深田昌之のホンダ「N-VAN」で幸せになろう

第5回:ジョルカブ積んで檜原村へ行く

「N-VAN」(左)と「ジョルカブ」(右)

「N-VAN」を買う気になった理由はいくつもあるけど、その1つに「バイクを積みたい」というのがあった。

 高校生時代はバイクブームのまっただ中だったので、自分も400ccのバイクを所有していた。クルマに乗るようになってから1度バイクは手放したが、人が乗っているのを見ると欲しくなる。それにバイクは直したり手を入れたりするのも好きだったので、買っては手放し、また買ってということを繰り返し、飛び飛びではあるがバイクが手元にある環境だった。

 でも、あるときから気軽に乗れて荷物も運べ、走ってもそれなりに楽しいスクーターに興味を持ち、以降、国産から輸入スクーターなど何台か乗り継いだ。そしてスクーターの便利さに加えて「機動性のよさ」も求めるようになって原付き2種のスクーターが好みになり、現在は2台を所有している。

 都内への移動に使ったり、日帰りで飛行機移動の時などは羽田空港までの足としても乗る。週末、クルマ用の駐車場に列ができていても2輪用スペースはたいてい余裕があるのでかなり重宝している。また、たまに自宅から100kmちょっとの距離感でツーリングに行くこともあるのだけど、小まわりの効くスクーターなら大きなバイクでは入る気がしない細い道にもドンドン行ける。それにちょっと立ち寄りたいところを見つけたときに止める場所に苦労しないなど、原付きスクーターならではの魅力にハマっている。

 でも、そんな原付きスクーターにも弱点がある。それは高速道路に乗れないこと。高速道路が使えないと行動範囲は限定されるし、丸1日、下道を走るのは正直疲れる。

 そこで以前から考えていたのがクルマとの組み合わせだ。クルマに積んで現地まで行き、現地で降ろしてスクーターでまわりたいところだけ走るというもの。これなら行動範囲も大幅に伸びるし、スクーターの利点である機動性のよさも生きる。それに2輪と4輪では事故に遭う確率も違うので、身を守る意味でも有利になる。

 ということで、原付きスクーターを積むのに具合がいいクルマを探していたところ、登場したのがN-VAN。見た瞬間「あ、これ買うヤツだ」となったわけだ。

これがやりたくてN-VANを買った。のんびり走って目的地へ行き、スクーターを降ろしてまたのんびり現地を巡る

 今回は「N-VAN+スクーター」の話を紹介させてもらう。目的地にしたのは都内から2時間あれば行ける東京都檜原村。以前からスクーターツーリングで何度か来ているところで、撮影した時期(2月上旬)は村にある「払沢の滝」という滝が氷瀑することでも有名だ。

東京都島しょ部を除くと東京で唯一の村である檜原村。ここは村役場。正面フロアには特産物の紹介や観光ガイド冊子もあるので、遊びに行ったら役場に立ち寄ってみるのもいい
檜原村は滝が多いことでも有名。滝の場所が道路から離れたものが多いので、すべてまわるのは1日では無理だ
積んでいったのは、本田技研工業から発売されていた「ジョルカブ」。リアボックスはホンダ純正アクセサリーでけっこう古いもの。新品デッドストックを手に入れた。カタカナの「ホンダ」と「ジョルカブ」のステッカーは、知り合いのステッカー屋さんにオーダーして作ったワンオフもの
スクーターの外観だがスーパーカブ系のエンジンを積んでいて、トランスミッションは4速ロータリー式。排気量を75ccにしてあり、改造書類も揃っているので原付2種で登録済み。「すごく遅い」が「遅い」のレベルになる感じの性能向上!?
ボディカバーからスイングアーム、チェーン、スプロケがチラりと見えるのがステキと思っている。でも、かなりマイナーなスクーター

 最初からバイクを積むつもりだったので、N-VANには純正アクセサリーの「ラゲッジマット TPOタイプ」を付けておいた。このマットは助手席の背面もカバーするので、助手席までダイブダウンさせた状態で荷物を積む人向け。価格は1万260円だ。

 ただ、TPOタイプと言うくらいなので、使用にはひと手間必要。購入したままの状態ではリアシートをカバーする面が左右でつながっているので、片側だけシートをダイブダウンさせると、倒した方のシートからカバーが外れてしまう。

 そこで2分割して使いたいときは、カバーにカッターなどで切れ込みを入れる必要がある。カバーには切れ込みのスタート地点とゴール地点に目印になる穴が開いているので、長い定規などを穴と穴を結ぶように置いたあと、カッターで切っていけば真っ直ぐに切れる。

 このカバーを敷いておくと、荷物を積んだり土足で乗り込んだりする時もシート背面やラゲッジスペースの床材の保護になるので、物を積むことが多いN-VANオーナー向きだ。

ラゲッジマットは純正アクセサリーの「TPOタイプ」を付けている。高級感みたいなものはないけど、積み荷や土足での乗り込みからシート背面やフロアを保護する役目はちゃんとこなす。実用品だ
買ったままでは後席背面の部分がつながっているので、分割可倒すると片側だけカバーが外れる。倒す方こそカバーしたいので、これはまずい
ラゲッジマットをよく見ると、シートの分割点上部とフロア側に丸い小さな穴が開いている。これは切れ込みを入れるためのガイド
そこでこの穴に定規を合わせてカッターで切る。それなりに厚みがあるので、カッターの刃は新品にしておいたほうがいい
切れ込みを入れた状態。切りすぎてフロア側の穴を行きすぎないよう注意が必要。あらかじめ開けてある穴はガイドのほか、切れ込みが不要に広がらない役目も果たしているのだ
切れ込みを入れた後。両方起こしているとき
片側だけ倒せるようになった。これで本来の便利さとなる

 N-VANは低床だが、それでもスクーターを積むとなると高さを感じる。積み込みが上手い人ならまるで問題ないのだろうが、不慣れな自分は少しでも負担を減らしたい。また、N-VANは助手席側にバイクを寄せて積むので、搭載時に車体を支える立ち位置が日ごろ押し歩きするときと逆の右側になる。そのためちょっと押しにくい気もするので余計にサポートがほしい。

 そこでホームセンターに行き、具合のよさそうなものを探したところ、見つけたのが耐荷重80kgの樹脂ボックス。踏み台としてもちょうどいい大きさで耐荷重も問題ない。

 また、普段はバイク固定用のタイダウンベルトなどをしまっておけるので使い道も広い。これしかないということで購入。そして使ってみると完璧。積むとき、降ろすとき、どちらも踏み台があると安心感が高く、なにより楽だ。

 なお、積み込み用のラダーレールはDRCというメーカーのもの使っている。これはフレームがアルミ製で軽く、ラダー部が樹脂なので車体に掛かる部分で内装パーツを傷めずに済む。それに買ったものは2つ折りタイプなので、折りたたむと比較的コンパクトになるのも利点。N-VANにはいろいろ条件が合うので、N-VAN用ラダーを買うならこれを勧める。

スクーター(バイクも)を積むにはラダーレールが必要。自分で使っているのはDRCというメーカーのもので、フレームがアルミ、ハシゴ部分が樹脂で軽量。折りたたみができるのでしまうのも省スペース
荷室のフロア高は地面から525mmと十分低床だが、スクーターを積むには高さを感じる。そこで踏み台を使っている。これがあるとかなり楽だし、落とすかも、という不安もなくなる
スクーター固定用にはタイダウンベルトを使う。純正アクセサリーにもあるが、自分は以前から持っていたのでそれを使用。巻き揚げ機が付いているので、引っかけた後に巻き揚げてベルトの緩みを取り、スクーターを固定する
前側は左右にタイダウンベルトを引っかける。N-VANは前に2か所、センターに4か所、リアに2か所のフックを備えているが、ジョルカブでは前2か所とセンターの前寄り2か所、そしてリア2か所を使ってベルトを張る
キチンと張るとスタンドなし、ストッパーなしでも直立して固定できる。とはいえ揺れはあるので、積載時の運転はいつも以上に慎重に行なう

 N-VANの助手席側は、シートをダイブダウンすると2.5mほどの室内長さが取れるので、載せようと思えば助手席側いっぱいになるくらいのカウル付き大型バイクまで積むことができる。

 でも、視界に関する車検時の基準では「直前側方視界基準」というのがあって、「クルマの前面及び左側面に接する高さ1m、直径0.3mの円柱(6歳児を模したもの)を直接、もしくはミラーなどで視認できること」というのがある。これをクリアできていないと真横に小さい子供がいても見えないということなのでかなり怖い。バイクに限らず、助手席をダイブダウンして荷物を積む際はこの視界の基準も気にしてほしい。

助手席横に6歳児を模した高さ1m、直径0.3mの円柱を置いて、それが直接、またはミラー越しに見えなければならないと車検の基準にある。ここが実際に隠れていると、子供がヒョイと横に来ることはあるし、最近は子供の自転車も車道にいるので、この高さが見えないのはヤバイ。バイクや荷物を積むときは注意したい

 さて、檜原村に話を戻そう。今回はとくに予定していたわけではなく、突発的に「行こう」と思って出かけた。まわる先もとくに決めていなかったが、檜原村には有名なおそば屋さんや、お豆腐屋さんが作る「うの花ドーナッツ」などがあるので、それは食べたいと思っていた。

 また、2018年の同じころは東京に大雪が降って、そのとき冬期の寒さで滝が凍る「氷瀑」で有名な払沢の滝が“完全氷瀑+雪が積もる”という滅多にない状態だったので、それを見に行っていた。今年は暖冬で氷瀑しなかったが、払沢の滝は好きなのでそこもまわることにした。

 ただ、檜原村にはコインパーキングの類がなく、空き地があってもほとんどが私有地なので、意外とクルマを駐める場所がない。そこで檜原村役場の観光商工係に檜原村観光時に駐めておける駐車場を訪ねたところ、村営駐車場を紹介してくれたので、そこにN-VANを停めさせてもらうことにした。

村役場で紹介された村営駐車場へ向かう。空き地はあるが私有地がほとんどなので、クルマを駐めるならここに。ちなみに無料だが、あくまでも檜原村観光用。他の乗り物に乗り換えて隣のあきる野市や奥多摩まで足を伸ばそうという場合は他の駐車場を使いたい
駐車場はかなり広いが、ここに来るまでの道が細いので、大型のクルマでは慎重に

 行ったのが平日だったので、村営駐車場は空いていた。N-VANを駐めてリアゲートを開け、ジョルカブを降ろす。これがやりたかったので、この時点でにやける。そして準備をして「N-VANはお留守番~」なんてヘルメットの中で言いながら、ご機嫌で走り出す……。が、戻ってきた時は「くそぅ、また来るぜ」となっていた。その理由は写真で紹介するが、まぁ、それでも檜原村のプチツーリングは楽しかった。東京近郊の方で檜原村に行ったことないという人は、1度行かれてはいかがでしょう。

ジョルカブ登場。このバイクでは自宅からここまで走らせてくる気にはならないので、ジョルカブがここにあること自体がなんだかうれしい
前回の記事で紹介したサイドネットにヘルメットやグローブを突っ込んできた。ホントに便利である
まず向かったのが払沢の滝。ここの入り口付近にも村営駐車場はあるが、払沢の滝に来た人専用なので駐めっぱなしは不可。入り口にはキレイなトイレもある
滝までは整備された山道を10~15分くらい歩く
冬期は滝の氷瀑をイベントにしていて、途中に地元の人が作る氷のオブジェがある。縄のアーチを掛け、そこに川の水をポンプでくみ上げて掛けているだけだが、寒いので写真のように凍る。ただ、2月後半の気温ではもう見られない
これが払沢の滝。当日は凍ったところは一切なく、しばらく雨も降っていなかったので水量も少ないかも
払沢の滝は滝壺の近くまで行ける。この水は地元の人の飲料水なので、汚すことは厳禁
ちなみにこれは2018年に行ったときに自分で撮ったもの。滝が完全氷瀑していて、そこに雪が積もった風景
この日は滝壺まで完全に凍っていた。2019年は完全に凍った日がなかったようだ
払沢の滝で癒し(?)の滝動画を撮ってみた。滝壺近くからは見えないが4段の滝になっている(30秒)
払沢の滝近くにある「ちとせ屋」さんという手作りとうふのお店。ここで売っている「うの花ドーナッツ」が美味しく、檜原村に行った時は必ず買っている
が、なんと定休日……。火曜日はお休みなのね
気を取り直してジョルカブを北の方角に走らせる。途中、檜原村の資料館がある。山間部にある村の歴史は面白そうだと思っていたので寄ってみると……。休館日
気を取り直して、美味しいと評判の深山(みやま)というおそば屋さんに向かう。が、なんと臨時休業……。ネタかと思う展開となる
ずいぶんがっかりしてさらに奥へ進む。檜原村には重要文化財の小林家住宅というのがある。見学の問い合わせは檜原村役場まで
小林家住宅は山奥にあるので、専用モノレールが敷かれている。これが渋い
この急勾配、このルート。絶対に乗りに来る
小林家モノレール横には「雨乞の滝」があって、ここは山道に降りて小さい橋を2個くらい越えると見えてくる。以前に来て、また見たいと思っていたのだが……。道が崩れたり倒木があったりで通行止め。まだ続くか、このパターン
さらに奥へ行く。こっちは来たことがないな~と思っていると、林道あるあるの通行止め。「もういいですよ」と開き直って、道路脇の駐車スペースにジョルカブを駐める
念のために用意していたのはカップ麺と水、そして湯沸かし用の機材。もうお昼はこれにしますよ
買ってからあまり使っていないので道具がキレイ。ニワカ丸出しである。こういったものは使い込んでいるほうが圧倒的にカッコいい。ドンドン使おう
帰り道、通行止めになっているっぽい道を発見。入ってみたいなとも思った
どこまで続いているのかと道を見ながら走ると、「Oh……」という光景。入っちゃいけないところは入っちゃいけない理由があるということ
前方に猿発見。群れでいた。横をゆっくり通り抜けたけど、向こうの顔はとくに怒っていたり警戒しているようには見えなかった
ただいまN-VAN。想定外のことがあったけど楽しかった。でも、おかげでまた来る理由ができた。もし、読者の方が檜原村に来た時、村営駐車場に緑の14番が止まっていたら、それは再戦中の私です

深田昌之