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ホンダの新型「ヴェゼル」が機械式4WDを採用した理由とは? 走破性を体験してみた

2021年4月23日 発売

悪路を簡易的に再現し、新型「ヴェゼル」の悪路走行性能を少しだけ試した

 本田技研工業の新型「ヴェゼル」は2モーターハイブリッドシステム「e:HEV」を搭載した仕様と1.5リッターエンジンとCVTを採用する仕様があり、どちらにもプロペラシャフトを介して後輪を駆動する機械式の「リアルタイム4WD」が設定される。

プロペラシャフトを使った機械式の4WD

 e:HEVは低速時をはじめ電気モーターの力で走行する範囲の広いハイブリッドシステム。ハイブリッド車の4WDシステムは後輪を後輪専用の電気モーターで駆動する車種もあるが、新型ヴェゼルはフロントにあるパワーユニットからプロペラシャフトを介して後輪を駆動する構造を採用した。後輪に大きなトルクを加えられ、発進時から高速走行時まで駆動力をかけられることを特徴としている。

 プロペラシャフトを通すことはできたのは、センタータンクレイアウトなどパッケージの利点があったとしている。車両の下まわりを見れば、フロントからリアにかけてシャフトがしっかり通っている。

2モーターハイブリッドシステム「e:HEV」に機械式の「リアルタイム4WD」を組み合わせた

 ホンダの現在のリアルタイム4WDは、4輪駆動を基本に、走行状態に応じて前後の駆動力をきめ細かく最適に調整するというシステム。今回新しくe:HEVと組み合わせることで、高い応答性を持つリニアな制御ができ、先代から大幅な進化を遂げたという。

 コーナリング時には各種センサーからの情報によって最適な駆動力配分を行なうが、新型ではカーブを一定の加速で走行しても、横滑りなど車両挙動の変化が少なく安定したライントレースを実現したとしている。

悪路やスリップ時の走破性も高い、リアルタイム4WD

 まず臨んだのは、片輪を浮かすというコース。勢いをつけて走行すれば走破は難しくないが、途中で止まり、片輪が浮いてしまうと脱出が難しくなる。それでも、新型ヴェゼルのリアルタイム4WDでは駆動力が最適に配分され、アクセルを踏めばするすると動き出し、何事もなかったかのように走破できた。

片輪が浮いた状態で停止、ここから発進した
後輪が浮いた状態
プロペラシャフトが通っていることが分かる
駆動力配分はメーターパネル内に表示することでき、4輪のどこに駆動力をかけているかが分かる

 続いて、片側の前後輪をローラーに載せ、スリップ状態を再現したコース。通常ではディファレンシャルギヤの構造から滑った方に駆動力が抜けてしまうが、新型ヴェゼルでは少し滑って回転を始めるとブレーキLSDによって片輪を止めることで、もう片側に駆動力が伝わり、脱出ができる。こちらも特に何も操作せずにアクセルを踏んでいけばローラーから抜け出すことができた。

ローラーに片側の前後輪を載せ、空転状態を再現。このスリップののち、空転側にブレーキが自動的にかかり、反対側のタイヤに駆動力が伝わり脱出できた
ホンダの新型「ヴェゼル」に採用された機械式4WDの走破性を専用コースで試してみた

機械式4WDには雪国などから強い要望がある

 他のハイブリッド車では後輪にモーターを搭載した電気式の4WDもあるが、新型ヴェゼルに機械式4WDを採用したのは、雪国などから強い要望があったため。電気式では後輪の駆動については25km/hや40km/hまでと低速に限られることも多く、雪国などで通常走行時の走破性や走行安定性を得るためにはプロペラシャフトを使った機械式の4WDを採用するに至ったという。

 e:HEVのリアルタイム4WDでは単に駆動力を制御するだけでなく、ブレーキも統合的に制御する。減速してカーブに進入し、再び加速するシーンでは、加速時は前輪と後輪に高い応答性で駆動力をかけるとともに、旋回内側の前輪にブレーキをかけて、内側に向く力を助け、安定した姿勢のまま加速することを可能にしたという。

e:HEVとリアルタイム4WDを組み合わせ、高速走行時にも4輪に安定的に駆動力を配分する