レビュー

【スタッドレスタイヤレビュー】TOYO TIRE「オブザーブ・ギズ2」はアイスもスノーも大幅進化

橋本洋平がTOYO TIREの新型スタッドレスタイヤ「OBSERVE GIZ2(オブザーブ・ギズツー)」に試乗

 TOYO TIREが6年ぶりにスタッドレスタイヤのモデルチェンジを行なう。新たに登場した「OBSERVE GIZ2(オブザーブ・ギズツー)」は、従来通り吸着力や吸水力にフォーカスして開発が行なわれ、第一に氷上性能を進化させることに注力している。だが、それで終わらず、経年性能維持という新たな領域にトライしたところが新しいポイントだ。市場調査を行なえば、まずユーザーが求めるのはアイス性能やシャーベット路面における性能の高さ。その上で2年目以降もきちんと性能を発揮することが要求されていたとのこと。エンドユーザーの声に耳を傾け、それに沿った製品を開発したのが、オブザーブ・ギズ2というわけだ。

新型スタッドレスタイヤのオブザーブ・ギズ2
ユーザーがスタッドレスタイヤに求める性能
あらゆる路面に対応することが求められる
アイス性能を上げただけでなくアイス性能の経年劣化も低減したオブザーブ・ギズ2

新素材配合のコンパウンドとインアウト指定のトレッドパターン

 そんなオブザーブ・ギズ2の最大の特長は、氷への密着性能の向上や経年アイス性能の維持を達成するために、「持続性密着ゲル」という新素材を配合した新たなコンパウンドの採用がポイントだ。これは従来よりも柔らかい「持続性密着ゲル」がコンパウンド中に分散することで、ゴムの密着性を上げ、時間が経っても柔らかさが持続する効果があるとのこと。また、アイス性能アップのために重要となるのは、トーヨータイヤならではといえる、氷より硬く、アスファルトより柔らかい「クルミ殻」によるひっかき効果も継続して使用。「NEO吸水カーボニックセル」による氷の表面に浮き上がる水の吸水も行なっている。さらにこの新コンパウンドはシリカ増量やグリップポリマーを配合することで高いウェットグリップ性能も実現しているところもポイントの1つだ。

吸水、密着、ひっかきの3つでアイス性能をアップ
持続性密着ゲルの新配合によりさらに密着。しかも年月が経っても柔らかさが持続する
シリカ増量とグリップポリマーにより高いウェットグリップも実現

 トレッドパターンは3本の主溝を備えた非対称パターンとなっている。それとクロスするように横方向に多数の大きい溝を配置することで、アイス、スノーのトラクション効果を持たせているところがポイント。このほか、3連ブロック、バイティングエッジによる引っ掻き効果も期待できそうだ。ショルダー部に配されるバットレスエッジは、ブロックの中央部ではラウンド形状を、両端部ではスクエアなエッジを持たせることで、轍性能を向上させつつ、エッジを効かせることに成功。さらにコンビネーションブロックによる制動製、旋回性の向上と、そして吸着3Dサイプの採用により、サイプの閉じ込みを抑制することで、除水効果も発揮するなど、細部まで拘り抜いた設計が行なわれている。

 こうした進化によって、アイス性能は旧製品の「OBSERVE GARIT GIZ(オブザーブ・ガリットギズ)に比べて8%向上。旋回ハイドロプレーにング性についても4%向上したという。また、トレッドゴム硬度変化についても良好になり、長く使えるスタッドレスタイヤとなったところもギズ2の進化だ。

インアウト指定になったトレッドパターン
イン側
センター
アウト側
断面
オブザーブ・ガリットギズ(上)とオブザーブ・ギズ2(下)のトレッドパターン比較
加減速時にもサイプの閉じ込みを抑える吸着3Dサイプ
サイプの比較用モデル
同じ力で押した場合もサイプが閉じていないのが分かる
アイス制動性能で8%向上
ウェット制動性能で18%向上
経年による氷上性能の低下も抑えられる

アイスでもスノーでも体感できた確かな進化

 それを体感するために、まずはアイス路面で新旧比較を行なう。ガリットギズを体感した後にギズ2に試乗してみると、まずは操舵感が圧倒的にシッカリとしていることに驚く。剛性を感じさせるタイヤだ。それは舗装路面であっても同様。手応えが確実に跳ね返ってくるところが好感触だ。早速、旧製品と同じ車速でフル制動を開始すると、制動感が初期からきちんと立ち上がるイメージで、4輪で制動している感覚が強い。テールが振り出しそうになる感覚は皆無。旧製品はテールが動き、若干直進性が劣るような部分があったから、これは大きな安心感となりそうだ。また、トラクションもきちんと得られ、さらにコーナーリングに対しても安定感が高いところは好感触。ヨレを感じることなく、けれどもシッカリとトレッド面が氷を捉えている感覚がある。コンパウンドが進化したことで、ブロック剛性を高めても問題がないということなのかもしれない。

ドームの中の氷盤路でアイスブレーキ性能をテスト
従来モデルと比較するとその差はブレーキ踏み始めから体感できる
ハンドリングに対しても安定感の高さが感じられた
TOYO TIRES「オブザーブ・ギズ2」アイスブレーキ比較(27秒)

 剛性感が高まったことはスノー路面でも体感できる部分が多かった。従来品はステアリングのセンター付近の応答が甘く、さらに横方向にヨレる動きがあるところが気になるポイントで、操舵感が曖昧。スリップするか否かの境目を感じ取りにくいところがある。主溝をセンターリブの両側に配置したことで、切りはじめの曖昧さが出やすい構造だったということもありそうだ。

雪の外周路でもガリットギズとギズ2で比較したがスノーでもその進化は大きかった

 対して新型のギズ2はステアリングの剛性感が高く、いま路面とタイヤの関係がどうなっているのかをきちんとインフォメーションしてくれるから操りやすい。無駄な動きを出しにくく、シッカリと路面を捉えて行く。ブロックのひとつひとつが大きく設計されていることもあるのだろう。手応えを十分に生み出す要素は満載だ。微小な操舵角で即座にクルマ全体が反応をする安心感は嬉しい。こうした剛性感の高さは高速直進安定性にも確実に寄与していた。フラつきを感じることなく、また轍に足を取られることなく突き進む感覚は、これまた操りやすさに繋がっている。これなら冬の高速道路でも手に力を入れることなく、そっとステアリングに手を添えているだけで安心して乗ることができるだろう。トーヨータイヤからのインフォメーションでは、スノー性能の向上はそれほど謳われてはいなかったが、こうしたシーンでも新型のギズ2は優れている面が多かったように感じられる。

 また、旧製品に比べて操舵角をそれほど必要とせずにコーナーを駆け抜けることを可能にしたことは、スポーティに感じられる部分がある。トレッドが倒れ込んでグリップが抜けるようなことは皆無で、タイヤが最後まで踏ん張り車体を支えている感覚は高い。

 これは極端に言えば、まるでエコタイヤからスポーツラジアルに履き替えたかのようなフィーリングアップとグリップ向上を得られるところ、これがオブザーブ・ギズ2のよさといっていい。今回はテストコースでの試乗ということもあり、多少スポーティな走行もさせてもらったが、進入スピードさえ誤らなければクルマをどんな姿勢にでも持っていける、そんな感覚があったのだ。

最後にアウディ「A4」でも試乗。テストコースということでかなりのハイスピードで走ったがそれでも安心感がある
A4にオブザーブ・ギズ2の245/40R18を装着。インフォメーションがしっかりしているのでかなりの速度レンジでも走れてしまう

 近年のクルマは安全対策などもあって車重が増える傾向にあるが、それを支えるには剛性の高いタイヤが重要になってくる。これまでの考えで作られたスタッドレスタイヤでは受け止めにくい。そんな状況下だからこそ、このオブザーブ・ギズ2のようなタイヤが生まれたのではないだろうか? どのような路面であっても確実に重たいクルマを受け止める、それがこのスタッドレスだ。グリップはもちろんだが、インフォメーション性や安心感などを得たいのであれば、要チェックの銘柄だと言えるだろう。

橋本洋平

学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。走りのクルマからエコカー、そしてチューニングカーやタイヤまでを幅広くインプレッションしている。レースは速さを争うものからエコラン大会まで好成績を収める。また、ドライビングレッスンのインストラクターなども行っている。現在の愛車はトヨタ86 RacingとNAロードスター、メルセデス・ベンツ Vクラス。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。