ拡大するとともに、音量はあまり大きくせず、むしろスポーティな音質にこだわり、換えた感や存在感が出るようにチューニングしたとのことで、まさにそのとおりの仕上がりとなっていた。アクセルワークにレスポンスよく呼応するビートの効いたサウンドが心地よい。

 ただし、あらためて気になったのは、むろん手が加えられていないのでノーマルと同じわけだが、アクセルオフ時の回転落ちが遅いこと。そこはMTを楽しむ上では重要なポイントに違いない。ぜひ無限として何か手を打ってくれるよう期待したい。

 ホンダとしては新型シビックを若い人に訴求したいと考えていて、実際にも初期受注では20代の比率が30%台に達していて、無限への問い合わせも非常に多いそうだ。彼らの期待にも十分に応える、走りを存分に楽しめる仕上がりとなっていたことをお伝えしておきたい。

ホイールだけでも走りが変わる!?

 ヴェゼルは走りに関する変更はなく、主にエクステリアパーツの装着により見た目の印象を変えている。従来よりも一気にオシャレになったヴェゼルだが、特徴的なグリルガーニッシュにより、ちょっといかつい雰囲気になっているのは見てのとおり。もともとのロー&ワイドなフォルムを強調すべく、車体色と同じカラードのアンダースポイラーでノーマルとの差別感を図っている。

 テールゲートスポイラーを好みで選んでもらえるよう、今回の大型のウイングタイプだけでなく小ぶりなダックテールタイプの2種類を設定している点にも注目だ。どちらを選ぶかでかなり印象は変わってくる。

 足まわりは、1本あたり2.5kg軽量化できる鋳造ホイールにタイヤもよりスポーティなダンロップ「DIREZZA DZ101」(純正と同サイズ)を履かせている。無限といえば足まわりの巧みなチューニングにも定評があり、従来型のヴェゼルでも一式ラインアップしていたが、ノーマルがしっかりしている新型については性能的な取り分もあり検討中で、ひとまずホイールのみで様子見とのことだった。

「Sports Style」をコンセプトにしたエアロパーツやスタイリングセットなどを装着した新型ヴェゼル
ロアグリルの開口部を大きく強調し、フロントバンパーをよりダイナミックに演出する「フロントアンダースポイラー」(カラード仕上げ:7万7000円)
フロントフェンダーからボディ中央へ、ボディ中央からリアフェンダーへと流れる2本のキャラクターラインが彫りの深い造形を生み、力強さを表現する「サイドガーニッシュ」(カラード仕上げ:11万円)
ボディカラーとツヤ有りブラック塗装の2トーンカラーでリアスタイリングにスポーティな印象を演出する「リアアンダースポイラー」(カラード仕上げ:7万7000円)
「フロントグリルガーニッシュ」はフロントグリル上部のフラッシュサーフェース化により、フロントマスクを引き締め、無限ロゴと併せて力強さを演出(ツヤ有りブラック塗装仕上げ:3万7400円)
フィン形状を施しブラック化することでスポーティな印象に仕上げた「ドアミラーカバー」(カラード仕上げ:3万9600円)
躍動感の溢れるデザインの18インチアルミホイール「CU10」(5万600円/本)。サイズは18×7.5J インセット50。鋳造スピニング製法を採用。カラーはフラットブラックで、無限のコーポレートカラーである3色をセンター部にデザイン。推奨タイヤサイズ225/50R18
ルーフエンドを延長し、他車との違いを上質に演出する「ルーフスポイラー」(ツヤ有りブラック塗装仕上げ:6万6000円)、大型で存在感を発揮し、スポーティさを強調する「ウイングスポイラー」(カラード仕上げ:11万円)をセット
優れた排気効率と消音性能、エキゾーストサウンドにこだわったステンレス製「スポーツサイレンサー」(12万6500円)はe:HEV専用に開発。75φのチタン製デュアルフィニシャーを採用し、保安基準適合の交換用マフラー事前認証制度認定品

 ドライブすると、ノーマルがよくできていることもあって、これまた非常に乗りやすいことにあらためて感心。たしかにバネ下が軽くなったことで、足まわりがよく動いて路面への追従性が高まっているようで、持ち前の軽快なハンドリングと操縦安定性がさらに微妙によくなったように感じられた。

 やや低音を効かせた、ほどよくスポーティなサウンドを実現しているエキゾーストは、ハイブリッドでもエンジンの鼓動を楽しみたい人にもってこいだ。

 開発関係者によると、SUVゆえややロールが大きいのは否めないが、それを抑えるとともに、もう少しハンドリングのレスポンスを高めてスポーティな乗り味にしたいという思いはあるとのことで、そのあたりは今後に期待することにしたい。

岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者の方々にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:堤晋一
Photo:安田 剛