レビュー
【タイヤレビュー】どの領域でも性能に不満なし!? グッドイヤーのミニバン専用タイヤ「EfficientGrip RVF02」をドライ&ウェットで試す
オールシーズンタイヤ「Vector 4Seasons Hybrid」との違いはどこにある?
2021年2月2日 11:31
ミニバン特有のふらつき、静粛性に注視して開発
トータルバランスを追求するグッドイヤーのエフィシエントグリップシリーズに、ミニバン専用タイヤ「EfficientGrip RVF02(エフィシェントグリップ アールブイエフゼロツー)」がラインアップされた。かつて「EAGLE RV-F」として発売されていたものの実質、後継モデルとなる。ミニバンといえば、いまや人気のSUVにシェアを奪われてしまったかに思えるが、いまだ国内自動車販売台数の4割弱がミニバン&ハイト系ワゴンという現実がある。
だからこそグッドイヤーはミニバンユーザーたちが求める性能を改めて追求したのだろう。要求は静粛性、乗り心地、ライフ、そして運転の負担など多岐に渡る。さらに言えば、ファミリー層が多く使うクルマなだけに、他のクルマ以上に安全性が重要視されることはもちろんだ。そこでEfficient Grip RVF02ではミニバン特有のふらつきや、偏摩耗の抑制を達成しつつ、最もユーザーアンケートで重要視されていた静粛性に注視して開発が行なわれたようだ。
Efficient Grip RVF02のトレッドパターンを見るとそれが伝わってくる。特に目を引くのがアウト側のブロックの大きさだ。ハイトがあるミニバンだと、どうしてもアウト側のショルダー部に負担がかかりやすく、ゆっくり乗ったとしてもそこの減りが早くなる。アウト側のショルダー部をしっかりさせ、さらにグリップを稼ごうということだろう。結果としてランド比は13%もアップ。接地圧も全体に分散され、ライフも22%向上しているらしい。
静粛性については5つのショルダーブロックの配列を最適化。ピッチ数を増やし、ランダムに配置することで路面からの叩き音を分散している。結果的にEAGLE RV-Fに対してパターンノイズは14%、ロードノイズは9%低減。また、新形状ラウンドサイドウォールの採用により、サイド全体がバランスよくたわむようになり、衝撃緩和にも繋がっている。
どの領域でも不満なし
今回はテストコースにおいて、ミニバンの代表格であるトヨタ「アルファード」を使って走ってみたが、まず驚いたのはステアリングを切った瞬間から感じられる確かな手応えとグリップ感だった。
切りはじめから素直にクルマが応答し、コーナーの中でグッと切り込む領域まで、とにかく頼りがいのあるコーナリングをみせたのだ。ひょっとしてスポーツタイヤ? ミニバン専用という謳い文句がウソかのように感じられるほどだったのだ。それはダブルレーンチェンジを行なっても同様で、少ない操舵角で駆け抜けることを許してくれる。おかげでフラつきは少なく、収束も素早いように感じられた。
ここまで走れる感覚があると、他が心配になるところなのだが、乗り心地はたしかにマイルドだし、静粛性もなかなか。ゴーというロードノイズも、パターンが発するシャー音も少なく仕立てられているバランスの良さがある。
ならば、溝が少なくなったことでウェットがダメでは? とあら捜しをしたのだが、ざぶざぶウェットのスキッドパットを走ってもきちんと止まるし、コーナリング中のグリップの抜けもジワリと滑って扱いやすかった。これならドライバーも同乗者も納得できるに違いない。試しに後席も座ってみたが、どの領域でもこれといった不満が出なかった。トータルバランスに優れていることは間違いなさそうだ。
オールシーズンタイヤと比べてどう?
トータルバランスといえば、グッドイヤーにはもう1つ注目のタイヤがある。それはオールシーズンタイヤの「Vector 4Seasons Hybrid」だ。これを最後に触れておきたい。アイスバーンでの走りはあまり推奨していないが、それ以外のシーンではバランス良く走れるこのタイヤも、Efficient Grip RVF02と同様の環境で走ってみた。
乗り換えてみて感じることは、Efficient Grip RVF02と比較してもそれほど遜色なく走れてしまうということだった。全体的に少しグリップが低いかな、という程度のもので、少しスピードを落とせば難なくクリアできることを確認。静粛性はEfficient Grip RVF02と比べると若干うるさく感じる。
だが、「これが標準タイヤです」と渡されてブラインドテストしたら、それがオールシーズンだと言い当てられるか、ハッキリいって不安だ(笑)。かつてはうるさくて当たり前だったが、それも改まりつつあるというのが現状だろう。強いて言えばウェットグリップがもの足りない。それはトレッドパターンを見ても明らか。直線制動は低速であればまずまずこなせたが、円旋回路に入るとEfficient Grip RVF02に対して5km/hくらい限界スピードが落ちる。30km/h前後でそれだけ違うのだから、速度が上がればよりつらくなるだろう。
このような特性をシッカリと頭に入れて、スピードを控えめに使うのであれば、1年中履きっぱなしにするのもわるくはないと思える仕上がりだった。