ニュース
奥川浩彦の「撮ってみましたF1日本グランプリ 2019」(後編)
2019年12月11日 12:30
「いつのことだよF1日本グランプリ」ではなく、「撮ってみましたF1日本グランプリ」の後編は日曜日の予選、決勝を中心にお届けしよう。
台風一過、日曜日は快晴となった。東海地方の交通機関は問題なく動いていたが、道路情報を見ると東名高速道路は浜松IC(インターチェンジ)から、新東名高速道路は新城ICから、中央自動車道は伊那ICから東側が通行止め。関東地方からクルマで鈴鹿に来ることは困難な状況だ。
自宅近所の名古屋鉄道堀田駅で同乗する前編集長と周辺機器メーカー時代の同僚のKさんをピックアップし鈴鹿へ。伊勢湾岸自動車道も国道23号も例年より空いていた。台風の影響で浜松以東の高速道路が通行止めで、関東地方からクルマで来られない影響だろう。
東海道新幹線は動いているようだが、都内のJRや私鉄が止まっているらしく、新幹線の駅までたどり着くことが難しそうだ。タクシーで東京駅、品川駅、新横浜駅に行ける人はなんとかなりそうだが、そうでないと10時から始まる予選はもちろん、14時過ぎにスタートする決勝に間に合わず観戦を諦める人が相当な数になりそうだ。うーん残念。
いきなり余談となるが、Car Watchの編集長が4月に交代した。2008年にCar Watchを立ち上げ、その後トラベルWatchも立ち上げ、両編集部の編集長を兼務していた谷川潔氏が偉くなって事業部長へ(←たぶん)。全ての○○Watch、紙雑誌のデジタルカメラマガジン、かつては編集長だったDOS/V POWER REPORTなど、多くの媒体のトップになったと思われる。
およそ10年前。サーキット撮影を20年以上趣味としていた筆者に「奥川さん、Car Watchで写真撮らない?」と声をかけてくれたのが前編集長。筆者にとってまさかの10年、奇跡の10年。感謝の言葉しかない。Car Watchの新編集長は副編集長だった小林隆氏が就任。どうでもよいがサッカー好きだ。編集長交代は読者の皆さまにとっては、「ふーん」だと思うが、筆者の趣味であり仕事であるモータースポーツの撮影が今後も続けられるよう、引き続きCar Watchをよろしくお願いしたいと思う筆者だ。
で、偉くなった前編集長は今年F1イタリアグランプリを取材。筆者の大好きなマシン「フェラーリ312T4」の記事なども掲載。うらやましい。そんな前編集長も加え、ライターの笠原氏と筆者の3人体制で臨むF1日本グランプリだ。
2019年の観客数は
2018年のF1日本グランプリは対前年比で約20%増と過去最高の伸び率だった(奥川浩彦の「撮ってみましたF1日本グランプリ 2018」[前編]参照)。今年はレッドブルホンダの活躍もあり、早い時期に20%アップでチケットが売れていると聞いて安心をしていた。昨年の決勝日が8万1000人なので、今年は10万人越えが期待できた。
レース後に発表された結果は決勝日8万9000人(対前年比9.9%増)。うーん、微妙だ。筆者の勝手な計算は何もなければ10万人、台風の影響で来られなくなった人がいてマイナス1万人で約9万人。そう考えればまずまずの数字なのかも知れないが残念だ。ただ決勝日8万9000人は過去6年では最も多い人数だ。悲観することはないと思う。
昨年、筆者はF1日本グランプリが日本で開催されなくなるまで執行猶予3年と書いた。実際、昨年は契約延長に難航した。2018年でF1日本グランプリは終了という噂も流れた。以前は5年契約だった日本グランプリが2019~2021年の3年契約となり、来年、再来年、残り2年が正念場だ。
F1日本グランプリが継続されるために重要なのは観客数。残り2年で12~13万人には伸ばしたいと思っている。特効薬はレッドブルホンダ。今年はフェルスタッペン選手が優勝して、入場者数の増加に貢献してくれたと感じるが、まだ年間チャンピオンを争うところまではいっていない。来年以降はさらなる飛躍を期待したい。
とは言え今シーズンのF1は面白かった。チャンピオン争いはハミルトン選手の独走で終わったが、フェルスタッペン選手が優勝したオーストリアグランプリの残り15周は大興奮だった。雨でドタバタのドイツグランプリもクビアト選手の表彰台は感動的だった。ハンガリーグランプリのメルセデスチームの戦略は見事。フェルスタッペン選手は抜かれてしまったが、見応えのあるレースだった。ブラジルグランプリは序盤のフェルスタッペン選手のオーバーテイクでやや興奮。終盤はフェラーリもやってくれるし、超大興奮のレースだった。書き出すと切りがないが、個人的には幸せなシーズンだったと思っている。
8万9000分の1
9月中旬、今年も元同僚のKさんから「F1チケット買いました。土日、鈴鹿まで同乗できますか」と連絡があった。8万9000分の1人だ。うれしい。そしてもう1人、Car Watch編集部の紅一点、北村友里恵さんが初F1観戦となった。素晴らしい。
7月、北村さんとの事務的なメールの末尾に「人生初のF1鈴鹿観戦に行こうか……これまで奥川さまがご執筆された記事を参考にしつつ、初めての鈴鹿&F1を楽しめたらいいなと思っています。奥川さんのF1鈴鹿記事の1ファンより。」と書かれていた。
筆者のCar Watchの活動は「サーキットに行こう」「レース写真を撮ろう」が基本。1人でも多くの人がサーキットに足を運んでくれればと思っている。筆者から「北村さんの観戦記を記事にしようよ」と提案。筆者のように30年以上観戦しているオッサンとは違う視点で、苦労した話、グッズ情報などが書かれた記事は新しい観戦者の増加につながるはずだ。
筆者としては全面協力をするつもりだったが、新編集長から「奥川さんが全面協力したら読者の参考にならない」とのことで、北村さんは過去記事などを参考に自分でチケットを選び、ホテルを予約し、人生初のF1観戦に臨むこととなった。ちなみに選んだチケットはB2席……花丸大正解だ。
それでも「フリー走行で写真を撮るなら、余っている機材を貸すよ」ということで、EOS 7D、旧型のサンニッパ、軽い300mm F4、70-200mm F4などを8月ごろに貸したが、台風の影響で決勝のみの観戦となり出番はなかった。
掲載された北村さんの観戦記「初めてのF1! 鈴鹿サーキットでF1日本GPを観戦してみた」を読んでビックリ。冒頭に「すべての始まりは、奥川浩彦氏が執筆したDAZNの記事がきっかけ」と書かれていた。
2017年のF1日本グランプリで“オグたん”こと小倉茂徳さんと雑談。「DAZNに遊びに行きます」と話したのが最初。日本グランプリ以降はアメリカ、メキシコ、ブラジルと深夜レース(日本時間)。アブダビでシーズン終了なので、2018年シーズンの開幕戦を待って取材した。筆者がつけたダサいタイトルは編集部でボツになるかと思ったらそのまま掲載され驚いた記憶がある。
・ 2018年のF1シーズン開幕! 好評の新機能「F1 ZONE」を公開したDAZN(ダゾーン)に行ったぞーん
タイトルはダサかったが、それを読んだ読者の1人がF1を見るようになったことはうれしい。そして北村さんが書いた観戦記は素晴らしくお世辞抜きに感動的。これを読んでF1に行きたいと思う読者がいると感じた。昨年、Car Watchの別の編集者から「北村さんの才能が凄い」と聞いたことを、記事を読んで思いだした。そして筆者は記事中のこの言葉を忘れない「臨機応変に対応していただけた三重交通に心をグッとつかまれたのは言うまでもない。来年もまた予約させていただきます!」北村さん、絶対だからね。
もう1人。今年は筆者の息子が久しぶりにF1観戦をした。今年はシーズン途中からF1観戦に目覚め「ベッテルはどうして……」と突然語るようになり、友人と一緒に観戦。こちらは筆者が駐車場情報、渋滞回避ルートなどを全面協力。コースウォークに参加し、名古屋の自宅に筆者より遅れて戻ってきた息子は、唐突にレッドブルホンダのTシャツを着て現れ筆者を驚かせた。渋滞回避ルートは効果があったようで、息子の友人いわく「30年通っている人は違うな」とのことだった。
最後の1人は筆者だ。1987年から33年間チケットを購入し続けている筆者は、今年もチケットを購入した。10年ほど前から取材パスが出るようになり、近年は購入した席に行けることはなくなったが、F1日本グランプリ継続のためチケットを購入し続けている。
昨年のチケットは30周年アニバーサリーとして紙チケットではなくプラスチック製のスペシャルチケットで話題となった。素直に「カッコイイ」チケットだった。次のスペシャルチケットは35周年(5年後)かと思っていたら、パワーアップして今年もプラスチック製のスペシャルチケットとなった。「やるなあ~、鈴鹿」。
購入したチケットは昨年まではB2席だったが、今年はややコストダウンしてD席。今年のスペシャルチケットはチーム、ドライバー、歴代鈴鹿日本グランプリなど70種のデザインから選択でき、筆者は歴代鈴鹿日本グランプリの1987年を選択した。隣に表示された1988年のデザインはセナ。かなり引かれるものはあったが、自分が初観戦した日本グランプリってことで1987年を選択した。
ちなみに人気ランキングは、チームデザインの1位は当然レッドブル。以下フェラーリ、トロロッソ、メルセデス、アルファロメオ。ドライバーデザインの1位はさすがライコネン。以下フェルスタッペン、ベッテル、ハミルトン、ルクレール。歴代鈴鹿日本グランプリデザインの1位はやはり1988年(セナ)。以下1993年(セナ)、2005年(ライコネン)、2004年(シューマッハ)、1991年(ベルガー)となった。
昨年は決勝直前に「入場ゲートを通過しないと自分が観客数にカウントされない」ことに気付いたが時すでに遅しだった。その反省を生かし、今年は日曜日にゲートを通過した。関係者駐車場にクルマを駐め、ドライバー待ちをしているファンの前を横切り歩道へ。稲生駅方面に戻り多くの観客と一緒に1コーナーゲートを通過した。今年は筆者も8万9000分の1人と加わることができた。グッジョブ俺。たかが1人だが、その積み重ねが目指す12万人につながるはずだ。
1コーナーゲートでカウントしてもらい、筆者のチケットは西エリアチケットを買ったKさんに預けグランドスタンド裏方面へ。朝の8時ごろだがすでに人、人、人。幸せな光景を見ながらパドックへ向かった。
自分で購入したチケットで観戦することはないだろうと思いつつ、席選びは重要。Kさんに座席から撮った写真を送ってもらうと、1~2コーナーからS字が見渡せ、ダンロップコーナーからデグナーに向かうマシンがチラッと見える想定どおりの席だった。
予選は逆光から
この日は朝10時から予選。快晴となりS字から2コーナー方向を見ると逆光が眩しい。予選は決勝レースでは行きにくいシケインを中心に撮影を考えていたが、逆光に引かれてS字へ向かった。
予選Q1。まずはS字2つ目の左ターンを正面から標準ズームと望遠で撮影。太陽がジワジワと右へ(南へ)移動するのに合わせて撮影ポイントを左に移動し、Q1後半はS字1つ目から2つ目に向かってくるマシンを正面から撮れる位置で撮影。逆光で光るレコードラインが美しい。
予選Q1が終わるとシケインに移動。S字からシケインは微妙に遠く、小走りで移動した。予選Q2、Q3はシケインで場所やレンズを変えながら撮影。シケインの撮影場所と背中合わせとなるダンロップコーナー側も逆バンクから浮き上がってくるマシンをアップにせず、パドックエントランス、2コーナースタンド(B1/B2席)、伊勢湾を背景に入れてみた。ポールポジションはベッテル選手。手を上げてシケインを通過したところを撮ってセッションは終了した。
ドライバーズパレードはルクレール選手
予選、決勝が同じ日に行なわれるため、例年よりタイトなスケジュール。続くドライバーズパレードは諸事情があって出遅れたため、ドライバーがコースを1周して戻ってきたところから撮影開始。毎年、消化不良のドライバーズパレードの撮影は例年以上に消化不良に終わった。ルクレール選手が撮れただけでもよしとしよう。
レコノサンスラップはS字で撮影
まもなく決勝。その前に各マシンがピットからグリッドに移動するレコノサンスラップを撮影。レコノサンスラップはピットを出て1周して、そのままグリッドに向かうマシンもあれば、もう1度ピットを通過してコースを周回するマシンもあるが、概ね2周くらいなので撮影チャンスは少なめ。予選でシケインは撮影済みなので、レコノサンスラップはS字1つ目の右ターンをインフィールド側から流し撮りをした。
観客席はF1ファンがギッシリ
決勝が始まる直前、まわりのスタンドの混雑はピークとなる。売店に行っていた人もトイレに行っていた人も、自分の席に戻り「Are You Ready?」なのだ。目の前のC席スタンドは例年より混んでいる印象。今年復活した1コーナー付近の仮設スタンドA2席もほぼ満席。2コーナーのB1/B2席も多くのF1ファンで溢れていた。台風の影響で来られなくなった人がいるはずだが、着実に観客数は増えていた。素晴らしい。
決勝。2コーナーのアクシデントは
決勝レースはいつもどおりS字の進入付近のイン側。2コーナーからS字に進入するマシンを正面から撮影できるポジションだ。2コーナーを立ち上がるとオープニングの順位がほぼ確定するのと、2コーナーはたまにドラマが起きるので、スプリントレースはここで撮ることが多い。
2コーナーで起こったドラマを振り返ろう。2015年はポールポジションからスタートしたロズベルグ選手をハミルトン選手が2コーナーで押し出し、ロズベルグ選手は4位に後退、ハミルトン選手が優勝した。ちなみにこの年は何度かハミルトン選手に押し出されていたロズベルグ選手だが、翌2016年は反撃を開始。スペイングランプリではロズベルグ選手がハミルトン選手を押し出し、押し出されたハミルトン選手がコントロールを失いロズベルグ選手に追突し2台ともリタイヤ(フェルスタッペン選手が初優勝)。2016年はロズベルグ選手が年間チャンピオンを獲得した。
ご存じのとおり、2019年のF1日本グランプリも最大の見せ場はスタート直後の2コーナーだった。ベッテル選手がスタートに失敗しボッタス選手が先行。3位を争うフェルスタッペン選手とルクレール選手が接触。フェルスタッペン選手がコースオフした。
そのとき筆者は。先頭のボッタス選手を撮ろうとしたら、その後方でレッドブルのマシンがコースから外れるのが見えた。気になる。「何が起こった。飛び出したのはフェルスタッペン選手か」と思いつつ、AFポイントはボッタス選手に合わせつつ視線はコースオフしたレッドブルへ。こうして集中力が途切れたとき、撮影は失敗する。
失敗した。連写した中から抜粋した6枚を失敗した写真も含めて見てもらおう。1枚目、先頭のボッタス選手を撮るつもりだが完全にピンボケ。2枚目、視線だけでなくフレーミングもコースオフしたレッドブルに引っ張られたためAF点はベッテル選手へ。使用しているレンズはEF100-400mm f/4.5-5.6L IS II USMでここまでは望遠端の400mm。
ズームを400mmから278mmに変更。3枚目はやっとボッタス選手にピントを合わせることができ、広角側にズームしたため、フェルスタッペン選手もフレームに半分だけ入れることができた。4枚目、再び望遠端の400mmにしてフェルスタッペン選手を撮影するも4枚=約0.4秒間の撮影でピント甘し。5枚目、三たびズームを操作し焦点距離を234mmにし3位集団の先頭となったルクレール選手を撮影。
ここまでの5枚(実際の撮影枚数は18枚)の写真に残された時間データをExifツールでSubSec(1秒以下)まで見ると1枚目が14時13分51秒75。フレーミングに迷った2枚目が0.4秒後の13分52秒15。ズームした3枚目が0.5秒後の13分52秒65。フェルスタッペン選手にレンズを向けた4枚目が0.73秒後の13分53秒38。ルクレール選手に戻った5枚目が0.88秒後の13分54秒26。トータル2.51秒のドタバタ劇だった。最後6枚目は焦点距離を400mmにして、最後尾でコースに戻ったフェルスタッペン選手を撮影するもアクシデントを表す目立った損傷はなかった。
とっさの出来事に対応できずガッカリ。うーん、メンタル弱し<俺。この撮影ポイントで3周目まで撮影。ハミルトン選手がミラーを失ったことは場内実況でレース中に知っていたが、後日テレビ中継で確認するとこの段階でハミルトン選手の右ミラーが取れていることを知り、あらためて写真を探すとその様子が写っていた。アクシデントに右往左往した撮影だったが、その中の2枚はフォトギャラリーに使用した。
絶好のロケーションを独り占め
S字進入でスタートから3周撮影し2コーナーのイン側、国内レースの激感エリアの入口付近へ移動。2コーナーのクリッピングポイント付近を斜め前から撮影した。ここのテーマは決勝のニュース記事で使用できるカチッとした右向きの写真。この後で撮影する広角やスローシャッターはニュース記事では使用しづらいためだ。
B1/B2席の正面付近に移動。ここ数年、激感エリアの前はお客さんを優先し報道カメラマンは撮影不可。スタンドをバックに撮影できるのはF1だけ。加えてこのスタンドがギッシリ満席になるのはF1の決勝中だけ。絶好のロケーションだ。
まずは広角ズームを焦点距離10mmにしてマニュアル露出、マニュアルフォーカスでシャッター速度1/500秒にして撮影。続いてレンズを標準ズームに付け替えスタンドを背景にシャッター速度1/30秒で流し撮り。インフィールド側の最後の撮影は少しS字方向に移動。C席スタンドをバックにシャッター速度1/50秒で撮影しS字トンネルに向かった。
国内レースでは観客も通れるS字トンネルを抜けると、D席(D5)下、S字1つ目の右ターン付近に出る。まずはニュース記事用のカチッとした写真を撮影。ルクレール選手のマシンの左ミラーが取れたのを知ったのはテレビ中継を見てから。確かにミラーがない。
行きは広角、帰りは望遠
ここから2コーナー方向に移動し、S字進入をグランドスタンドをバックにシャッター速度1/30秒で撮影。2コーナーのイン側で広角ズームから標準ズームに付け替えたレンズはそのまま。焦点距離58mm(=35mm判換算で約93mm)は広角ではないが、望遠レンズが主なサーキット撮影では広角気味な写真となる。ほんの少し2コーナー側に進み短いストレートを焦点距離45mm、シャッター速度1/30秒で流し撮り。そのまま2コーナーのアウト側まで進み激感エリアの対面付近でグランドスタンドが背景に入るように焦点距離50mm、シャッター速度1/30秒で撮影。この構図は国内レースでは撮ったことがあるがF1では初めて。この絵を撮るために2コーナーまで足を延ばした。
ここで折り返し。カメラを持ち替え2コーナーのクリッピングを焦点距離400mmでカチッと撮影。S字方向に移動し、復活したA2スタンドをバックに短いストレートを焦点距離182mmで撮影。少し前に標準ズームで撮った場所とほぼ同じ位置だが、“行き”は標準ズーム、“帰り”は望遠ズームと分けて撮影をした。
筆者は数年前から標準ズームで広角気味な写真を撮るときも一脚を使うようになった。なのでS字から2コーナーへ向かう“行き”はカメラボディに一脚を付けて撮影。2コーナーからS字・逆バンクへの“帰り”は望遠レンズの三脚座に一脚を付けて撮影。行き帰りでレンズを分けたのは、一脚を付け替える時間を節約したいためだ。レンズ交換も同様で、次の撮影ポイント、その次の撮影ポイントを意識しながら、できるだけレンズ交換の回数を減らしたいと思っている。レンズ交換の回数を減らすと時間の節約に加え、撮像素子にホコリが付く可能性も減ると考えている。
終盤の2位争い、どうする俺
レースは終盤へ。例年なら2コーナーまで行かず、S字進入付近で折り返して逆バンク方面に向かうのだが、今年は2コーナーまで足を延ばしたので残り周回数は少なめ。S字2つ目の左ターンを土手の上から撮影したかったが、諦めて逆バンクへ向かうつもりだった。
サーキットの場内実況はマシンが通過すると聞こえないことが多い。そのためPit-FMをイヤホンで聞きながらレース展開を確認、個人的にもレースを楽しみながら撮影している。最近は鈴鹿サーキットと富士スピードウェイでは地元FM局が中継をしてくれるため、受信エリアも広がり助かっている。鈴鹿ヴォイスFMと富士山GOGOエフエムには感謝、感謝だ。ツインリンクもてぎも地元FM局で実況放送をしていただきたい。お願い、上○さん。
鈴鹿ヴォイスFMを聞きながら逆バンクへ向かう筆者は足を止めた。レース終盤に今年のF1日本グランプリで2番目の見せ場がやってきた。2位のベッテル選手と3位のハミルトン選手のバトルだ。どうする<俺。
この手のバトルは逆転すると一気に差が開くことが多い。もしスプーン進入、130R、シケインでハミルトン選手がベッテル選手を抜くと逆バンクに来るころには数秒差に離れる可能性が高い。2秒も離れたら逆バンクでは2台が1枚の写真に写ることはない。逆バンクまで徒歩で移動する間(2~3ラップ)に逆転するかもしれない。
スープの冷めない距離ではダメ。DRSが使える距離でないと逆バンクでバトルを撮ることはできない。抜くかもしれないが、抜けないかもしれない。2台のバトルを1枚の写真に入れるには今すぐに撮っておくべきと判断し、逆バンクに向かう足を止めて振り返り、S字1つ目で2台のバトルを撮影した。レース後、D席で観戦していた知人のFさんから、Facebookでこの瞬間の写真が送られてきた。
逆バンクに着くとレースは残り2周ほど。2位争いのバトルを気にしつつ、それ以外のマシンを焦点距離を変えながら撮影。鈴鹿の街並みと伊勢湾を背景に入れて撮れるのは市街地にある鈴鹿サーキットならではの光景だ。2位争いはそのまま。優勝したボッタス選手はウィニングラップで手を高々と……上げることなく逆バンクを通過していった。
気になって過去の写真を見てみると、ハミルトン選手は2015/2017/2018年に逆バンクで手を上げていた。「ボッタス選手は優勝しても逆バンクで手を上げない」と覚えておこう。逆バンクの撮影を終えピットへ。3選手が登場する前に表彰台の下に到着。表彰式を撮影して全ての撮影が終了した。
レース後に計時システムのエラーで1周早くレースが終了し、最終ラップがなかったことになった。もし最終ラップでハミルトン選手が2位に上がり、ルクレール選手がファステストラップを獲得して、それらがなかったことになっていたら大きなニュースになっただろう。
レース後のサーキット周辺の渋滞は
表彰式を撮り終えて16時ごろにメディアセンターに戻り、決勝の記事用の写真を選択しレタッチ。ライターの笠原氏が書いた原稿と写真を前編集長が組んで記事を公開。機材を片付け18時20分ごろにパドックを後にした。
レース後の鈴鹿サーキット周辺の渋滞を見ておこう。17時10分ごろの渋滞はスマートフォンのGoogleマップのスクリーンショット。サーキット周辺はサーキット前交差点を中心に4方向とも渋滞。やや空いているのは御薗町方面か。サーキットホテル前とサーキット道路の国道23号方面は上下線ともかなりの渋滞だ。
東名阪自動車道の鈴鹿ICは入口まで3kmほどの渋滞。新名神の鈴鹿PA(パーキングエリア)スマートICはほぼ渋滞なし。国道23号は白子駅手前から四日市方面がやや流れが遅くなっていた。
次は18時ごろ、撤収直前にパソコンのGoogleマップをキャプチャしたもの。サーキット周辺は1時間前と同様に渋滞中。国道23号は白子駅から先、四日市方面の渋滞は減少していた。
鈴鹿ICの入口の渋滞は少し長くなったが、鈴鹿PAスマートICは渋滞なし。今年春にオープンした鈴鹿PAスマートICは、鈴鹿川を越えるとほぼ渋滞なしでアクセスできる。多くの人のカーナビに反映されるまで数年はかかるので、来年以降もこのルートは狙い目だ。
もう1つの注目点は東名阪道の渋滞がなくなったこと。新名神と東名阪のダブルネットワークにより、ほぼ毎週末渋滞していた東名阪の渋滞がなくなった。素晴らしい。
国道23号の四日市方面も見ておこう。鈴鹿の市街地を抜けるとやや渋滞。右のファミリーマート手前から左のファミリーマートの交差点まで2.4kmほどの渋滞だ。その先も鈴鹿川を越え、とんかつの「かつや」の先から渋滞。断続的に牛丼の「吉野家」付近まで渋滞していた。いつもどおりの渋滞という印象だ。
筆者は前編集長、ライターの笠原氏、元同僚のKさんを乗せて18時34分にスポーツゲートを出て大渋滞のサーキット道路へ。左折して鈴鹿サーキット前交差点まで9分ほど渋滞。御薗町方面に左折すると渋滞はなし。中勢バイパスの下をくぐる細いトンネルを抜け、ゴソゴソと国道23号に入りファミマ~ファミマ間がやや混むが、四日市市内までは大きな渋滞はなし。「かつや」の先の信号から右へ左へ国道23号の渋滞を避け、19時38分にみえ川越ICから伊勢湾岸道に乗り19時59分に自宅付近の名古屋高速呼続ランプを下り、名鉄堀田駅で同乗した3人を降ろし帰宅した。
帰宅後はラグビーの日本対スコットランド戦をTV観戦。ひと眠りして23時半ごろに息子を乗せて名古屋の自宅を出発。深夜3時前に川崎のオフィス兼住居に戻った。前編の冒頭で盛大に言い訳したとおり、その後はサーキット→写真整理→サーキット→原稿書きをずっと続けた。EOS 90Dのレビュー、この撮影記の前編は納品済みだが編集部の繁忙期などもあり12月掲載へ。最後の後編はアブダビグランプリが終わりF1シーズン終了後の完成となった。
この記事を待っている人はいないと思いつつ、遅れに遅れたのは情けないやら恥ずかしいやら。穴があったら入りたいけど、穴が小さかったら痩せたいと思う筆者だ。今年の反省を生かし、来年のこの撮影記の掲載が早くなる方法をいくつか思いついた。目標は決勝日から30日以内。期待せずにいてほしい。
1987年からF1日本グランプリは33年連続開催された。筆者は金曜日、土曜日、日曜日と33年間フル観戦している。33×3日=99日。土曜日キャンセルの2日を引くと97日。来年の決勝日は筆者にとってF1日本グランプリ100日観戦のアニバーサリーとなることに最近気付いた。木曜日のピットウォークを入れるとすでに100日という考えもあるが、走行のない木曜日はカウントするにふさわしくないだろう。今から気合いを入れないが、来年も多くのファンとともにF1日本グランプリを楽しみたい。来年も行くぞ、鈴鹿へ。