奥川浩彦の「レースと写真とクルマの話」

第9回:熱田護カメラマンも参加! 解像度を変更した「フォトギャラリー」

フォトギャラリーコーナー

プロの写真をじっくり見てみよう

 MotoGPは現在サマーブレイク=夏休み中。F1も7月30日~8月1日のハンガリーグランプリから8月27日~29日までサマーブレイクとなる。国内レースは……元々開催数が多くなく、新型コロナウイルスの影響で観客数の制限や遠方への移動制限など観戦を見送っている人もいるだろう。モータースポーツファンはしばし休息、あるいは充電の時期だ。

 今回はモータースポーツ写真を高解像度で見られるCar Watchの「フォトギャラリー」についてお伝えしよう。

Car Watch フォトギャラリー

https://car.watch.impress.co.jp/docs/photogallery/

 2008年夏に創刊したCar Watchがサーキット取材を本格的に開始したのが2009年シーズン。フォトギャラリーもその年にスタート。当初からフルHD=1920×1080ピクセルの高解像度を基本として掲載してきた。写真は撮影時のEXIF情報を消さずに公開。2011年シーズンから「Tv(シャッター速度)、Av(絞り数値)などのEXIF情報を一部残してある。撮影時の参考にしていただければ幸いだ」とExif情報の扱いについて明確化し、10年のときが経過した。

 そのフォトギャラリーが2021年度から変更された。1つ目は熱田護カメラマンの写真が毎戦掲載されること。2つ目は解像度がフルHD(1920×1080ピクセル)からWUXGA解像度(1920×1200ピクセル)と、若干ながら高解像度になったことだ。

熱田護カメラマンのフォトギャラリー

 Car Watchのフォトギャラリー、今シーズンの注目は日本を代表するF1フォトグラファー熱田護氏の写真が毎戦掲載されることだ。しかも1920×1200ピクセルという高解像度。さらにサーキットで撮影する人は撮影に使用した機材(ボディ、レンズ)、シャッター速度、絞り、設定などをEXIF情報で確認することができる……凄い。

 例えば開幕戦バーレーンの3枚目の写真は焦点距離17mm、シャッター速度1/15秒、絞りF11、ISO感度200などとなっている。このEXIF情報を見て筆者は「ISO200ってナイトレースだけど照明は明るいのかなあ。F11まで絞るならISO100にして絞りを開ける手もありか。熱田さんはフルサイズだけど自分はAPS-Cだから、ノイズを考えるとISO100……」と1枚の写真で想像をかき立てられている。

 筆者はCar Watchと同じインプレスの写真雑誌「デジタルカメラマガジン」で、毎号熱田氏の「DRAMATIC CIRCUS」を熟読している。現在発売中の8月号で62回目の掲載なので年12冊から逆算すると5年間続く連載だ。年に約20戦のグランプリを12回に分けて掲載するので毎号2戦分くらいの写真とコメントが載っている。撮影データも記載されているので、先ほどのEXIF情報と同様に撮る者の視点で拝読している。

「デジタルカメラマガジン」に掲載されている熱田氏の連載「DRAMATIC CIRCUS」は6年目へ

 5年も見続けていると、熱田さん流の撮り方が分かってくる。特徴的なのは流すときと写し止めるときのシャッター速度がキッチリ分かれていて、方や1/15秒、方や1/4000秒などとなっている。露出は圧倒的にマニュアル露出。ISO感度はキヤノンのEOS-1D X Mark IIIの性能もありISO2500など日中でも高めに設定されることが多く、絞り込まれた写真が多い。

 デジタルカメラマガジンでは2019年熱田護カメラマンのF1撮影500戦を記念した写真集「500GP」を発売した。デジカメWatchでは2020年7月から、写真集で紹介しきれなかった多くの写真を、撮影時のエピソードや機材などについてコメントを加えて「500GP-Plus」というタイトルで連載をスタートしている。現在は過去の写真と最新の写真を織り交ぜながら、ほぼ毎月1回のペースで掲載されているので要チェックだ。

熱田護氏の写真集「500GP」

 昔の写真も最近の写真も魅力たっぷりなのだが、1例を紹介すると2020年のアブダビの写真はいずれも凄い。撮影時のシチュエーションなど詳細は熱田氏がそれぞれの写真にコメントを書かれている。

解像度が1920×1200ピクセルへ

 冒頭で書いたように2009年から1920×1080ピクセルでCar Watchのフォトギャラリーはスタートした。インターネット上に写真は数多く存在するが、12年前も今もニュースサイトでこれだけ解像度の高い写真を掲載しているところは数少ないと思われる。サーキットでお声掛けいただいた何人かの読者から「壁紙にしています」と言われたので、フルHDサイズにした効果はあったと思っている。

 1920×1080ピクセルでスタートしたCar Watchのフォトギャラリーが2021年度から1920×1200ピクセルに変更された。アスペクト比にすると16:9が16:10となった。現在のWindows系のノートパソコンはテレビなどと同じ16:9のアスペクト比が多い。市販の液晶ディスプレイも同様だ。

 MacBookは以前から16:10でSurfaceは16:10.666と、やや縦長のディスプレイが採用されている。最近のノートPCは16:10のものが増えており、大は小を兼ねる(?)16:10になったことでカバーできるデバイスが増えたと考えてよいだろう。

 パソコンでフォトギャラリーを見る人は、ずら~と並んだサムネイルをクリックすると少し大きめな写真が表示される。左上の「プラス虫メガネ」をクリックすると1920×1200ピクセルの写真が表示される。

サムネイルの写真をクリック
やや大きめな写真が表示されたら、左上の[プラス虫メガネ]をクリック
1920×1200ピクセルの写真が表示される。写真は高橋学氏のSUPER GT開幕戦の1枚。素晴らしい

 写真は大きなサイズで見ると印象が異なるものだ。昔々のフィルム+紙焼きの時代もLプリントより2L、2Lより四つ切りと大きくすると迫力や感動が増したと記憶している。なので物理的に大きなディスプレイで見ていただくと、高解像度の利点がより活かせると思われる。

 とはいえ世の中はパソコンよりスマートフォンが主役的な時代。スマホの人は一覧に表示された写真をついついピンチアウト(スマホ画面に触れたまま2本指を広げて拡大)してしまうが、それでは高解像度の恩恵がない。実際に試してみよう。

「2021 SUPER GT第2戦 富士」フォトギャラリーのこの写真。サムネイル表示と1枚表示をピンチアウトして比較していただきたい。

 スマホでサムネイル一覧を表示。そのままピンチアウトすると、Astemoと17の文字は分かるが細かなところも見ることはできない。サムネイルの写真をタップして1枚だけ表示された状態でピンチアウトするとその差は歴然。HONDAの文字やBRIDGESTONE、NGKの文字が見えるようになる。このようにスマホでも高解像度の恩恵を受けられるはずだ。

 これはフォトギャラリーに限ったことではない。普段のニュース記事も、ほとんどの写真はタップすると高解像度表示に切り替わるので、細かな部分まで視認できることが多い。ぜひお試しいただきたい。

サーキットで撮影をする人は「EXIF情報」を参考にしよう

 ここからはサーキットで撮影をする人、したい人、いつかするかも……な人向けの情報だ。デジタルカメラやスマホで撮影したデジタル写真には撮影したデバイスの情報や撮影日時、シャッター速度、絞り、焦点距離、ISO感度などさまざまな情報が埋め込まれている。これを「EXIF情報」という。

 Car Watchが創刊した頃、編集長と筆者はサーキット撮影をする人がEXIF情報を参照できれば上達の近道になるだろうと話し合い、このフォーマットでの掲載を決定した。

 EXIF情報を見る方法はいくつもある。例えばWindowsの標準機能であれば写真をダウンロードして、その写真のプロパティを開き、詳細のタブを見るとカメラのモデル、絞り値、露出時間(=シャッター速度)、ISO感度、焦点距離などを確認することができる。フリーソフトを使ってダウンロードした写真のEXIF情報見ることもできる。

プロパティの詳細でEXIF情報を見ることができる

 ブラウザの拡張機能を利用すればダウンロードしなくてもEXIF情報の確認が可能だ。例えば無料の「EXIF Viewer Classic」を利用すると、マウスポインタを写真の上に乗せるとEXIF情報が左上に表示される。

 実際に使ってみよう。「EXIF Viewer Classic」のページを開きの「Chromeに追加」をクリック。「EXIF Viewer Classic を追加しますか?」とポップアップが表示されたら「拡張機能を追加」をクリックするだけ。EXIF Viewer ClassicはChromeの拡張機能だが、ChromeベースとなったEdgeも同様の操作で追加することができる。また、オプションで表示項目を変更することも可能だ。

 もう1つは「EXIF Viewer Pro」。こちらも同様の手順で機能を追加するだけで使える。

 筆者は自分で写真を撮るのも好きだが、他人の撮った写真を見るのも好きだ。気になった写真はEXIF情報を見て、どのようなレンズ、どのような設定で撮ったのかを確認していろいろな想像をする。EXIF情報を見る際の注意点は、そこに表示されていない情報があることだ。例えばNDフィルターなどの装着の有無。元画像がトリミングされている場合も焦点距離との差異が生じる。なのですべての撮影情報が表示されているわけではないが、EXIF情報を知ることはサーキット撮影の上達の近道となるだろう。

奥川浩彦

パソコン周辺機器メーカーのメルコ(現:バッファロー)で広報を経て2001年イーレッツの設立に参加しUSB扇風機などを発売。2006年、iPR(http://i-pr.jp/)を設立し広報業とライター業で独立。モータースポーツの撮影は1982年から。キヤノンモータースポーツ写真展3年連続入選。F1日本グランプリ(鈴鹿・富士)は1987年から皆勤賞。