レビュー

【スタッドレスタイヤレビュー】ダンロップ「ウインターマックス」を長期間使ってみる(第1回)

スバル「XV ハイブリッド」に装着してロングライフ性能を確認

ダンロップのウインターマックスを、スバル「XV ハイブリッド」に初夏から装着し、溝の減り具合を確認していく

 ダンロップ(住友ゴム工業)が2012-2013年のウインターシーズンから投入した新スタッドレスタイヤ「WINTER MAXX(ウインターマックス)」。それまでダンロップは「DSX」シリーズを展開してきたが、スタッドレスタイヤにおいて、このウインターマックスから新材料開発技術「4D NANO DESIGN(フォーディー ナノ デザイン)」を採用。ナノ領域での柔軟性とマクロ領域での剛性を両立した「ナノフィットゴム」を開発し、トレッドパターンのサイプ幅を25%細くすることでブロックの倒れこみを抑制した「新ミウラ折りサイプ」とともに採用したほか、トレッドパターンも左右非対称の新デザインとなった。

ウインターマックスのトレッドパターン。非対称形状を採用し、コンパウンドは4Dナノデザインによって一新された

 その性能向上は、前モデル「DSX-2」に比べて氷上ブレーキ性能11%アップ、ウェットブレーキ性能15%アップ、耐摩耗性能は48%アップとダンロップから発表されている。一般的にスタッドレスタイヤのモデルチェンジの場合、2桁の性能向上を実現できた場合に製品化されることが多い。これは、そのくらい性能差がないとユーザーが購入時に性能差を体験できず、またマーケティングの観点からもインパクトに乏しいからだ。

 ウインターマックスの場合、さまざまな技術の投入で氷上ブレーキ性能11%アップと十分な性能差を前モデルと確保。そのために製品化されたと思われるが、特筆すべき点は耐摩耗性能の48%アップという数字。現代のスタッドレスタイヤの場合、著名なメーカーの製品であればある程度の雪上グリップ性能が確保されているため、氷上ブレーキ性能競争となっている。氷結した路面で、「止まれるか? or 止まれないか?」がとくにユーザーに重視されており、メーカーもそこを重視した開発を行っているからだ。

 そういった観点からすると、耐摩耗性能48%アップはとても特異な数値だ。ダンロップ側が開発の主眼として狙った性能であり、従来シリーズから開発を根本的に変更した結果、達成できた数値だそうだ。

 これまでウインターマックスについては、ダンロップのテストコースなどでのレビュー、ドライ路面を長距離走行してのレビューなどさまざまな観点からお届けしてきた。そこで今回からはこの耐摩耗性能48%アップに着目して、どのくらいのペースで摩耗していくのか長期で確認していく。

●2012-2013年シーズンの新スタッドレスタイヤを雪氷レビュー 第2回:ダンロップ「WINTER MAXX(ウインターマックス)」
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20120925_561018.html

 とはいえ、スタッドレスタイヤとしての摩耗限界(プラットフォーム露出)まで使い切るには雪道や氷結路面で相当な距離を走る必要がある。とくに冬の短い関東地区をベースとした場合、摩耗限界以前にゴムの劣化のほうが深刻な問題となり、摩耗限界まで達するのは難しいだろう。そこで今回は、夏の時期もスタッドレスタイヤを装着し続け、摩耗しやすいような環境を作り出している。但しこの方法には1つ難点があり、一般的な夏タイヤに比べてスタッドレスタイヤは、ドライ性能、ウェット性能が劣るため、前モデルから15%ほどウェット性能が向上したウインターマックスと言えども決して万人にお勧めできるものではないことだ。そこで、インプレス社内で「ウインタースポーツが大好きで、冬はガンガンにスキー場にでかける」「そのため、結局夏もスタッドレスタイヤで過ごしている」社員を募集。幸いなことに、その社員(便宜上、以降は営業のEさん)は、消費税増税前に駆け込みでスバル(富士重工業)「XV ハイブリッド」を購入したばかりなので、ウインターマックスを装着し、長期テストを行ってもらうことにした。

 営業のEさんにXV ハイブリッド購入の理由を聞いたところ、「雪道に行くので4WD性能が高いクルマが欲しかった」「スキー場まで長距離を走ることが多いので、EyeSight(アイサイト)のような運転を支援する機能が欲しかった」「子供がいるため、教育上ハイブリッドに車にしたかった」とのこと。最後の決め手が結構大きかったそうで、ディーラーに試乗に行ったところ、マルチファンクションディスプレイのエネルギーモニター画面を見た子供が「パパ、これ面白いよ」と喜んでくれたため、「これからはこんなクルマがスタンダードになるのかも?」と思い、購入に踏み切ったそうだ。

2014年5月24日 ウインターマックスを装着

 新品のウインターマックの装着は、2014年5月24日に埼玉県さいたま市の「タイヤセレクト 浦和店」で行った。5月下旬ということもあり、店頭の主力商品は低燃費タイヤなどの夏タイヤ。ウインターマックスのディスプレイもあったがわずかなものだった。

 装着そのものは、店員さんのてきぱきとした作業により30分ほどで終了。この後、ガソリンスタンドに移動し、満タンに給油。初回の溝記録を行った。ガソリンスタンドで行ったのは、溝計測を行う際は給油時にしたいため。毎回満タンで計測すればクルマの重さの影響を最小にでき、なおかつタイヤの空気圧を規定空気圧に合わせていけるからだ。

タイヤ交換を行った「タイヤセレクト 浦和店」
ウインターマックスのPOPもあったが、メインの商品は低燃費タイヤ
まずはピットに入庫する
あっという間にタイヤが取り外された
タイヤチェンジャーによって、ウインターマックスをホイールに組んでいく。今回は夏タイヤからホイールごと変更している
組み終わったウインターマックス
タイヤバランサーでしっかりバランス取りをした後、XV ハイブリッドに組み付け
外した標準装着タイヤ&ホイールは持ち帰り
SUVタイプのせいか、スタッドレスタイヤがよく似合う

 溝計測に用いるのは、精度が±0.05mmの機械式ノギス。電子式のノギスやマイクロメーターも考えたが、電子式ノギスは計測ミスをした場合のエラー確認が難しく、またマイクロメーターの場合は計測時に手間がかかるためだ。機械式のノギスであれば、かつんと当てて数値を読み取ればよく、誤差はそれなりにあるが、極端なミスが発生しづらいからだ。

 また、計測する溝は、左前輪のストレートタイプの中央溝に設定した。ウインターマックスの溝は、タイヤの外側からストレート溝、ジグザグ溝、ストレート溝、ストレート溝と並ぶ。ストレートタイプの中央溝であれば計測も行いやすく、安定した計測値になると思われたからだ。また、前輪に設定したのは、フロントエンジン車の場合は前輪荷重が大きく、XV ハイブリッドで採用されているアクティブトルクスプリットAWDの場合は荷重に応じたトルク配分を行うため。より負荷の高いタイヤを選んでみた。

 5月24日にガソリン給油後、新品時1回目の計測を実施。何回か計測し、ノギスから読み取った平均的な値を「8.60mm」とした。この時点までのスバル XVハイブリッドの走行距離は1898.2km。これが出発点の数字となる。

 このXVハイブリッドを運転するのは、営業のEさんに加え、その奥様。都心ではなく首都圏に住んでいるため、生活の足としてクルマは必要で、買い物や子供の送り迎えにXV ハイブリッドを活用しているそうだ。

 6月、7月、8月と、5月24日にタイヤ交換後XVハイブリッドは普段の足としてのほか、夏の帰省にも活躍。およそ3カ月ちょっとで走行した距離は、1890.8kmとなった。

 タイヤの中央溝の減り具合はというと、9月6日計測で8.40mm。1890.8kmドライ路面を走行して0.20mm程度減ったことになる。

溝計測に用いるのは機械式ノギス。製品は手に入りやすいタミヤ製を選んでみた
装着した日付は5月24日
装着間もないウインターマックス。タイヤ成形時のヒゲも見られる
計測個所はストレートタイプの中央溝の部分
計測結果は8.60mm。これが初期値となる
1890km程度走行したウインターマックス。リブレットと呼ばれるタイヤパターン表面の浅溝も、まだしっかり残っている
初回と同様にストレートタイプの中央溝で計測
計測結果は8.40mm。0.20mmの摩耗となった

 営業のEさんの趣味はスキー。冬になればなるほど長距離走行が増えていくことになる。今後数回にわたって、走行距離とタイヤ溝の変化、そしてドライ路面やウェット路面での走りをお届けしていく。

編集部:谷川 潔

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