【東京モーターショー2011
日産「リーフ」がEV初の日本カー・オブ・ザ・イヤー

インポートは「メルセデス・ベンツ Cクラス」、特別賞は「デミオ スカイアクティブ」

日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した日産自動車「リーフ」と、同社 最高執行責任者(COO)志賀俊之氏(左)、日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員長 鈴木俊治氏

2011年12月3日開催



 日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員会は2011年12月3日、東京モーターショー開催中の東京ビッグサイトにて、「2011-2012 日本カー・オブ・ザ・イヤー」の開票式を開催した。

 日本カー・オブ・ザ・イヤーは、第一次選考会で55台のノミネート車から上位10台を「10ベストカー」として選出。11月18日に「10ベストカー最終選考会・イヤーカー投票」を開催し、60名の選考委員がイヤーカーを決める投票を行った。この投票の開票を東京ビッグサイトの会議棟で開催。その模様を西棟1Fアトリウムに生中継し、授賞式も多くの来場者が集まるアトリウムで開催された。

 開票の結果「2011-2012 日本カー・オブ・ザ・イヤー」に輝いたのは、日産自動車の電気自動車(EV)「リーフ」。EVが日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞するのは、これが初のこととなる。

2011-2012 日本カー・オブ・ザ・イヤーとなった日産「リーフ」喜びを爆発させる志賀COO志賀COOは、「本当にうれしい」と授賞式で挨拶

 日本カー・オブ・ザ・イヤーが国産車の場合、得票数の高い輸入車に与えられる「インポート・カー・オブ・ザ・イヤー」は、メルセデス・ベンツ日本「Cクラス セダン/ステーションワゴン」が、今年から設けられ、一番インパクトのあったクルマに与えられる「実行委員会特別賞」は、マツダ「デミオ スカイアクティブ」が獲得した。

2011-2012 インポート・カー・オブ・ザ・イヤーは、メルセデス・ベンツ日本「メルセデス・ベンツ Cクラス セダン/ステーションワゴン」今年設けられた実行委員会特別賞は、マツダ「デミオ スカイアクティブ」が受賞

 日本カー・オブ・ザ・イヤーの授賞式に登壇した日産自動車 最高執行責任者(COO)の志賀俊之氏は、「本当に本当にうれしいです。この賞が励みにもなりますし、これからもっともっとがんばって参ります」と受賞の喜びを述べた。

 授賞式を終えた後、志賀COOは東棟の日産ブースに移動。自社のステージに登壇し、日産ブースを訪れていた多くの観客に日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞したことを報告した。授賞式の発言と重複する部分もあるので、ここに自社ブースでの受賞報告を掲載する。

日産ブースで、日本カー・オブ・ザ・イヤー受賞が発表される受賞トロフィーを持って、志賀COOが登場。日産ブースに居合わせた来場者に向け、トロフィーを掲げた

 「皆さんこんにちは、日産自動車の志賀でございます。本日、12月3日、2011-2012年日本カー・オブ・ザ・イヤーをいただきまして、本当にうれしく思っています。日産自動車は2007年に、『電気自動車を量販しますと言い』、たくさんのお客様に受け入れていただける、そういう電気自動車を作っていこうと、ゼロエミションソサエティを作っていこうと、そこからプロジェクトがスタートしました」「(日産自動車にとってリーフは)初めての量産量販の電気自動車で、さまざまな苦労がありました。今日、多くのメンバーがここに集まり、先ほどから喜びを分かち合っています。開発のメンバーも、生産のメンバーも、多くの人達の努力と成果で、今日この賞をいただくことができました」「実は昨年の12月3日に、日産の横浜の本社で、日産リーフを支えていただく、たくさんの方々と一緒に発表をいたしました。ちょうどそれから1年、20,000台の日産リーフを世界中のお客様にお届けし、さまざまな活動をやって参りました。今日は、本当にこれまでの苦労が報われてうれしい日ですが、日産自動車はこれからも人と社会と自然の共生、そしてゼロエミッションモビリティの、持続的なモビリティ社会を目指すために、がんばって参りたいと思います。これからも日産自動車の応援をよろしくお願いいたします。本日はどうもありがとうございました」

受賞の挨拶を行う志賀COO。日産ブースには、リーフをはじめEVコンセプトカーなど、多くのEVが出展されている。挨拶の最後には、日産ブースにいた来場者から、大きな拍手を受けていた

 日本カー・オブ・ザ・イヤーは、日本国内で年間販売台数500台以上が見込まれる乗用車の中から、同委員会が選出する60名の選考委員が年間を通じてもっとも優秀なモデルを選定する企画。日本カー・オブ・ザ・イヤーの称号を与えることで、性能、品質、安全の向上を促すとともに、業界発展と地球環境保護、交通安全に寄与するのを目的に毎年行われており、今回で32回目を数える。

 これまで、クルマファンは日本カー・オブ・ザ・イヤーの受賞結果を報道などで知るのみだった。今回、初めて多くの観客が集まる東京モーターショー会場内で、開票状況をリアルタイムに中継。受賞したメーカーの首脳が、すぐに自社ブースで受賞報告を行うというサプライズイベントが行われた。たまたま日産ブースにいた来場者は、受賞を本当にうれしそうに語る志賀COOに大きな拍手を送り、その喜びを分かち合っていた。

開票&授賞式
 日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員会は、日本カー・オブ・ザ・イヤーの開票&授賞式に先立ち、「10ベストカー」の表彰をアトリウムで実施。この10ベストカーの中から、日本カー・オブ・ザ・イヤー、インポート・カー・オブ・ザ・イヤーが選ばれ、実行委員会特別賞は、55台のノミネート車の中から1台選ばれた。

開票に先立ち、10ベストカーの表彰式を実施。10ベストカーを発表する鈴木実行委員長トヨタ自動車「プリウスα」日産自動車「リーフ」
本田技研工業「フィット シャトル」マツダ「デミオ スカイアクティブ」ダイハツ工業「ミラ イース」
フォルクスワーゲン グループ ジャパン「パサート セダン/ヴァリアント」メルセデス・ベンツ日本「Cクラス セダン/ステーションワゴン」ビー・エム・ダブリュー「1シリーズ」
プジョー・シトロエン・ジャポン「508 セダン/SW」ボルボ・カーズ・ジャパン「S60/V60」

 開票は、60名の選考委員の名前順で行う。各選考委員は25点の持ち点を対象車10車(10ベスト)のうち5車に配点。そのうち最も高く評価するクルマに対して、必ず10点を与える必要がある。最初に読み上げられたのは、青山尚暉氏。いきなりリーフに10点が入った。以後、選考委員の名前が読み上げられる度に、リーフの点数が積み上がっていく。20名終了時、40名終了時に中間結果が発表されたが、40名終了の時点で、1位リーフと、2位Cクラスの差は200点以上開いており、イヤーカーの座は決していた。

会議棟で行われた開票式あいうえお順のため、トップバッターは青山尚暉氏本誌でもおなじみの岡本幸一郎氏は8番目
20番目は日下部保雄氏日下部氏が終わったところで、最初の中間結果が掲示された2度目の中間結果。残り20人、1位と2位の差は200点以上。リーフの1位は確定していた

 これ以降は、Cクラスと508の争いに注目が移った。50番目の松田秀士のところでは、Cクラス 166点、508 145点だったが、57番目の諸星陽一氏終了時点で、差はわずか1点。残る3名の得票が読み上げられるたび、投票会場では大きな歓声が沸いた。最終結果は、Cクラス 174点、508 170点という僅差の結果で、Cクラス セダン/ステーションワゴンがインポート・カー・オブ・ザ・イヤーの座を獲得した。

松田秀士氏は50番目松田氏の後に3度目の中間結果。ここから焦点は2位争い、つまりインポート・カー・オブ・ザ・イヤーの争いに移る51番目は松任谷正隆氏。松任谷氏の開票から、中間集計が同時に出るようになった
57番目は本誌でもおなじみの諸星陽一氏。ここで、Cクラスと308の差は1票に58番目は、僚誌GAME Watchでおなじみの山内一典氏。グランツーリスモシリーズの制作者だが、クルマ好きとしても知られている59番目は横越光廣氏。この時点で、差は8票
最後は吉田匠氏。308は一歩及ばず最終結果

 日本カー・オブ・ザ・イヤーはリーフ、インポート・カー・オブ・ザ・イヤーはCクラスになっことについて、Car Watchにも多数のインプレッションを寄稿いただいている、松田秀士氏、岡本幸一郎氏、日下部保雄氏に聞いてみた。

 松田氏は「リーフは予想どおりですね。EVという世界の流れの中で、一生懸命日産はやっているし、充電スタンドなどインフラを含めて手がけている。クルマ自体も低重心を活かした、あの値段の中ではベストなハンドリングを持っている」と言い、Cクラスと508の接戦については、「僕はプジョーをかっていたので、そちらに入れた。メルセデスも、とてもよいできだったけど、フルモデルチェンジとは言い難かった。そこで、プラットフォームは流用しているものの、サスペンションが低速から高速まで、ハンドリングと乗り心地が“なにも変わらない”ことと、エンジンも1.6リッターターボで非常に燃費がよかったプジョーを選んだ」と言う。

 岡本氏、日下部氏ともリーフについては、「妥当」「選ばれてしかるべき」としており、インポートの争いについては、「僕はカー・オブ・ザ・イヤーを記録よりも記憶に残るクルマという視点で見ています。どちらもよかったのですが、Cクラスのほうが今年印象深いクルマだったかなと思います」(岡本氏)、「メルセデスはマイナーチェンジだけど、それにふさわしい出来を持っていますし、一方でプジョーはわりとライトなクルマで、それもまたいい味を出していた」(日下部氏)と語ってくれた。

松田秀士氏岡本幸一郎氏日下部保雄氏

受賞発表後のリーフには、花束が置かれ、カー・オブ・ザ・イヤーを表すステッカーが貼られていた

 リーフの522票(理論上の最大得票数は600票)という票数も記録的だが、インポートの4票差という僅差も、記録的なできごと。その背景には、リーフが多くの票を獲得した結果というのもあるのだが、甲乙つけがたい出来であったということだろう。

 東京モーターショー内で開催した、日本カー・オブ・ザ・イヤー授賞式は、ライブ感もあり、サプライズもありと大成功に終わった。何より、受賞を心から喜ぶ志賀COOの笑顔と、それを日産ブースで共有した来場者の拍手が印象的なできことだった。


(編集部:谷川 潔)
2011年 12月 4日