レビュー

【スタッドレスタイヤレビュー】ブリザック史上最高性能、ブリヂストン「ブリザック VRX2」

アクティブ発泡ゴム2などで、氷上ブレーキ性能10%短縮

ブリザック史上最高性能という「BLIZZAK(ブリザック) VRX2」。アクティブ発泡ゴム2などで、氷上ブレーキ性能10%短縮、摩耗ライフ22%向上、静粛性31%向上を実現

 北海道士別市にあるブリヂストン 北海道プルービンググラウンド。この北海道プルービンググラウンドを舞台に、ブリヂストンが今シーズンから投入する新型スタッドレスタイヤ「ブリザック VRX2」の事前試乗会が開催された。この事前試乗会におけるブリザック VRX2のレポートをお届けする。

ブリザック VRX2の事前試乗のため、北海道士別市にあるブリヂストン 北海道プルービンググラウンドを訪れた
タイヤサイズによって若干の変化があるが、新トレッドパターンで性能の向上を図った
VRX2のトレッドパターンは非対称。左がイン側で、右がアウト側。前作のVRXと比べるとラグ溝(横溝)の流れが素直になり静音化に貢献しているように見える。一方サイプは各方向に刻まれ、横方向のグリップ力を向上させているのだろう
高級感のあるサイドモールディング。前作VRXでは凸モールドだったが、新作VRX2はプレミアムタイヤの「レグノ」同様凹モールドで製品名を刻む

ブリザック史上最高性能というVRX2の氷上性能

氷上の性能をチェック。特殊試験路のため撮影も制限された状態

 まずボクがステアリングを握ったのはプリウス(4WD)。施設内に設けられたインドアの氷上直線路。ドーム内ゆえに氷上環境はスケートリンクのように一定に保たれている。ここで氷上ブレーキをテストするのだ。まずは旧モデルとなるブリザック VRXから始める。25km/hまで加速して急ブレーキをかける。ABSがけたたましく作動してプリウスは停止。もちろん氷上だからドライ路のような減速Gはない。

 ボク自身はスキーが大好きなので、雪上走行は慣れている方だが、やはり氷結した路面はできれば走りたくはない。ブレーキによる減速性能が極端に落ちることと、操舵が効きにくくなり障害物を回避しにくくなり、カーブで対向車線にはみ出してしまう危険性が高くなるからだ。ボクのようなプロのドライバーでも、氷上のブレーキはABS任せにする。それが一番安全で、一番短く止まれるからだ。

 旧モデルとなるVRXでも、予想していた以上によく減速しプリウスは止まった。次に、VRX2を履いた同じプリウスに乗り換え、同じ速度まで加速して急ブレーキ。先ほどとは明らかに初期制動(ブレーキ踏み始め)が強い。結果、新開発VRX2を装着したプリウスは、VRXを装着したプリウスに比べて約1車身短い距離で停止したのだ。もう一度、二度と試してみる。その結果、制動距離が伸びた時でもVRXに比べて半車身は短い距離でVRX2は止まれることが分かった。

 もともとブリザックは雪上性能、とりわけ氷上性能が高く、キング・オブ・スタッドレスと呼ばれているとかいないとか。ブリヂストン自体も「ブリザックの使命はダントツの氷上性能を追求し続けること」と断言しているくらいなのだ。ブリヂストンの調査によると、降雪地帯でのブリザック装着率は15年連続で1位。特に、北海道/北東北主要都市での一般ドライバー装着率は44.9%で、北海道・札幌市内を走るタクシーの装着率はなんと70.6%にも上るのだという。

ブリザックの歴史。発泡ゴムがブリザックをトップブランドに押し上げた
VRX2の総合性能

 15年前というと、MZシリーズからアイス性能を強化したREVO 1がデビューした2003年からということになる。その後、REVO 2(2006年)、REVO GZ(2009年)、VRX(2013年)とブリザックは進化してきた。この進化の過程で注目なのはREVO GZ(2009年)で、夏用タイヤの「Playz(プレイズ)」の技術を投入してトレッド面を非対称形状としたことで直進安定性を向上させている。そしてVRX(2013年)では、これにプラスして転がり抵抗を低減させて環境性能(燃費)を向上させているのだ。つまり、圧倒的な技術革新によってブッチギリのトップの座を守り続けているブリザックなのだが、今回約4年ぶりに投入する新商品VRX2のトピックは、より安全で安心な冬のカーライフを提供するために、氷上ブレーキ性能のさらなるアップと摩耗性能を向上させ、走行時のロードノイズを低減して静粛性を向上させていること。さらに109サイズという、ほぼフルサイズをカバーするラインアップを用意している。

 まず、氷上ブレーキ性能ということで、冒頭から氷上ブレーキテストの模様を記述したのだが、このとき加えてスラローム的にステアリングをわざと深く切り込み、転舵時のグリップレベルを比較してみた。こちらも明らかにVRX2の方が、ステアリングに感じるフロントタイヤのグリップレベルが高い。

 その後、氷上の旋回路でより速度を上げて試してみたのだが、グリップを失う瞬間が分かりやすいのだ。氷上では、いつの間にかグリップがなくなっていることがよくあるが、このグリップ喪失の境目が分かりやすいことは安心感にもつながる。

氷上旋回路。つるつる路面を旋回でき、しかもその限界が分かりやすい

ブリザック VRX2に投入されたテクノロジ

 では、どのようにして氷上性能を向上させたのか? ここからは技術論になる。氷の上だとなぜ滑るのか?というと、氷とタイヤの間に水の膜が発生するからだ。この水の膜を取り除く、つまり除水することでタイヤが直に氷に接地しグリップ性能を発揮する。つまり、いかに除水するかがカギとなる。

最新ブリザックに投入されたテクノロジ
アクティブ発泡ゴム2
新しいトレッドパターン
摩耗ライフの向上
静粛性の向上

 ブリヂストンではこの問題に対してVRXからアクティブ発泡ゴムという、トレッド面のゴムの中に非常に小さな気泡と水路を多数持たせ、親水性の膜を張ることで、氷結路表面の水を取り込みゴムを接地させてきた。このアクティブ発泡ゴムは気泡が入っているため、ゴムそのものが柔らかく、細かな凹凸のある路面にしっかりと食いつく性質がある。VRX2では、このアクティブ発泡ゴムに新シリカを配合したことでさらにグリップ性能が向上しているのだという。

 トレッドパターンについては、VRXのトレッドパターンではABSが作動した時の断続的な制動によって“ブロック倒れ”という現象が発生して、接地面積が減少していることが分かったのだ。そのため、VRX2ではブロックサイズを大きくして変形しにくくしている。これによって前後ブロック剛性が24%アップして接地面積が向上。さらに、ひっかき性能もブロックエッヂ・サイプエッヂを最適化して達成しているのだ。

 ブロック剛性のアップは、トレッドパターン変形によるタイヤと路面の滑りが少なくなったことで、結果としてライフ性能をも向上させるという2次効果も起きた。つまり、長持ちするのだ。ところで静粛性に関して、スタッドレスタイヤは溝の体積が大きいためパターンノイズが大きくなりやすい、というデメリットを持っている。そこで、1本1本のラグ溝体積とピッチずらしとの最適化を行ない、特に高周波のパターンノイズを低減させることができたという。また、発泡ゴムはスポンジのように入力を吸収するので、騒音エネルギーの緩和には有利なのだ。

 試乗は氷上に限らず、雪上路と一般路も走った。特に雪上路は交通法規が関与しないクローズドコースなので、かなり思い切ったドライビングも行なった。ムーヴ、ゴルフそしてクラウン、セレナで試乗したのだが、印象的だったのはクラウンのリアタイヤのグリップレベルが高く、トラクションがかかるのでアクセルONでのコーナー脱出では、フロントが押し出されるのを感じたほど。また、セレナでは重心高が高いがゆえに、タイヤにはテコの原理でよりストレスがかかるのだが、VRX2は荷重の移動に対してはっきりと応答してグリップレベルが上がるのを感じる。一般道の走行では、トラックなどが走るため凍った轍などが存在するのだが、全般として安心して走ることができるタイヤだと感じた。

各種用意された試乗車
リアグリップの高さを確認できたクラウン
意外と楽しかったムーヴ
セレナの4WDは重心高が適切で、しっかりしたグリップが出る
北海道の一般道も試乗。どこまでも真っ直ぐ続く道が北海道
一般道でも安心の性能
全109サイズで発売された「ブリザック VRX2」。特殊なクルマでない限り、ブリザック VRX2を装着できるだろう。ただし、季節商品であるため見込み生産となっており、確実に希望のサイズを入手したい場合は早めの対応がお勧め

 ライバルよりも10%短く止まる「効き」を目標とし、効き続ける「持ち」をも達成したVRX2。まだ記憶に新しい2014年2月の大雪。あれ以来、非降雪地域の都会でもスタッドレスタイヤ保有率は31%と増加傾向にある。ゲリラ豪雨などの異常気象が続く昨今。今年の冬の備えの検討要素としていただきたい。

松田秀士

高知県出身・大阪育ち。INDY500やニュル24時間など海外レースの経験が豊富で、SUPER GTでは100戦以上の出場経験者に与えられるグレーテッドドライバー。現在62歳で現役プロレーサー最高齢。自身が提唱する「スローエイジング」によってドライビングとメカニズムへの分析能力は進化し続けている。この経験を生かしスポーツカーからEVまで幅広い知識を元に、ドライビングに至るまで分かりやすい文章表現を目指している。日本カーオブザイヤー/ワールドカーオブザイヤー選考委員。レースカードライバー。僧侶

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