レビュー
【タイヤレビュー】TOYO TIREのSUV向けオールシーズンタイヤ「セルシアス」の雪上性能を試す
2020年10月5日 08:30
全天候型のオールシーズンタイヤ市場はいま次第に盛り上がりつつある。タイヤ交換の必要がなく、ある程度の冬路面であれば受け入れることを可能にすることが最大のメリットとなるオールシーズンタイヤは、非降雪地域を主体に走るユーザーにとっては有難い存在だ。タイヤの保管場所、交換工賃、そしてなにより夏タイヤと冬タイヤの計8本を所有しなければならなかったこれまでの環境からすれば天国といっていい。もちろん、冬タイヤを所有せずに1年を過ごすことができるなら、それでもOKかもしれないが、近年では非降雪地域でも突然の雪に見舞われることも多くなってきた。いざという時に、動けるか否か。その分岐点を気にせずにクリアできるという意味においても、オールシーズンタイヤはかなりのメリットが存在するように思えてくる。
ただ、その実力はまだまだ未知数という方々も多いだろう。今回はTOYO TIREから発売されているSUV向けの全天候型オールシーズンタイヤ「CELSIUS(セルシアス)」を試し、気になる冬路面における実力を体感してレポートする。このタイヤは2019年より日本市場に投入され、当初は165/60R15~225/65/R17の計6サイズ展開だったが、2020年11月から165/70R14~225/55R18の計13サイズを追加。全19サイズのラインアップで、より多くのクルマで装着可能になる。
セルシアスの特徴は左右非対称パターンを採用していることだ。IN側はスノー性能を重視し3Dグリップサイプとジグザグブロックを配置。OUT側にはウェットを重視した縦溝や、ドライの操安性を考えた周方向連結ブロックなどを配置。あらゆる路面を想定していることは、トレッドパターンを見ているだけでも伝わってくるものがある。
また、トレッドコンパウンドには独自の材料設計基盤技術「Nano Balance technology」を用いて開発が行なわれたシリカ分散を向上させるアクティブポリマーを採用。ウエット性能と転がり抵抗低減を両立するほか、スノーポリマーも盛り込むことで雪にも強いコンパウンドとしていることが特徴的だ。結果として欧州でシビアスノー要件を満たすタイヤに与えられる「スノーフレークマーク」の打刻が認められている。結果、高速道路の冬タイヤ規制をチェーン装着せずにクリアすることが可能となっている。
そんなセルシアスを装着したクルマでTOYO TIREのテストコースを走り出すと、まず感心したのは発進加速やブレーキングといった縦方向の食いつきが満足に得られたことだった。試乗車両が4WDだったということはもちろんあるだろうが、発進加速でスリップしてしまうようなことはあまりない。乱暴に扱わず、あくまでソフトにアクセルを入れていけば、確実に雪上を捉えている。ブレーキングもスタッドレスタイヤに近い減速感を生み出しており、不安な感覚はあまりない。
ただし、そこからステアリングを切って旋回し始めた時に、スタッドレスタイヤとは違う感覚がある。つまりは横方向のグリップは薄いというのが正直なところだ。だが、そこをきちんと頭に叩き込み、直線の時点でしっかりと減速してコーナーに向かえば、スリップするようなことはない。旋回スピードが遅いことを把握して扱えば問題はないだろう。雪国のハイペースなクルマにはついて行くことはできないだろうが、雪になれていない人々が慎重に走るような環境では十分に対応できるイメージ。すなわち、実用性としては十分なレベルと言っていい。氷が見えてくるような状況に差し掛かると、その特徴が顕著に現れるが、確実に速度を抑えればそこもクリアすることは容易だった。
TOYO TIREではスノー路面は対応できる○マークを掲げており、凍結路は△マークとしている。一般的にオールシーズンタイヤは凍結路を×マークとすることがほとんどだから、どちらかと言えば夏の路面よりも冬寄りに造ったということなのだろう。それは一般的なオールシーズンタイヤのトレッドパターンと比較してみても読み取れる部分がある。冬重視のオールシーズンタイヤを求めるユーザーにはオススメだ。