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マルカサービスに聞いた! カスタマイズ向けアルミホイールのデザイン最新事情

アルミホイール市場でTOP3に入るメーカーが進める傑作デザインの現代風リメイクとは

アルミホイール市場で大きなシェアを持つマルカサービスで最新事情を聞いてきた

 今回紹介するマルカサービス株式会社は昭和48年に設立した自動車用の各種用品を取り扱う卸売業を行なう会社だが、設立時からとくに力を入れてきたのがホイールの取り扱い。数多くのメーカー品を扱うだけでなく早い段階からオリジナルホイールの製造、販売も行なってきた。

 カー用品店で見かけることの多い「マナレイスポーツ」「シュナイダー」「ファイナルスピード」などのブランドが同社の製品だが、これらは気軽にホイール交換を楽しみたいというニーズにあわせた買いやすい価格設定になっているのが特徴。カー用品店ではタイヤとセットで販売されていることも多いので、国内のホイール市場で約10%という大きなシェアを持つほどメジャーなものなのだ。それだけに、自分のクルマに履いているホイールが実は「マルカサービス製だった」なんてこともあったりするかもしれない。

 ホイールに限ったことではないが、現在の産業界では製造工場を中国など海外におくのが常識。実際、日本で販売されているアルミホイールはおよそ9割の銘柄が海外工場で生産されているという。そしてマルカサービスも海外にホイール製造拠点を持っているのだけど、同社ではホイール作りに関して約3年前から新しい取り組みを始めていた。それが「Maruka Intelligent Design」通称MIDというものだ。

 このMIDとは設計や開発、製造、デザイン、安全性という「ホイール作りのすべて」において世界的にも高品質と呼べるものを目指すというもの。これを実行するため優秀なエンジニアを呼び入れて設計、開発、製造時の品質管理、デザインの一切の見直しを敢行した。さらに完成したホイールの安全性の砦となる製品試験は、海外の工場ではなく日本で行なっている。日本国内の工場で厳格な試験を行なうことまでを含めてがMIDの取り組みなのである。

製造メーカーとしての色が強く、一般ユーザーにはその名はあまり知られていないが、マルカサービスは日本の市販アルミホイールメーカーとして3本の指に入り、実に10%ものシェアを持つ
生産工場は海外に持つが、製造はもちろん、ホイールの強度を左右する素材の管理まで日本式で行なうことで、国内生産に負けない品質を実現している。さらに完成したホイールが衝撃で壊れないかといった製品検査は日本国内で実施。国交省の定めるJWL評価を満たす、高い安心・安全性能を追求している
リムの成型には軽量化と強度向上を狙ってフローフォーミング製法を導入している。これは鋳造でベースを作ったあと、スピニングマシンと呼ぶ圧力を加える機械でリム部を押し伸ばす製法。厚みを薄くすると同時に金属組織の密度が高まり、強度を高めることができる

定番デザインを若手デザイナーの感性で傑作をリメイクする

 MIDの取り組みによって新たに立ち上がったブランドが乗用車向けの「RMP(アールエムピー)」と4WD/SUVやワンボックス向けの「NITRO POWER(ナイトロパワー)」の2つ。このうち今回は乗用車向けのRMPをメインに特徴を紹介していこう。

RMPシリーズの「028F」
NITRO POWERシリーズの「WARHERD(ウォーヘッド)」
同じくNITRO POWERシリーズの「CROSS CLAW(クロスクロウ)」

 まずはネーミングだが、これは「Re:Master Piece」という商品コンセプトを表すキャッチから取ったもの。キャッチ内にある「Master Piece」とは広く価値を認められている造形物、つまり「非常に支持されている定番品」や「傑作品」を指す言葉。それに“Re:”が付くので、意味は「傑作品をもう一度」となり、そこからMID独自の意訳により「ゼロからの傑作」という意味の造語なのだ。

 では、RMPが言うところの傑作とはなにかというと……デザインだ。アフターパーツのアルミホイールが初めて販売されて以来、これまで何種類のホイールが作られてきたかは見当もつかないが、1つ言えるのは、長い歴史の中で常に人気を保っているクルマ好きにとって普遍的ないくつかのデザインがあるということ。

 RMPではその中からスポーツ系、ドレスアップ系の両ジャンルから支持される「スポークタイプ」のデザインに着目。スポークタイプは多くの車種とマッチングがいいだけでなく、シンプルゆえに流行に左右されないのが利点である。でも、だからといって変化を与えないと未来的になっていくクルマのデザインや、ホイールが大径化することによる見え方の変化などに追いついていけない。

 そこでRMPは従来のイメージは残しつつ、現在のクルマに装着しても違和感のないようなデザイン作りを目指したのだが、その仕事はこれまで数多くのスポークタイプデザインを経験してきたベテランではなく、以前を知らない若手デザイナーを起用。新しい世代に定番を託すことでメインテーマである「ゼロからの傑作」に挑むことができるというわけだ。

2×8スポークの「028F」(左)、2×5スポークの「025F」(中)、10本スポークの「010F」(右)と、定番のデザインの中に新しさを求めたRMPシリーズ

定番の2本×8組のスポークデザインを“今風”に見せる方法とは

 取材ではRMPのシリーズから「028F」というモデルがサンプルとして用意されていたので、それをベースにシリーズの特徴を紹介していこう。

 サンプルの028Fは「2本組のスポークが8つある」デザインを採用したもので、この形状はスポークの数とスポーク間の隙間のバランスがいい。ディスク面のボリューム感もあるのでセダンやクーペはもちろん、ミニバンなどボディが大きいクルマにも似合うなど、カスタムの方向性を問わない傾向なので幅広い車種にマッチする。ただ、シンプルなデザインというものはクセがない代わりに没個性化しやすい面がある。そこで、028FをはじめRMPシリーズでは、シンプルさはキープしながらも没個性化しないデザインを追求したという。

2本×8組のスポークを使った028F。“メッシュ”と呼ぶ人もいるがスポークデザインなのである。陰影がはっきり付いているところを覚えておいていただきたい
RMPシリーズの「025F」。2本×5組のスポークを使っている。このデザインはスポークの足を長くできるのが特徴で、スポーク間の幅も広く開口部も大きめになる。軽快感を出したい場合にマッチする形状とのこと
RMPの基本アイデアスケッチ。細部にわたってデザインを検討している様子がうかがえる
こちらは10本スポークを採用した「010F」。10本スポークは幅広い車種に合わせやすい定番中の定番だが、スポークを長く見せるデザインや異なる角度の面を多用した造形を採用した

 RMPシリーズのデザインに取り入れた技が光と影を利用した見え方への工夫だ。この点について、シリーズの特徴でもあるスポーク部を例に取って解説すると、通常、スポークは天面(正面のこと)の幅のまま奥まで同一だが、これを天面を頂点にしてホイール奥へ向かってサイドを斜めに広げる形状にしている。こうすることにより、ホイールとしての必要な強度を保ちながら天面を細く作れるのでシャープな見え方にできるのだ。なお、スポーク横面も斜めのラインと真っ直ぐ落とすラインを組み合わせることで奥行き感を出す工夫も盛り込んでいる。

天面から奥へ斜めにカット、さらに途中からストレートに落とす。この組み合わせで面の反射の違いを生み、スポークの細さや立体感、奥行き感を出している

 つぎにリム側。通常、スポークはリムに向かって段付きがないように伸ばすのだが、028Fと025Fはリムの手前で落ち込み、そこからステップを付けてリムへ繋がるという段付きのデザインとした。しかも、よく見るとリム側のスポークの立ち上がり部は少し上向きになるよう造形しているので、ステップ部での落差がより大きくなっていた。これをデザイナーは「落差が大きければスポークを長く見せることができるし、スポークがここまで伸びていることをはっきり主張することができる」と解説した。

スポークを長く見せるため、リムとの繋がりの手前でステップを設けて距離を稼いでいる。また、ステップ部に付く陰影もスポークを長く見せる効果を出す
センターホール部にも落とし込みがあるので、ここでも陰影が付く。さらにナットホール部を繋ぐように「溝」のような形状を設けてあるので、この面でも別の反射が生まれる。こうして陰影を利用することで細めのサイズであってもダイナミックなイメージを出すことができる。太めのホイールが履けないミニバンなどに特に有効なデザインということ
5本のスポークとなる025Fは、ナットホールを避けてスポークが配置できるので、スポークをより長く見せることが可能。ただ、ナットホールの周辺が野暮ったくなりがちなので、スポークの「また」の部分にエグリのような形状を入れて視覚的な重さを取っている

 続いてはホイールカラーについて。RMP「028F」に設定されているカラーは「ハイパーメタルコート/ミラーカット」というものだが、これはブラックを下地にして上にシルバーメタリックを薄めに塗り重ねた多層構造の特殊な塗装。

 特徴は光が当たったときに陰影がハッキリ出やすいというところだが、この陰影がハッキリする特性は、角度の違う面をたくさん盛り込んでいるRMPホイールには効果十分。光の当たり具合で立体感や奥行き感がドンドン変化する。これにプラスして、スポーク天面はダイヤカットと言われる削り加工を施しているので表情にメリハリのあるホイールになっているのだ。

 こうしたデザインテクニックを盛り込んだ結果、見慣れたスポークデザインながら、今時のクルマに合わせても存在感をしっかりと出せる仕上がりになっている。

黒の上にシルバーメタリックコートを薄く吹くことで下地の黒が透けて見える。そのため影になる部分は黒っぽく落ちるが、光が当たるとシルバーメタリックが反射するので明るくなる。全体を同じ色で塗っていても、反射を計算したデザインなので表情が豊富になる

 最後にセンターキャップについても紹介しよう。写真を見ても分かるように、センターキャップに使われているロゴはかなりオーソドックスな形状となっているが、これは「RMPは昔から続くいいモノを継承するブランドなので、ロゴはカチっとしたものにしたかった」という理由から決まったもの。

 そういった意味のあるロゴに存在感を与えるため、RMPホイールでは「RMP」の文字を立体で製作。さらに文字の高さ部分傾斜を、あえて変化させることで、視覚的にもより立体感を持たせている。さらに色も黒ベースに金色のロゴ(オプションで銀色もある)として高級感を出すとともに、ロゴ表面には斜めの細かい線を入れることで見る角度ごとに陰影の付きかたが変化するアイデアも盛り込んでいる。

これだけでもかなりこだわったというセンターキャップ。実際に文字の部分を立体にすることで見る角度、光の角度によって陰影が変わるが、さらに高さ方向、斜めの部分を角度によって変化させることでより強い立体感を演出している

 アルミホイールを換えることはクルマのイメージを大きく変えることであり、同時にオーナーのセンスを主張するモノでもある。だからこそどんなホイールを選ぶかは頭を悩ますところだけれど、ここで紹介したマルカサービスのRMPシリーズのようにスペックや派手さではなく、品質と作り込みに優れたホイールを選ぶことは、クルマにとってもオーナーの評価にとってもメリットがあると言えるだろう。そんなRMPシリーズのホイールは全国の販売店で扱っているので、見かけたときにはぜひじっくりと観察してほしい。