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防災情報アプリ「特務機関NERV(ネルフ)防災」を展開するゲヒルンが三菱自動車のPHEVを選ぶ理由とは?

スマートフォン向け防災情報アプリ「特務機関NERV(ネルフ)防災」を開発、提供するゲヒルン株式会社の代表取締役 石森大貴氏(中央)、技術開発部 危機管理局の瀬尾太郎氏(左)、同じく吉村圭一郎氏(右)。そしてゲヒルンが所有する災害対策車両の三菱自動車「アウトランダーPHEV」と「エクリプス クロス PHEV」

 毎年9月1日は「防災の日」と定められている。制定されたのは1960年なのでもう62年も続くものだ。それだけに、全国のほとんどの人がそれぞれの人生の中で防災の日を何度も過ごしてきているはず。

 これまで防災と言えば地震や台風を対象として考える傾向が強かったと思うが、最近の日本では大雨による河川の氾濫や土砂災害が増えているし、火山活動でも大きな被害が出ている。それに地震に関連して起こる津波への警戒も重要だろう。

 このようにいまの時代、防災を考えるうえでこれまで以上に広い視野を持つことや災害に関する情報の収集力が必要になってきている。そこで活用したいのがスマートフォン向けの防災情報アプリだ。

 スマートフォン向けの防災情報アプリを検索すると多くのヒットがあるが、中でも高評価でありダウンロード数が高いのが、ゲヒルンが提供する「特務機関NERV防災」というアプリである。

 ここで気になるのがアプリのタイトルだ。ご存じの方も多いと思うが、これはアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」シリーズに登場する組織の名称で、もともとは代表の石森氏が東日本大震災の発災後、計画停電と連動した節電情報をTwitterアカウントで発信していた際に名乗っていたもの。エヴァンゲリオンの劇中では都市の電力を1点に集める「ヤシマ作戦」を展開するというくだりがあるが、この作戦を指揮していたのがNERV(ネルフ)という組織だった。

 なお、この当時は版元の許諾を受けていなかったが、現在は許諾を得て使用している。タイトルに関する話はゲヒルンの公式サイトにて公開されているのでそちらを参照してほしい。

ゲヒルン株式会社が提供する防災情報アプリ「特務機関NERV防災」。ネーミングや書体を含むデザインはアニメ作品「新世紀エヴァンゲリオン」シリーズの世界観を模している。版元の許諾は受けたうえでの使用だ

被災者への手打ち投稿から始まった防災情報発信への道

 今回は三菱自動車工業の協力により、特務機関NERV防災アプリを配信するゲヒルンから代表取締役の石森大貴氏、技術開発部 危機管理局の瀬尾太郎氏、同じく吉村圭一郎氏への取材機会を得たので、アプリ開発の経緯や特徴、そして最新の防災意識などを伺うことにした。

ゲヒルン株式会社の代表取締役 石森大貴氏。誰にでも分かりやすい防災情報を伝える特務機関NERV防災を生み出した人物だ。なお、石森氏はエヴァンゲリオンシリーズの大ファンとのこと

 石森氏が防災情報を発信することになった経緯から紹介しよう。きっかけになったのは東日本大震災だった。

 未曾有の大災害となった東日本大震災。その発災直後の現地ではTVが見られない、ラジオがないなど従来の情報伝達の術が機能しない状況になっていた。ところがそんな中であっても携帯電話やスマートフォンは情報を届けることができていたのだ。

 そこで石森氏が行なったのは、気象庁が発表した防災情報などを手動で文書化して自身のTwitterアカウントで発信することだった。どれくらい被災者に届いていたかは分からないが、石森氏は継続的に情報を発信し続けた。同時に計画停電への協力を呼びかける働きも行なった。しかし、Twitterは添付できる画像枚数や文字数制限があるなど、防災情報を伝えるには不向きであることを感じていた。

 とにかく情報を伝えたい気持ちで始めた取り組みだったので、当初は将来的なプランはなかったそうだが、発信を続けていくうちに情報を受け取る側に細かなニーズがあることに気がついた。

 そこでアプリの開発を計画して実際に着手し、2019年に地震、津波などの速報から天気や台風の予報、洪水や土砂災害の警報、はてはダムの放流情報まで、防災に関連するさまざまな情報を誰にでも分かりやすく見やすく、そして素早く伝えることを可能とした特務機関NERV防災アプリが配信されたのだった。

Twitterでは画像枚数や文字数制限があるので多くの情報を伝えるには向いていない。その点、アプリでは自分のいるエリアの詳細な情報を知ることができる。そうした理由から特務機関NERV防災アプリが誕生した

 特務機関NERV防災アプリの情報は気象庁が発表する気象情報を使用しているが、気象庁発表の情報は状況に応じて日に何度も更新されるし、そもそも公開される情報量が多いので、使いやすさが大事なアプリへ反映するにはデザインが重要。それだけにリリース後に手直しなどを行なっているものかと思ったが、石森氏いわく「特務機関NERV防災は完成と言えるところまで作り込んでから公開しているので、現在までデザインはほとんど変わっていません」とのこと。

 筆者は取材が決まった直後から特務機関NERV防災をダウンロードして使用しているが、確かに見られる情報が多いわりに操作がシンプルなので、直感的な操作で知りたいことがすぐ見られるという印象。

 例えば雨雲の様子も過去から先の予報まで進めたり戻したりが軽快な操作でグラフィカルに確認できる。自分のいるエリアがあとどれくらいで雨が降るのかつかみやすい。また天気予報も晴れや雨のエリアをメッシュ状に表示することが可能で、気象の専門的な知識がなくても面的な予想がしやすい。

天気分布予報の項目にある天気予報。24時間先までの天気の状況がメッシュ状に表示され、分かりやすい
晴れや雨、曇りなどの予報で色分けされたメッシュ状の表示が可能で、面的な予想がつかみやすい
緊急地震速報がきたときに撮ったスクリーンショット

万が一に備えるための災害対策車両を紹介

 特務機関NERV防災の役割は素早く分かりやすい災害情報を発信すること。これは平時はもちろんのこと、ゲヒルンの本拠地がある東京が災害に見舞われても可能な限り行なわれる。

 情報の発信には当然ながら電気が必要になるので、ゲヒルンがオフィスを構える際には、自家発電装置を備える無停電ビルを候補に挙げていたそうだ。しかし、災害の種類や程度によってはビルから避難するよう指示されることも想定される。すると無停電ビルでも意味がなくなってしまうのだ。

 そこで注目したのが電動車だった。現在、東京を起点として北海道や大阪でサーバーなどのバックアップ設備を整えているゲヒルンだが、それでも100%安心とは言えないことから2019年に移動できる電源を確保するプロジェクトを起動した。大きなバッテリを持つ電動車であれば避難しながらでも災害情報の情報の発信が可能だ。そうしたことから各自動車メーカーの電動車を比べて検討したところ、ゲヒルンが選んだのは三菱自動車のPHEV(プラグインハイブリッド)である「アウトランダーPHEV」と「エクリプス クロス PHEV」だった。

特務機関NERV防災災害対策車両は現在2世代目となる。当初は初代アウトランダーPHEVで、現在はエクリプスクロスPHEVと新型アウトランダーPHEVに切り替わっている。車体色はアウトランダーPHEV、エクリプス クロス PHEVともにブラックダイヤモンド。特務機関NERV防災のデザインが施される
初代のアウトランダーPHEVが初号機、弐号機、そしてエクリプスクロスPHEVが参号機、新型アウトランダーPHEVが四号機となる。
ルーフにはナンバーとNERVのロゴ、さらにPHEVのロゴも入る

 電動車にはBEV(バッテリ電気自動車)やHEV(ハイブリッド車)もあるが、BEVの場合は停電が発生すると充電設備が利用できなくなるケースがある。HEVに関しても外部給電できるモデルが増えてきているものの、バッテリ容量が小さいので稼働時間が制限される可能性がある。

 これらの電動車に対して、三菱自動車のPHEVは「走る発電機」といえるシステムを持つ。バッテリに蓄えた電気で走行できるだけでなく、ガソリンエンジンで発電し、それを大容量バッテリにためる機能もあり、ラゲッジスペースとフロアコンソールには外部給電用の100V AC電源を装備。最大出力は1500Wと大きなものだ。外部給電によってバッテリの電気が減ればエンジンが始動し、バッテリへの再充電を始めるのでガソリンが残っていればその間は発電が可能なのだ。

 アウトランダーPHEVを例に取ると、ガソリンが満タンの状態でV2H機器を介すると1日あたり約10kWh/日(一般家庭の1日分)の電気を使用しても最大で約12日分の電気が供給できるのだ。バッテリ容量が異なるエクリプス クロス PHEVにも外部給電用の100V AC電源があり、こちらも最大出力は1500W、給電能力は約10日分となる。

 これだけの電気が確保でき、さらに移動もできるわけだが、この移動についても三菱自動車のPHEVであることの強みがあった。それがアウトランダーPHEV、エクリプス クロス PHEVの両車に搭載されている車両運動統合制御システム「S-AWC(Super All Wheel Control)」だ。フロントとリアに搭載されたツインモーターによる4WDを走行状態にあわせて安全に走れるよう制御するこのシステムは幅広い道路状況に対応できるので、発災時に出動することも想定される災害対策車両に適したものである。

 なお、石森氏は自社が導入したエクリプス クロス PHEVに乗った際、このクルマが気に入って自家用車としても購入したという。そして大雨が降る高速道路を走行したとき、S-AWCの効果で非常に安定した走りを体験したことでますます信頼感が増したとのことだった。

新型アウトランダーPHEVの駆動方式はツインモーター4WDのS-AWC。搭載する2.4リッターガソリンエンジンは最高出力98kW/5000rpm、最大トルク195Nm/4300rpm。モーターはフロントが最高出力80kW/最大トルク255Nm、リアが最高出力100kW/最大トルク195Nm。バッテリの総電力量は20kWh。普通充電での充電時間は約7.5時間、急速充電では約38分(80%充電)。ボディサイズは4710×1860×1745mm(全長×全幅×全高。Mグレードの全高は1740mm)、ホイールベースは2705mm。価格は「M」(5人乗り)が462万1100円、「G」(7人乗り/5人乗り)が490万4900円、「P」(7人乗り)が532万700円
車体色はダイヤモンドブラック。災害対策車両となっているが市販車と違う特殊装備があるわけではない。アウトランダーPHEVが持つ外部給電装備やS-AWCといった装備がそのまま「災害対策」として有効に使えるわけだ
新型アウトランダーPHEVは2.4リッターガソリンエンジンを搭載。走行用として機能するだけでなく発電用の動力にもなる
運転スタイルに合わせてエンジンとモーターの使用比率が変更できる。充電に掛かる時間は普通充電で約7.5時間、急速充電では約38分
AC100V電源が取り出せ、最大出力は1500W。PHEVはバッテリの電気が減るとエンジンを始動して発電できるので、停電が長期にわたっても電気を供給することが可能
あらゆる状況でも安定した走りを実現するS-AWC。ドライブモードの切り替えもあり、石森氏が豪雨の高速道路で選んだのはグラベルモード。非常に安定した走りを見せてくれたという
特務機関NERV防災災害対策車両3号車はエクリプス クロス PHEV。駆動方式はツインモーター4WDのS-AWC。搭載するエンジンは2.4リッターガソリンで最高出力94kW/4500rpm、最大トルク199Nm/4500rpm。モーター出力はフロントが最高出力60kW/最大トルク137Nm、リアが最高出力70kW/最大トルク195Nm。バッテリの総電力量は13.8kWh。普通充電での充電時間は約4.5時間、急速充電では約25分(80%充電)。ボディサイズは4545×1805×1685mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2670mm。価格は「M」が384万8900円、「G」が424万500円、「P」が451万円
車体色はダイヤモンドブラックでホイールはレイズ製に交換されている。エクリプス クロス PHEVもアウトランダーPHEVもSUVなので最低地上高が高い。これは災害の影響で道路に障害物があったり、未舗装路を通って避難したりする際にとても重要なポイントになるだろう
災害対策車両用の装備として持ってきてもらったのがゲヒルン所有の衛星安否確認サービス「Q-ANPI」機器。避難所の状況を日本の準天頂衛星システム「みちびき」経由で管理局へ送信し、インターネットなどにその情報を伝えるものだ
Q-ANPIを作動させる電気もアウトランダーPHEV、エクリプス クロス PHEVから長時間にわたり供給できる
防災情報アプリは“もしものとき”にもっとも機能するべきものなので、「その状況で発信元が無力にならないために三菱自動車のPHEVを使った災害対策車両は必要不可欠」と石森氏は語った

災害時に必要なこと、取るべき行動を石森氏に聞いた

 車両の紹介のあとは再び石森氏の話に戻ろう。雑談を含みつつ防災に関しての話をしていくうちに「災害が発生したらなにをすればいいのか」という話題になった。そしてここで石森氏からおもしろい話が出たのだ。

 石森氏はスマートフォンアプリを発信する側ながら、人々がスマートフォンが教えてくれることに依存しすぎていることを感じているという。「例えば健康アプリからの"今日の夕飯はこれがオススメです”というプッシュ通知の内容をそのまま受け入れ、自分が本当に食べたいものがなにかを考えることなく、アプリが示すとおりの食事をしてしまうのは、ちょっと違うように思います」と石森氏は言う。

 続けて「同じように防災に関しても、そんな依存をしてしまっている人が多いのです。“避難してください”と言われたから避難するというパターン。これも自分では考えていないですよね。避難の主体者は対象の住民であるのに、通知がきてから考えているのです。避難指示や特別警報が出ていなければ大丈夫ということではないのです。アプリの通知があろうとなかろうと、まわりの状況を自分で判断して行動することが本来のやるべきことです。そして判断するために十分な情報が必要になりますが、それを提供するのがわれわれの特務機関NERV防災アプリなのです。アプリ利用者には定期的な情報のチェックをお願いしていますが、必要であれば事前に通知を送るようにしています」と語った。

 この件について語る石森氏の口調は特に力が入っているように思えた。実は石森氏のご実家は宮城県にあり、東日本大震災で被災していた。その出来事が防災情報を発信した大きなきっかけになっている。だからここのくだりについては“防災に必要な情報はできるだけ出すので、あとは情報を活用してどうか身を守ってほしい”という気持ちから語られたものだったのだろう。

ゲヒルンとホリカフーズが共同開発したレスキューフード。エヴァンゲリオンの世界観を取り入れたコンセプトで、日本災害食の認定食品となっている

 では、アプリから知らされる情報の使い方についてだが、石森氏いわく「地震と火山噴火は突然起こるので、状況を見つつ対応するのは難しいのですが、大雨や台風、あと雷もですがこれらはある程度事前に状況がつかめるので特務機関NERV防災でも天気予報のページなどで早めのお知らせをしています。ただ、プッシュ通知のような形態ではありません。例えば雷注意報と出すものもあれば、天気概況の解説に“大気の状態が不安定”と表記されるものもあります。雷注意報は読んで字のごとくですが、後者の場合は短時間にドバッと雨が降る確率が高いと見てください。それに“前線が停滞し”というような言葉が出たなら、雨が長くたくさん降ると予想できます。こうしたことは数日前から予告されていることが多いので、そういったキーワードを読み取ることは防災を考えるうえで大事です。あと繰り返しになりますが、アプリに言われる前から自分で外の様子を気にしてください。こうして自分で自分のまわりの状況をつかんでおけば、どのタイミングで避難をするか判断しやすいと思います」ということだった。

 とても参考になる話だが、さらに興味深かったのが“避難”についてだ。石森氏は「避難というとみんなが集まる体育館など避難所に行くことと思っている人もいますが、それだけが避難ではありません。避難とは安全を確保することなので、知り合いの家へ行く、宿を取って泊まるのも避難です。私ならまず宿を探します」という。

 たしかに避難という行動は大げさなイメージもあるので、指示が出る前から「避難しよう」と言い出すことに戸惑いを感じる人もいるかもしれないが、早めの判断は無駄ではないし大げさでもない。石森氏が言うように「まわりの状況を判断して行動する」のが正解なのだ。

石森氏と並ぶのは箱根町総務課 総務防災課 危機管理官 兼 防災対策室長の菊島信洋氏(左)。災害時の長期停電や通信網途絶に備え、箱根町はゲヒルンと防災情報サービスの継続と近接自治体への支援を目的とした災害対策車両派遣、その車両を使用しての給電サービス、Wi-Fiサービス、IP電話サービスを災害対策本部や避難所に提供する協定を結んでいる
三菱自動車は災害発生時に同社の電動車を被災地自治体へ速やかに提供する「DENDOコミュニティサポートプログラム」を行なっていて、箱根町もその対象。電動車はこうした形で災害対策に用いられているのだ

 9月1日は防災の日。この日はTVなどで防災に関する話題が増えるので、そうした情報に耳を傾けつつ「自分ならこう考えよう、こうしてみよう」と例年より踏み込んだ防災意識を持ってはいかがだろうか。

 また、アウトランダーPHEVやエクリプス クロス PHEVは防災という観点からもオススメだ。クルマの購入を検討している時期であれば、これらのクルマも検討対象に入れてみてもいいと思う。

 災害に遭わないに越したことはないが、こればかりはどうなるか分からない、ゆえに今日考えたことがのちの自分や家族、友人を救うことになるかもしれない。これは大げさなことではないと思う。

取材・撮影協力:ゲヒルン株式会社、箱根ターンパイク株式会社、箱根町
Photo:安田 剛