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プリンス芝公園で始まったレベル3自動運転シャトルバスに乗ってみた

一般試乗も可能

実証実験:2017年7月17日~23日 実施

一般試乗会:2017年7月18日~23日 開催

乗車料:無料

SBドライブの所有するNAVYA ARMA(ナビヤ アルマ)を利用して東京タワー近くのプリンス芝公園で実証実験が行なわれる

 自動運転バスの実用化に向けた受容性や安全性を調査する”自動運転バス調査委員会”は、東京都港区にあるプリンス芝公園で、7月18日~7月23日に電動自動運転バス”NAVYA ARMA"を利用した実証実験を行なっている。初日となった7月18日午前には、報道関係者向けのデモ走行、体験走行会が行なわれたほか、午後からは一般の希望者が体験できる形で実証実験を開始した。

 テストに利用されたNAVYA ARMAは、フランスのベンチャー企業「Navya SAS」が開発した電動の自動運転バスで、LiDARなどのセンサーを活用しながらレベル4の自動運転を実現することが可能になっている。今回の実証実験では、実際には係員が同乗する形になるため、定義としてはレベル3の実証実験ということになるが、午前中に行なわれた報道関係者向けのデモ走行では、係員が乗っていない形となるレベル4の自動運転も公開された。

社会的受容性や安全性を実証実験で確認していくと自動運転バス調査委員会

自動運転バス調査委員会の会長を務める東京大学教授 兼 東京大学生産技術研究所 次世代モビリティ研究開発センター長 須田義大氏

 今回のイベントを主催した自動運転バス調査委員会の会長を務める東京大学教授 兼 東京大学生産技術研究所 次世代モビリティ研究開発センター長 須田義大氏は「国交省が車両保安基準を、警察庁が道路使用許可の規制緩和を行ない、日本でもレベル4相当の自動運転の実験を行なうことが可能になった。今後重要なことは、乗客受容性と安全性を調査していくこと。特に自動運転が社会に受容されていけるのかを調査していくことが重要だ」と述べ、今回のように実証実験を行なっていき、実績を積み上げていくこと、そして様々な角度から調査を行ない、その結果を公開し、共有していくことが重要だと指摘した。

2つの規制緩和
公道実証実験に向けて徐々にレベルアップ
今回の実証実験
今回の実証実験のポイント
SBドライブ 社長 佐治友基氏

 ついで今回の実証実験の実務を担当している、ソフトバンクの子会社SBドライブ 社長 佐治友基氏が、実証実験に利用するバスに関しての説明を行なった。佐治氏によれば、今回の自動運転バスの実証実験に使われているのは、フランスのベンチャー企業「Navya SAS」が開発した「NAVYA ARMA」。パワーユニットは電動モーターで、設計スペック上の仕様では最高速45km/h、バッテリーで最長13時間走行することが可能で、最大で15名(座席数11)が乗れるという小型のバスになっており、特定エリア内における巡回バスなどの利用を想定したものだという。佐治氏によれば、このNAVYA ARMAはSBドライブが国内での実証実験のために購入したバスで、購入価格は非公開だが、価格は数千万円台だという。

NAVYA ARMAの特徴
実証実験のコース

運転席やハンドルのないNAVYA ARMA、LiDARを活用してレベル4の自動運転を実現

 NAVYA ARMAにはハンドルや運転席がなく、操作は車載コンピュータを利用して行なう仕組みになっている。まずは人間が操作してコースを走らせると、そのコースを学習しマップを作成し、Navya SASのサーバーにアップロードする。その後、Navya SAS側で解析したデータを車両にダウンロードして、そのデータを元にコースを走らせることが可能になる。センサーは、天井部分に長距離のLiDAR、そして車両の前方と後方に2層のLiDARがそれぞれついており、前方と後方の障害物などを検知する。また、車両の左右にもLiDARがついており、それらのセンサーを利用して車両の前後左右にある障害物などを検知して進んでいく。

NAVYA ARMAの前
NAVYA ARMAの後ろ、実際には前にも、後ろにも進むことができる
NAVYA ARMAのの右側面
NAVYAのロゴ
フランスのメーカーということもあってミシュラン製
前後にはステレオカメラがついているが、現状ではドライブレコーダーとして使われている
前後に装着されている2段のLiDAR
両側面に装着されているLiDAR
動力はモーターで、充電式

 なお前後にステレオカメラも用意されているが、これはあくまでドライブレコーダーで、車両の制御には使われていないとのこと。ただし、将来的には画像認識用のコンピュータを置くスペースは用意されており、画像認識用のコンピュータを追加して、AIが運転するということも考えられているようだ。

 車両の位置情報は、GPSを利用して誤差数cmまで実現すると佐治氏は説明した。佐治氏によれば、RTKという補正信号を受け取りながら補正をかけており、それにより誤差数センチまで実現できているという。ただし、例えばトンネルの中などにはまだ課題があるため、実際に公道でやる場合には別の手段が必要になるとのことだった。

左側面にはドアが
シート
コントローラ
緊急停止スイッチ

デモ走行ではレベル4の自動運転を公開、試乗会ではレベル3相当で安全に配慮

デモ走行はレベル4で行なわれた

 ブリーフィングの後、テスト走行と試乗会が行なわれた。テスト走行は、レベル4の自動運転、つまり乗務員が誰も乗っていない状態での自律運転がデモされた。コースはプリンス芝公園内の周回コースで、仮想的にバス停3つが作られ、そのバス停に止まりながら1周するというデモ。途中には、歩きスマホをしながらバスに近づく歩行者と見立てたスタッフが横から飛び出してきても、安全に停まる様子がデモされた。

無人で走行するバス
歩きスマホをしている歩行者をイメージしたスタッフが近づくとバスは自動で停止
歩行者が遠ざかるとバスは自動で発進
バスが自動で動き、歩行者が近づくと自動で停止した

 なお、試乗会は乗客の安全に配慮し、乗務員が乗る形のレベル3の自動運転状態で行なわれた。スタッフは、バスの内部に設置されているディスプレイにより操作し、目的地を設定することだけを担当する。そもそも、NAVYA ARMAには運転席も、ハンドルも、アクセル/ブレーキペダルもないので、乗務員が乗っているので定義としてはレベル3となるが、レベル4の自動運転と結局は何も変わらない状態を体験することができる。この状態でも、歩きスマホをしながらバスに近づく歩行者に見立てたスタッフが近づいてくるため、乗ったままでバスが停止する様子を体験することができた。

試乗会は乗務員が乗り込むレベル3で行なわれた
試乗でも同じように歩行者をイメージしたスタッフが近づき自動で停止する様子が公開された

 なお、本実証実験は一般の方も体験することが可能になっており、専用のWebサイトや現地で申し込むことが可能だ。詳しくは別記事を参照頂きたい。