深田昌之のホンダ「N-VAN」で幸せになろう

第6回:いろんな原付バイクを積載してみた

 大阪と東京で開催されたモーターサイクルショーには行きましたか? 筆者も興味があったのだが、ほかの仕事があって見に行けず。

 そのモーターサイクルショーだが、来場者の平均年齢が40歳以上なんだとか。もちろん若い世代の来場者も多くいたようだけど、それ以上にオジさんパワー(筆者も同世代)が勝ったということか。

 まあ、われわれの世代はガチなバイクブームで、バイクに乗っている人は多かったし、校則で免許が取れなかった人もバイク雑誌やバイクが登場するコミックなどを読んでバイクと接していた時代。そんな環境にいたら、今でもバイクに興味があるのは当たり前のことだと思う。

 また、取材の仕事で若い世代のバイク乗りに話をうかがうこともあるけれど、彼らはオジさん世代が若いころにそうであったように、バイクから新鮮な刺激や面白さを感じていているし、加えて彼らの世代の価値感とルールでバイクを楽しんでいると感じる。

 そう、バイクにしてもクルマにしても「自分たちの世代」という暗黙の了解というか、同世代間だけで通じる価値感のような……。とにかく共通した楽しみの方のイメージを持つことは大事で、それがあるといくつになっても「自分たちの楽しみ方」を見失わずにすむ。筆者も含め、オジさんたちにはきっとそれがあるので、いい歳して(?)も好みのバイクを見ると目がキラキラしてしまうのだと思っている。

 さて、前置きが長くなってしかもバイクのことばかり書いてしまったが、本連載はバイクの記事ではなくてN-VANが主題デス。

オジさんの昔語りはもうちょっと続きます

 前回、N-VANに「ジョルカブ」というスクーターを積んで山へ遊びに行ったことを記事にしたところ、面白がってくれた方が多かったよう。それに「軽自動車なのに無理なくバイクが積める」というN-VANの特徴を改めて知ってもらえたようで、まあ、紹介できてよかったと思っている。

前回紹介したN-VAN+ジョルカブの組み合わせ。機動性のいい原付きバイクを遠方まで運び、現地をのんびりまわるという遊び

 ちなみに、N-VANにバイクを積んで思ったのが「サンダーバード2号みたいだな」ということ。ご存じない方もいると思うのでちょっと紹介すると、サンダーバードはイギリスで製作されたSFものの人形劇で、日本でも吹き替え版がTVで放送された。

 サンダーバードは国家に縛られず出動する「国際救助隊」という私設のヒミツ組織で、世界各地で起こる事故や災害に出動して人々を救うというストーリー。国際救助隊にはレスキュー用のメカがいくつかあるのだが、そのなかにサンダーバード2号という輸送機があり、この機体は救助の内容ごとに適切な使用機材を現場へ運ぶ役割をしていた。筆者はこの2号が大好きで、子供のころはプラモデルを何個買ってもらったことか。

 で、用途によって積み荷(コンテナ)を変えて出動していくサンダーバード2号と、あるときは撮影機材車、あるときは机とイスを出す簡易事務所、そしてバイクキャリアなど、使い方に合わせて積み荷を変えているN-VANがちょっとだけ被ったと言うこと。色もサンダーバード2号と同じの緑だし。

これがサンダーバード2号。海洋堂という模型メーカー製で私物です。動体部がコンテナ

クルマの免許があれば乗れる原付一種。取得が容易な原付二種免許

 とまあ、そんなことで本題に話を戻すが、前回の記事を読んで「自分もバイクを積んでみたい」と思ってくれた方もいるかと思う。しかし、「ジョルカブは楽勝で積める」と言っても、あれはバイクが小さめなので「現行のバイクは同様に入るのか?」という疑問が残る。そこで今回は本田技研工業に協力していただき、何台かのバイクを実際にN-VANに積んでみることにした。

 積むバイクの選択にあたってはいろいろと考えてみたのだが、クルマとバイクを同時に所有することは家計的に負担もあるので、それを加味すると任意保険をクルマの保険に付いているファミリーバイク特約でカバーできる原付がよいと思う。それに、何より原付クラスならバイクも小さく軽いのでN-VANに積むには適している。それに原付一種のバイク(50cc以下)ならクルマの免許を持っていれば乗ることができるので、二輪免許がない人でもサンダーバード2号遊び(?)ができるのだ。

 でも、最近は125cc以下の原付二種が人気になっていて、選べる車種もこちらのほうが多くなっている。また、原付二種は法定速度が60km/hとなり2段階右折も不要。それに2人乗りもOKになるなど魅力は多いのだ。

 原付二種に乗るには小型二輪免許が必要だが、クルマの免許を持っていれば比較的短期間かつ費用もさほどかからずに取得できる。小型二輪免許についてはホンダの公式サイトで紹介しているので、参考にしていただきたい。

「いい感じ」に積める原付バイクはどれだ?

 積み込みレポートの撮影は、東京 青山にあるHonda ウエルカムプラザ青山で行なった。N-VANで駐車場へ入ると、駐車場の受付の方に「広報車の返却ですか?」聞かれたので「いえ、これは自分のです」と答えて入場。

 ホンダさんにお願いして用意してもらったバイクは7台あるが、積み込み時の状況を確認することが今回の目的なので、すべてを積むのではなく、サイズ的に異なる車種を選び積んでみることにした。

人気の原付バイクを揃えていただいた。まずは原付一種から。これは「Dunk」という50ccスクーター。AT車でサイズは1675×700×1040mm(全長×全幅×全高)、車両重量は81kg。価格は21万4920円~22万320円
「クロスカブ50」。トランスミッションは4速ロータリー。サイズは1840×720×1050mm(全長×全幅×全高)で車両重量は100kg。価格は29万1600円~30万2400円。なお、クロスカブには原付二種の110cc版のクロスカブ110もあり、こちらは1935×795×1090mm(全長×全幅×全高)で車両重量は106kgとなる。価格は33万4800円~34万5600円
人気の原付二種スクーター「PCX」。排気量は124ccでAT車。車体サイズは1925×745×1105mm(全長×全幅×全高)で、車両重量は130kg~131kg。価格は34万2360円~39万5280円。このほか「PCX HYBRID」(43万2000円)もある
「スーパーカブ C125」。排気量は124ccでトランスミッションは4速ロータリー。車体サイズは1915×720×1000mm(全長×全幅×全高)で、車両重量は110kg。価格は39万9600円。
「GROM(グロム)」。排気量は124ccでトランスミッションは4速リターン。サイズは1755×730×1000mm(全長×全幅×全高)で、車両重量は104kg。価格は35万1000円
「モンキー125」。排気量は124ccでトランスミッションは4速リターン。サイズは1710×755×1030mm(全長×全幅×全高)で、車両重量は105kg~107kg。価格は39万9600円~43万2000円
「CB125R」。排気量は124ccでトランスミッションは6速リターン。サイズは2040×820×1055mm(全長×全幅×全高)と125ccには見えない大きさ。車両重量は127kg。価格44万8200円

 撮影のために用意していただいたのはこの7台だが、このうちグロムとモンキーはサイズがほぼ一緒なので積むのはモンキーで行なった。また、大柄なPCXを積むので、これが入ればカブ系もいけるという判断からクロスカブ50のみを積んでみた。ということで、計5台を積載した結果を紹介していこう。

積み込みはホンダ広報部の皆さんにやっていただいた(ありがとうございました!)。各車エンジンを掛けずに押して載せたが、自分はエンジンをかけてバイクを自走させながら載せる派

サイズのわりに積むのがけっこう厳しいPCX

 まず最初は積むのが一番大変そうなPCXから。寸法的には問題ないように思えるが、スクーターは車体の幅がある(バイクの全幅はハンドル間の長さ)ので、これがクセ者。N-VANに載せるときにカウルが運転席シートに当たることが予想されていた。

 実際はどうだったかというと、まさにそのとおりで、ステアリングを真っすぐに積もうと思うと運転席のアームレストにカウルがガッツリ当たってしまう。そこで車体を左振りで斜めにしてみるとなんとか入った。でも、左のミラーやハンドルバーエンドが内装や窓に当たるので、ハンドルを左に切った状態でタイダウンを掛けるようになる。ただ、運転席のアームレストを外してしまえば積みやすくなりそうな感じだ。

積みこんだ状態。スタンドのみでは実際に積んだときの状況とは異なるので、今回はタイダウンで直立させるまで行なった。積んだ状態で走行までは行なっていない。PCXは車体幅が太いので、車体は若干斜めになる
車体が左寄りになるので、ハンドルを切らないとミラーやハンドルが左側の内装や窓に当たる
車体が太いのがネックだが、アームレストを外せばもっと楽に積めそうだ
リアハッチが閉まる位置に固定しても側方視界は問題ない
左は内装とギリギリ。積み方次第ではもうちょっと改善しそうだが、積み込みの時間はかかりそう

フルサイズ125バイクでも、さほど無理なく積める

 次に積んでみたのがCB125R。250ccと言われても違和感ないほどの車体サイズで、装備も豪華。このバイクこそ郊外で乗りたいので、N-VANに積んでみたらどんな感じなのかは筆者も興味があった。

 CB125Rの全長は約2mとそこそこ長いが、N-VANは助手席をダイブダウンさせると約2.5mのものまで入るので縦の長さは心配ない。ここは本当にすごいと思う。

 ただ、CB125Rは車体が大きいぶん、ハンドル幅があるのでハンドルを切って載せる感じになった。ただ、こちらもアームレストがフレームに当たるので右寄せができずにいたが、アームレストがなければハンドル真っすぐで積めるかも知れない。

大柄なCB125Rも積めた。ハンドルは左に切った状態でそれに合わせて車体も少し斜めになった。それでも右側にはスペースがあるので積載道具などは問題なく積み込める
天井高が高いのでミラーは外さずに載せられる。ただ、左側は緩めて内側へ向けることが必要だった
CB125Rもアームレストを外すと積み込みが楽になりそうな感じだった
ハンドルを切って積載。フロントタイヤがドアの内張に当たる寸前になっていた。車体がもっと右に寄せられるとここは改善できる
CB125Rも側方視界は問題なし。フロントタイヤの前にスペースが残るのでここにも荷物は置ける
フロントを今回の位置にすると突き出たリアフェンダーとハッチはギリギリ。でも当たらない
この位置で荷室後端からリアタイヤ接地面の距離が約34cm

N-VANに載せることに適していた大人気125cc

 PCXとCB125Rという大物が載ったので、あとのモデルは余裕でしょう。次に選んだのはモンキー125。これも載せるのが楽しみだったバイクだ。

 積み込みはこちらもホンダ広報の皆さんにお願いしたが、撮影後に自分でも取りまわしてみたところ、全高が低いぶん重心も低いので、重量が100kgあってもあまり重さを感じず取りまわししやすかった。ゆえに積み込みも楽そうという印象を受けた。

 実際に積んでみると、N-VANとのサイズ感はぴったり。前出の車種でネックになっていた運転席のアームレストもモンキー125なら問題ない。ハンドル真っすぐで直立固定ができるので、なんか嬉しくなりついつい本気のタイダウンの張り方をしてしまった。このまま載せて帰っちゃダメですか? あぁそうですよね……。

真っすぐに積めるのが気持ちいい。積み込みも楽なので積むのにかかる時間も短い。グロムも同じだと思うので、N-VANにこれらの車種は合うと言えよう
天井とミラーも問題なし。アームレストも問題ない。写真ではウィンカーが軽く当たっているけれど、少し車体を前にすれば解決
側方視界もまるで問題なし
この積み方で後ろのスペースはこんな感じ。荷室後端からタイヤ接地面までは約24cm
モンキー125ならバイクを積んだ状態で右リアシートを展開することが可能

ちょっと大きめでもクロスカブなら余裕

 今度はクロスカブ50を積んでみた。このバイクも人気はあるし、50ccなのでクルマの免許さえ持っていれば乗ることができるのが魅力。車体も大きいので乗りやすく、大人の男性が乗っていても絵になるし、女性が乗るとかわいくてなおイイ。

 また、4速ロータリーミッションなのでシフト操作も楽しめる。それにクロスカブは道具っぽいデザインなのでN-VANとのイメージが合うのもいい。

 積載に関しては、クロスカブはレグシールドがなく車体を右に寄せて積めるので、ハンドルを真っすぐにしても左内装や窓にハンドルが当たらない。ただ、全高が高く、ミラーのステーも長めなので左のミラーは緩めて内側に向けたり、右も鏡面を回すなどが必要になる。でも、大した手間ではないし、ミラーをオフ車用のフレキシブルジョイントタイプに換えれば簡単に向きを変えられるので、そのちょっとの手間もなくなるだろう。

クロスカブ50はレグシールドがないので積むのが楽。車体を右寄りにできるからハンドルが真っすぐで固定できる。クロスカブ110も同様だろう。スーパーカブC125(写真右)は小振りなレグシールドがあるので、積載イメージはCB125Rと同じ感じだと思われる
全高が高くミラーステーも長いようで、ミラーは写真のようにしないと収まらなかったが、ミラー自体をほかのものに変えてしまえば解決するところ
レグシールドがないので右側に寄せられる。スーパーカブC125の場合はアームレストを外せばハンドル真っすぐが可能かもしれない
クロスカブ50も側方視界は問題なし。フロントまわりが独得なのでカバンとか引っかけられそう

もっとも楽に載るが、サイドスタンドが欲しい

 最後は原付一種スクーターのダンク。こちらはATバイクだし、今回の中ではもっとも軽量の81kg。価格も約21万円と純正カーナビと同等の予算で購入できる。N-VAN+原付のプランではもっとも現実的なバイクだ。ただ、このクラスのスクーターにはサイドスタンドが付いていないので、車載の際は一時的にバイクを支えるためのサイドスタンドは欲しい。

 今回はサイドスタンドがなかったのでセンタースタンドで自立させて積載イメージとした。当然のことながら余裕で右リアシートも出すことができる。ただ、さすがに助手席を起こした状態では真っすぐに入らない。

ダンクなら楽に積載できる。ダンクにはスマホ充電もできるアクセサリーソケットが付いていたり、フルフェイスヘルメットが入るだけのシート下スペースがあるので、街巡りで土産物を買ったときなども便利
サイドスタンドがないので、その状態では1人で積んでタイダウンを掛けるのは無理。ダンクで車載をするなら社外品のサイドスタンドを付けるのは必須だろう
右リアシートが出せるので2名乗車は可能。バイクの後にもスペースがあるのでキャンプ道具も積んでキャンプ+原付スクーターという遊びもできる。現地でバイクを降ろせば車中泊ももちろんOK

N-VAN+原付バイクで休日の楽しみを増やそう

 このような結果になったN-VAN+原付バイク。印象として一番よかったのがモンキー125との組み合わせだ。サイズ的にも無理ないし、125ccならどこへ行っても走りの面で不満はない。そしてMT車なのでバイクらしい楽しさも味わえる。

 2番目はすごく悩むが、ここはダンクかもしれない。50ccバイクは都市部では制限速度と交通の流れとのミスマッチがあったり、2段階右折の場所も多かったり、いろいろと乗りにくいところがあるけれど、山や郊外までN-VANで運べばそこはクリア。走りやすい道では50ccスクーターならではの軽快感や便利さが生きてくるはず。すると、これまでバイクの趣味がなかった人にバイクの楽しさが分かってもらえるような気がする。価格面でも取りまわしの面でもハードルが低いのもポイントだ。

 N-VANを新車で購入すると、オプションなどを付けて約200万円。そこに原付バイクを足すと総額約230万円となるが、これだけ工面すると遊びの幅はグッと広がる。まあ、けっして安い値段ではないので気軽に「どうですか」とは言わないが、「こんな遊び方をしたときのことをちょっと想像してください」とだけは言わせていただこう。

深田昌之