インタビュー

【インタビュー】ダイハツ「ロッキー」開発デザイナーが語るインテリア設計思想

あえて高くしたセンターコンソールなど、こだわりを聞いた

 2019年の後半にデビューして以降、順調な滑り出しのダイハツ「ロッキー」。そのインテリアで目を引くのは上面のフラット感が強調されたインパネだ。また、カラーマテリアルでもシートやインパネまわりに赤の差し色が入るグレードもある。そこでエクステリアデザインインタビューに続いて、インテリアデザインについてもダイハツ工業 DNGAユニット 開発コネクト本部 デザイン部 第1デザイン室 国内スタジオ主担当員の奥野純久氏に話をうかがった。

見直され、熟成されたインテリア

――ロッキーのインテリアはこれまでにはない新しい印象を受けます。このインテリアはどのような経緯のもとに生まれたのでしょうか。

奥野氏:はい、東京モーターショー2017に出展したコンセプトカー、DN TRECではできるだけシンプルに軽く見せるというイメージでデザインしました。それを踏まえながらも、そのまま作るのではなく一度全部見直した上で、どういうアイデアや世界観が作れるかを考えました。

――なぜ見直したのですか。

奥野氏:そのままデザインを進めるのではなく、キーワードである“クリア、洗練、アクティブ、力強さ、独創的”に合致する方向のアイデアを取り入れたよいデザインがもっとあるのではないかと考えたからです。もっといい表現や、もっと考えていることが表せるのではないか。それで1度見直しをしようと思い、さまざまなアイデアスケッチを描きました。

アイデアスケッチにはたくさんのイラストが描かれる

 その中で、カジュアルで楽しそうな雰囲気ということで、アイデアスケッチの中の“O”案に決まりかけたのですが「少し玩具っぽすぎるのではないか?」という意見が出たのです。これは、ダイハツ内でのロッキーの位置付けに関係があります。つまり、軽自動車よりもひとつ上の存在になりますので、「もう少し“しっかりと”運転できる雰囲気などを織り込んだ方がいい」という話になったのです。

アイデア選考会に出た3つのデザイン案

 そのため視界をよく、またすっきり見せるためにできるだけ上面は何もないようにしました。その考え方ですが、このクルマはシティユースがメインではあるものの、SUVですからアウトドアに出かけることもあるでしょう。その時にワクワクしたり、また運転すること自体にもう少し重きを置こうとしたのです。そこでコクピット感を抱けるように、しかしあまり“ぎゅっと”はさせないようにしています。センタークラスターは4.5度ぐらいドライバー側に向けました。「どのくらい角度をつけると傾けすぎになるか」などを研究した結果の角度です。設計部門的にもそのくらいだったら問題ないということでした。

ファイナルスケッチ。まだあくまで案の段階であり、このスケッチをベースにモックアップ化が始まっていく

実車でもスケッチ案のとおりセンタークラスターが4.5度ほどドライバー側に向けられ、運転席にワクワクしてくるコクピット感がプラスされた
運転席側を向くことで視認性も向上

 このように、運転席まわりを少し囲まれた感じとしながらも重くなく、軽く見えるようにしながら、そのうえでSUVの力強さやワクワク感を与えています。エアアウトレットなどのパーツを少し大きめにして、赤の差し色などを入れて“楽しさ感”を与えたこともその一例です。フロントコンソールなども通常は真っ黒にするのですが、例えばカバンなどで中を開けるとオレンジ色が入っていたりしますよね。それをヒントにして赤の差し色を入れました。実はフロントコンソールの内側は別パーツですので、その色を変えればこのようなことができるのです。実用面でも赤い中に携帯などの黒い物を入れた時には見つけやすい。そういった普段の使いやすさや、プロダクトとしての雰囲気を赤い差し色で表現したのです。

赤く見える部分は内側のパーツで、外側と色を変えることでアクセントに利用

あえて高くしたセンターコンソール

――センターコンソールが高くなっているのも特徴的ですね。

奥野氏:はい、もう1つこだわったことは、パッとドアを開けた時に「普通のハッチバックをベースにちょっと車高を上げただけ」とは思われたくないということです。そことはちょっと違うぞ! という風に見せたかった。それでこだわったのがセンターコンソールです。普通ハッチバックは低くするのですが、あえてセンターコンソールを高い位置に持ってきて、骨太に見せています。インパネが左右にどんっと広がる中に、しっかり骨太のコンソールがついている。つまりドアを開けた時にそこが1番目立つようにしたのです。そしてセンターコンソールにシルバーの加飾を入れてさらに目立つようにもしました。

あえて高い位置に設定したセンターコンソール

――通常コンソールは低くして、室内を広く見せるのが主流です。それをあえて高くしているのは面白いアイデアですね。

奥野氏:パッケージングの広さはダイハツとしても自信があります。そのうえで、インパネのアッパー部分はそこそこ厚みを持たせ、天面はなるべく薄くシャープなものでワイドに見せています。一方、下半身は少し優しい断面で包み込まれた感じを演出しました。

 また、操作系も従来のダイハツのものよりも少しずつ手前に配しました。これはDNGAのパッケージングで新しく再構築したことで可能となったのです。ちなみに新しいタントも前の世代よりも操作系は少し手前にしてあります。これはドライビングポジションが少し変わったのでより使いやすいようにした結果です。

 また、通常のハッチバックですと左右のエアアウトレットなど、インテグレート(統合)させるような所をわざと手前にして、赤い差し色を入れたりもしています。この赤の差し色は単体で見るとくすんだ赤なのですが、黒い室内ではちょうどいいぐらいの赤を何種類も作って進めていったのです。

赤の差し色を使ったエアアウトレット

――質問メーターまわりもかなり変わりましたね。

奥野氏:メーターまわりはフル液晶“風”といっていますが、7インチの小さいものと従来からある別のユニットを組み合わせることで大きく新しく見せています。

 最初の企画ではもう少し小さなデジタルメーターが入る予定だったのですが、新しさと画面が切り替わることでユーザーがワクワクできるのではと企画部門と設計部門に投げかけて、こだわって作り上げました。


コンパーノレッドは鳥居の赤から

――インテリアのカラーや材質にもかなりこだわったと聞いています。

奥野氏:内装のカラーも“洗練、クリア、アクティブ、パワフル、独創的”というキーワードをもとに、内装デザインの考え方を受けながら機能的なところと下半身のAセグならではの親しみやすさ、優しさみたいなところを表現。さらに、カラーデザイナーが、靴などで若者が反応するようなものの表現をいかにクルマの中に取り入れられるかに、すごく時間をかけてデザインしました。

 特にシートの表皮部分は、若者が履くような靴のジオメトリックなパターンなどを組み合わせて作っています。その表現は統一感を持たせたいと、本来ならばハイグレードとローグレードでは表皮など全部入れ替えるのですが、できるだけイメージを残しつつお客様に安い価格で提供するために、センター部分は同じ表皮を使っています。そこに白のステッチや赤のパイピングを入れることで、印象を変えているのです。

XとGグレードのシートは、フルファブリック(フロント赤パイピング付))
プレミアムグレードのシートは、フルファブリック×ソフトレザー調シート(フロント/リア 白ステッチ付)

 ボディカラーも日常に似合う色として提案しています。人に似合って、そして生活に似合って風景に似合う。特別なスポーツカーでもなく高級なSUVでもない。そういった中で誰もが選べるコアとなるカラーのほかに、オプション(有償色)として、ブランドの姿勢を表すチャレンジングなカラーと、会社の考え方とお客様を繋ぐコミュニケーションカラーを用意しました。コンパーノレッドは、その2つ兼ね備えたものです。モーターショーの時は“朱レッド”と呼んでいたこのカラーは、鳥居の赤をイメージしているのです。海外展開するにあたっては日本のクルマですから、日本の色、朱色、鳥居の色をモチーフにしたのです。

鳥居の赤をイメージしつつ、会社の考え方とユーザーを繋ぐコミュニケーションカラーとなるコンパーノレッド
ブラックマイカメタリック×コンパーノレッドの2トーン仕様もある
レーザーブルークリスタルシャイン
マスタードイエローマイカメタリック
ファイヤークォーツレッドメタリック
ナチュラルベージュマイカメタリック
シャイニングホワイトパール
ブライトシルバーメタリック
ブラックメタリック
ブラックマイカメタリック×シャイニングホワイトパール
ブラックマイカメタリック×ブライトシルバーメタリック