試乗レポート

商品改良したマツダ「CX-5」のスポーツアピアランス&フィールドジャーニー試乗 予想を超える進化ぶり

この機にアクセサリーも充実

 事前に開発責任者の松岡英樹氏デザイナー氏との対談をお届けして、乗れる機会を楽しみにしていた新型「CX-5」をいよいよドライブすることができた。走りについても1年前の改良でずいぶんよくなったことを確認していて、これ以上どうするのだろうと思っていたら、しっかり向上していて、しかも思ったよりも上がり幅が大きくて驚いた次第である。

 3つの個性が揃えられた中から今回は、SKYACTIV-D 2.2を搭載する「XD Sports Appearance(スポーツアピアランス)」の2WDと、SKYACTIV-G 2.0を搭載する「20S Field Journey(フィールドジャーニー)」の4WDをドライブした。

 もともとCX-5のことはかなりスタイリッシュだと思っていたが、新しいスポーツアピアランスを目にしてさらにその思いが強まった。黒で縁取りしたボトムも、より新鮮味を高めている。

 一方のフィールドジャーニーは、目玉の新色「ジルコンサンドメタリック」も効いて個性が際立って見える。17インチタイヤが妙に似合う。撮影用に用意されていた、オールテレーンタイヤを履きルーフキャリアなどのアイテムを装着した仕様もとても絵になっていた。

 さらに、新たに豊富に用意されたアクセサリー類もなかなか凝っていて驚いた。クオリティ感も極めて高く、中でもチタンのマグカップが見せる独特の質感と軽さが印象的。取材時にはまだ正式な価格が分からなかったのだが、クルマのよさとともに所有欲をくすぐられる思いがした。

ジルコンサンドメタリックカラーのフィールドジャーニーはオプションパーツ装着車。ざらざらとした表面仕上げの前後バンパーをはじめルーフラック、横浜ゴムのオールテレーンタイヤ「GEOLANDAR A/T G015」などを装着してオフロードテイストを高めた仕様
こちらは2022年2月にマツダ販売店、マツダコレクション(オンラインショップ)で販売を開始するフィールドジャーニーをフィーチャーしたグッズ類。フィールドジャーニーに採用された内外装のテーマカラーを随所に採用したのが特徴で、ジルコンサンドカラーを用いたビックシルエットのTシャツやライムグリーンのアクセントを配したステンレスボトル、オールチタン製の1層構造のカップなどアウトドアでもタウンユースでも使えるアイテムが揃えられている

 ラゲッジルームの使い勝手も改良され、フロアボードは前後を分割して上下段を設定できるようになり、フルフラットにもできるようになったおかげで車中泊しやすくなったのも歓迎だ。フロア下のサブトランク容量も大幅に拡大されて、フィールドジャーニーはリバーシブルのフロアボードとともにサブトランクも防水仕様になっている。とても重宝しそうなので、他のグレードでもオプションで選べるとなおよいように思えた。

商品改良されたCX-5では荷室のフラット化やハンズフリー機能付きパワーリフトゲートの新設定などで利便性を向上。さらにフィールドジャーニーではラゲッジボードの裏側やサブトランクに防水加工が施され、濡れた衣服や汚れ物を気にせず収納することが可能になった

さらに洗練された乗り味に

 今回の改良における全車共通の進化点として、クロスメンバーの追加と、それに合わせてサスペンションチューニングを最適化したことが挙げられる。

 まず、「XDスポーツアピアランス」の2WDからドライブしてみたところ、少し走ってみただけでも従来との違いは明らか。ピッチ挙動の低減や荒れた路面でのツブザラを拾いにくくなり質感が向上したとの説明どおり、より走りがなめらかでフラットになり、静粛性も高まるなど、さらに洗練された乗り味となっていた。

 加えて操舵に対する走りの一体感も増して、すでに当初に比べてかなり改善されたように感じていたGVCの動作もさらにカドのないスムーズなフィーリングになったように感じられた。走りの一体感には、着座姿勢を改善するとともに取り付け剛性を高めたシートも大いに寄与しているに違いない。

 SKYACTIV-D自体に変更はないが、ディーゼルらしい力強さと、音や振動もあまり気にならなないディーゼルらしからぬスムーズな走りを両立したドライバビリティの高さには、あらためて感心する思いだ。

試乗車は2WDの「XD Sports Appearance」(357万5000円)。ボディサイズは4575×1845×1690mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2700mm
スポーツアピアランスではフロントグリル、シグネチャーウイング、バンパー下部、ホイールアーチ、ドア下ガーニッシュ、ドアミラーまで深い光沢によって精悍さを際立たせるブラックで引き締め、ホイールもブラックメタリック塗装の19インチを採用。フロントグリルに入るアクセントの赤色には、初代ロードスターのクラシックレッドを使用している。SKYACTIV-D 2.2は最高出力147kW(200PS)/4000rpm、最大トルク450Nm(45.9kgfm)/2000rpmを発生。WLTCモード燃費は17.4km/L

独自のフィールドジャーニー

 次いでドライブした「20S フィールドジャーニー」の4WDは、17インチのオールシーズンタイヤを履くほか、サスペンションや4WDシステムも微妙に差別化されているため、専用にオフロードモードが設定されるだけでなく舗装路での走りも少なからず違いがあるわけだが、やはりセオリーどおり乗り心地は路面への当たりがマイルドで動きもおだやかだ。

 エンジン自体に変更はなく、1.6tの車両重量を2.0リッターのガソリン自然吸気エンジンで走らせると、やはり車速が高まるにつれて少々物足りなさを感じるのは否めないとはいえ、出足の俊敏さとダイレクト感の走りはディーゼルをしのぐ。軽快なドライビング感覚とあいまって、発進を繰り返す市街地を主体に日常的に使うのであれば、こちらのほうが心地よく使えそうに思えた。さらに今回、スポーツモードの特性に手が加えられたことで、選択するとよりメリハリのある走りを楽しめるようになったのも新しい。

SKYACTIV-G 2.0を搭載する「20S Field Journey」は4WDのみの設定で、価格は323万4000円
エクステリアではシルバー塗装のフロント&リアバンパーセンターガーニッシュやサイドガーニッシュに加え、ブラックのドアミラーなどを採用。足下ではグレーメタリック塗装の17インチアルミホイールを採用するとともに横浜ゴムのオールシーズンタイヤ「ジオランダーG91」(225/65R17)を標準装備。SKYACTIV-G 2.0は最高出力115kW(156PS)/6000rpm、最大トルク199Nm(20.3kgfm)/4000rpmを発生。WLTCモード燃費は14.0km/L(4WD)
インテリアではフロントグリルのアクセントに使用したライムグリーンをシートステッチやパイピング、エアコンルーバーに採用。また、Mi-DRIVEにオフロード・モードを設定している

 フィールドジャーニーでは、オフロードモードの恩恵を特設コースで体験することもできた。対角輪が浮いてスタックしている状態からの脱出を試みたところ、ノーマルモードでも頑張れば脱出できないことはないのだが、オフロードモードに切り替えると断然ラクに脱出できることを確認した。

 空転する車輪に個別にブレーキをかけて脱出できるようにするという「オフロード・トラクション・アシスト」の機能はすでに搭載されていたが、今回さらに登坂状態で勾配に応じてアイドル回転数を上げて走りやすくするという世界初の機能と、ガソリン車については低速ギヤでのロックアップを解除して空転を抑える機能が新たに追加された。

 これらがどのように作動するのかを意識しつつ走ってみたところ、全体としては低速トルクのあるディーゼルのほうが走りやすかったものの、ガソリンもかなり走りやすく仕上がっていたことも印象的だった。ただし、新型のオフロードモードの真骨頂はぜんぜんこれぐらいにとどまる話ではなく、本当の目玉は中高速でのAWD制御とGVCオフロードモードにあり。それについてはいずれあらためて試せる機会があることに期待して、楽しみに待つことにしたい。

 現行型になって5年が経過し、改良直前には数字が2ケタの新シリーズの情報も出るなどして、CX-5は果たしてどうなるのかと思っていたところ、予想をずっと超える進化ぶりに恐れ入った次第である。

岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者の方々にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:安田 剛