試乗記

ランボルギーニの新型「ウラカン ステラート」に米国試乗 オフロードも意識したスーパースポーツは果たしてどんな乗り味?

ランボルギーニの「ウラカン ステラート」に米国で試乗した

オフロードに対応した特別装備

 オンロードやサーキットだけでなく、未舗装路やダートトラックでも運転する楽しさを最大限に享受できるという二律背反の性能を併せ持つスーパースポーツカーとして設計されたのが、ランボルギーニの「ウラカン ステラート」(以下ステラート)。その性能を披露すべく「BEYOND THE CONCRETE(コンクリートを離れて)」と銘打った試乗会が開催されたのは米カリフォルニア州のパームスプリングスだ。

 ベースモデルになった「ウラカン」と、非舗装路を表すイタリア語の「ステラート」をミックスした車名の本モデル。ボディサイズは4525×1956×1248mm(全長×全幅×全高)で、ノーマルモデルより5mm長く、23mm広く、83mm高い。オフロードモデルらしくグランドクリアランスは44mmアップされ、トレッドもフロント30mm、リア34mm拡大している。

 エクステリアでまず目を引くのは、四輪のホイールハウスにビス留めされたカーボンと樹脂の複合素材で整形された巨大なホイールアーチと、そこに収まるブリヂストンが専用設計したオールテレインの「DUELER(デューラー) AT002」ランフラットタイヤだ。ちょっと大袈裟すぎるほどの黒いオーバーフェンダーと、ゴツゴツとしたブロックの19インチオフロードタイヤが備わっているだけで、ただでさえ見るものを圧倒するウラカンが、より只者ではなくなったという雰囲気をあたりに振りまいている。

 さらにフロントの鼻先には長方形のLED補助ライトが2灯取り付けられ、ダート走行時の土埃を避けてクリーンな空気を取り入れるためルーフトップに取り付けられたエアスクープ、Sterratoの型押しロゴが刻まれたブラックのルーフレールなどが専用装備として取り付けられている。下まわりでは強化されたサイドステップや、丈夫で軽量なアルミニウム製の前後アンダーボディプロテクションなどを見ることができ、まさに「オフロードにも安心して飛び込んでいけます」と誘ってくれているようだ。

今回試乗したのは日本では2023年2月に発表された新型「ウラカン ステラート」(3116万5367円)。ベースモデル「ウラカン EVO」の車高を44mmアップしてオフロード走行も可能にしたモデルで、ボディサイズは4525×1956×1248mm(全長×全幅×全高)。タイヤはブリヂストンと共同開発したランフラットの「DUELER AT002」で、サイズはフロントが235/40R19、リアが285/40R19。ブレーキシステムはフロントが直径380mm、厚さ38mmのクロスドリル・カーボンセラミックディスクと6ピストン・アルミ製モノブロックキャリパー、リアは直径356mm、厚さ36mmのディスクと4ピストンキャリパーを備える
ウラカン ステラートのインテリア。ディスプレイにはオフロード走行に向けてピッチ・ロールインジケーター付きデジタル傾斜計やコンパス、地理座標測定器、操舵角測定器などが表示可能

 搭載するパワートレーンを見てみると、最高出力449kW(610PS)/8000rpm、最大トルク565Nm/6500rpmの5.2リッター自然吸気V10エンジンはEVOのRWDモデルと同じ出力。トランスミッションは7速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)と電子制御式四輪駆動システムを組み合わせるとともに、後輪にはハルデックス製の機械式セルフロッキングディファレンシャルが備えられている。

ウラカン ステラートは5.2リッターの自然吸気V10エンジンに7速DCTを組み合わせ、0-100km/h加速は3.4秒を実現

ターマックとダートを組み合わせたサーキットを走る

 試乗会場となったのは、米カリフォルニア州パームスプリングスから70マイル(約110km)離れた砂漠の中のサーキット「Chuckwalla Valley(チャックワラ・バレー)レースウェイ」。1周2.33マイル(3.75km)のホームストレッチ寄り50%が本コース上を走る舗装路面、奥側の50%は本コースを離れたダート路面というスペシャルステージが用意されていた。そして助手席にはテストドライバーのジャコモ・バッリさんがサポート役として同乗してくれている。

 早速ドライブモードを「スポーツ」に入れてコースイン。デューラータイヤのグリップ力はいかにと感触を試しつつ、右、右、左と抜けた先に用意されたダードコースに侵入していく。ここでドライブモードを「ラリー」に切り替えだ。凹凸はそれほどでもないけれども、スーパースポーツモデルでこんな砂地の路面を走っているという不思議な感覚を味わいつつ、ヘルメット内のスピーカー越しに伝わってくるジャコモさんからの「アクセルオフ、1つシフトダウン、コーナーのエイペックスを見て!」、さらに次のコーナーに向かって「1つシフトアップして、ガス!ガス!ガス!」という指示が飛んでくる。

 2速と3速を多用するダードでは、よく動くサスペンションとデューラータイヤのグリップが絶妙にマッチしていて、80km/h程度まで車速を上げてもコースを飛び出してしまうという不安感がない。ラリーモードのおかげで、600PSのトラクションが急激に路面に伝わらず、安定した姿勢が保てている点、また強固なアンダーガードによって不安なく轍部分に飛び込んでいけるのが素晴らしい。そして、アクセルを床まで踏み込みつつ、流れるテールに当て舵を取る作業は、まるでラリードライバーになったかのような気分になる。

 ダートを抜けると一旦停止。さらにスラローム部分を抜けることでタイヤのホコリを落とし、アスファルト路面で全開アタックを続ける。ゆるい右コーナーを抜けた先にある最終コーナーを130km/hぐらいで通過する時には、ノーマルウラカンにはなかったわずかな左右のロールを感じる。とはいえタイヤのブロック剛性は高く、ヨレているという感じではない。そのまま加速して短いストレートエンドでは190km/hあたりまで車速が伸びる。

 そして、自らの走行シーンが走行後にすぐに確認できるテレメトリーシステムを搭載しているのも嬉しいところ。ドライバー背後のロールケージに装着されたカメラで撮影した動画とともに、アクセルの開度やギヤ、加速度などが専用のアプリ上に表示されるので、次の走行への反省点などが明確に理解できるのだ。

ロールケージに装着されたカメラ
動画とアプリで走行後にすぐに自分の走りを確認することができた

一般路では快適なツアラーに変身

 サーキット走行を終えると、オレンジのステラートに乗り込んで広大な砂漠地帯にあるジョシュア・ツリー国立公園を縦断する200kmほどの帰路に着く。アスファルトの路面は舗装状態はそれほど良くなく、バンピーなポイントも結構あったけれども、お腹を擦ることはなさそう、という安心感があって快適なペースがキープできる。

 途中で見つけたジャンボ・ロックス・キャンプグラウンドの巨石の下で写真を撮るために砂地に分け入ったのだが、こんな芸当はノーマルウラカンでは不可能なことだ。パームスプリングスに近づくと、砂漠の中に設置された巨大な風力発電の風車の“林”にも遭遇。目を楽しませてくれる。3時間半のドライブを終えても、全く疲れを感じさせないのは、ステラートが優れたツアラーであることの証明だ。

 試乗会に参加したステラートの設計者の1人、ミーティア・ボルケート氏によると、「現行のウラカンの中では、STOがサーキット、テクニカがオンロード、ステラートがあらゆる場所で速いクルマ、ということで明確な棲み分けができました」と語ってくれた。そして実際に走ってみると、全くその通りであることが分かる。ランボ最後の純エンジン搭載車となったステラートにはこんな個性豊かなキャラクターが与えられたのだ。

ウラカン ステラートの設計者の1人、ミーティア・ボルケート氏

 そして、ステラートと同じジャンルにあるものとして唯一コレ、として思い浮かべるのがポルシェ「911」ベースの「911ダカール」で、そちらは2022年11月に発表されたばかりだ。限定生産数は2500台ということで、ステラートの1499台より1000台近く多い。スーパーSUVが揃ったあとにはこんなモデルが各メーカーから登場してくるのだろうか。

原 アキラ