トピック

ネクセンタイヤのスタッドレスタイヤ「ウィンガード アイス2」、舗装路&圧雪路でその実力を体験

乗用車用スタッドレスタイヤ「WINGUARD ice2」を体験

アイス性能に長けたノルディックタイプ

 もうすぐまた冬がやってくる。降雪地を走る機会のある人にとって、クルマを新調したり、そろそろ交換時期だったりすると、タイヤをどうするかというのは悩ましい問題に違いない。そこでショッピングリストに入れる候補として提案したいのが、ネクセンタイヤの「WINGUARD ice2(ウィンガード アイス2)」だ。

 ネクセンタイヤというのは、1942年に設立された長い歴史のあるグローバルタイヤメーカーで、すでにプレミアムブランドをはじめ欧州のメジャーな自動車メーカーの新車装着用タイヤを納入した実績も多数ある。日本にも2000年代より輸入されており、評判も上々で知名度も徐々に高まってきていたところ、2016年には日本法人であるネクセンタイヤジャパンが始動した。

 WINGUARD ice2は、そんなネクセンが送り出した最新のスタッドレスタイヤだ。スノー、アイス、ドライといった日本のさまざまな冬の路面に対応しており、中でもアイス性能に長けたノルディックタイプ(ソフトコンパウンド使用)である点が特筆できる。

 ご参考まで、日本で販売されているようなスタッドレスタイヤはノルディックタイプと呼ばれ、日本以外では北欧、ロシア、中国の一部のアイス性能が重視される地域で販売されていて、ウェット性能や高速安定性に長けるアルペンタイプのスタッドレスタイヤが主力の欧州の主な地域では販売されていない。

 また、低温特性やウェット性能を高め冬道での走りにさまざまなメリットをもたらすシリカを配合するゴムの練り工程に使われる機械について、日本や北米のタイヤメーカーが使用しているバンバリンミキサーに対して、欧州メーカーやネクセンタイヤでは、より多くのシリカを配合できるインターメッシュ方式としているのも特徴だ。

 さらにWINGUARD ice2では、「効く、止まる、曲がる」というコンセプトの達成に向けて、「アドバンスド・ソフトコンパウンド」「3Dサイプ」「非対称トレッドパターン」という3つの新技術を採用している。

「アドバンスド・ソフトコンパウンド」は、低温域ではゴムの柔軟性を発揮しつつ高温域でゴムの剛性を保つというもので、アイスやスノー路面でのブレーキング性能の向上に寄与する。

「3Dサイプ」は、タイヤ表面に接地面に対して垂直方向に無数の細かい溝のサイプをジグザグした形で入れることで、サイプ同士が噛み合ってブロックの倒れ込みを防ぎ、ブロック剛性を確保する。

「非対称トレッドパターン」は、IN側とOUT側でパターンを非対称とし、IN側には雪上でトラクション性能を発揮する横溝を多く採用するとともに、OUT側は剛性の高い大きなブロックを採用することでコーナリング性能とグリップ力を高め、アイス、スノーの両路面でのトラクション性能を高めている。

今回試走したのは、2018年9月に日本で発売となったネクセンタイヤジャパンの乗用車用スタッドレスタイヤ「WINGUARD ice2」。「アドバンスド・ソフトコンパウンド」「3Dサイプ」「非対称トレッドパターン」という3つの新技術を採用しつつ、アイス性能のさらなる向上を目指して開発されたソフトコンパウンド使用のノルディックタイプ。145/80R13 75T~225/40R18 88Tの全25サイズを展開する
写真左がIN側、右がOUT側。トレッドパターンは非対称パターンとし、イン側に雪上でトラクション性能を発揮する横溝をレイアウトするとともに、アウト側に剛性の高い大きなブロックを用いた。また、「3Dサイプ」の採用によりサイプ同士が噛み合うことでブロックの倒れ込みを防ぎ、ブロック剛性を確保。これにより接地面が安定し、氷雪路での走行安定性とハンドリングを向上させている
サイドウォールにはM+Sマークとスノーフレークマークを刻印。なお、新開発のソフトコンパウンドは低温域でも柔軟性を失わず、高温域ではゴムの剛性を保つという特性を持ち、氷雪路でのブレーキング性能を向上させているという

舗装路ではサマータイヤのよう

WINGUARD ice2はノートe-POWER(4WD)で体験

 そんなWINGUARD ice2の実力を試すべく、向かったのはシーズンオフ近くでも多くの雪の残った志賀高原方面だ。「ノートe-POWER」(4WD)に装着して首都圏から往復約500kmを走行し、さまざまシチュエーションを走って性能を確かめてきた。

 車両を引き取ってから目的地までの片道約250kmは、すべて舗装路だ。最近ではドライの舗装路での走りを重視したスタッドレスタイヤが増えているが、WINGUARD ice2もまさしくそうで、しっかりとした剛性感があり、いわゆる「ヨタる」印象がない。

 操舵への初期応答はややマイルドながら、レーンチェンジでのフラつきもなく、挙動が乱れにくいので修正舵もあまり必要なく、ノイズも気にならず、サマータイヤに近い感覚で安心して快適に走れる。舗装路での走りを重視する人でも問題なく使えそうだ。

 上信越道の信州中野ICで下りて、国道292号線を志賀高原を目指して上っていくと標高が上がるにつれてだんだん雪が増えていく。外気温は0℃前後。上り勾配が続く区間で、見るからに滑りやすそうな路面に出くわしても、多少滑りながらもしっかり登坂できた。ブレーキングでも、ABSが作動したときにブレーキをつまむ間隔が短く緻密に感じられたのは、それだけグリップが高いからにほかならない。

滑りやすそうな路面でもしっかり登坂できた

どんな冬道の路面でも通用する

 志賀高原の上のほうに行くと、気温は-7℃まで一気に下がった。天候は晴れ。路面はほぼ圧雪で、ところどころ凍っているという状況だったが、縦方向のグリップの高さが効いて問題なく前に進んでいける。トラクションコントロールが作動してもリカバリーに要する時間が短いことも好印象だ。

 横方向のグリップや、ブロックやケースの剛性も十分に確保されているからか、舗装路で感じたのと同様にステアリングを切ったときの応答遅れが小さい。轍に取られにくいのも特徴的なショルダーのデザインが効いてのことに違いない。動きが素直で安定していて、先が読みやすい。コントロール性が高く、横滑り防止装置のONとOFFでの走りの差も小さく感じられた。

圧雪路でも操舵に対する応答遅れが小さく、コントロール性の高さが光った

 いかにも路面μの低そうな凍った路面でも素直な性格は変わらず。世にあるスタッドレスタイヤの中にはアイス性能に特化したものもあり、それと比べると絶対的なグリップではおよばないとはいえ、舗装路や雪上の延長上で、動きがつかみやすいので不安に感じることがないところが強み。どんな路面を走ってもハンドリングのよさが印象的だった。

 こうした世界でもっとも過酷といわれる日本の冬の路面でも十分すぎるほど通用するスタッドレスタイヤとしての性能を備えていながらも、日本製や欧州製と比べて価格がずっとリーズナブルというのもありがたい。WINGUARD ice2はまさに、ネクセンタイヤが掲げるキーワード「SMART CHOICE(賢明な選択)」を象徴するスタッドレスタイヤに違いない。

Photo:中野英幸