深田昌之のホンダ「N-VAN」で幸せになろう

第14回:キャンプ、車中泊を楽しむN-VAN乗りに向けた“車載できる簡易トイレ”の話

 N-VAN乗りにはキャンプや釣りなどのアウトドアレジャー、車中泊での旅などを楽しむ人も多いと思うけど、早朝から丸1日、もしくは数日間行動するとなればトイレがある環境は必要だ。

 整備されたキャンプ場なら常設トイレもあるけど、トイレが利用しやすいサイトは人気が高く、にぎやかな環境になることも多い。そのため、騒がしい環境を避けたいと思ったらトイレから離れたサイトを選ぶことになるのだけど、そうなれば当然、トイレの利用時にそれなりの距離を歩かなければならないし、雨が降っていたり冬期の深夜や早朝だとトイレに行くのが面倒と感じることもある。

 それにせっかくたどり着いたトイレがあまりきれいではなかった場合、男性だって嫌だと思うだろうし、子供や女性は使用をためらうこともあるだろう。また、アウトドアフィールドではそもそもトイレがないことだってあるはず。そんなことから今回取り上げるのは「車載できる簡易トイレ」である。

整備されたキャンプ場でも、サイトによってはトイレまで遠かったりする。また、雨天や寒い日はトイレまで行くのも大変。それを含めて「欲しい」と思ったのがクルマに積んでおける簡易トイレだった

 簡易トイレというキーワードで探してみると該当する商品は多く、それぞれに特徴があるのだけど、筆者は簡易トイレをN-VANの装備として車内に常備しておきたかったので、使い捨てではなく繰り返し使用できるタイプを探していた。また、衛生面から本体が洗えることも条件だった。

 こうした点をクリアする簡易トイレを探して見つけたのが「サンコー」が発売する「ポータブルコーナートイレ」というもの。

 簡易トイレというと災害時などの運びしやすさを考えた製品が多いが、この商品はそうではないようで、例として挙げられていたのが「エレベーター内への設置」。ポータブルトイレに付属のフタを被せることで、普段は椅子や手荷物置き場として使い、地震などでエレベーターが緊急停止した際には、出られなくなってしまった人用のトイレになるというもの。また、介護ベッドの脇に常備しておくような使い方も提案されていた。つまり、簡易トイレながら常設に近く、その分しっかりした作りになっているのが特徴だ。

サンコーという会社から発売されている「ポータブルコーナートイレ」のパッケージ。インターネット通販で購入。価格は約8000円。メーカー直販サイトでは9900円だった(11月28日時点)
パッケージ背面に組み立て方法が書かれているが、パタンパタンと引き出すだけの簡単なもの
パッケージを開けると中身はこんな感じ。本体は折り畳んだ状態。付属品として排せつ物用のビニール袋や凝固剤も入っている。なお、本体と便座はポリプロピレン製なので水洗いも可能だ

 また、簡易トイレを探しているうちに、手で持って使用するタイプから本体と便座が付いていて座って使うタイプまでいろいろ見つかった。

 このうち座るタイプでは、軽量でコンパクトに収納でき、繰り返しの使用もできるダンボール系素材の製品などもあって価格も手ごろなのだが、ダンボール系ではポリプロピレン製ほどの耐久性はなく、メーカーに聞いてみるとやはり洗うことは無理で、表面の汚れを拭き取るぐらいしか対処できないとのことだった。

 そうなればやはりポリプロピレン製のトイレとなるが、サンコーには筆者が購入したコーナートイレとは別に、四角い形状のポータブルトイレ(ポリプロピレン製で折りたたみ可能)もあった。四角いので一見すると大きそうに思えるが、コーナートイレと便座の縦サイズはほぼ同じなので使い勝手に大きな違いはなさそうだ。ちなみに、四角形状のサイズは31×32×32cm(縦×横×高さ)で、ポータブルコーナートイレのサイズは35×48×39cm(縦×横×高さ)なので、座ったときのサイズ感はほぼ同じだろう。

ポータブルコーナートイレを組み立てた状態
フタを被せた状態。椅子としても使えるし、フタを被せておけば「いかにも」という感じではないところもいい
簡易トイレだけに、座面の幅は家庭用トイレと比べれば狭い。とはいえ、メジャーで計測した数値は、開口部の最も長いところで約25cmあるし、便座部分も不都合ない面積が確保している
底板は木製。本体の剛性には関係ないようなので、底板を敷かなくても使える感じだ

 さて、そんな簡易トイレ。N-VANならリアのラゲッジスペースに置いて用を足すこともできるが、基本的には外に置くスタイル。筆者はキャンパルジャパンの「カーサイドシェルター」を持っているので、ポータブルコーナートイレはこの中で使えばいいと思っているし、ポップアップテントもあるので、そちらをトイレ部屋としてクルマの近くに設置しておく手もある。いずれにしろ設置場所には困らないと見ている。

 なお、登山をする人がキャンプ地で携帯トイレを使う時には、トイレに座った状態でポンチョを被り、体を隠すということもするそうなので、仕切りや目隠しを出すまでもない、人目のないところならばそれを真似するのもいいだろう。

カーサイドシェルターは前面のメッシュ窓や両面の出入り口を閉めることができるので、周囲から中が見えないようにすることも可能
こちらは純正アクセサリーのテールゲートカーテン。これも目隠しとして使える。また、海辺などで使用する背の高いポップアップテントをトイレ部屋として用意するのもいいだろうし、簡易トイレに座る時にポンチョなどを被るだけでも目隠しになる

 簡易トイレ使用時において重要なのは排せつ物の処理だ。付属している袋は単なるビニール袋なので、内容物が外に漏れなくても臭いはかなり出てしまう。ポータブルコーナートイレをはじめ、簡易トイレの多くには凝固剤が付属しているが、凝固剤は水分をゲル状のするものなので便には効果がないし、消臭効果があっても便の臭いまでは軽減できない。

 そこで用意したのが防臭袋の「BOS(ボス)」という製品。介護の現場やペットの排せつ物処理では有名なアイテムで、排せつ物を入れた状態でも袋の入口をぎゅっと縛って閉じておけば臭いを感じさせないという防臭能力を持つ袋だ。

 筆者の家には犬がいるので、散歩時にBOSの能力を試してみた。犬の便をBOSに入れてから袋の入口を閉じる。そして袋を顔に近づけてクンクン嗅いでみたところ……。まったく臭わない。そこで今度は袋に鼻をピッタリと付けて嗅いでも、それでも臭わなかった。効果はあると聞いていたが、これはびっくり。これなら車内に袋のまま置いても大丈夫そうだが、念のために樹脂ケースなどを用意してその中に入れておけば、袋破れなどの心配もなく自宅まで持ち帰って処理ができるだろう。ということで、筆者はポータブルコーナートイレと一緒にBOSも車載しておくことにした。

 さて、ここまで準備をしているのだが、実はまだポータブルコーナートイレを使ったことはない。まあ、無理して使うものでもないので現状は使う機会がないだけなのだが、「クルマにトイレがある」ということは妙な安心感もあって、ここは明らかに今までと違う部分となっている。

 また、今後はキャンプ場ではなくてどこか山の中での車中泊をしてみたいと思っているが、トイレ問題がクリアできた現在は実行への気持ちも強くなっている気がする。

 やったことはただ「簡易トイレを積んだだけ」なのに、気持ちの上では大きな影響が出たと言える状況なので、この買い物は筆者的には正解だった。

ポータブルコーナートイレに付属の汚物袋。普通のポリエチレン製ごみ袋で、サイズは縦が約49cm、横が約65cm。肝心なのは横幅だが、このサイズなら45Lのゴミ袋が流用できる
本体に袋をセットして便座を載せれば完了。準備の手間も掛からない
凝固剤は水分のみに有効。便にはあまり効果がない。臭い消しには消臭剤や防臭袋が必要だ
防臭袋の「BOS」。サイズは数種類あるが、今回はLLサイズ(35×50cm)を選択。色は白のほか黒などもある。60枚入りでインターネットでの購入価格は1490円だった
A4サイズのクリップボードとの比較。レジャー先で出た生ゴミなどの持ち帰る用途にも使えるので、BOSもアウトドアレジャーでは持っていった方がいいアイテムだ。なお、BOSは燃やしても有害なガスが出ないので、凝固剤などを使用して水分を固めておけば燃えるゴミとして出すことができる(自治体ごとのゴミ出しの決まりは要確認)
ポータブルコーナートイレは折りたたむとコンパクトになるので、家にあったトートバッグに入れてみた
N-VANのラゲッジスペース側面に吊ってみる。簡易トイレが入っているようにはまったく見えない。トイレ装備(搭載)のクルマと言えば大型のキャンピングカーぐらいなので、なんだかすごい装備が付いたようにも思える
アウトドアレジャーでのトイレ利用については専門メディアでもあまり触れられない部分だが、トイレの心配がなくなることのメリットは大きいし、持っていれば災害時にも役に立つものなのであえて取り上げてみた

 さて、このままトイレネタだけで終わるのも微妙な感じがするので、アウトドアレジャーに便利な用品の話もさせていただこう。まずはフロアマットだが、筆者は納車時に純正アクセサリーの「フロアカーペットマット スタンダードタイプ」を同時に購入していた。

 このマット、スタンダードタイプとはいえ質感などはまるで問題ないのだが、靴についてきた小石や砂が付くとマットの目に入り込んで取りにくくなり、マットから小石や砂がフロアカーペットにこぼれることもあって、その掃除が面倒だと感じることもあった。

 そこで購入したのが、同じく純正アクセサリーの「オールシーズンマット」というもの。材質は樹脂なので、小石や砂を払い落としやすくなったし水濡れにも強い。また、縁高形状になっているのでマットに落ちたものがフロアカーペットにこぼれることもない。実際にオールシーズンマットを使い始めてからは、足下の掃除が格段に楽になった。汚れた靴でクルマに乗り込むことが多いアウトドアレジャーでN-VANを使う人にお薦めしたいアイテムだ。

スタンダードタイプのフロアカーペットマットは色が黒いので小石や砂粒が載ると目立つ。マット上から小石などがフロアカーペットにこぼれ落ちることもあって掃除が面倒だった
よくあるゴム製マットとは異なる独得の質感を持つオールシーズンマット。フロント用の価格はMT車用、CVT車用共に5400円(左右セット)とお手ごろ。リア用もあって、こちらも左右で5400円
N-VANに限らず、最近のホンダ車ではこの手を樹脂マットをフロアカーペットマットと重ねて装着できるよう、フロア側のフックやマット自体の固定方法が考られているので、筆者も最初に買ったフロアカーペットマットにオールシーズンマットを重ねて使っている
縁高形状なので、マット上の小石などがこぼれ落ちにくいのもうれしいところ

 最後にもうひとネタ紹介しよう。それは積載方法のバリエーションを増やすリアボード。以前、N-VAN用フロアボードを製作してくれたアースさんの試作品だ。

 N-VANはフロアが低床な分、リアのタイヤハウスがラゲッジスペースに飛び出ているので、「ここを利用する棚板があると便利かも」ということから試作したものだ。使用したのは板厚18mmのコンパネで、タイヤハウス上部の形状に合わせてカットされており、載せるだけで装着完了。販売は未定とのことだが、気になる人はアース 職車事業部に問い合わせてほしい。

N-VAN用フロアボードを販売している「アース 職車事業部」の試作品であるN-VAN用棚板

 棚板のサイズは奥行きが58cmで幅が115cm。フロアボードから棚板までの高さは約20.5cmあるので、キャンプ用の椅子やテーブル、タープポールなどを下に置いても高さに余裕がある。そして棚板の上に他の用具を置いたりすればスペースが有効活用できるのだ。

 ただし、棚板の上は未加工なので、そのまま荷物を置くと走行中の揺れなどで下に落ちてしまう場合もある。筆者はこの棚板を使う際には。カー用品店やホームセンターで売っているノンスリップマットを敷いている。N-VANのようにラゲッジスペースが広いクルマでは重宝するアイテムなので、1枚積んでおくといいと思う。

タイヤハウスの上部に載せるだけ。凹凸があるので前後には動かない
キャンプ用の椅子などをフロアに置いても高さは余裕。長尺物と小物を分けて積みたい時に便利で、用途によって使い分けている
ノンスリップマットを敷いておけばこのようなケースも落ちにくくなる。このマットも非常に便利だ
こちらは純正アクセサリーのマルチボード。ラゲッジ用(6万2000円)とリア用(2万9000円)がある。ボードの下には支柱が設けていて強度も高い。2つとも装備するとラゲッジスペースを2段で使えるだけでなく、車中泊時にベッドとして使える

深田昌之