深田昌之のホンダ「N-VAN」で幸せになろう

第18回:e-bikeを積んで山へ行き、健脚になってきた!?

今回はN-VANとe-bikeについて

 ちょうど1年前、同じような写真を撮った。それがこちら(深田昌之のホンダ「N-VAN」で幸せになろう・第5回:ジョルカブ積んで檜原村へ行く)の記事。本田技研工業の「N-VAN」に同じくホンダの古い原付スクーター「ジョルカブ」を積んで、奥多摩に近い東京都檜原村へ原付ツーリングをしに行った時のものだ。

 ジョルカブというバイクは非力だから走りは基本的にのんびりだけど、コイツはそこに気持ちのいいところがあるので、交通量の多い道を追い立てられながら走るのは苦手。それよりもクルマがほぼ走っていない山沿いの道をゆっくりペースで走りたい乗り物だ。

 そこでN-VANだった。積載能力を生かしてジョルカブを郊外まで一気に運んで目的地で降ろし、走りたい道だけ走る。これはとても気持ちよかった。

 そんなことから、N-VAN+ジョルカブの組み合わせはとても好きなのだが、今回はもっと気楽にツーリングを楽しめるアイテムを試させてもらったので、その乗り物を使ったN-VAN+2輪アソビの内容を紹介していきたい。

初めての体験。“e-bike”って乗って面白いの?

 今回借りたのは、「BESV(ベスビー)」というブランドから販売されている「PSF1」という“e-bike”(電動アシスト自転車)。筆者はこの分野の知識がないのでBESVの名前は紹介されるまで知らなかったが、調べてみるとe-bikeの世界では高い人気を持つブランドだ。読者の方にはBESVをすでにご存じの方もいるだろうが、筆者と同じく初めて目にするという方もいると思うので、まずはBESVというブランドのことから触れていこう。

 BESVはDARFON(ダーフォン)というキーボードやノートPC用のバッテリーの製造を行なっているメーカーのe-bike事業である。そして母体のDARFONは液晶モニターでおなじみのBenQ(ベンキュー)のグループ企業で、Apple製品のキーボードの製造も手がけているという会社。つまり、普段からPCを使用するわれわれと接点の多い企業でもあるのだ。

 そんなBESVが作るe-bikeは、フレームをはじめアシストの制御プログラムやドライブユニット、そしてバッテリーがBESVのオリジナルとなっているのが特徴で、IT系企業が本気で作るe-bikeという点が世の中に受けている部分でもある。もちろん、製品の性能や品質も高い。

 今回試乗させてもらったPSF1というモデルは、BESVのラインアップで主力モデルとなっている「PSシリーズ」の最新作で、特徴は折りたたみができるところだ。フレームはアルミ製で、形状は見てのとおり独特で洒落たもの。バッテリーは車体の中心に付くので重量バランス的にもよさそうだし、バイクのようなスイングアームもかっこいい。

 このPSF1をはじめ、BESVのe-bikeはどれもデザインに特徴があるのだけど、それはBESVが自転車業界出身ではないからできたもので、なおかつ新しいブランドだけに、使用する素材や製法も以前のものにとらわれず、現代のものからスタートできたのも大きなポイントだ。素材、製法が進化した分、「自転車のフレームというとこれ」みたいな面を踏襲せずとも、安全性と個性が出せたということだ。

 そのほかの特徴については、姉妹誌である家電 Watchのe-bikeページ「e-bike Watch」で、「PSF1」の解説記事を紹介しているのでそちらで見ていただきたい。

BESV JAPANが扱うe-bikeの「PSF1」。フレームはアルミ製でサイズは1570×565×1120mm(全長×全幅×全高)。折りたたみができるモデルで、折りたたんだ状態では840×340×770mm(全長×全幅×全高)となる。重量は18.3kg。価格は24万5000円(税別)。なお、ブランド名のBESVとは「Beautiful」「Ecology」「Smart」「Vision」のそれぞれの頭文字を合わせたものだ
ドライブユニットはBESVオリジナル。ギヤはシマノ製の7速
バッテリーはフレームに配置。着脱も可能でキーONで電源が入る。しばらく使わないと自動でOFFになり、無駄に消耗しない仕様。1回の充電で約90kmアシストが効く(使用状況によってアシスト距離は変化する)
PSF1はリアサスペンション付き。折りたたみ機能がない「PS1」「PSA1」という同型車ではフロントショックも備える
東京 代官山にあるBESV JAPANのオフィスにPSF1を借りに行った
PSF1の使い方や折りたたみ方法などをレクチャーしてくれたBESV JAPANの石井氏
PSF1の特徴は簡単に折りたたみができるところ。オプションの専用リアキャリア(キャスター付き)を付けておけば、折りたたんだ後に押して歩くことができる。マンションなどの共用部分に持ち込む時などに便利。折りたたみの手順は動画で紹介する
PSF1の折りたたみ操作解説(2分3秒)
折りたたみ状態のPSF1をすばやく展開(20秒)
PSF1用のハードキャリーケースもあるのでN-VANに載せてみた。きれいに収まるので、他にも荷物を載せる場合はキャリーケースがあった方がいいかも

約10kmの上り坂にPSF1でチャレンジ!

 さて、PSF1を受けとってN-VANで向かったのは、冒頭で紹介した記事と同じ東京都檜原村だ。あの時は村営駐車場にN-VANを停めさせてもらい、そこでジョルカブを降ろして檜原街道の終点付近にある重要文化財「小林家住宅総角沢モノレール駅」まで行ったので、今回も同じコースをe-bikeで走ってみよう。

 出発の前日、村役場の観光課に連絡をして村営駐車場に駐めさせてもらう許可をいただく。そして当日の午前中に村営駐車場に到着してN-VANからPSF1を降ろしたら、まずはシートの高さを合わせてポジションの確認。次はe-bikeならではのアシストモードの選択を行なった。

 PSF1にはアシストの程度別に1~3までアシストモードがあり、加えてペダルを踏む力に応じて1~3のアシストモードを自動で切り替えてくれるスマートモードも設定されているので、今回はこのスマートモードを選択した。

今回は折りたたむことなく、バイクのようにタイダウンベルト(巻き上げ機能つき荷物ベルト)で固定するスタイルで積んでみたが、助手席シートを出した状態ではハンドルを切らないと車体の全長に対して荷室長が足りなかった。PS1やPSA1を積む場合も同様だろう
ハンドルまわりにはアシストモードの切替スイッチや情報を表示する小型ディスプレイ、シフトレバーが装着される
3つのボタンが並んでいるのがアシストモードを切り替えるスイッチ。今回はスマートモードを選択
速度やバッテリー情報、アシストモードなどを表示する小型ディスプレイ

 準備を終えて初めてPSF1のぺダルを踏んでみる。最初の一瞬だけ普通の自転車と同じ感覚だが、すぐにアシストが入ってスルスルと漕げるし、ペダル操作を止めると同時にアシストも切れるので、以前のe-bikeにあったような操作と制御のズレがなく、自然に乗れる感じだ。

 駐車場内をクルクル走って様子を見た後、いよいよ目的地に向けて出発。ちなみに目的地に設定した「小林家住宅」へのモノレール乗り場までは約10kmの上り坂。日ごろはランニングなどのトレーニングどころかあまり歩かないクルマ中心の生活なので、脚力に自信は一切ない。そんな筆者が本当に10kmの上り坂を漕ぎ切れるのか不安はあったものの、とりあえず坂に挑んでみた。

 すると、勾配の緩いところの感覚は平地と同じ、上り坂である感覚はほぼない。その後、坂がきつくなる区間では多少のつらさも出てくるが、ギヤを落とせば問題なし。このギヤ選択を駆使したところ、もっと急な勾配になっても立って漕ぐまでの状況にはならなかった。

村営駐車場から「小林家住宅総角沢モノレール駅」までは約10kmの上り坂。筆者の脚力と体力では、アシスト付きのe-bikeでなければたどり着けないだろう
日ごろはクルマやバイクがメインなので、バックミラーがないと落ち着かないし恐さもある。そこで腕に巻きつける自転車用バックミラーを用意した
アシストは低速ほど効きが強いので、アシスト頼りの筆者のペースは自然と低速走行になる。でも、そのおかげでジョルカブで走った時より多くの風景が楽しめた
こんな感じの道を上がっていく。ゴール地点付近はクルマ1台がやっとの道幅になり、勾配もきつくなる
川沿いの道なので橋も多い。檜原街道は交通量が少ないのでe-bikeでも走りやすく、路線バスも走っているので、もしトラブルが起きてもバスに乗って村営駐車場まで戻り、N-VANを持ってくることも可能
寄り道多数。未舗装路にも入ってみたがすぐに倒木で通行止め。悪路を走るなら同型でフロントショックを備えるPS1やPSA1(折りたたみ不可)がいいかも

 そんな感じで、原付スクーターよりさらにスローペースで山道を走っていると、いつもよりいろいろな風景が見えてくる。横道に入ったり、止まってまわりを見ることもあったが、アシストのおかげで再スタート時が楽。走行中のアシストも頼もしいが、坂道での再スタートが楽という部分は普通の自転車にはない部分なので、その瞬間が「お~、e-bikeだ~」という感動を一番感じたところかもしれない。

 そうこうしている間に、衰えている足ながら無事目的地に到着。約10kmの上りコースなので、アシストがあるとはいえ足にはそれなりの疲労感があるし、途中で勾配が急な区間では「ハアハア」と息が荒くなって体力的にキツイところもあったが、それらがすべて「ちょうどいい疲れ」なので、キツイという感想より達成感みたいなものが上まわって気分がいい。この感覚はジョルカブで来た時にはなかったものだし、運動不足が気になっていたので「これはいい」と思えるものだった。そんなことから、色々と積めるN-VANにまた1つ「積みたいモノ」が増えた感じだが、う~ん25万円。アシスト付きのおサイフが必要だなぁ。

ゴールの小林家住宅総角沢モノレール駅に到着。PSF1でのんびり走って約1時間ちょっとの行程だった
新型コロナウイルスの影響で、「小林家住宅」も現在見学できない状態。3月31日までとなっているが、おそらく延長されているだろう
モノレール利用者向けの駐車場やきれいなトイレが設置してあるので休憩にピッタリ。きれいに使いたい
復路はほぼ下り坂なのでブレーキを多用した。PSF1は前後ディスクブレーキなので、最初は「効き過ぎな感じかも」と思っていたが、軽く効かせた時の減速具合はスムーズで、車速をコントロールしやすい印象だった
とはいえ、そもそもの制動力は強いので、車速が出ている時のブレーキコントロールは慎重にしたほうがよさそう。小径タイヤならなおさらだ
BESV JAPANさんの厚意でひと月ほど借りていられるようなので、もう1回くらいN-VANでどこかに運んでみようと思っている。その時には走行データなどが取れるBESVのスマホアプリも試してみたい。これは今回走ったルートの記録
折りたたみができるので、このように玄関や部屋にも持ち込める。マンションなどでは折りたためばエレベーターでも運べる
左の写真はリアタイヤとハンドルだけを折りたたんだ状態で、こちらはそれに加えて前輪も折りたたんだもの。ここまで小さくなるのだ
ツーリングとなればヘルメットは着用したい。これはBESV JAPANが取り扱っている「サウザンドヘルメット」という製品。価格は1万1800円(税別)
街乗りでも似合うデザインでカラーは7色、サイズはS、M、Lの3種類。サイズをピッタリ合わせるためのダイヤルフィットシステムや革ベルト、マグネット式バックルなど装備
自転車から離れる時に、自転車用ロックに共締めできるようロックを通す穴が設けてある。普段は閉めておくキャップはロゴのようなデザインになっている

紛失すると高いスマートキー

 いつもスペアのスマートキーをカバンに入れているのだが、どこかで落としたらしく見当たらなくなった。そこで新しいスマートキーを購入するためにホンダカーズ東京中央 調布インター店に問い合わせてみると、なんとスマートキー本体と登録費用で3万円近くかかるとの答え。これはどうしたものかと考えていると、フロントの担当氏が1つの提案をしてくれた。

 それはスマートキー本体に差し込んであるエマージェンシーキー(物理キー)は付けず、スマートキーのみを買うことだった。これだと価格はスマートキー本体と登録費用で約1万2000円。安くはないけどこれならなんとかなるということで、エマージェンシーキー抜きで注文。エマージェンシーキーのみでも後から買えるとのことなので、お金を貯めてから改めて注文をしよう。まぁとにかく、N-VANオーナーの方々、スマートキーはなくさないように気をつけましょう。

スマートキーのみだと9020円。登録の技術料が2156円となっていた
エマージェンシーキーの正確な値段は聞かなかったが1万円くらいするようだ。ただ、スペアキー製作のお店に行くともっと安いかもなので、調べてみよう

深田昌之