高橋学のみんなで「ラリージャパン」を応援しよう!

第5回:10年ぶりのラリージャパンを楽しむための観戦ガイド

今回は10年ぶりのラリージャパンを楽しむための簡単ガイドです

 2020年、10年ぶりに日本で開催されるWRC(世界ラリー選手権)の日本ラウンド「ラリージャパン」(愛知・岐阜で11月19日~22日開催予定)。そのスタートまであと3か月。新型コロナウイルス感染症の影響により中断していたWRCも9月4日から始まるラリーエストニアから再開します。世界最高峰のドライバーとラリーカーが日本に集結する日まであとわずかです。

 さて、そんなWRCですがなにせ日本開催は10年ぶり。WRCはおろか初めてラリーを見る人も多いかと思われますので、今回は2019年に開催されたテストイベント「セントラルラリー愛知/岐阜(以下 セントラルラリー)」の話も交えながらちょっとだけ観戦についてのお話などをお伝えします。

 ちなみに、現在ラリージャパンの公式サイトでは「ラリーガイド1」という25ページからなる資料がダウンロードできるようになっています。暫定ながら開催期間中のスケジュール(アイテナリー)も記載されていますので、目を通しておくのもいいかもしれません。

「セレモニアルスタート」……お祭りの幕を開ける一大イベント

ラリージャパン、北海道 帯広時代のセレモニアルスタート

 お祭りの幕を開けるのは、競技前日の11月19日に行なわれるセレモニアルスタートです。WRCラリージャパンの競技が明日から始まりますよ! とファンに告げるオープニングイベントです。暫定スケジュールでは名古屋市内で17時30分に最初の1台がスタートする予定です。

 ちなみに、当日の午前中はモリコロパーク内のコースで各マシンがシェイクダウンを行なう予定ですので、そちらも注目ポイントです。

2019年のセントラルラリー愛知/岐阜では夕方にシェイクダウンが行なわれました

「SS観戦」……トップドライバーの全開アタックはラリーの醍醐味!

SSでの観戦(ラリースウェーデン2020)。世界トップレベルの走りを堪能するのならやはりSS(スペシャルステージ)がおすすめ

 自動車競技の世界選手権ですから、当然大会の華は「SS(スペシャルステージ=競技区間)」におけるトップドライバーの卓越した走りでしょう。もちろん筆者おすすめの観戦ポイントもSSです。ところがこの競技区間、コース沿いのどこでも見られるわけではありません。スペクテーター(観客)エリアと呼ばれる場所が指定されるのですが、実はまだ場所も観戦料金も発表されていません。公式サイトでの発表を待ち、早めに観戦スケジュールを立てたいものです。

北海道で行なわれたラリージャパンのSS観戦風景
海外では焚き火やBBQをしながら観戦する人もいるので、観客席(スペクテーターエリア)に煙が立ち上がっている風景もしばしば見られます

 ちなみに2019年のセントラルラリーで個人的に印象的だったのは、紅葉の中を走るステージです。天候にこそ恵まれなかったものの、日本での開催にふさわしい美しいステージだったと思います。今回も同じ時期に開催されるので、山の中で観戦できるステージがあれば見ておきたいものです。ちなみに人里離れたアクセスのよくないステージは世界各国で見られますが、トコトコとハイキング気分で歩いてステージまで向かう行程もまたラリーの楽しみだと思います。

セントラルラリーでは紅葉の美しい日本的な風景も見られました。ラリージャパンでもぜひ見てみたいものです
左からラリージャパン(日本)、ウェールズラリーGB(イギリス)、ラリースウェーデン。観戦ポイントまでの徒歩移動は時として距離が長かったり、道が険しかったりとさまざまですが、これも観戦の一部として楽しんでしまいましょう

 2020年のラリージャパンのコースは舗装路(ターマック)ですが、テストイベントとして行なわれた2019年のセントラルラリーではコースの一部にグラベル(非舗装路)がありました。岡崎中央公園のステージです。今回も同じ公園が選ばれているので同じようなシチュエーションがあればほかのステージとはちょっぴり違う雰囲気の写真を撮ることができるかもしれません。というわけで、ここもオススメポイントとしておきましょう(←もちろん暫定です)。

セントラルラリーでは一部グラベル(非舗装路)があったのでちょっと違った感じの撮影ができました

「サービスパーク」……お気に入りのマシンやドライバーに会いに行こう!

マシンが至近距離で見られドライバーとの遭遇率も高いサービスパーク

 走りも楽しみたいけど、最新のラリーマシンをじっくり見たいしドライバーにも会いたい! という方は、ぜひメイン会場のモリコロパークへ。モリコロパークには1日の競技を終えたすべてのマシンが集まり、メンテナンスを行なうサービスパークが設置されています。レースで言うところのピットやパドックエリアにあたりますが、レースよりはるかに開放的な雰囲気です。1日の戦いを終えたドライバー/コ・ドライバーがファンの目の前で降り、そこから整備がはじまります。サインや写真撮影に応じてもらえる確率が高いのもこのエリアです。

 ただし、競技期間中ですから選手はピリピリしている場合も当然あるでしょうし、疲れている時もあると思いますので、そのへんは雰囲気次第ですね。競技開催前にはファンサービスの時間をとることもありますので、そちらはもう少し具体的なタイムスケジュールが出されれば、確認できると思います。

手前のガラス張りのスペースは観戦者も入場できるホスピタリティーブース、奥がピットエリアです(ToyotaGazooRacing WRT)
全面仕切られているHYUNDAI Shell MOBIS WRTのサービスエリアですが、ちゃんと中に入って見学できます
整備を待つヒュンダイi20クーペWRC
制限時間内で作業をするメカニックの鮮やかな作業も見応え十分です
選手が出てきてこんなサービスに出会えたらラッキー!
昔はトップチームもテントで作業してました
選手によるサイン会
サービスパーク内に設置される車両保管場所(パルクフェルメ)も見どころの1つ。一堂に揃ったマシンを至近距離で眺められる好スポットですが、敷地内への立ち入りは絶対厳禁です

 なお、前述したラリーガイド1では暫定ながら配置図やマシンの導線も掲載されていますので、見ておくと効率よく楽しめるでしょう。また、サービスパークは公式サイトでもオススメポイントの1つとして、すでに紹介されているのでそちらもご覧ください。

「リエゾン」……競技じゃないけど貴重な観戦ポイント

リエゾンでの応援風景

 ラリー競技はクローズドサーキットで行なわれるレースと違い、開催地域が広く一般公道で行なわれます。もちろんタイムアタックを行なうSSは封鎖しますが、リエゾンと呼ばれる移動区間は、ほかの一般車となんら変わりなく一般道を移動しますので、沿道でも応援することが可能です。もちろんSSと違い交通ルールを守りながらの走行ですが、それゆえに世界を妙に身近に感じるラリーならではの独特の観戦ポイントでもあります。クルマで街を走っていたら、信号待ちで待ってる前のクルマが世界チャンピオンのマシンということも当然あるわけで、そんな身近さもラリーの魅力の1つかもしれません。

その是非はともかく、北海道では信号待ちのラリーカーにファンが集まる風景もよく見られました
街を走っていると、あれ? 前で止まっているのはWRCマシンだ! なんて事もよくあります。競技を終え疲れた選手にこの渋滞は辛いでしょうね

 ちなみに今回のラリージャパンの場合、現時点では19本のSSが設定されていて、その走行距離は307.78km。つまり、ここでのトータルタイムを基本にして勝敗が決まります。一方、一般道での移動区間は倍以上の715.77km。ヤリスWRCも含む世界トップクラスのラリーカーも一般車に混じって、岐阜や愛知の街並みをこれだけ移動するのです。もちろん、普通の沿道だから当たり前ですが、観戦料金はかかりません。地域密着型のモータースポーツらしい観戦ポイントがこのリエゾンです。

「表彰式」

2020年のラリースウェーデンの表彰式。ポディウムを囲むのは一般のファンでその後方からメディアは撮影しています

 ファンも案外楽しめるのが表彰式。サービスパーク内で行なわれることが多いのですが、メディアは専用のスペースからの撮影となることが多いので、表彰台のまわりがファンのスペースとなることも少なくありません。選手と喜びを共有できるオススメポイントです。

2010年のラリージャパンで久々の表彰台を獲得したペター・ソルベルグは、ファンの前まで来て喜びを分かち合いました

 以上、大会前日から表彰式までの観戦ポイントをざっと書き連ねて見ました。現段階では「一般的にはこんな感じ」レベルの話ですが、少しでも観戦のイメージをつかめてもらえれば幸いです。さまざまなシーンを上手に組み合わせて観戦を楽しむのもラリー観戦の醍醐味だと思います。ようやく再始動した今シーズンのWRC。詳細な観戦情報がいつごろ発表されるのかは現段階では分かりませんが、世界の頂点の戦いをファンのみんなで楽しめるプランが発表されることを今は願うばかりです。

高橋 学

1966年 北海道生まれ。下積み時代は毎日毎日スタジオにこもり商品撮影のカメラアシスタントとして過ごすも、独立後はなぜか太陽の下で軽自動車からレーシングカーまでさまざまな自動車の撮影三昧。下町の裏路地からサーキット、はたまたジャングルまでいろいろなシーンで活躍する自動車の魅力的な姿を沢山の皆様にお届けできればうれしいです。 日本レース写真家協会(JRPA)会員