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鈴鹿サーキット、SRS-Fアドバンス修了式を開催
欧州経験のある笹原選手など4名がスカラシップ選考会へ
2016年7月12日 22:57
- 2016年7月12日 実施
三重県鈴鹿市の鈴鹿サーキットは7月12日、同サーキットが開催するフィーミュラーカーのレーシングスクールとなるSRS-F(鈴鹿サーキットレーシングスクール・フォーミュラ)の上位スクール「SRS-Fアドバンス」の修了式を行なった。
3月にスタートした2016年度のSRS-Fアドバンスは、2015年に新設されたより入門者向けの「SRS-Fチャレンジ」の卒業生2人を含む8名で、約4カ月に渡るプログラムが行なわれてきた。7月12日はその最終選考を兼ねた2レースが行なわれ、今年後半に行なわれるスカラシップ選考会に進む4名の受講生が発表された。
SRS-Fは、過去に佐藤琢磨選手(2001年のイギリスF3チャンピオン、2002~2008年までF1参戦、現在はインディカー・シリーズで活躍中)、松田次生選手(2007/2008年のフォーミュラニッポンチャンピオン、2014/2015年SUPER GT/GT500チャンピオン)、山本尚貴選手(2013年のスーパーフォーミュラ初代チャンピオン)といった成功した卒業生を輩出しており、スカラシップ選考会で選ばれれば、ホンダの若手ドライバー育成プログラムHFDP(ホンダ・フォーミュラ・ドリーム・プロジェクト)の傘下に入り、上位クラスへの道が拓ける仕組みになっているのが特徴だ。
スカラシップ選考会に選ばれた4名のドライバーは、9月から行なわれるスカラシップ選考会において、HFDP入りの枠を競っていくことになる。
HFDP育成ドライバーへの登竜門となるSRS-F、佐藤琢磨選手など有名な卒業生多数
ボールやバットなどの比較的安価な道具があればできる球技などとは異なり、モータースポーツは高価な“レーシングカー”という道具がなければできないスポーツで、かつ“よい道具”を手に入れることが勝利の方程式であることは論を待たないだろう。つまり、有り体に言えば、モータースポーツというのはコストがかかるスポーツなのだ。では、普通の過程の子供達が将来F1ドライバーになりたいと思えば、どうしたらいいだろうか?
シンプルに言えば、お金を持っている後援者を探してくるしかないのだが、F1に行けるほど無尽蔵に資金を提供してくれる後援者など、容易に見つかるはずはないのは言うまでもない。では、普通の家庭の子供達はF1や、F1とまで行かなくてもスーパーフォーミュラやSUPER GTで活躍したいドライバーになりたいという夢を諦めないといけないのだろうか?
実はそうではない。国内外の自動車メーカーは、未来を見据えて次世代のドライバーを育成するプログラムを展開しており、将来のF1ドライバーやWECなどで活躍できるようなドライバーを育てている。その育成プログラムにうまく乗ることができれば、自己資金があまりないような若いドライバーでも、F3やF4といった育成カテゴリーにメーカーの資金で乗り、より上位カテゴリーを目指すことが可能になっている。
日本ではトヨタ自動車が展開するTDP(トヨタ・ヤング・ドライバーズ・プログラム)、日産自動車が展開するNDDP(ニッサン・ドライバー・デベロップメント・プログラム)などが知られており、例えばTDP出身のドライバーとしては、ウィリアムズからF1に参戦した中嶋一貴選手、トヨタ/ザウバーなどからF1に参戦した小林可夢偉選手などが排出されており、両ドライバーとも現在はWECのトヨタチームで活躍中だ。
そのTDPやNDDPと並び、多くの有望なドライバーを輩出しているプログラムが、HFDPだ。HFDPは若いドライバーをホンダが後援し、より上位のカテゴリーへ進めるようにバックアップする。現在は、F4やF3に参戦するドライバー、さらにはヨーロッパでF1直下のカテゴリーとして知られるGP2(松下信治選手)、GP3(福住仁嶺選手)などもサポートしており、近い将来にF1ドライバーになるようなドライバーを輩出するプログラムとして実施されている。
鈴鹿サーキットで行なわれているSRS-Fは、そうしたHFDPでのスカラシップを獲得するドライバーを選出するオーディションを兼ねたレーシングスクールとなっている。SRS-Fでは、ドライバーはワンメイク車両を利用(かつ毎レース車両は変えられるので車両による有利不利は基本少ない)し、レーシングドライバーの講師から座学や、実際のレースなどからレースに対する心構えなどを教わる仕組みだ。また、メディア対応や社会常識といった、将来レーシングドライバーになるために必要なことも同時に教わり、1人前のレーシングドライバーとして成長する為のスクールという側面も強く打ち出されている。
笹原右京選手など4名が来年のスカラシップをかけて9月からのスカラシップ選考会に臨む
そうしたSRS-Fだが、2015年からSRS-Fチャレンジと呼ばれる、より入門に適したクラスが設定されている。このSRS-Fチャレンジでは、一定の条件を満たした14歳から17歳の若い世代がカートレースの経験とフォーミュラカーの経験の両方を積むことが可能になっている。カートで育ってきた子供が、フォーミュラカーへステップアップする狭間の期間を埋めるスクールとなっている。
その上位スクールとなるSRS-Fアドバンスには、2015年のSRS-Fチャレンジの第1期卒業生が2人含まれるなど、早速その成果がでた形になっている。2016年度のSRS-Fアドバンスは3月から始まり、7月12日に行なわれた2つのレースを持ってすべてのプログラムが終了し、同日に鈴鹿サーキット内において修了式が行なわれた。
今年のSRS-Fアドバンスを受講したのは、15歳~20歳までの8名で、その中には前述のSRS-Fチャレンジ第1期の卒業生2名と、ヨーロッパでFormula Renault 2.0に参戦した経験のある笹原右京選手のような経験豊富なドライバーもいるなど多様性のある受講生となっている。
そうした8名の受講生が修了式当日に行なわれた2レースを含めて、複数のレースや座学などを通じて講師陣に評価され、スカラシップ選考会へ進む受講生4名が選ばれ、修了式の中で発表された。スカラシップ選考会でさらに勝ち抜き、例年主席、次席が選ばれるスカラシップを獲得すると、翌年からHFDPのサポートドライバーとして、FIA F4などの上位カテゴリーに参戦することが可能になる。メーカーのサポートドライバーになれるかどうかは、ドライバーのその後の進路に大きな影響を与えるため、若いドライバー達にとっては“運命の分かれ道”と言っても過言ではない。
修了式において鈴鹿サーキット モータースポーツ部テクニカルセンター所長 東良平氏は「モータースポーツなので勝ち負けは出てくるが、ここにいる時点ですでに沢山のライバルを上回っており、そこは誇りに思ってほしい。今後もSRS-Fで世界に通用する人材を輩出していきたい。いつの日かF1のパドックで皆さんとお会いしたい」と挨拶した。
また、SRS-Fの校長を務める中嶋悟氏も挨拶し「まだ全員の顔と名前が一致している訳ではないが、将来は顔と名前が一致するようなドライバーに早くなって欲しい」と期待感を表明した。
この他、主任講師を務める佐藤浩二氏(1985年の全日本F3チャンピオン、元F3000ドライバー)も挨拶し「今年はレベルが高かった。多くのレースにでて経験豊富な人、未経験の人、いろんなレベルの人がいたが、その中でみんな頑張ってきた。この先沢山の競い合う相手がでてくると思うが、これまで以上にがんばって欲しい」と受講生を励ました。
修了式では中嶋校長より修了証の授与が行なわれた後、最後に4名のスカラシップ選考会へ進む受講生を発表。名取鉄平選手(15歳、SRS-Fチャレンジ第1期卒業生)、角田裕穀選手(16歳)、大湯都史樹選手(17歳)、笹原右京選手(20歳)の4名の受講生がスカラシップ選考会へ進むことが発表された。
4人は9月から始まるスカラシップ選考会で、若いドライバーにとってはのどから手が出るほど欲しいスカラシップをかけて、さらなる競争を続けていくことになる。
【お詫びと訂正】記事初出時、SRS-Fアドバンスに関する説明に誤りがありました。お詫びして訂正させていただきます。