試乗レポート
無限パーツ装着の新型「シビック」「ヴェゼル」、その実力をレポート
2021年12月30日 07:00
ノーマルのよさを引き出す外観と走り
無限(M-TEC)、STI(スバルテクニカインターナショナル)、TRD(トヨタカスタマイジング&ディベロップメント)、NISMO(ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル)の4社で構成されるワークスチューニンググループ。その4社による合同試乗会がツインリンクもてぎ南コースで行なわれ、無限(M-TEC)は9月発売の「シビック」と4月発売の「ヴェゼル」をベースに、現状でラインアップするパーツを装着した2台のデモカーを用意した。
シビック用無限パーツは「ダイナミック&スポーツ」がコンセプト。前後およびテールゲートスポイラー、サイドガーニッシュ、ドアミラーカバーなどエクステリアパーツのほか、鍛造アルミホイール、ブレーキ関連、エキゾースト系、パフォーマンスダンパーなど走りにこだわるシビックユーザーにも喜んでもらえるラインアップを揃えている。
エアロパーツは、シンプルになったノーマルの雰囲気をあえて大きく変えず、そのよさを活かしつつ無限テイストを表現するため、小ぶりなエアロに黒の差し色を入れて、よりロー&ワイドさを強調している。カラードも選べるが、スポーティな引き締まった印象を与える黒をあえて推奨色にしているという。
アルミ鍛造の切削加工品ゆえ1本で14万円と高価な18インチアルミホイール「FS10」は見てのとおりデザイン性も高く、リム幅をノーマルより0.5Jワイドにするとともに1本あたり実に4kgもの軽量化を実現している。このクラスでは異例の235/45R18という純正サイズをそのままに、もともと攻めたインセットをさらにギリギリまで攻めた。
足まわりはノーマルでも完成されているところを、さらにどう振っていくかが悩みどころだったそうだが、ストリートでは十分でも、サーキットでテクニカルなコースをオーバーアクション気味に攻めるとキャパが足りず足まわりが負けてしまう。そこでパフォーマンスダンパーを装着し、バネ下の軽量化と併せてシャープなハンドリングと走りの質の向上を狙ったという。
開発に際しては、フロントの応答性を上げてノーズの向きを変えやすくすることを軸に考え、ベース車でも剛性はかなり高いが、ハッチバックなのでリアにもパフォーマンスダンパーを装着し、前後バランスで挙動を整えるべく、いろいろ試した中から最適な減衰特性を探ったという。
ブレーキについては、前後のパッドとフロントをスリットローターに交換したほか、メッシュホースを装着してカッチリとしたフィーリングを狙った。熱ダレに対してもある程度はカバーできるようにし、ワインディングからちょっとしたサーキットでのスポーツ走行にも対応できるように仕上げられている。
ドライブすると、なんと走りやすいことかと感心した。今回、何台も乗った中でも、もっとも意のまま感が高い。バネ下の軽さも効いてか動きがスッキリしている。シビックがコンセプトとしている“爽快”をさらに引き上げたような、本当に気持ちのよい走り味だ。ブレーキも初期からしっかり効いて、奥でもコントロールしやすい。日常使いを考えても、ちょうどよい味付けかと思う。
エキゾーストは中間から後ろまでごっそり交換するタイプで、出力特性の問題でトルク不足にならないようパイプ径を少しだけ拡大するとともに、音量はあまり大きくせず、むしろスポーティな音質にこだわり、換えた感や存在感が出るようにチューニングしたとのことで、まさにそのとおりの仕上がりとなっていた。アクセルワークにレスポンスよく呼応するビートの効いたサウンドが心地よい。
ただし、あらためて気になったのは、むろん手が加えられていないのでノーマルと同じわけだが、アクセルオフ時の回転落ちが遅いこと。そこはMTを楽しむ上では重要なポイントに違いない。ぜひ無限として何か手を打ってくれるよう期待したい。
ホンダとしては新型シビックを若い人に訴求したいと考えていて、実際にも初期受注では20代の比率が30%台に達していて、無限への問い合わせも非常に多いそうだ。彼らの期待にも十分に応える、走りを存分に楽しめる仕上がりとなっていたことをお伝えしておきたい。
ホイールだけでも走りが変わる!?
ヴェゼルは走りに関する変更はなく、主にエクステリアパーツの装着により見た目の印象を変えている。従来よりも一気にオシャレになったヴェゼルだが、特徴的なグリルガーニッシュにより、ちょっといかつい雰囲気になっているのは見てのとおり。もともとのロー&ワイドなフォルムを強調すべく、車体色と同じカラードのアンダースポイラーでノーマルとの差別感を図っている。
テールゲートスポイラーを好みで選んでもらえるよう、今回の大型のウイングタイプだけでなく小ぶりなダックテールタイプの2種類を設定している点にも注目だ。どちらを選ぶかでかなり印象は変わってくる。
足まわりは、1本あたり2.5kg軽量化できる鋳造ホイールにタイヤもよりスポーティなダンロップ「DIREZZA DZ101」(純正と同サイズ)を履かせている。無限といえば足まわりの巧みなチューニングにも定評があり、従来型のヴェゼルでも一式ラインアップしていたが、ノーマルがしっかりしている新型については性能的な取り分もあり検討中で、ひとまずホイールのみで様子見とのことだった。
ドライブすると、ノーマルがよくできていることもあって、これまた非常に乗りやすいことにあらためて感心。たしかにバネ下が軽くなったことで、足まわりがよく動いて路面への追従性が高まっているようで、持ち前の軽快なハンドリングと操縦安定性がさらに微妙によくなったように感じられた。
やや低音を効かせた、ほどよくスポーティなサウンドを実現しているエキゾーストは、ハイブリッドでもエンジンの鼓動を楽しみたい人にもってこいだ。
開発関係者によると、SUVゆえややロールが大きいのは否めないが、それを抑えるとともに、もう少しハンドリングのレスポンスを高めてスポーティな乗り味にしたいという思いはあるとのことで、そのあたりは今後に期待することにしたい。