深田昌之のホンダ「N-VAN」で幸せになろう

第7回:バッチリ合法のオリジナルカスタムに着手!

 自分のN-VANは納車時期から考えると本当の初期生産モデル。それだけにマイナートラブルの1つや2つあるのかなと思っていたのだけど、そんなことはまったくなくて、走行距離が1万kmを超えた時点でも「働くクルマ」としての信頼性の高さを見せてくれている。N-VANは安心して乗れるクルマと言えるだろう。

 ただ、個人的に気になっていたのがエンジンオイルの粘度について。「0W-20」(Honda ULTRA LEO)が指定となっているけど、筆者は0Wオイルがどうも好きじゃない。そんなことで、走行距離が9000km台になった時点で行なったオイル交換で「5W-30」(Honda ULTRA LTD)のオイルに変更してみた。オイル交換はいつもどおりホンダカーズ東京中央 調布インター店でお願いしたので、入れたのは当然ホンダ純正オイル。粘度だけ変えたのだ。

 その際、サービスフロントの方に「オイルの粘度を上げると燃費に影響が出ることもあります」というアドバイスはいただいたけど、今のところ燃費が落ちたようなことはない。まぁ、乗り方や状況によってはわるくなることもあるだろうが、もともと燃費にさほどこだわりがない筆者にはまるで問題がない。それよりも安心感が増したことのほうが大きい。

 これだけでも十分なのだが、なんと0Wオイルを使っていた時より明らかにエンジントルクを感じるようになった。とくにアクセルの踏み込みではターボらしい伸びを感じるようになって、市街地でのキビキビ感がアップした印象だ。燃費より走りのフィーリングを重視したいというN-VANオーナーの方は、次回のオイル交換時に5W-30を試してみてはいかがだろうか。

 なお、N-VANで使うエンジンオイルの推奨銘柄や粘度などの情報は、ホンダのWebサイト内に用意されているオンライン版のオーナーズマニュアルにある車両仕様一覧で確認できるので、参照していただきたい。

以前からオイルは小まめに変えるほうで、N-VANも9000km走行時で3回目のオイル交換。今回は粘度を5W-30に変更。0Wの時と比べて明らかにトルク感が出た。ホンダ純正オイルには5W-30もあるので、指定すればどこのディーラーでも対応は可能。ただ、粘度が硬くなるので燃費が落ちることがあるかもしれない

“黒てっちんホイール”のカッコよさを引き出す足下カスタムに挑戦

 N-VANは12インチタイヤを装着している。いわゆる“軽トラサイズ”なので小さいと思う人もいるだろう。実際、N-VANの開発時もタイヤ径を上げることが議論されたようだけど、N-VANは軽貨物。仕事で使うクルマだから維持コストは低い方がいいということで12インチになったと聞いた。

 つまり、12インチであることはN-VANらしさとも言えるので、筆者としてはインチアップをする考えは一切なかった。ただ、純正のホイールまわりは何か変化を付けたいと思っていたところに出たのが、ホンダアクセスが東京オートサロン 2019に出展した「TRIP VAN」だった。

 このクルマの見どころはいろいろあるのだけど、筆者がとくに注目したのがホイールとタイヤだった。ホイールは純正のスチールホイールを黒で塗り直しただけの素っ気なさだが、塗装をあえて雑な感じにしたりホイールナットを黒にしてイメージをそろえたり、センターキャップに木製プレートを付けて「H」の文字を焼き印で入れたりと小技をいろいろ盛りこんできた。

 そしてタイヤはTOYO TIREの「オープンカントリー RT」を履いてきた。このタイヤはオフロード性能とオンロード性能を両立させた「ラギットテレイン」というタイプ。見た目はオフロード用タイヤでかなりカッコよく、スチールホイールにもよく似合っていた。

ホンダアクセスが東京オートサロンに出展した「TRIP VAN」(Photo:堤晋一)
TRIP VANの足下。純正スチールホイールを“はけ塗り風”に黒塗装するというシブイ仕上げ。TOYO TIREの「オープンカントリー RT」を履く。サイズは純正と同じく145/80R12 80/78N(Photo:堤晋一)

 筆者はTRIP VANのファンでもあるので「黒スチールホイール+オープンカントリー RT」のスタイルをそっくり真似させてもらうことにした。

 ただ、すべて一緒では面白くないので、自分なりの何かを入れたい。とはいえ、純正スチールホイールを使用してタイヤサイズも変えずにカッコよく仕上げたTRIP VANのカスタマイズはかなりの上級技で、何か付け足すのは簡単なことではない。

 そこで考えたのが、スチールホイール用のハブキャップをボディと同じ色で塗ること。黒1色の足下にワンポイントのアクセントを入れることだった。これなら使うのは純正パーツなので、TRIP VAN風カスタムの路線から外れないし、キャップのサイズは小さいので、色を付けても目立ち過ぎることはないはず。そんなわけでさっそく純正ハブキャップをホンダカーズで注文した。

ハブキャップはN-VANの「G・Honda SENSING」に標準装着
部品の正式名称は「キャップ・ホイールセンター」で、価格は4つで5872円。同時に黒い袋ナットも注文。そちらは3024円だった
今どきなので樹脂製かとも思ったが、しっかり金属製だった

 ハブキャップぐらいの大きさならDIYでも塗れそうな気もするが、実際にやるとなればキャップ表面のメッキを紙やすりで擦って塗料が乗るような下地を作り、その後に塗装面の脱脂。それからやっと塗装とけっこうな手間である。それに、しっかり塗るには何度かに分けて塗装しなければいけないので塗料スプレーは2~3缶はいるだろうが、実は筆者のN-VANのボディ色(ガーデングリーン・メタリック)は市販スプレー塗料がまだなく、特注で作るしかないという状態なので、用意できてもひと缶あたりの価格は高い。

 そんなことから今回はプロに塗装を依頼することにした。お願いしたのは東京都江戸川区にある「カーファクトリー上嶋」というボディショップで、ここは一般の板金塗装はもちろん、マニアックな旧車や輸入車の作業も得意としているところ。以前から他の取材でお付き合いがあったので、ハブキャップの塗装という手間が多い仕事を頼んでみたところ上嶋社長は「面白そうだからやりますよ」と快諾してくれた。

まずはメッキ面にやすりをかけて塗料が乗るような下地を作る
塗料はボディ色と同じになるよう調色して作ってもらった。N-VANの他のボディカラーももちろん作ってくれる
片側は色を変えてみることにした
「センターのHマーク周辺の凹部分は色を変えてほしい」というお願いも追加。緑がベースのほうは黒、黒ベースは緑とした。今回は工賃を抑えるため、マスキングではなく注射器のような道具で凹みの部分に塗料を流し込む方法を選んだので、色の境目が少し波打っているが許容範囲だ

 さて、それではホイールカバーを外しただけの状態と、ハブキャップを付けて塗装した状態を比べてみよう。純正ホイールキャップを外すのはN-VANで最も簡単なイメージチェンジでやっている人も多い。N-VANに黒いスチールホイール姿は似合うのだが、ハブナットが丸見えの状態は見栄えがよくない。また、サビなども気になる部分だ。

左がホイールカバーを外した状態。けっこうイメージが変わる
しかし、ハブナットが丸見えなのは機械的にも見栄え的にもいただけない

 ボディ色に塗装したハブキャップを付けてみると+STYLE FUNっぽいカジュアルさが出たと思う。そして反対側(助手席側)には黒塗装のキャップを装着。こちらはグッと締まった感じになるが、「Hマーク」の部分にボディ色を入れているので黒が主体でも重くなりすぎない見え方になっている。

 この記事を読んでいるN-VANオーナーやこれからN-VANに乗るという方で、このハブキャップ塗装が気に入ったという方はぜひ参考にしていただきたい。筆者のN-VANは「ガーデングリーン・メタリック」だが、これが「プレミアムイエロー・パールII」や「プレミアムホワイト・パールII」「プレミアムピンク・パール」ならもっと映える感じになるだろうし、「シャイニンググレー・メタリック」「クリスタルブラック・パール」「ブリリアントスポーティブルー・メタリック」などのクールな色なら渋い感じで仕上がるだろう。塗った人が出てきたら、どこかで見せていただきたいものだ。

ハブキャップなしの状態
塗装済ハブキャップを付けた状態
助手席側は黒メインのキャップを付けた

 気になる値段だが、カーファクトリー上嶋さんではCar Watch読者なら「1つ5500円でいいですよ」と言ってくれた。自分でやる手間や缶スプレー代を考えるとこれは格安だ。

 ただ、そんな値段だけにメインの仕事の合間に作業するので、納品までは1週間以上の期間を見てほしい。また、Hマーク周辺の色分けは塗料を流し込む手法なので境目が波打つこともあり、これも了承しておいていただきたい。

 カーファクトリー上嶋さんのWebサイトにはメールアドレスも載っているが「メールだと返信を忘れちゃうこともある」とのことなので、問い合わせは電話(03-5607-0450)で担当の上嶋さんにお願いしたい。

アルミホイールに交換せず、イメージチェンジができるカバー外し&塗装キャップ装着。キャップ代が5872円で塗装が4個で2万2000円。送料などを入れても3万円以内で収まるので、これはお勧めしたい
新品のキャップは手で押したくらいでははまらないので、ウエスなどを当てて傷がつかないようにしてからハンマーで軽く叩きながら押し込んでいく
カーファクトリー上嶋。住所は東京都江戸川区松本2-8-17 TEL:03-5607-0450/FAX:03-5607-9653

足下カスタムの仕上げはタイヤ交換

TOYO TIREの「オープンカントリー RT」。サイズは145/80R12 80/78Nで、「M+S」の表記があるので雪道もそれなりに走れる。この手のオフロード向きタイヤでは唯一舗装路の性能についても謳っている。自分で乗った印象だけでなく、TOYO TIREに話を聞いてみたい

 続いてはタイヤ交換。前記したように選んだのはTOYO TIREのオープンカントリー RTで、サイズはN-VAN純正タイヤと同じ145/80R12 80/78Nなので車検も問題ない。値段はインターネットと実店舗で差はあるが、交換工賃を含めてどちらも3万円くらいで収まるのではないだろうか。筆者はいつも行っているガソリンスタンドでタイヤを購入して交換もしてもらった。

 さて、オープンカントリー RTだが、このタイヤを選んだ一番の理由はルックスのよさだ。ただ、見てのとおりブロックパターンなので、ロードノイズが大きくなることは予想できた。この点は読者の方も気になるところだと思うので、オープンカントリー RTの印象はしばらく乗ってから改めて紹介したいと思う。

 でも、まぁカッコいいことは間違いなく、黒いスチールホイールともよく似合う。どこに乗って行っても好評の組み合わせだ。

N-VANのタイヤは12インチということで、新品を買っても安い。スタッドレスタイヤも買ったし、オープンカントリー RTも購入と、すでにタイヤを2セット買っている
約1万km走った純正タイヤ。ブリヂストンの「エコピア R680」はほぼ減っていない感じ
純正ナットはシルバーメッキの貫通ナットだったので黒塗装の袋ナットに変更。ホンダ純正品だ。ホイールカバーを外す場合はスタッドボルトのサビ防止などのため、必ず袋ナットに交換していただきたい。ホンダ車はスチールホイールも球面座のナットだ。色はシルバーのタイプもある
ホイールカバーを外しただけ(左)とタイヤ、ナットまで換えた姿(中央、右)を並べてみた。筆者的にはかなりイメージが変わったと思う
タイヤのアップ
バランスウェイトが銀色なのが気になったので、つや消し黒のタッチアップペンを買ってきて塗装した
数日乗っているうちにスチールホイールの塗装に艶がなく、白っぽく見えることに気がついた。これでは見栄えがわるいので、バイクの金属部のつや出しと汚れ落としに使っている「ユニコン カークリーム」でつや出し。これはコンパウンドが入っていないカルナバ蝋主体のクリームで油汚れも落とせる。スチールホイールもかなり艶が出た

カーゴスペースの使い勝手向上と誰もやってないカスタマイズ

なんじゃこりゃ~ってものを作ってみた

 筆者のN-VANには原付きバイクを積載するのだが、原付と言えどもバイクを積むとなるとフロアやダイブダウンしたシートの背面が痛まないか多少気になっていた。

 そこでフロアを保護できるものを探していたのだが、知人が経営するアースという建築工事会社でいいものを発見。

 この会社では職人さんが愛用している「ハイエース」や「キャラバン」向けに職人さん目線で便利なアイテムを企画・製作している部署があるのだが、そこで根強い人気の商品がベニヤ材を使用した「フロアボード」だ。これはその名のとおり荷室に敷く板で、余計な装飾は一切なし。丈夫さや使いやすさを重視しつつ低価格に抑えているのが特徴。

 N-VANも職人さんが乗っているクルマなので「作りますか?」と提案したところ、筆者のN-VANで型を取り、市販することに決定したのだ。

ハブキャップに続くプロデュース品(?)の第2弾は「フロアボード」。アースさん(東京都狛江市駒井2-26-14)に協力してもらった
まずはフロアをきっちり採寸して型を取る。N-VANの利点であるシートアレンジやフックなどをちゃんと使えるように設計をしてくれた
ベニヤ材にもグレードがあるそうで、フロアボードに使っているのは反りなどに強いものとのこと。重量物への耐久性とボード自体の自重を考え、板厚は12mmのものを使用した
こちらが試作のフロアボード。4つのパートで構成されていてシートアレンジにも対応できる。価格は取材時では未定だったが、予価で2万円以下。ただ、助手席部のボードは不要な人もいるので、ここは別売りとなる。こちらは価格未定。問い合わせはアース 職車事業部(03-6807-6542)まで
細部のアップ。2列目シート部は支えるところがないので走行中に滑ることも予想される。そこで下にカー用品店やホームセンターで売っているノンスリップマットを敷くことを勧める。職人さん向けの製品なので自身のアイデアで使いやすくカスタマイズするのが基本なのだ
フックがある部分には穴が開いているので、フロアボードを設置した状態でもフックが使える。ボードの角は面取りしてあるが内装と擦れると傷が付きそう。ここもテープやゴムで保護するなどアイデアで対応したい
助手席部分のボードは別売りとなる。先端の位置はこんな感じで内装ギリギリ。ここも傷予防にゴムなどでカバーするといい
シートアレンジをしたときの状態

 さてさて、筆者的にはかなり便利なフロアボードなのだが、ただ置くだけでは記事的にひねりがない。そこで思いついたのがカラーリングだ。

 イメージしたのは海上自衛隊の護衛艦「いずも」の甲板。グレーの塗料でフロアボードを塗り、バイクが乗る部分に白線を引く。艦番号が入る位置にはナンバープレートの「14」を入れた。ちなみにアルファベットの14番目が「N」なので、14番とはN-VANというダジャレ的な意味で選んだ数字だ。そして開いたスペースにはヘリポートのHマークをもじったNマークを入れ、フックがある部分は黄色のペイントで目印を入れた。

白線はマスキングテープで作った。線の間隔は20cm
数字や文字は「ステンシル」という塗装用の抜き文字板を使用。紙製、金属製、樹脂製がある。安価なのは紙製だが数回使うとだめになる感覚。また、反りもあるので文字がキレイに出ないこともある
マスキングテープで繋げる。周囲を広めにビニールや新聞紙でマスキングしたあとでスプレーする。何度かに分けて塗るが、今回は下がグレーなのでかなり重ね塗りが必要だった
艦番号っぽくナンバープレートの数字を入れてみた
右2列目シート部がさみしかったので、ヘリポートのHマークふうに「N」を入れた
フックの部分に黄色のペイントでマークを入れたら全体のバランスがよくなった気がする
未塗装のボード(左)と塗装したボード(右)。塗装までしなくてもステンシルで文字や数字を入れるだけでもカッコよくなると思う

 仕上がりはご覧のとおり。バイクを載せるのがもったいないくらいだけど、使って傷がつくのもN-VANの用品らしいところなのでドンドン使っていこうと思う。“甲板ボード”の仕上げが気に入った人はいくらでも参考にしていただいて構わない。ただ、アースでこの塗装作業は受け付けていないので、やるならDIYでがんばってほしい。

 フロアボードを塗るには木部用の水性塗料を使うが、塗装の面積が広いのでスプレー缶ではなく塗料缶で買うのが正解。塗るときは塗装ローラーという道具を使うが、ローラー部はスポンジなので塗ると塗装面に細かい凹凸が付く。これを「ローラー目」と言うそうで、職人さんの世界ではローラー目が出ないように塗るらしいが、表面が適度にざらつくのもいい雰囲気だったので“甲板ボード”ではローラー目を出した仕上げとした。

 ということで、今回は一気に方向性を変えた記事にしてみたが、タイヤ、ホイール、フロアボードとすべて法規を守ったもので、ディーラーへの入庫や車検も問題ない。その一方でイメージはかなり変えることができたと思う。これならTRIP VANにもちょっと対抗できた……、かな。

深田昌之