イベントレポート 東京オートサロン 2021

TOYO TIRE、ケン・ブロック選手やD1ドライバーの川畑選手らが登場するド派手なパフォーマンス映像などを公開

ドリフトドライバーの滑らない話や開発秘話なども満載

レーシングドライバーのケン・ブロック選手の動画撮影シーン

 TOYO TIREは、「バーチャルオートサロン」に出展し、7つのスペシャル動画を公開している。動画は東京オートサロン2021の会場で披露する予定であったドリフトマシンの実走パフォーマンスや、新型コロナウイルスの影響で渡航できず日本に来られなかったレーシングドライバーたちのコメント、デモカー4台と装着タイヤの紹介、D1参戦ドライバーの滑らないトークショー、D1マシン開発秘話などなど、どれも見逃せない内容となっている。また、これらの動画は同社Webサイト内の東京オートサロン2021特設サイトにある「スペシャルムービー」コーナーでも視聴できる

ケン・ブロック選手とブライス・メンジス選手からのスペシャルムービー

 世界的に有名なレーシングドライバーであるケン・ブロック選手は、オートサロンに行けなくて残念と挨拶し、2020年は家で過ごす時間がとても長く、今までこんなに長い時間を家で過ごしたことがないとコメント。また、2021年は新しいパフォーマンス映像ビデオに挑戦する予定と明かした。

ドリフト走行だけでなく、数々のパフォーマンス映像を製作しているケン・ブロック選手は、ステイホーム中に自宅で薪割りをしている姿も公開している

 また、ブライス・メンジス選手は、2020年は大変な年だったが、子供が生まれたことを紹介しつつ、2021年も前を向いて進む姿を見せる必要があると決意表明。さらにケン・ブロック選手のことを「マーケティング能力があり、やることすべてに意味と計画があり、運転スタイルも真似できない」と、とても尊敬していると語った。最後に、2021年は「King of the Hammers」に再戦するのと、「バハ1000」に参加するのも楽しみしていると締めくくった。

ブライス・メンジス選手と走行シーン

マッド・マイク選手の愛車&息子紹介

マッド・マイク選手

 2018年のフォーミュラ・ドリフト・ジャパンのチャンピオンであるマッド・マイク選手は、ハンプトンタウンズモータースポーツパークにあるマッドラボから自身の愛車コレクションを紹介。

 イベントに合わせて4週間で完成させたという「ランボルギーニウラカン」や、マッド選手がイベントで同乗走行に使用することから「マッドキャブ“ROTAXI”」と名付けられた13Bロータリーターボエンジンに換装された「ルーチェ」、さらに2007年に制作した最初のドリフトカーで「王子」という愛称を付けているRX-7は、1970年代の雰囲気をちりばめていると紹介した。

同乗走行用のルーチェ
王子と呼んでいるRX-7(FD3S)
1200PSのMX-5 Miata(ロードスター)

 続いて紹介してくれたのは、フォーミュラ・ドリフト・USA・チャンピオンシップ参戦用に制作したという4ローターのツインターボエンジンを搭載し最高出力1200PSというモンスターMX-5 Miata(ロードスター)。さらにもう1台のロードスターは、まだ12歳の息子リンカーンくんとドリフトを楽しむために制作したと紹介。リンカーンくんは「2歳の誕生日にバイクをもらって公園を走った」と仰天エピソードを明かした後、愛車紹介も自身で行ない、とても12歳とは思えない才能を見せてくれた。

フロントはグリップの強い「R888R」で、リアにはフロントより少しグリップの弱い「R1R」を履いていることを紹介。お父さん(マッド選手)のマシンも同じ組み合わせが多い

特別ドリフトパフォーマンス映像を公開

 Team TOYO TIRE Drift所属の川畑選手が「GRスープラ」、藤野選手が「TOYOTIRES 86-1号機」、松井選手が「86-2号機」、そして村上選手が「エヴァRT初号機スープラ」をドライブして高次元のドリフト走行パフォーマンスを披露。また、D1ギャルズの山本もえぎさんと安西茉莉さんがドライバー紹介などを行なってくれた。

D1ギャルズの山本もえぎさんと安西茉莉さんも登場
トップクラスのドリフトドライバーが登場
息ピッタリの4台による大迫力のパフォーマンスが繰り広げられた
走行しているトラックのまわりをドリフトしながら旋回する技も披露

D1ドライバー4人とチーム監督による滑らない(?)話

 D1ファンミーティングではD1GP 2020シリーズを戦っている川畑選手、藤野選手、松井選手、松山選手が2020年シーズンの戦いを振り返りながらトークを展開。

 さらに、Team TOYO TIRES Drift総監督である今村隆弘氏(ドリフト侍)が司会進行を請け負い、普段は語られることのない裏話まで惜しみなく暴露。オートサロン用に撮影したトラックのまわりを旋回するパフォーマンス映像について川畑選手は「いや~、危なかったもん」と冗談交じりに解説。また、普段ドリフトしているときは「乗っている人が楽しんでいれば、きっとそれは伝わると信じているので、楽しみながらドリフトしています」と川畑選手。

ドリフト侍監督が司会進行を担当してトークショーが行なわれた

 また、D1オリジナルスコアリングシステム(通称:DOSS=ドス)は片手運転のほうが高得点が出る気がするといった核心に迫る裏話が繰り広げられ、最後は1月30日~31日に茨城県の筑波サーキットで開催予定の最終戦に向けての最新状況や意気込みを語ってくれた。

松井選手のRX-7は4ローター
藤野選手の乗る180SX
川畑選手の乗るGRスープラ

フジトモのカスタムカー&タイヤレポート

レポーターを務めたモータージャーナリストの藤島知子氏

 モータージャーナリストの藤島知子氏が、ドリフト大会D1GPに参戦しているトヨタ「GRスープラ」、2020年12月に発売されたばかりの三菱の新型「エクリプス クロスPHEV」、街中を颯爽と走るSUVに仕上げられたランドローバー「ディフェンダー」、アジア・クロスカントリーラリーに参戦する「ハイラックス」とともに、TOYO TIREの2大フラグシップタイヤブランドである「PROXES(プロクセス)R888R Drift」と「OPEN COUNTRY M/T(オープンカントリー)」についても紹介してくれた。

ドリフト大会に参戦するGRスープラのエンジンルーム
大人のドレスアップが施されたエクリプス クロス
エアサスペンションを装着し、車高を瞬時に上下できるディフェンダー
日本では売っていないV型6気筒4.0リッターエンジンを搭載したハイラックス
さまざまなタイヤの解説も行なわれた

D1車両「GRスープラ」チューニング秘話

D1ドライバーの川畑選手が絶賛するダブルウイング

 D1ドライバー川畑真人選手、KUHL-Racing片岡孝裕代表、Do-Luck伊藤チーフエンジニアの3名によるGRスープラの開発話が展開された。2020年シーズンは、新型コロナの影響で開幕戦が7月にずれ込んだり、1大会で決勝が2戦行なわれたり、ラウンドとラウンドの間隔が2週間しかなかったりと、慌ただしいシーズンになったことを回顧。

 また片岡代表は、エアロキットの開発が遅れていて、開幕戦が7月に延期されたことで逆に間に合い、「実は延期になって助かった」と裏話を明かしてくれた。そして見事開幕戦で優勝を勝ち取ったことを思い出し、自社のエアロが付いたマシンが戦っている雄姿を見ていると涙が出てくると語った。伊藤エンジニアも「今搭載しているエンジンでの優勝は初めてだったので、本当に嬉しかった」とコメントしている。

ドライバー川畑選手は「もう少し軽くなるといいですね」と要望をもらしたが、伊藤氏は「やれることは全部やっているし、レギュレーションとの絡みもあるので、なかなか厳しいかれど、何か考えてみたいと思います」と回答

 続けて片岡代表は、D1マシン専用エアロと市販品エアロとの違いなども細かく解説。また、川畑選手は2枚式のリアウイングを絶賛。1枚外すとダウンフォース量を減らせるという。「実際の大会でも注目してもらえれば、付いていたり、外していたりするのが分かりますよ」とのこと。

 さらにエンジンについて伊藤氏は、新しことに挑戦しようと、誰もやっていないV型8気筒(3UZ)エンジンを採用し、1号機はシングルターボだったが、2号機ではツインターボへと進化させ、最高出力は1000PSオーバーという。そしてエキマニ(エキゾーストマニホールド)は、排気干渉しないように点火順を考慮して複雑な形状に並んでいて、これがレスポンスアップや気持ちのよいサウンドを奏でる秘訣であることを解説してくれた。

エアロキットを手掛けているKUHL-Racing片岡孝裕代表
タイヤがよく見えるデザインを意識したという
市販品エアロもD1用と同じデザインにしていると紹介
Do-Luck伊藤チーフエンジニア
エンジン本体はV型8気筒(3UZ)を使用している

エアロ×アートのカリスマが対談

三浦氏と澤田氏が傑作という1台がこのフォードのラプター

「世界で1番ボディキットを作った」と自負するTRA Kyotoの三浦代表と、映画ワイルドスピードのプロモーションにも参画したグラフィックデザイナーであるART FACTORY澤田代表が登場。

 まずは2人が今の会社を起業するまでの経緯を紹介。共に当時はまだ誰もやっていなかったことを独学で学び突き進んできたという。そんな2人が一緒にマシンを手掛けるようになったのは、TOYO TIREがD1GPで走らせていたR35GT-Rからだという。

 また両名が傑作という1台がフォードの「ラプター」で、三浦氏は「ラプターは1週間で設計して、1か月半で引き渡しと、本当にタイトなスケジュールだった」と振り返った。また、澤田氏は「三浦さんが手掛けるボディキットは複雑な形状なので、そこに平らなフィルムを貼り込んでいく訳ですから、かなり大変です。とはいえ貼る作業は3~4日でできますが、その前のグラフィックデザインが決定するまでのほうが大変ですね」と同じく苦労を思い出していた。

三浦氏(左)と澤田氏(右)
その他にも共同で仕上げたマシンには「ハイラックス」や「86」などイベントなどでよく見かけるマシンだらけ

 今後のデザインについて三浦氏は「EV(電気自動車)とか自動運転など、これからのクルマは車高も下げられなくなる可能性もあるし、難しいですよね。でも世界中で技術はどんどん上がっているので、デザインも簡単にできるようになっているし、世界中で競争になるのでビックリするような人も出てくると思います。SNSが出てきたことで、いきなり世界が相手になってしまったんですよ」と説明。澤田氏は「貼るだけのフィルムではなく、薄手の有機ELなどを使い動きのあるグラフィックなんかをやってみたい」と未来への構想と希望を語って締めくくられた。

編集部:塩谷公邦