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奥川浩彦の「撮ってみましたF1日本グランプリ 2019」(前編)

金曜日の注目は山本尚貴選手

 Car Watch創刊の2008年から毎年掲載している「撮ってみましたF1日本グランプリ」。2019年で12回目となり、当時ピカピカの小学1年生が高校3年生となるほど時は経過した。そう、筆者も編集者も読者も歳をとった。

 この原稿を筆者は「SUPER GT×DTM 特別交流戦」のため宿泊しているJR三島駅が見えるホテルで書き始めた。遅い。あまりにも遅い。F1日本グランプリっていつのことだよ(10月13日です)と、自分に突っ込みを入れながら、過去数年の決勝日と掲載日を調べてみた。

過去5年間のF1決勝日と掲載日

 元々遅い。加えて、2015年から右肩上がりで決勝日と掲載日の期間が延びている。過去の記事掲載も遅いのだが、書き始めるのが11月下旬まで遅れたのは記憶にない。記録更新は確実だ。

 歳をとって仕事が遅くなったと感じつつ、今年の秋はWEC、F1、MotoGP、SUPER GT最終戦、セントラルラリー、SUPER GT×DTM 特別交流戦と8週間に6つのレース取材を入れ、さらに年末調整の書き方という毎年恒例の原稿も書いたり、ほぼ2か月間休日なしで仕事をしても、仕事遅い×仕事入れすぎ=「いつのことだよF1日本グランプリ」となった。

 盛大な言い訳はさておき、過去記事を読んでいる人はご存じだと思うが、この記事はさして役に立たない話が多い、筆者の私的な撮影記。個人のブログといった感じなのでご了承いただきたい。「1か月半も経つと覚えてないのでは」と言われそうだ。正解。歳をとるとあっと言う間に記憶から消えていく。

 だが元々筆者は収集癖がある。「いつか聞く、いつか読む、いつか見る」と音楽も本もブックマークも録画も溜め込んでいる。ちなみに2017年、2018年の紅白歌合戦はまだ見ていない。きっと見ない。当然、F1日本グランプリは各セッション、グランプリニュースのインタビュー、ドライバーズパレードまで録画してある。過去数年分の各サーキットを往復したドラレコ映像もスマホで撮った写真も保存してある。

 ドラレコ映像を見れば、川崎のオフィスを何時に出て、どこのサービスエリアに寄って、何時に高速を下りて、何時にサーキットに着いたかが分かる。パドックに入るとスマホで撮影。メディアセンターに着くと撮影……。記憶力の衰えは記録でカバーする、年寄りの基本だ。

ヘロヘロ状態で鈴鹿へ

 F1日本グランプリの前週はWECを撮影した。WECの撮影は2015年以来、4年ぶりだ。2016年はWECと同じ日に開催されたMotoGPを、当時の編集長に「MotoGPが撮りたい」と懇願して撮影。過去3年間はMotoGPを撮っていた。久しぶりのWEC。加えてキヤノンから9月下旬に発売されたばかりのEOS 90DでWEC、F1、MotoGPを撮影することになった。気合い入れすぎ、勢い余って撮り過ぎたため見るのが大変。フォトギャラリーの写真選択、レタッチが終わったのが木曜日の早朝3時過ぎ。一睡もせずに4時過ぎに川崎のオフィスを出発し、鈴鹿サーキットへ向かった。

WECで撮った写真。レタッチまで済ませて鈴鹿へ

 睡魔が襲ってきたので途中で足柄SA(サービスエリア)と遠州森町PA(パーキングエリア)へ。遠州森町PAに入った時点ですでに6時40分。この連載を長年読んでいる人はご存じかと思うが、みえ川越IC(インターチェンジ)から四日市、鈴鹿へ向かう国道23号は平日(木曜日、金曜日)の朝は通勤ラッシュで渋滞する。その前に通過するには6時過ぎにみえ川越ICを下りたいが、すでにその時刻は過ぎている。

 関東方面から鈴鹿サーキットを目指す場合、下りるICの選択肢はみえ川越IC(伊勢湾岸自動車道)、鈴鹿IC(東名阪自動車道)、鈴鹿PAスマートIC(新名神高速道路)の3つ。IC~サーキット間の渋滞が少ないのは、今年オープンした鈴鹿PAスマートIC。ってことで普段は使わない鈴鹿PAスマートICへ向かった。みえ川越ICを8時15分に通過して8時半に鈴鹿PAに到着。トイレとコンビニに寄った後、展示されたF1マシンを見に行ったら、4月に来たときと車種が変更されていた。

鈴鹿PAのF1展示車両が変更されていた

 鈴鹿PAスマートICのゲートを8時39分に出て30分ほどで鈴鹿サーキットに到着。ピットウォーク、ストレートウォークが始まる9時には間に合わなかったが、ヘロヘロ状態の中、無事にたどり着くことができたのでよしとしよう。

木曜日の鈴鹿をチラ見

 取材パス、駐車シール、メディアキットなどを受け取ってメディアセンターへ。撮影用のタバードも受け取ってピットへ。毎年のことながらピットウォークは木曜日の午前中とは思えない賑わい。素晴らしい。ドライバーがコースチェックに出てくるのを待つ人並みは、ストレートから1コーナーまで、ずら~っと続いていた。

木曜日のピットウォークは例年どおりの賑わい
ドライバーを待つ人並みはストレートから1コーナーまで続いていた

 ほどなくCar Watch読者の森本さんと矢吹さんが到着。レッドブルチームに無事かぶり物を渡すことができた。レッドブルのTwitterにはアルボン選手がかぶっている写真が掲載されていた。

レッドブルチームのピットに向かってかぶり物をかざす森本さんと矢吹さん
しばらくするとチームスタッフが気付いて受け取りに来てくれた

 大混雑のピットから平穏としたパドックへ移動。グランドスタンド裏に通じるトンネルを抜けてグッズショップなどが並ぶGPスクエアへ。その様子は写真で確認いただきたい。

木曜日のパドックは平穏な雰囲気。右側に並ぶのは各チームのホスピタリティ
各チームのピット裏の装飾。まずはトロロッソ
ルノー
レッドブル
フェラーリ
メルセデス
フェラーリのホスピタリティ。窓にドライバーの写真を入れるチームが増えてきた
アルファ ロメオ
トロロッソは写真なし
GPスクエアにはF1マシンが展示されていた。今年はレッドブル
トロロッソ
ModuloのブースにはトロロッソカラーのN-BOXとレッドブルカラーのN-WGN。おっブース内に知ってる人影が
展示車に座ることもできる。帽子はフェラーリだけど笑顔が素敵なのでOK
グッズショップでノンビリ買い物ができるのは木曜日の特権かも。フェラーリショップ
こちらはレッドブル
なんだろう
DAZNのブースは今年も健在
IQOSブースは縮小ぎみ

 徹夜で鈴鹿まで来たので13時過ぎに早々にサーキットを後にした。名古屋の自宅までは国道23号→みえ川越IC→伊勢湾岸道→名古屋高速道路のルート。名古屋の自宅に着き、レタッチまで済ませたWECの写真をリネーム(掲載時の並べる順番を決める)して編集部へ納品。夕方まで爆睡し、夜はF1仲間である高校の同級生たちと飲み会。翌日からいよいよ33回目のF1日本グランプリだ。

今年はキヤノンの新一眼レフ「EOS 90D」で撮影

 昨年、2018年のF1日本グランプリは「EF600mm F4L IS III USM」を借りて撮影した。発売前の貴重なレンズということで、レース直前の水曜日に受け取り、木曜日にメディアセンターに搬入。レース後の月曜日午前に発送し、筆者の手元からあっと言う間に消えていった。

昨年、2018年のF1はEF600mm F4L IS III USMで撮影(撮影:デジタルカメラマガジン副編集長 上田大輔)

 今年は9月下旬に発売されたばかりの「EOS 90D」。発売後とあって、9月末から2台のカメラボディと「EF24-105mm f/4L IS II USM」などレンズも借り、WEC、F1、MotoGPと3週連続の世界選手権をたっぷり撮ることとなった。

今年はEOS 90Dで撮影(同上)

 筆者のデジカメ遍歴はEOS 20D、40D、7D、7D Mark IIとAPS-C一眼レフを使ってきた。当然、EOS 7D Mark IIIを待っていた(心の底では今でも待っている)が、EOS 90DはキヤノンのAPS-C一眼レフの最終形と聞いて、「7D Mark IIIが出ないなら、次は90D?」と発売前から興味を持っていた。それを実際のサーキットで3週連続、最高峰の被写体をお腹いっぱい撮れるという、筆者にとっては幸せな時間となった。

 昨年のEF600mm F4L IS III USMは発売が2018年12月とあって、「撮ってみました……」の後にレビューを執筆したが、EOS 90Dはすでに発売済みなので先にレビューを執筆した。EOS 90Dの評価や使用感などは、キヤノン「EOS 90D」でモータースポーツを撮ってみた。新機能「流し撮り」モードも確認を参照していただきたい。

フリー走行1回目(FP1)の主役は山本尚貴選手

 金曜日は曇り。台風19号が接近し、土曜日の走行は中止される可能性が高いと誰もが思っていた。撮る側としては、金曜日にたくさん撮影したい。撮れ高が稼げて、バリエーションも豊富な撮影ルートを選択した。FP1はヘアピンの立ち上がり、I席スタンド付近からヘアピンの外側を回り立体交差へ。デグナーのイン側から土手を上がって130Rのアウト側というルートだ。このセッションは山本尚貴選手がトロロッソで走行するとあって、否が応でも山本選手の存在を意識しながらの撮影となった。

 デグナー、ヘアピンなど西コースへの移動はバス。セッションの1時間ほど前にコースを1周するバスに乗ってヘアピンに到着。セッション開始まで50分ほどあったので、カメラ機材を撮影ポジションに置いてI席のスタンド付近へ。ヘアピン常設席の左右の土手が立ち入り禁止になっていたので、来年以降の資料として撮影をしておいた。聞くと昨年あたりから立ち入り禁止になったらしい。

西コースへはバスで移動
最初の撮影場所はヘアピン立ち上がり
常設席の左右の土手は立ち入り禁止になっていた

 常設席の下段のヘアピンプラスのお客さんと少し雑談。初めてヘアピンプラスのチケットを見たので写真を撮らせてもらった。かつては大人気で立ち入るのが難しかったエリアだが、ヘアピンプラスチケットが必要になり撮影者が激減した印象。

ヘアピンプラスのお客さんとしばし雑談
ヘアピンプラスのチケットを撮影させてもらった

 これはヘアピンプラスのチケットが金曜日、土曜日、日曜日と日付単位で売られるためと思っている。金曜日のFP1、FP2の3時間を同じ場所で撮りたい人は少ない。FP1をヘアピンで撮った人はFP2はスプーンや逆バンクに移動するため人気のエリアに空間ができるようになった。

 チケットが金曜日FP1、土曜日FP3などとセッション単位で販売されると、人気エリアに隙間ができることが避けられると思うし、撮影できる人も増える。知り合いでヘアピンプラスを購入する人は多いが、ほとんどの人がセッション単位での販売を希望している。

 セッション開始直前、近くにいた外国人カメラマンが「明日のセッションは中止になった」と教えてくれた。予想どおり。いつも以上に気合いを入れて撮影を開始した。

 撮影順に見ていこう。ヘアピンで使用したレンズはEF100-400mm f/4.5-5.6L IS II USMとEF300mm f/2.8L IS II USM。まずはヘアピンから向かってくるマシンを撮影。ヘアピン方向に移動してスプーンに向かっていくマシンを斜め後ろと背後からシャッター速度を変えて撮影。クリッピングポイント付近も撮影した。

焦点距離400mm、シャッター速度1/250秒で向かってくるマシンを撮影
フルHDサイズでフォトギャラリーに掲載した写真
焦点距離300mm、シャッター速度1/60秒で斜め後ろから撮影
フルHDサイズでフォトギャラリーに掲載した写真
焦点距離300mm、シャッター速度1/500秒で背後から撮影
フルHDサイズでフォトギャラリーに掲載した写真
焦点距離300mm、シャッター速度1/500秒で縁石を入れて殺意
フルHDサイズでフォトギャラリーに掲載した写真

 ここから数点ボツ写真の紹介。ヘアピンのクリッピングポイントは縁石に近付かない(近付けない)マシンがあり、背景が路面だけになると絵としてはイマイチな印象。ヘアピンへのアプローチも撮ってはみたものの面白味がなくてボツ。これは筆者のアイデア不足。焦点距離を変えるとかシャッター速度を変えると面白い絵になるかもしれない。

縁石が入らないと背景が寂しい
ヘアピンに進入するマシン。アイデア不足でボツとした
ヘアピンのアウト側から立体交差、デグナー方向へ向かうコースサイド。報道エリアは整備されていない箇所も多い。ここは比較的歩きやすいルート

 立体交差下に移動してEF-S10-18mm f/4.5-5.6 IS STMで撮影。レンズを振ると急激に露出が変わるときはマニュアル露出。広角レンズの撮影はマニュアルフォーカスで撮影することが多い。デグナーのイン側、130Rのアウト側はEF24-105mm f/4L IS II USMとEF100-400mm f/4.5-5.6L IS II USMで撮影している。

立体交差下。マニュアル露出、マニュアルフォーカスで焦点距離16mm、シャッター速度1/40秒で撮影
フルHDサイズでフォトギャラリーに掲載した写真
デグナー1つ目から2つ目に向かうマシン。焦点距離50mm、シャッター速度1/60秒で撮影。
フルHDサイズでフォトギャラリーに掲載した写真
土手を上がってデグナー2つ目を見下ろす位置で、焦点距離142mm、シャッター速度1/125秒で撮影
フルHDサイズでフォトギャラリーに掲載した写真
130Rをアウト側から焦点距離85mm、シャッター速度1/60秒で撮影
フルHDサイズでフォトギャラリーに掲載した写真
焦点距離50mm、シャッター速度1/40秒で撮影
フルHDサイズでフォトギャラリーに掲載した写真

 これでFP1の撮影は終了。ほぼ予定どおりの撮影ができた。メディアセンターへ戻ると、さっそく「山本尚貴選手の写真を1~2点」と想定どおりのリクエスト。1つのセッションの写真は同じ向きの写真となるので、右向きの写真と、やや左向きの写真を記事で使用した。

デグナー2つ目で撮った右向きの写真
トリミングして記事掲載に使用した
ヘアピンのクリッピングを過ぎたところを、焦点距離300mm、シャッター速度1/500秒で撮影
やや右向きの絵になるようにトリミングして記事で使用した

 山本尚貴選手がF1に乗ることとなり、随分前にインタビューをした記憶がよみがえってきた。筆者はインタビュー記事を書くことはまれなので印象に残っている。探してみると2011年の夏だ。フォーミュラ・ニッポン、SUPER GTのGT500クラスに乗って2年目。写真を見ると初々しい。

2011年の山本尚貴選手
フォーミュラ・ニッポンは参戦2年目だった

 作新学院の卒業生で、インタビューした日は午前中に甲子園で作新学院が勝っていて、山本選手もその試合をテレビで観戦していた。筆者のような昭和30年代生まれにとって作新学院と言えば江川卓投手。山本選手も「作新学院=江川」という評判は知っていたが、当然生まれる前の話。初めて江川投手が甲子園に出た頃の過熱ぶりを話してからインタビューに入ったと記憶している。

 山本選手はトップカテゴリー2年目の当時から期待感は高く、日本を代表するドライバーになると思われていた。2013年にスーパーフォーミュラのチャンピオンを獲得(2018年に2度目)。GT500のチャンピオンは2018年と時間がかかった。もっと早くF1に乗る機会が来てほしかった。

FP2はヘアピンイン側から撮影開始

 FP2は午前に行なわれたFP1とインアウトを入れ替え、ヘアピンのイン側から立体交差、デグナーのアウト側へ向かうルートで撮影した。筆者は鈴鹿のヘアピンのイン側で撮影することは少ない。ヘアピンのイン側と立体交差の移動は、金網やガードレールにつかまりながら、滑落しそうな斜面を通るルートで、できれば避けたいと思っているからだ。国内レースではたまに撮影しているが、F1では初めての撮影となる。

 ヘアピンではI席の前をスプーン方面に向かうマシンを広角レンズで撮影。続いてヘアピンに進入してくるマシンを300mmで撮影。ここはマシンとの距離が近く、レンズを振って追従させることが難しかった。

ヘアピン立ち上がりをイン側からマニュアルフォーカスで焦点距離13mm、シャッター速度1/100秒で撮影
フルHDサイズでフォトギャラリーに掲載した写真
ヘアピン進入を焦点距離300mm、シャッター速度1/100秒で撮影
フルHDサイズでフォトギャラリーに掲載した写真

 通りたくないルートを滑落しないように抜けて立体交差へ。立体交差を通過するマシンをISO 800に設定してマニュアル露出で撮影。暗いシーンではズームレンズより明るい単焦点レンズの方がISO感度を下げて撮影することができる。運がよければヘルメットのバイザーの中にドライバーの顔が写るポイントだ。バイザーの色が薄いことも顔が写る条件となる。

 運がよかった。ガスリー選手の走行中に顔をとらえることができた。続いて撮影位置をデグナー側に移動して立体交差に入る前のマシンを撮影。さらに進んでデグナー2つ目のクリッピングポイントを撮影。セッションの終盤はデグナー1つ目と2つ目の短いストレートを流し撮り。最初はマシンを大きめ、最後はマシンを小さめに背景の土手を大きくレイアウトして撮影した。

立体交差下をISO 800、焦点距離300mm、シャッター速度1/320秒で撮影
フルHDサイズでフォトギャラリーに掲載した写真
デグナー2つ目の立ち上がりを焦点距離400mm、シャッター速度1/400秒で撮影
フルHDサイズでフォトギャラリーに掲載した写真
デグナー2つ目、焦点距離300mm、シャッター速度1/320秒で撮影
フルHDサイズでフォトギャラリーに掲載した写真
デグナー1つ目から2つ目、焦点距離170mm、シャッター速度1/125秒で撮影
フルHDサイズでフォトギャラリーに掲載した写真
同じ場所で焦点距離107mm、シャッター速度1/30秒で撮影
フルHDサイズでフォトギャラリーに掲載した写真

 このセッションの立体交差下でコースの反対側に熱田護カメラマンを発見。セッション終了後は逆バンクオアシスのキヤノンブースで行なわれる熱田カメラマンのセミナーを取材予定。熱田カメラマンが流し撮りをする様子を連写してみた。

流し撮りをする熱田護カメラマン

今年も熱田カメラマンのセミナーに参加

 昨年に続き、金曜日のセッション終了後に逆バンクオアシスのキヤノンブースで行なわれた熱田護カメラマンのセミナーに参加した。掲載済みの「発売直後のEOS 90Dを貸し出し。10周年を迎えたF1日本グランプリのキヤノンイベント」という記事で紹介したが、今年は熱田カメラマンにとって特別な年なのでここでもさわりだけお伝えしよう。

セミナーを行う熱田カメラマン

 熱田カメラマンは1963年三重県鈴鹿市生まれ。1987年のF1日本グランプリを鈴鹿サーキットのオフィシャルカメラマンとして撮影。1991年から海外でもF1グランプリを撮影し、1992年から現在まで世界中で開催されるF1グランプリを全戦撮影。今年、2019年のベルギーグランプリで撮影したF1グランプリの数が通算500戦となった。

 500戦を記念して写真展が開催される。熱田カメラマンがフィルムカメラからデジタルカメラまで、長年にわたり撮り溜めてきた作品を展示する集大成とも言える写真展で、約100点の貴重な作品が展示される。

熱田護写真展:500GP フォーミュラ1の記憶
・開催日程:2019年12月19日(木)~2020年2月8日(土)
・会場:キヤノンギャラリー S(品川)

 さらに、500戦を記念した写真集「熱田護F1写真集 500GP」が、インプレスのデジタルカメラマガジン編集部から12月19日に発売される。価格は4545円(税別)で、224ページの豪華写真集になるとのことだ。すでにAmazon.co.jpで予約受付が行なわれており、発売前に予約をすると特典として「500GP」のステッカーが付いてくる。

 12月19日、もうすぐだ。筆者も楽しみにしている。そんな熱田カメラマンのセミナーは今年も大盛況だった。用意された100席あまりの椅子はすぐに埋まり、立ち見をする人も多数。昨年同様、サービス精神旺盛な熱田カメラマンは大幅に時間をオーバーして1枚1枚の写真を解説していた。

今年も大盛況だった
500戦を記念した写真展と写真集のチラシも置かれていた

 今年、2019年は金曜日の夕方に熱田カメラマン、土曜日の夕方に原富治雄カメラマン、日曜日の10時から熱田カメラマンの2回目のセミナーが開催される予定だったが、台風の影響で金曜日の1回のみとなった。

 セミナーを見てからメディアセンターに戻り、この日の記事用の写真を選んでレタッチ。当日のSlackの画面を見ると19時33分に作業が完了した。

19時33分に作業完了

 機材を片付け20時ごろに帰路につくと、パドックは日曜日の決勝後のような雰囲気。各チームは台風に備えて撤収作業の真っ只中。ピットの壁の装飾も全て撤去されていた。白子駅近くで取材スタッフと食事を終えて、店を出ると雨。台風が近付いていた。

パドックはレース後のような雰囲気
各チームのピットの装飾もなくなっていた
21時過ぎには雨が降り出した

台風で土曜日がキャンセル。F1秋開催に不安

 ご存じのように日本に大きな被害を残した台風19号の影響で、F1日本グランプリは土曜日が中止となった。予選が日曜日の午前中に行なわれるのは3回目。土曜日がキャンセルされたのは2回目。日曜日の決勝が中止にならなくてよかった、とも思えるが、いつか決勝が中止という悲しい出来事が起きそうで不安だ。

2010年のFP3の写真。この後、予選がキャンセルされた

 秋にモータースポーツの世界選手権は集中している。今年はWEC、F1、MotoGPが3週連続で開催された。海外から観戦、取材に来る人には都合がよいと思うが、日本人にとってはどうなのか。まずは金銭面の負担。安くはないチケット代に交通費、宿泊費。3週連続は大きな負担だ。特に富士スピードウェイで開催されるWECとツインリンクもてぎで開催されるMotoGPは、時期がズレていれば両方観戦する関東地方の人は増えそうな気がする。

 次は休日。住む場所によってサーキットへのアクセスは異なるが、F1で金曜日に有給休暇を取って、翌週のMotoGPでも金曜日に有給休暇を取って観戦となると、会社によっては休みづらいこともあるのでは。筆者がサラリーマンだった15~30年前は有給休暇が常に取りづらい雰囲気があった。何度も上司に小言を言われた記憶がある。当時の筆者は、3週連続で有給休暇を取ることは不可能だったと思う。時代も令和となり、今のサラリーマンは連続で有給休暇を取ることに支障がなければよいのだが。

 月曜日が「体育の日」(休日が移動しなかった時代)になると最悪。金曜日に有給休暇を取ると4連休となり「4日も休むのか」と言われたのは鮮明に記憶している。月曜休日は遠方の人にはメリットだと思うが、名古屋在住だった筆者にはデメリットでしかなかった。ここ数年は月曜休日(体育の日)に合わせてF1日本グランプリが開催されている。これをメリットと感じる人は多いのだろうか(2020年から体育の日はスポーツの日となり、2020年はオリンピックに合わせて7月、2021年から再び10月第2月曜日が休日となる)。

 最後は気象。「100年に1度の豪雨……」を頻繁に聞くようになった。今年は9月の台風15号。今回の台風19号。昨年は関西国際空港など関西地方を襲った台風も大きな被害をもたらした。9月、10月の台風シーズンに世界選手権を3週連続で開催するのはいかがなものか。

2014年の決勝は雨。ビアンキ選手の事故もあり赤旗中断となった

 1987年からF1日本グランプリは秋開催が定着しているが、昔は鈴鹿の後に行なわれていたオーストラリアグランプリが、今では開幕戦として定着している。例えば春開催にして、中国グランプリ→日本グランプリと4月にF1日本グランプリを開催すれば台風の心配はなくなる。

 もう1案は11月開催。過去に2度F1日本グランプリは11月上旬に開催されている。1回目は鈴鹿初開催となった1987年。決勝日はメッチャ寒かった。2回目は1994年。雨が降り赤旗中断となり2ヒートレース。このレースも寒かったが、ヒルとシューマッハのチャンピオンをかけたタイムレース。アレジとマンセルのガチバトルは凄かった。

「11月でも雨降ってるじゃん」とも思うが、日本で雨の降らない季節はない。少なくとも決勝日に台風直撃を避けるなら11月開催もありだろう。アメリカグランプリ→メキシコグランプリ→ブラジルグランプリ→日本グランプリ→アブダビグランプリとなれば、寒さに震えながらチャンピオンをかけたバトルを見られるかもしれない。

 4月、11月開催は子供の運動会を避けられるメリットもある。運動会の5月開催が増えていると聞くが、まだまだ10月開催の運動会は多い。運動会と日程が重なれば、ファミリー観戦ができないのはもちろん、子供の運動会をパスして自分だけF1観戦するのは、かなりハードルが高い。筆者の30年来のF1仲間も運動会とバッティングして来られなかった年がある。知り合いの編集者もここ数年は子供の運動会と重なってF1観戦を見送っている。開催時期の変更は筆者の妄想だが、決勝日が2回くらい台風で中止になると、開催日の変更も現実味を帯びてくるだろう。

 土曜日は朝から台風情報などをテレビで見ながら金曜日に撮った写真をチェック。台風で土曜日が中止になったのは残念だったが、この週末は岐阜に嫁いだ娘が孫を連れて帰省。早朝にサーキットに向かい、夜遅くに戻ると会えなかったはずの孫の姿を見られたのがせめてもの救いだった。名古屋市内の雨はそれほどでもなかったが、午後には道路情報を見ると高速道路は浜松以東が通行止めとなっていた。夜になると名古屋は雨雲が通過。日曜日朝の公共交通機関に心配はあるが、予選、決勝は無事に開催されそうだと思った。

テレビでも予選中止の情報が流れていた
4歳と0歳の孫に会えたのはラッキー
16時ごろの高速道路情報。浜松以東は通行止め
夜7時半ごろに雨雲は名古屋を通過した

 前編はここまで。後編は快晴となった日曜日の様子をお伝えしよう。