試乗レポート
商品改良したマツダ「CX-5」のスポーツアピアランス&フィールドジャーニー試乗 予想を超える進化ぶり
2022年1月1日 07:00
この機にアクセサリーも充実
事前に開発責任者の松岡英樹氏やデザイナー氏との対談をお届けして、乗れる機会を楽しみにしていた新型「CX-5」をいよいよドライブすることができた。走りについても1年前の改良でずいぶんよくなったことを確認していて、これ以上どうするのだろうと思っていたら、しっかり向上していて、しかも思ったよりも上がり幅が大きくて驚いた次第である。
3つの個性が揃えられた中から今回は、SKYACTIV-D 2.2を搭載する「XD Sports Appearance(スポーツアピアランス)」の2WDと、SKYACTIV-G 2.0を搭載する「20S Field Journey(フィールドジャーニー)」の4WDをドライブした。
もともとCX-5のことはかなりスタイリッシュだと思っていたが、新しいスポーツアピアランスを目にしてさらにその思いが強まった。黒で縁取りしたボトムも、より新鮮味を高めている。
一方のフィールドジャーニーは、目玉の新色「ジルコンサンドメタリック」も効いて個性が際立って見える。17インチタイヤが妙に似合う。撮影用に用意されていた、オールテレーンタイヤを履きルーフキャリアなどのアイテムを装着した仕様もとても絵になっていた。
さらに、新たに豊富に用意されたアクセサリー類もなかなか凝っていて驚いた。クオリティ感も極めて高く、中でもチタンのマグカップが見せる独特の質感と軽さが印象的。取材時にはまだ正式な価格が分からなかったのだが、クルマのよさとともに所有欲をくすぐられる思いがした。
ラゲッジルームの使い勝手も改良され、フロアボードは前後を分割して上下段を設定できるようになり、フルフラットにもできるようになったおかげで車中泊しやすくなったのも歓迎だ。フロア下のサブトランク容量も大幅に拡大されて、フィールドジャーニーはリバーシブルのフロアボードとともにサブトランクも防水仕様になっている。とても重宝しそうなので、他のグレードでもオプションで選べるとなおよいように思えた。
さらに洗練された乗り味に
今回の改良における全車共通の進化点として、クロスメンバーの追加と、それに合わせてサスペンションチューニングを最適化したことが挙げられる。
まず、「XDスポーツアピアランス」の2WDからドライブしてみたところ、少し走ってみただけでも従来との違いは明らか。ピッチ挙動の低減や荒れた路面でのツブザラを拾いにくくなり質感が向上したとの説明どおり、より走りがなめらかでフラットになり、静粛性も高まるなど、さらに洗練された乗り味となっていた。
加えて操舵に対する走りの一体感も増して、すでに当初に比べてかなり改善されたように感じていたGVCの動作もさらにカドのないスムーズなフィーリングになったように感じられた。走りの一体感には、着座姿勢を改善するとともに取り付け剛性を高めたシートも大いに寄与しているに違いない。
SKYACTIV-D自体に変更はないが、ディーゼルらしい力強さと、音や振動もあまり気にならなないディーゼルらしからぬスムーズな走りを両立したドライバビリティの高さには、あらためて感心する思いだ。
独自のフィールドジャーニー
次いでドライブした「20S フィールドジャーニー」の4WDは、17インチのオールシーズンタイヤを履くほか、サスペンションや4WDシステムも微妙に差別化されているため、専用にオフロードモードが設定されるだけでなく舗装路での走りも少なからず違いがあるわけだが、やはりセオリーどおり乗り心地は路面への当たりがマイルドで動きもおだやかだ。
エンジン自体に変更はなく、1.6tの車両重量を2.0リッターのガソリン自然吸気エンジンで走らせると、やはり車速が高まるにつれて少々物足りなさを感じるのは否めないとはいえ、出足の俊敏さとダイレクト感の走りはディーゼルをしのぐ。軽快なドライビング感覚とあいまって、発進を繰り返す市街地を主体に日常的に使うのであれば、こちらのほうが心地よく使えそうに思えた。さらに今回、スポーツモードの特性に手が加えられたことで、選択するとよりメリハリのある走りを楽しめるようになったのも新しい。
フィールドジャーニーでは、オフロードモードの恩恵を特設コースで体験することもできた。対角輪が浮いてスタックしている状態からの脱出を試みたところ、ノーマルモードでも頑張れば脱出できないことはないのだが、オフロードモードに切り替えると断然ラクに脱出できることを確認した。
空転する車輪に個別にブレーキをかけて脱出できるようにするという「オフロード・トラクション・アシスト」の機能はすでに搭載されていたが、今回さらに登坂状態で勾配に応じてアイドル回転数を上げて走りやすくするという世界初の機能と、ガソリン車については低速ギヤでのロックアップを解除して空転を抑える機能が新たに追加された。
これらがどのように作動するのかを意識しつつ走ってみたところ、全体としては低速トルクのあるディーゼルのほうが走りやすかったものの、ガソリンもかなり走りやすく仕上がっていたことも印象的だった。ただし、新型のオフロードモードの真骨頂はぜんぜんこれぐらいにとどまる話ではなく、本当の目玉は中高速でのAWD制御とGVCオフロードモードにあり。それについてはいずれあらためて試せる機会があることに期待して、楽しみに待つことにしたい。
現行型になって5年が経過し、改良直前には数字が2ケタの新シリーズの情報も出るなどして、CX-5は果たしてどうなるのかと思っていたところ、予想をずっと超える進化ぶりに恐れ入った次第である。