試乗レポート

縦置きV、横置きV、L型、水平対向、気になる輸入バイクを乗り比べ、JAIA輸入二輪車試乗会

2023年4月12日 開催

 日本自動車輸入組合(JAIA)は4月12日〜13日の2日間、輸入二輪車試乗会・展示会を大磯プリンスホテルにて開催した。JAIA加盟各社の最新モデルを取り揃えた試乗会は、輸入二輪車の魅力とその走りを報道関係者に理解してもらうために毎年行なっているもので、記者も実際に試乗してみた。

 JAIAによると、2022年の輸入二輪車の新規登録台数は2万6271台となり、2021年の2万3073台と比べ13.9%増、4年連続のプラスとなった。これはコロナ禍の影響を受け「3密を回避した移動手段」として、さらに「密に成らない遊び方」として趣味性が高く、多種・多様且つ個性的な輸入二輪車に目が向いた結果とJAIAでは考えており、2023年も趣味性の高い車両や新型車等を中心に堅調に推移すると期待している。

 1枠45分を基本にさまざまなブランドのバイクに乗れるという、デパ地下の高級食材売り場を試食してまわるかのような試乗会。縦置きVツイン「モト・グッツィ V7 ストーン」、横置きVツイン「ハーレーダビッドソン ローライダー ST」、L型ツイン「Ducati スクランブラー・アーバン・モタード」、水平対向のボクサーツイン「BMW R 1250 R」をセレクトして、2気筒エンジンモデルを乗り比べしてみた。

モト・グッツィ「V7 ストーン」

モト・グッツィ V7 ストーン

 最初に試乗したのは、1921年に創業し、2022年で100周年を迎えたイタリア最古のモーターサイクルブランド「モト・グッツィ」。試乗会には「V7 ストーン」のほか、縦置きVツインエンジン搭載のクラシックトラベルエンデューロ「V8 5TT」、アダプティブ・エアロダイナミクスやセミアクティブ・サスペンションなどの最新テクノロジーを満載したニューモデル「V100 Mandello S」なども用意されていた。

 試乗した「V7 ストーン」は、最大出力48kW(65HP)/6800rpm、最大トルク73Nm/5000rpmを発生する空冷4ストロークの縦置き90°V型2気筒OHV 2バルブ 853ccエンジンを搭載。ボア84mm×ストローク77mmのショートストロークタイプ。乾燥重量198Kg、車両重量218Kg (走行可能状態、燃料は90%搭載時)で、価格は134万2000円。

 V7 ストーンは、Vツインエンジンを縦置きに搭載して、エンジンヘッド部分が左右に張り出しているのが特徴的。パッと乗って感じたのは、エンジンの存在が強調された力強い見た目の印象とは違って、今回乗った4台の中で一番フレンドリーな乗り味だったのが印象的。全体としてレトロな印象で、エンジンを回せば元気よく走ることもできるが、普段の日常域で使用する回転域のエンジントルクが使いやすく、峠を攻めるというよりは街中をトコトコとゆったりと流すのが似合うバイクかなと感じた。

ハーレーダビッドソン「ローライダー ST」

ハーレーダビッドソン ローライダー ST

 続いて試乗したハーレーダビッドソンは同試乗会に、デザインを一新してミルウォーキーエイト117エンジンを搭載した「ブレイクアウト」や、装いを新たにデビューした「ナイトスタースペシャル」など、ハーレーダビッドソン2023年モデルを用意していた。

 その中から試乗した「ローライダー ST」は、馬力78kW(105HP)/5020rpm、エンジントルク168Nm/3500rpmを発生するV型2気筒 1923ccの「ミルウォーキーエイト117」エンジンを搭載、ボア103.5×ストローク114.3mmのロングストロークタイプ。出荷時重量で315kg、車両重量327kg、価格は307万7800円〜313万2800円。

 今回試乗した中では、価格も重量もヘビー級の大型クルーザー。「はたして、自分はこのバイクを運転できるのであろうか?」とライダーを躊躇させる迫力があるのだが、ひとたびバイクに跨ってしまえば、ずっと乗っていたいと思わせる安定感を持っている。搭載される1923ccのVツインエンジンは、高いギヤポジションのままでも、パカッとアクセルを捻ると、ドドドドとしっかりグリップを握っていないと、後ろにひっくり返るのではないかという、猛烈な加速が印象に残った。

ドゥカティ「スクランブラー・アーバン・モタード」

ドゥカティ スクランブラー・アーバン・モタード

 3台目は、イタリアのボローニャに本社を置く1926年創業のモーターサイクルブランド「ドゥカティ(Ducati)」。試乗会には、最新の「ムルティストラーダ V4S」、2023年新モデルの「DiavelV4」などを用意していた。

 試乗した「スクランブラー・アーバン・モタード」は、最高出力53.6kW(73PS)/8250rpm、最大トルク66.2Nm(6.8kgm)/5750rpmを発生する空冷L型2気筒2バルブ、803ccの「デスモドロミック」エンジンを搭載。ボア88×ストローク66mmとショートストロークタイプで、価格は142万9000円。

 今回の試乗車の中で、一番乗りやすくてエンジンを回して楽しかった。楽しい理由をあれこれ考えていくと、スクランブラー・アーバン・モタードは乾燥重量で180kg、車両重量で196kgとあり、記者は軽量なモデルが好きなんだなということに気がついた。空冷L型2気筒エンジンは、ドカドカドカとけたたましいけれど、嫌いではないサウンドで、ライダーの気分を盛り上げてくれる。

BMW R 1250 R

BMW R 1250 R

 最後は、1923年よりモーターサイクルを製造し、2023年で100周年を迎えるドイツが誇るBMWの二輪ブランド「BMW Motorrad」。試乗会には、新型モデルの「M 1000 R」に加え、モデルチェンジを迎えた「S 1000 RR」「R 1250 R」「R 1250 RS」や主力商品である「R 1250 GS Adventure」「R 18」など各種モデルを用意していた。

 試乗した「BMW R 1250 R」は、2月20日より注文受付を開始(納車開始は3月以降予定)した新型モデル。ボクサーエンジン搭載のピュアなネイキッド・ロードスター・モーターサイクルとして、最高出力100kW(136PS)を発生する水平対向2気筒 1254ccボクサーエンジンを搭載。ボア102.5×ストローク76mmのショートストロークタイプ。インテーク側のバルブタイミングとバルブリフトを変化させる「BMW ShiftCamテクノロジ」により、全回転域で力強いパワーと極めて滑らかで静かな走りと、優れた燃費性能を実現させたとしている。価格は171万3000円。

 記者は、BMWのバイクに乗るのは初体験であったが、このバイクに乗ってみて思い出したのが、TVアニメ「美味しんぼ」の第17話「もてなしの心」。このアニメの劇中で「米粒の大きさをそろえて炊き上げると、美味しくご飯が炊き上げる」といったことが描かれていた記憶があるが、この「R 1250 R」は、ブレーキやクラッチのレバー、ギヤチェンジペダルの操作感、タイヤからサスペンション、シートを伝わってくる振動、ビューンと回るエンジンのビート感、ライダーの体に伝わってくる感触すべてにおいて、“なにか粒が揃っている”、そんな印象を受けた。また、運動性能の面では、パイロンスラロームで左右に車体をバンクさせたときに、鉄道車両にある「振り子式車両」のようなイメージでコーナリングする不思議な感覚と安心感があった。

 今回試乗した4モデルは、国産メーカーでは馴染みのない、縦置きVツイン、水平対向エンジンモデルに乗ってみたかったというのがセレクトのポイントで、それぞれのブランドに独自の魅力があることが分かったのが大きな収穫であった。と、いろいろなブランドのバイクを試乗してしまうと、どれもいいバイクで、どれか1台を選べと言われても、なかなか決められない状況に陥ってしまう悩みもある。

 しかし、この記事を仕上げるにあたり、しばらく時が経ってから思い出すと、もう1回乗ってみたいバイクと、もうお腹いっぱいかなというバイクは、おのずと浮かび上がってくるものなので、気になるモデルがあれば、お店の試乗車でも、あるいはレンタルバイクで1日借りてみるとか、1度試乗してみると自分に合う1台を見つけられるのかもしれない。

編集部:椿山和雄