奥川浩彦の「レースと写真とクルマの話」

第3回:タイヤ交換の季節。電動工具で作業は劇的に楽になる

電動工具でタイヤ交換は楽になった

 今冬、関東地方は暖冬だったが、意表を突いて3月14日に雪が舞った。SNSで雪の知らせを目にしつつ、筆者は愛知県新城市で、冷たい雨に濡れながら撮影をしていた。翌3月15日、御殿場から小田原方面に抜ける足柄峠を走ると路肩に雪が積もり、峠には雪ダルマがあった。もし前日だったら、夏タイヤでは峠を越えられなかったかもしれない。

 数日で天候は一変。寒さもひと段落し、筆者の行動範囲でもう雪が降ることはなさそうだ。見極めは難しく、地域差もあるが、3月下旬から4月はスタッドレスタイヤから夏用のタイヤに交換をする人が多いと思われる。そこで今回は、電動工具のおかげで随分楽になったタイヤ交換のお話しをしたい。念のために言うと、たいした話しではなく「こんな風にしてる」というゆるい内容なのであしからず。

今春、関東で雪を見るのはこれが最後か……(3月15日足柄峠)

今は便利な道具が増えている

 タイヤ交換は自分でする人もいれば、カー用品店やガソリンスタンドに依頼する人もいる。特に都市部では自宅に保管する場所がなく「保管サービス」を利用している人なら、預けている店で交換しているだろう。

 しかし、昭和のオヤジは自分で交換する。昔も今も「そろそろタイヤ交換……。面倒くせ~」と憂鬱な作業だが、昔と比べればかなり楽になった。理由はいくつかの道具のおかげだ。

 筆者は以前から充電式インパクトレンチを持っていた。たまたまAmazonで車載ジャッキとインパクトレンチをつなぐ「車載ジャッキヘルパー(ニューレイトン)」というアダプタを発見。1000円チョットだったので試しに購入してみた。

逆コの字型の部分から左側は純正ジャッキ。黒い部品とボルト&ナットが「ジャッキヘルパー」というアダプタ
ジャッキヘルパーとインパクトレンチをつなぐソケットアダプタも必要
こんな風につなげて使用する

 息子が学生だったころは1000円のバイト代で手伝ってもらったが、社会人になるとタイヤ交換時期と天気、息子が暇なタイミングが合わず、やむなく1人作業になっていたが、50代の筆者はジャッキアップするだけで息切れ状態。そのジャッキアップをアシストしてくれるインパクトレンチ+アダプタはタイヤ交換作業を楽にしてくれた。チラッと動画で見ていただこう。

電動工具(ドリル/ドライバー)で楽々ジャッキアップ(19秒)
電動工具(ドリル/ドライバー)で楽々ジャッキダウン(16秒)

 少し説明をしよう。筆者は元々インパクトレンチ持っていて、お試しでジャッキヘルパーを購入した。ジャッキヘルパーの説明には「DC12V電源のインパクトレンチは使用できません。最大トルクが200Nm以上のインパクトレンチ推奨」と書かれていて、筆者の持ってるインパクトレンチは12V、130Nmで本来は力不足だが、試してみたら何とか使えたという感じだ。

 筆者の現在のクルマは本田技研工業の「ヴェゼル」。以前に乗っていた「ステップワゴン」だと車重が重く、ジャッキアップできなかったかもしれない。さらに、インパクトレンチのバッテリーがヘタってきたのか、ジャッキヘルパーを使い始めてから数年は、インパクトレンチに付属する2個のバッテリーで4本のタイヤを交換ができたが、最近は2個目のバッテリーに交換すると、作業と並行して1個目のバッテリーを充電して、もう1度バッテリー交換が必要となった。とはいえ、インパクトレンチの仕様に関しては筆者の問題なので妥協している。

注意しておきたい2点

 1つ目は音がうるさいこと。近所に配慮し、作業する時間帯には注意が必要だ。2つ目は、振動でジャッキヘルパーに付属しているシングルナットが外れてしまうこと。これは長めのボルトを用意して、ダブルナットにすることで解決した。

撮影用に再度購入したM10 50mmのボルト&ナット。ホームセンターで100円~150円くらい
ロックナットを使うとさらに外れにくくなるはず。3個セットで210円~260円くらい

 ジャッキヘルパーの導入でタイヤ交換は劇的に楽になり、筆者としては満足しているが、お勧めかと聞かれれば微妙だ。繰り返しになるが、筆者は先に充電式インパクトレンチが手元にあったのでジャッキヘルパーを購入した。もし、ゼロから作業の電動化を考えるなら別の方法を選択したかもしれない。

 例えばこの「サンコー、約1分で昇降を完了するシガーソケット電動ジャッキ」は、耐荷重は2.5tでワンボックスカーでも大丈夫そうだし、価格もインパクトレンチより安い。これ以外にもAmazonで探すと、電動ジャッキはいくつも売られているので、専用品ならではの使いやすさが期待できる。

サンコーの「シガーソケット電動ジャッキ」(7980円)

 タイヤ交換が年に2回の人は高額な投資は避けたいだろうが、電動化によって何十年も手作業でジャッキアップをしてきた苦労がウソのように楽になった。手伝ってくれる家族がいない人は検討する価値があるだろう。

 余談だが、筆者はたまにDIYをするので、インパクトレンチ以外にも充電式ドリルや電動丸ノコなどの電動工具を持っている。いずれも使用頻度は低い。分かる人には分かると思うが、道具を買うことが好きなのだ。専用品である電動ジャッキの利点は理解しつつ、汎用性のある電動工具の魅力も捨てがたい。

自作の壁収納
オフィス兼住居なので打ち合わせスペースでもある
自作スピーカーの製作途中
仕事部屋に設置されたスピーカー

ホイールナットの付け外しを電動化すると気持ちいい

 タイヤ交換の際にインパクトレンチを使用するメリットは、ホイールナットの付け外しにも使用できる点だ。タイヤ1本でナットが5個、4輪で計20個。タイヤ交換で40回のナットの付け外し作業が電動化できる。ナットを最初に緩める作業と最後に締め付ける作業は手作業になるが、ホイールナットをインパクトレンチで回す作業は早くて気持ちいい。

電動工具(ドリル/ドライバー)で楽々ホイールナット外し(15秒)
ジャッキヘルパー以外に購入したのは、ソケットアダプターとホイールナットを回す19mmソケット。いずれも数百円
純正車載ジャッキ+ジャッキヘルパー、ソケットアダプター、インパクトレンチ、予備バッテリー、19mmソケット

さらに物欲は続く……

 オマケとなるが、その後も物欲が加速してしまい、タイヤに空気を入れる「電動エアコンプレッサー(Ymiko※取扱終了品)」と「トルクレンチ6pcセット(大橋産業)」もAmazonで購入。

 電動コンプレッサーを導入したことで、タイヤ交換時にタイヤに空気を入れる際、ガソリンスタンドまで行く必要がなくなった。自宅で完結だ。自宅で完結できるとガソリンスタンドまで自走する必要がなくなり、外したタイヤの空気圧をグッと下げることができる。Amazonで確認すると、筆者が購入した電動コンプレッサーは在庫切れ(※メーカー取扱終了)となっているが、類似製品はいくつもあるので参考にしていただきたい。

電動エアコンプレッサー。3000円くらいで購入。設定した空気圧になると自動的に停止する
外したタイヤは空気圧を下げて保管したほうがよいらしい
電動エアコンプレッサーでタイヤに空気を入れるシーン(26秒)

 トルクレンチは、それまで何十年も目一杯締め付けていたのが“締めすぎ”だったと教えてくれた。ナットを外す時に体重を掛けて足で踏みつけてナットを外すようでは締めすぎ。規定レンチでは、手の力だけで外せる程度が適正のようだ。ちなみに、取扱説明書にあるヴェゼルの締め付けトルクは108Nm。タイヤ交換のたびに毎回取説を見ていたので、さすがに次回はトルクレンチに貼ったテプラでトルク値を確認できるようにしておいた。

トルクレンチも購入
既定の締め付けトルク値をテプラで印刷して貼っておくと便利だ

 筆者のようにジャッキアップで息切れする人、家族の複数台のタイヤ交換をする人、道具が好きな人は、タイヤ交換の電動化を検討してみると幸せになれるかもしれない。

奥川浩彦

パソコン周辺機器メーカーのメルコ(現:バッファロー)で広報を経て2001年イーレッツの設立に参加しUSB扇風機などを発売。2006年、iPR(http://i-pr.jp/)を設立し広報業とライター業で独立。モータースポーツの撮影は1982年から。キヤノンモータースポーツ写真展3年連続入選。F1日本グランプリ(鈴鹿・富士)は1987年から皆勤賞。