トピック

フィアット&アバルトの併売体制から1年。ワインディングを含む約10kmの試乗が楽しめる新CI採用第1号店「フィアット/アバルト札幌東」

フィアット「500X」、アバルト「595 コンペティツィオーネ」を試乗

FCA ジャパンは2016年7月1日よりフィアット正規ディーラーでアバルトの販売を開始した。その新CI採用第1号店である「フィアット/アバルト札幌東」に、併売することになってからの変化や店舗の特徴などについて聞いた

 FCA ジャパンは、2016年に始まった正規販売ネットワーク充実化プロジェクトの第1弾として、2016年7月1日よりフィアット正規ディーラーでアバルトの販売を開始した。以前は別々の店舗で扱っていたフィアットとアバルトだが、併売を開始したことにより店舗名が「フィアット/アバルト(地名)」となるとともに、新しいCI(コーポレート・アイデンティティ)を用いて全国のディーラーの統一化を図っているところだ。

 FCA ジャパンは、フィアット/アバルト以外の「アルファロメオ」「ジープ」「クライスラー」ブランドでも正規販売ネットワーク充実化プロジェクトを実施していて、店舗数も拡大し続けている。販売ネットワークを充実させるこのプロジェクトは順調に効果を発揮していて、結果として2016年のFCA ジャパンの販売台数は初めて2万台を超える2万393台を数えた。

株式会社 北海道ブブ フィアット/アバルト札幌東 営業リーダーの高杉ひと美さん

 今回はフィアット&アバルトの新CI採用第1号店となった「フィアット/アバルト札幌東」で、併売することになってからの変化や店舗の特徴などについて、フィアット/アバルト札幌東で営業リーダーを務める高杉ひと美さんに話をうかがった。

 高杉さんによると、「2016年9月3日に移転して新店舗となりました。それまではフィアットのみの取り扱いで、アバルトは新店舗ができてから販売するようになりました。店舗の立地も以前の大通りを奥に入った場所から、現在の大通り沿いへと移りました。お客さまの目に入りやすくなったことで認知度も上がると思いますし、新しいCIを使った展示も行なっていて好評を得ています」とのこと。

 そのショールームだが、フィアットのテーマカラーとなるホワイトと、アバルトのサーキットを想起させるアスファルトのレジンフロア、白とグレーを基調にした商談エリア、ラウンジエリア、キッズスペースなど整然としながらも、それぞれのブランドの特徴が色濃く現れている。

フィアット/アバルト札幌東のショールーム内。訪問時はフィアットブランドの「500(チンクエチェント)」「500X(チンクエチェントエックス)」「パンダ」が展示されていた
フィアットブランドのアパレル製品やグッズが並ぶ
道路側にフィアットブランドのモデルが展示され、その奧にアバルトブランドのモデル(訪問時は「124 スパイダー」「595 コンペティツィオーネ」)が並ぶレイアウト
アバルトブランドのアパレル製品やグッズの販売も

 また、展示車種については「基本的にフィアットとアバルトで取り扱っている全車種が見られるようになっています」(高杉さん)とのことで、訪問時はフィアットブランドの「500(チンクエチェント)」「500X(チンクエチェントエックス)」「パンダ」、アバルトブランドの「124 スパイダー」「595 コンペティツィオーネ」の5台が展示されていた。

各ブランドの特徴が色濃く現れるショールーム

 お店の特徴と販売比率などについて聞くと、「フィアット 500は人気が高く、販売開始から常に売れ筋のモデルとなっています。500Xが登場してからは、4WDモデルの設定があるということで地元のお客さまに支持を受けています。北海道の冬は道路脇に除雪された雪が積まれるのですが、フィアット500XのようなSUVモデルの方が見通しもよく運転がしやすいのです。加えてジープ譲りの4WD機能を有しているので安心して走れます。全国的に比較しても500Xの販売比率は高いと思います。また、アバルトは595 コンペティツィオーネのMTが人気のモデルになります。2016年からアバルトを扱うようになったので、フィアットからお乗り替えいただくオーナーさまもいらっしゃいます」とのこと。北海道という地域柄もあり、フィアットブランドでは唯一の4WDモデルとなる500Xが人気を得ているようだ。

 フィアット/アバルト札幌東は試乗やオーナー向けのイベントにも特徴がある。試乗コースについてはいろいろなシーンを楽しんでもらえるようにしているとのことで、混み合った道から3車線のゆとりある道、ワインディングという約10kmのコースを走行できるという。約10kmの試乗コースというのは異例の長さに感じるが、「フィアットもアバルトも乗ってもらって魅力が伝わると思っているので、試乗コースも長めに取っています。試乗については予約がなくても空いていれば常にお乗りいただけます」(高杉さん)とのことだ。

 また、「オーナーさま向けに年に1回のイベントを9月ごろに開催しています。2016年は支笏湖までツーリングしていただくとともに、現地でビュッフェや景品ありのエコ運転大会、ビンゴ大会などを楽しんでいただいています。冬には弊社の取り扱いブランド合同となるのですが、千歳モーターランドで雪上試乗会を催しています。例えばアウディのクワトロモデルと500Xの4WD性能を比較する、ということもできます」と、フィアット/アバルト札幌東の特色を語ってくれた。

 フィアットとアバルトが併売されるようになった正規販売ネットワーク充実化プロジェクトの1号店となる「フィアット/アバルト札幌東」。新CIによって洗練されたショールームを持ち、独自の販売施策などによってフィアットとアバルトの魅力を着実に伝えているようだ。

フィアット/アバルト札幌東

住所:北海道札幌市東区東苗穂5条2-6-32
TEL:011-788-1122
営業時間:10時~19時
定休日:毎週火曜日

500Xとアバルト 595 コンペティツィオーネに試乗

 さて、フィアット/アバルト札幌東でも人気モデルとなっている500Xとアバルト 595 コンペティツィオーネの2台。今回の取材では、両モデルを借りて札幌近郊を走る機会も得られたので、そのインプレッションを紹介したい。

 2015年10月にフィアットブランド初のスモールSUVモデルとして登場した500X。発売から約2年を経て、7月1日に装備を充実させる仕様変更を実施して発売した。

 試乗したのは専用エクステリアや9速ATを用いた4WDモデルの「Cross Plus」。最上級モデルのCross Plusと「Pop Star Plus」は、今回の仕様変更でACC(アダプティブクルーズコントロール)が標準設定された。30km/h以上で使用できるACCは、フロントのレーダーセンサーによって前方車両をセンシングしながら一定の間隔で自動速度調整を行なう。高速道路と一般道で使用してみたが、ブレーキや加速に違和感はなく、ドライバーの操作と同様の加減速となっていた。

7月1日に仕様変更を行なった、フィアットブランド初のスモールSUV「500X」。試乗したのは直列4気筒1.4リッターターボエンジンに9速ATを組み合わせ、4輪を駆動する「Cross Plus」(339万1200円)。ボディサイズは4270×1795×1625mm(全長×全幅×全高)、ホイールベース2570mm。ステアリング位置は全モデルとも右の設定。ボディカラーは3層仕上げパールペイント「パール レッド」
500Xは、2ドアモデルに比べフロントビューではより躍動感とボリュームを、リアビューではより強いダイナミズムが与えられる。ボディ同色のフロント&リアバンパーは「Cross Plus」専用デザインのもの。「Cross Plus」は衝突被害軽減ブレーキなどの安全装備を装備するが、今回の仕様変更によりレーダーセンサーで前方の車両を認識し、一定の車間距離を保つ「アダプティブクルーズコントロール(ACC)」を初採用。足下は専用装備の18インチアルミホイールにミシュラン「パイロットスポーツ 3」を組み合わせる
レトロな美学と先進テクノロジーを融合したインテリアデザイン(ブラウン/ダークグレーカラー)。ダークグレー仕上げのインストルメントパネルなどがCross Plus専用品になる。Cross Plusでは前述のACCに加え前面衝突警報(クラッシュミティゲーション付)、レーンデパーチャーウォーニング(車線逸脱警報)、ブラインドスポットモニター/リアクロスパスディテクションといった先進装備が標準装備されるのも魅力の1つ
エンジンは全グレード共通で直列4気筒1.4リッターターボエンジンを搭載。Cross Plusは最高出力125kW(170PS)/5500rpm、最大トルク250Nm(25.5kgm)/2500rpmを発生。JC08モード燃費は13.1km/L(6速乾式デュアルクラッチの2WD車は15.0km/L)

 Cross Plusのトランスミッションは9速ATを採用しており、加速時には適切なギヤへとシフトチェンジされ、小気味よいシフトアップとともに加速していく。直列4気筒1.4リッターターボエンジンは最高出力170PS、最大トルク250Nmというスペックを持つ。Cross Plusは4WDモデルとなるので車重が1460kg(2WD車は1380kg)となるが、それでも十分な性能を体感できる。

 勾配のきつい登り坂やワインディングを軽快に走りたいと思ったら、ドライビングモードを「Auto」から「Sport」に変えてもらいたい。エンジンレスポンスが向上し、トランスミッションやステアリングアシストも変更される。「Auto」では省燃費方向に振っていたトランスミッションだが、「Sport」ではより高回転を使うようになり、鋭い加速感を味わえる。エンジンレスポンスもよく、スモールSUVであることを感じさせないほどの俊敏性を体感できる。

 ドライブモードには雨天時や凍結路面、荒れた路面などの走行に適した「Traction」も用意されている。今回の試乗で試せるシチュエーションはなかったが、以前に雪上で走行した感覚だと、リアタイヤを積極的に使うことによって走破性を高めている印象だったことをお伝えしておく。

 乗り味については、十分なサスペンションのストローク量を確保していることもあり、常にフラットライドを実現。4輪とも独立したストラットで、路面の凹凸に対してしっかりとサスペンションが機能していることを体感できた。

2月に仕様変更が施された595 コンペティツィオーネ

 一方の595 コンペティツィオーネは2月に仕様変更が施された最新モデル。ライトまわりを含めた専用のエクステリアやカーボンシェルのシート、アルカンターラのステアリング、新デザインのホイールなどが変更箇所になる。

 500Xと同様に高速道路と一般道、ワインディングを走行したのだが、よい意味で常にドライバーに緊張感と高揚感を与えてくれるドライバーズカーとなる。身体にピッタリとフィットするセミバケットシート、操作性の高いアルカンターラのステアリング、ATモード付きのシーケンシャルミッションなど、ドライバーがクルマを操るために選択されたアイテムが揃う。

ハッチバックモデル「595」のハイエンドモデル「595 コンペティツィオーネ」(381万2400円)。試乗車は5速シーケンシャルトランスミッション「5速SMT」搭載車で、ボディカラーはアバルト 595 コンペティツィオーネに追加された新色「Giallo Modena(イエロー)」。ボディサイズは3660×1625×1505mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2300mm。乗車定員は4名
仕様変更に伴い、エクステリアでは前後バンパーをよりアグレッシブなデザインに仕上げるとともに、フロントバンパーにLEDデイランプを追加。また、エアインテークにワンメイクレース仕様車からインスピレーションを受けたという「ABARTH」の浮き文字を設定したほか、リアコンビネーションランプの形状も変更を受けている。そのほか595 コンペティツィオーネ専用10スポーク 17インチアロイホイールにピレリ「P ZERO NERO」(205/40 R17)を、足まわりはKONI製ショックアブソーバー&ハイパフォーマンスコイルスプリングを装着するとともに、フロントにはブレンボ製4ピストンキャリパーが奢られるなど本格的なスポーツモデルに仕上がっている
ブラックを基調にしたスポーティ感の高いインテリアでは、ヘッドレスト一体型のSabelt製スポーツシート/カーボンシェル(前席)やブースト計、スポーツペダルなどを装備。仕様変更により新形状のステアリングホイールを採用したほか、メーターパネル内のGメーターのグラフィックを改め、さらにグローブボックスとカップホルダーを追加して使い勝手を高めている

 乗り味は500Xのようにフラットライドとはいかないが、ドライバーの意志をシャシーとパワートレーンが忠実に再現する。エンジンは500Xと同様の1.4リッターターボのマルチエアだが、専用チューニングが施されて最高出力は180PS、最大トルクは230Nm(SPORTスイッチ使用時は250Nm)となる。車重は1120kgとかなり軽量だが、高速道路などでは安定性と重厚さが感じられる一方で、ワインディングになるとその重厚さよりも軽快感が増す。

 このように、異なる性格のモデルが同じ店舗で併売されているのが、現状のフィアットとアバルトになる。それぞれ特徴や守備範囲が明確に異なることで、販売面では相乗効果があるはず。どのモデルも運転してみるとメーカーが考える味付けや狙いが十分に感じられるので、ぜひ実際に試乗して両ブランドの魅力を確かめていただきたい。

提供:FCA ジャパン株式会社

真鍋裕行

1980年生まれ。大学在学中から自動車雑誌の編集に携わり、その後チューニングやカスタマイズ誌の編集者になる。2008年にフリーランスのライター・エディターとして独立。現在は、編集者時代に培ったアフターマーケットの情報から各国のモーターショーで得た最新事情まで、幅広くリポートしている。また、雑誌、Webサイトのプロデュースにも力を入れていて、誌面を通してクルマの「走る」「触れる」「イジる」楽しさをユーザーの側面から分かりやすく提供中。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。

Photo:中野英幸