10万円、10年落ち、10万km超の軽バン買いました

第8回 2度めの車検をなんなくパス、これからも軽バンは走る【いったん最終回】

走って、中で仕事して、大活躍中の日産・クリッパーバン

 軽バンの日産・クリッパーバンがうちにきてから2年が経過。車検なしの現状で購入して、基本的な調整だけで車検を通して使用開始。最初に消耗品の交換をまとめてやった程度で特に問題なく毎日の足として活躍し、ズボラなカーライフという感じで過ごしている。そして、2年間乗って車検を通してみたが、そのレポートを中心にお伝えしたい。

結論からいえば、何もしなくても車検をパスできるレベル

 今回ももちろんユーザー車検。そして車検と同時にやらなければならないのが24か月点検。制度的には車検後にやってもいいのだが、車検証に整備簿のことが書かれたり、あとから整備を催促するハガキが来るなど、あまりいい印象のないものが記録されてしまって、気持ちのよいものではない。

 そもそもの問題として、車検に合格する状態か確認していないのに車検のために軽自動車検査協会に持ち込むのは無謀で、落ちてしまえば再検査の手間や、当日中に直せなければ再検査費用がかかってしまい、無駄でしかない。だから車検前整備一択だ。

 24か月点検といっても日常的な点検に加えて、大きな手間といえばジャッキアップしてタイヤを外して下から点検項目を見ていく程度となる。重要な項目としてはオイルなどの漏れがないかや、ダストブーツ類の破れ、サスペンションのガタツキなど。そんなに難しいチェックではない。

エンジンルームはひととおり確認

 そして、車検の合否には直接関係がなくても、必要な消耗品は車検のタイミングで交換すると交換時期を忘れずに済む。今回は、ワイパーとエアクリーナーを交換をした。

エアクリーナーエレメント交換。右はこれまでのモノでまだ持ちそうだが左の新品へ交換
ワイパーも交換。モノタロウの格安品同士でさっと交換

 ただ、誤解してほしくないのは、普段から状態を気にかけていることや、消耗品の交換タイミングを管理しているため、車検時にはほとんど部品交換をしないで済んでいるということ。

 普段から点検も整備もしないのなら車検時くらいはしかるべきところでしっかりと確認してもらい、必要な対応はすべきだろう。問題が起きてから対処すればいいという考えもあるが、路上で立ち往生する故障だと他人に迷惑がかかり、自分へのダメージも相当に大きい。ある程度の予防整備は絶対に必要だ。

サスペンションはたまに異音がしたこともあったが、スプリングがわずかに回転していただけで、伸ばしきったところで少し回転させて異音は解消

 よく、車検時に大金がかかると言う人もいるが、法定費用や消耗品の交換以外に補修をしないと車検が通らないということは、車検まで整備不良状態でクルマを走らせていることでもある。だからこそ、普段から整備や点検は必要なのだ。

 実際、車検の検査項目は本当に基本的なことだけ。多少の事務手数料も含んだ「検査料」だけ見れば小型自動車や軽自動車で2200円、3ナンバーの普通乗用車でもたった2300円。この金額から検査することは限られているし、話題のロービーム検査など難しい点を除けば、これで合格しないのはよほど状態がわるいと思ってよいだろう。

 ちなみに、それでも車検場で落ちるクルマがある。車検場で見た範囲ではライトの光軸不良や灯火類の不点灯などが多く、周囲に危険をもたらすクルマを路上から排除することができる現在の車検制度はなくしてはいけない。

オイル交換は日常的に実施。約3.5L使うので、4L缶と3L缶で2回分となる

ライトもLED化したが、問題なく車検合格

 ちなみに、しばらく前にライトをLED化していたが、これも問題なく合格した。交換時に光軸を調整していたが、車検場の検査でもすんなりとパス。使ったLEDはネット通販で購入した左右で2500円程度のH4タイプのLED電球。

 ハイとローを兼用するH4タイプのライトの場合、ロービームは電球の片面だけを照射する構造になっているため、LEDとチップや発光部分の形状からLED化した場合でも問題になりにくい。電球タイプがH1、H7やHB3の場合は360度全方位に光を均等に放たないとカットオフラインや照射範囲が狂ってしまいがちだが、H4のロービームはそうなりにくいのだ。

LEDライトに交換。格安品だが光源の位置が合っていたので問題なくカットオフラインも出る

 そのため、現在、原則としてロービーム検査になっている車検の光軸検査でも、光源の形状が白熱電球に近ければH4のLED化は問題ない場合が多いと思われる。LEDライトは放熱の関係から金属成形しているため、あとから発光位置が狂うということも起こりにくい。

ヘッドライトは若干の曇りがあり、この後でコンパウンドで少しだけ研磨して車検に望んだ

 そして、ロービーム検査で問題になることの多い光量も問題なかった。それよりもヘッドライトの曇りのほうが問題だった。よくある樹脂ライトの曇りが発生していたが、そのままだとライト検査のときに光量が基準に達しにくいだけでなく、光軸のカットオフラインがぼやけてしまい不合格になるおそれがある。そこで、少しだけコンパウンドで磨いておいたのだ。

 ただし、ライト表面の研磨は、さらに樹脂の劣化を進めることになる場合もあるため、自己責任で行なってほしい。ライトへのクリア塗装や溶剤で表面を滑らかにすることもメーカーの想定外のこと。磨いてすぐなら一瞬クリアになるが、今後の劣化具合に影響があるという点は十分認識してほしい。

車検後に交換したタイロッドエンドブーツとブレーキフルード

 実は点検時に気になるところもあったのだが、車検で不合格になるほどではないと判断し、車検後に対応したことがある。それは、タイロッドエンドブーツにわずかなヒビが見られたことと、交換時期でもあるブレーキフルードだ。これは部品の手配が間に合わなかったこともあって車検後にやることにした。

 タイロッドエンドブーツはグリス漏れがなければ車検は合格するが、交換しなければ近いうちに破れてグリスが散って異物が入り、最悪の場合にはボールジョイントの摩耗で外れてしまい、前輪が操舵不能になる。

タイロッドエンドブーツを交換。ブーツを外してグリスを詰める
交換後。ナットは再利用しないので新品になっている。それよりもローターの錆が気になる

 タイロッドエンドブーツはタイロッドを外してブーツを交換。古いグリスをできるだけ拭き取り、新しいグリスを充填してブーツを装着し、固定するロックナットも新品にして元通り組み付けて完了となる。ボールジョイントの動きが軽くなっていたためタイロッドエンドごと交換も考えたが、このクルマの場合、固定方法がロックナットと割りピンの2種類あり、適合確認しきれなかったので今回はブーツの交換だけで済ませておいた。これは遠くない時期に交換しておきたい。

ブレーキフルードのタンクはダッシュボード上からキャップを外してフルードを入れていく。こぼして内装を傷めないように注意

 そして、ブレーキフルードも交換。クリッパーは軽自動車のくせに(!)、DOT4が指定になっているためブレーキの負担は大きいということなのだろう。ブレーキパッドは日産の整備用品ブランド「ピットワーク」のものが付いていて、過去に何度かディーラーで交換されているはず。ほとんど摩耗もなかったが、効きという点では少々不満があるため、これもなんとかしようと思っている。

10年10万kmオーバーのクルマは消耗品などの交換タイミングが次々と来る

 車検と後整備が終わってひと安心したところで、ステアリングを小刻みに動かした際のガタ付きに気づく。車検時に確認したステアリングラックやその取付部分にガタつきはなく、調べたところステアリングシャフトの下部を支えている樹脂製のベアリング摩耗ということが分かった。

ステアリングシャフトを支える樹脂のベアリングが摩耗している
ステアリングシャフトのブーツをずらして交換

 部品は三菱自動車の品番「MB122889」で、1個数百円のものが2個必要になる。交換は室内のステアリングシャフトを覆っているゴムカバーを外していくつかのネジ類を外し、ベアリングを外せば置き換えられる。ただし、ステアリングの回転の根本を支えている部品なので、正確に元に戻すことは絶対に必要だ。

 そして、運転席のドアランプスイッチのゴムもいよいよダメになってきたので、スイッチを交換した。できればドア4枚分交換したいところだが、今回はケチって運転席だけ交換した。

ドアランプスイッチのゴムが切れてスイッチが露出
ゴムだけの部品はなくスイッチ一体で交換。ゴムが切れたならスイッチにもダメージがあるということのだろう。できればドア4枚分交換したかった
交換後のドアランプスイッチ

 そのほかは、大きく気になったところはない。法人の業務車だっただけにディーラーお任せの整備がされていたようだ。オイル交換などもきちんとされてきて順調にエンジンが回っている。

 ただし、やはり経年と走行距離に抗えない。いずれどこかのタイミングでパーツ交換時期が重なり、高額の出費が発生する可能性がある。安全や快適面で大きな部品交換が重なったときが乗り換え時期ということになるかもしれない。

車検の費用は最低限で済んだと思う。重要費用+諸経費

 さて、車検費用と関連整備をおさらいしてみよう。今回、ワイパーとエアクリーナーを車検時、そのあとにタイロッドエンドブーツ、そしてステアリングシャフトのガタを発見したことなどまで一連の車検とすれば、法定費用まで含んだ総額は3万2991円だ。

 LEDのヘッドライト交換やオイル交換は車検前に行なっていたので、計算からは除いてある。

 内訳は以下のとおり。

重量税:6600円
自賠責保険:1万7540円
印紙(検査費用):2200円

(法定費用小計:2万6340円)

テスター代:1800円
検査合計:2万8140円

 事前チェックのテスター屋さんでのチェックとトーインと光軸の調整で1800円かかっているので、車検だけを通すなら合計2万8140円で済んだことになる。あとは整備のためのパーツ費用がかかっている。

エアクリーナーエレメント:915円
ワイパー(左右):390円
タイロッドエンドブーツ(左右):1186円
タイロッドのナット(左右):702円
ステアリングベアリング:790円
ドアランプスイッチ:868円
計:4851円

 これらを入れて3万2991円。もちろん、このほかに日ごろのオイル交換をしているので、今回は特にオイル交換はしていない。タイヤも比較的新しいのでそのままだ。なお、現在、整備パーツの値上がりが進んでいるので、次はもう少しお金がかかるだろう。

そして、大掃除も実施

 クルマというのは外を走っているほか、軽バンということもあって車内フロアにカーペットはないため、靴についた砂や土はそのままフロアに堆積していくのが非常に目立っていく。そのため、どんなにきれいにしても1か月もすれば、なんとなく砂がたまっている印象になる。

車内は汚れやすい。これはステップ部分の樹脂パーツを外したら下に砂などがたっぷり溜まっていた。掃除で軽量化もできそうだ

 また、ダッシュボードまわりは拭き掃除はしてみたが、もともと雪国での利用で砂埃が多いクルマだったため、エアコンのダクトの中の汚れも気になっていた。そこで、車検の前にダッシュボードを外してダッシュボード内とフロントフロアの丸洗いを敢行した。

ダッシュボード一体を外して水洗い。ダッシュボードは簡単に外せそうだが、ハーネスが絡み合って外しにくいので注意

 軽バンの場合、ダッシュボードの分解は複雑な形状をしているわけでもないので、それほど難しくないという印象だ。ただ、困ったのはハーネスがクリップで複雑にダッシュボードに絡みついているため、これを外すことが難しかった。

 ハーネスをダッシュボードから分離していけば、あとはステアリングホイールとコラムまわりを外していけば、ダッシュボードは外れる。外したら水洗いをすることで気持ちよく乗れるだろう。空調のダクトの中などは念入りに洗っておくと気持ちがよい。

 フロアについても配線を濡らさないようにすれば、水洗いも可能。床には手で外れる水抜きのゴムキャップがあるので、はずせばすぐ水も抜けてくれる。

汚れや砂をぜんぶ片づけてフロアもすっきり。この後で掃除したシートを置く

軽バンでカーライフをダメにされたので、今回で一区切り

 軽バンについては、もっとやりたかったことがたくさんあったのだが、どうも、軽バンに乗ると楽なほう、楽なほうに行ってしまう「人をダメにするクルマ(褒め言葉)」であることは間違いないようだ。

 なぜなら、安くて手がかからないため、どうしてもずぼらなカーライフになってしまうから。まさに、人をダメにするクルマ(2度目)だ。そして、クルマいじりすらやらなくなってしまい、ラクに使うことしか考えなくなってしまう。

MTだけど操作が軽いので運転しやすい

 そして、一番最初の目的であった自転車を積むことにしても、本来はスタンドを使って中に立ててロープで縛る……ということを考えていたのだが、結局、荷室にボンと横置きにして終わり、ということになってしまっている。

自転車は1台なら適当に放り込んでおけば大丈夫。スタンドでもあれば2~3台はいけそう

 運転するにしても、後輪駆動のスムーズな挙動と、免許を汚す恐れが少なくエンジンをぶん回して走ることができる。しかも、クリッパー(ミニキャブ)はまっすぐ走ろうという意志の強いハンドリングのため、直進もコーナーもラク。サスペンションはよく動き、リジットなのに道路のデコボコによる横揺れが少ないという利点も持っている。何もかもラクなのだ。

荷室にある作業スペースも包まれ感ある狭さが心地よく、何時間でもいられる

 さて、軽バンとの関わりを書いた連載も、いったん今回で一区切り。まだやりたいこともあるのだが、軽バンのラクさに負けてしまっている。

 これからも軽バンを活用していくつもりだし、車内に構築したサブバッテリーシステムやテーブルのおかげで車内での事務作業も捗りまくり。自分がオンライン会議などに参加した際は、背景が軽バン車内だったなら、まだ軽バンに乗ってるんだと思ってほしい。

最後に、ブレーキを交換してより乗りやすい軽バンに

 追伸というか、最後の最後で、運転が大きく変わったパーツ交換を紹介しておきたい。それはブレーキパッドで、よく効くという評判を聞いた曙ブレーキの「K4」。ついでにローターもディクセルの普及タイプに交換した。

ブレーキパッドとローターを新品交換

 交換効果はてきめんで、いままでブレーキをかけて止まる際には、踏み始めで一瞬遅れたような感じがあり、しかも強めの減速では最後のほうはブレーキ力が弱まり、少し踏み足すようにしなければ止まらなかった。ところが、K4は最初からすぐブレーキが反応し、最後までブレーキ力が下がらず、きれいに止まるようになった。ますます極楽なクルマになってしまったのである。

パッドは曙ブレーキの「K4」、ローターはディクセルの普及品

 もともと軽自動車としては重量級の軽バンだけに、上質なブレーキパッドを選ぶことで変化はあると予想していたが、期待以上。元のパッドでも強く踏めばきちんと止まるとは思うが、安全面よりも日々の走行安定や運転時の不安を取り除く効果は大きいと実感している。軽バン乗りのみなさまにおいては、少しよいパーツにすると、大きく変わることもある、と最後に言い残しておきたい。

パッドを組み付けたらキャリパーから「K4」の文字が覗いている
正田拓也