試乗記

スズキの新型「GSX-8S」に試乗 毎日でも乗れるストリートバイクで300kmツーリング

2023年3月24日 発売

スズキのストリートバイク新型「GSX-8S」

 スズキのストリートバイク新型「GSX-8S」は、同時に登場した新型「V-STROM 800DE」とともに新設計の並列2気筒 775cm 3 エンジンを搭載、幅広いユーザーに向けて、毎日の移動からツーリングまでの利便性を両立した軽量で扱いやすい800ccクラスの新型モデルとして開発された。その、新型「GSX-8S」を数日間借り、約300km試乗する機会を得たので、その印象を伝えていきたい。

 今回、新型GSX-8Sとともにツーリングをした、大まかな走行ルートとしては、日本自動車工業会が5月25日に開催した「第6回メディアミーティング」に参加するという目的があり、最終目的地はバイカーズパラダイス南箱根。その数日前に東京都内で広報車両を借り出してから、人とクルマのテクノロジー展の取材で立ち寄った横浜で一泊し、そして目的地を目指した。

 帰りは箱根新道から西湘バイパス、1号線、首都高を経由しながら、埼玉にある自宅まで走り、総走行距離は約300kmとなった。走行シーンとしては、首都高速道路、東名高速道路、小田原厚木道路、箱根新道、ちょっとしたワインディングと、ほぼ高速道路や有料道路主体のツーリングであった。GSX-8Sと数日間を一緒に過ごし、5月25日についてはほぼ丸1日、バイクを運転していたことになるが、「毎日でも乗れそう」そんな印象が残ったバイクであった。

日本自動車工業会が「バイカーズパラダイス南箱根」で開催した「第6回メディアミーティング」

 GSX-8Sのシート高は810mmで、装備重量は202kg。身長169cm、股下77cmの記者がまたがると、シートを含めてライダーがまたがる部分がスリムに仕上げられているので、足つき性は良好。また、エンジン搭載位置などマスの集中化が図られているからなのか、立ち転けの不安を感じることはなかった。発進加速や交差点の右左折など、低速域でのとりまわしについては、250ccクラスのバイク並みに軽快とは言わないけれど、バランスを取ることに神経質にならなくていい印象が残っている。ただ、バイクを停車してバイクに跨りながら足を漕いで車両の位置を調整をしようといった時、ちょっとした傾斜があると「あっ重たい」と、やはり大型バイクであることを意識してしまう。

シートを含めて車体がスリムに仕上げられている

 エンジンは、最高出力59kW(80PS)/8500rpm、最大トルク76Nm/6800rpmを発生する新設計の並列2気筒 775cm 3 エンジンを搭載、量産二輪車初というクランク軸に対して90°に一次バランサーを2軸配置した「スズキクロスバランサー」を採用することで、振動を抑えながら軽量・コンパクト化を実現させたという。

 この新設計エンジンでは、クランク角度を270°に設定。これにより、エンジンを回せば心地よい鼓動感を感じることができるし、そんなにエンジンを回さなくても、股の下で静かな鼓動感を感じられるジェントルな鼓動感が印象に残った。

 また、今回の約300kmのツーリングを体験して感心したのは、ほとんどエンジンの振動を感じない領域があること。ギヤポジションを6速、速度にして70〜80km/hあたりで流していると、平坦路でのクルージングやゆるやかな下り勾配など、エンジンへの負荷が低い状態になると、ほんとうにエンジンの存在が消えると言ってもいいくらい振動が体に伝わってこない領域がある。記者の装着しているヘルメットの風切音が大きいのでそう感じるのかもしれないが、ライダーに伝わってくるのは、タイヤが路面を転がる振動と、チェーンがシャラシャラまわっている感触が伝わってくるだけ。

 この感覚、実は4輪車に乗っている時に覚えがあって、クルージング時など一定の領域でエンジンの存在が消えるハイブリッド車に乗っているかのような印象を覚えるとともに、このエンジンの振動が少ないという特長は、長距離ツーリングでは疲労感の軽減にもつながってくるのではと、思っている。

数日間を新型「GSX-8S」とともに過ごした

 約300kmを走行した燃費を報告しておくと、トリップメーターを確認すると305.3kmを走行して、燃費計の数値は28.5km/L。給油したレシートを確認すると給油量は10.62Lで、ガソリンはハイオク指定となっており価格は1816円(171円/L)であった。燃料タンク容量は14Lとあるので、一回の給油でもう少し距離を走ることができるだろう。

燃料消費率はWMTCモード値で23.4km/L(クラス3、サブクラス3-2、1名乗車時)、国土交通省届出値:定地燃費値で34.5km/L(60km/h、2名乗車時)

 記者は、「ツーリングに行きたい!」と思ったときにバイクを借りるレンタルバイク生活をプライベートで過ごしている。なので、「せっかくだから」と、憧れの気持ちだけで大排気量の大型バイクを借りてみては、大排気量エンジンが奏でる刺激的な鼓動感に満足しつつも、バイクを降りてからの絶望的な取り回し重さに疲れ、「ああ、お腹いっぱい、もうしばらくはツーリングはいいかな」を繰り返してきた。今回、GSX-8Sを試乗して思ったのは、排気量の大きなエンジンで体験できる刺激的な部分、スリムに仕上げられた車体による使いやすさの部分、それが絶妙なバランスで仕上がっていて「これだったら毎日食べても飽きない」的な、このバイクなら毎日乗れそう、そんな気分にさせてくれるバイクであった。

 GSX-8Sを所有するための価格は106万7000円。個人的には、ドゥカティのスクランブラーや、同価格帯のKTMモデルなどと乗り比べながら、どれにしようかと悩みながら、選択肢の1つになるモデルになるのかなと思う。いずれにしても、乗ってみないと分からない個性や特長があるので、気になる人は一回試乗してみてもらいたい。

車体色は「パールテックホワイト」「パールコズミックブルー」「グラススパークルブラック/マットブラックメタリックNo.2」の3タイプ。試乗車両は「パールテックホワイト」で、連邦軍のモビルスーツ風をイメージして、どこかにアクセントカラーとして赤と黄色のカスタムパーツを装着して仕上げたい気分
編集部:椿山和雄