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原付扱いの1人乗り小型EV「BIRO」に乗ってみた(動画あり)
経営者に人気? 売れ行き好調で2018年の国内出荷目標は100台へ
2017年9月7日 20:13
- 2017年9月7日 開催
9月7日、イタリア生まれの電動パーソナルコミューター「BIRO」のメディア向け試乗会が行なわれた。BIROはイタリアのエストリマが開発した2人乗りのEV(電気自動車)で、満充電からの走行可能距離は約55km(着脱式バッテリーの場合)、または約100km(固定式バッテリーの場合)。家庭の100V電源で充電でき、充電時間はそれぞれ2~4時間、3~6時間。
日本国内の法規上では原動機付自転車(ミニカー)の扱い。そのため2人乗りはできず、1人乗り専用となる。4月末から予約の受け付けを開始しており、11月以降に納車が順次開始される。価格はサイドドアなしの「SUMMER(サマー)」が125万円から、サイドドアありの「WINTER(ウィンター)」が150万円から。
ミラノで惚れ込み輸入販売。イタリアでは販売目標が数千台に
試乗会を主催したのは、大阪府に本拠を置き、BIROの日本販売代理店を務めるカツラダモータース(BIRO JAPAN)。もともとBMW Motorrad製品などの輸入代理業を営む老舗オートバイショップだが、同社の代表取締役社長である桂田宗慶氏がイタリア・ミラノで偶然見かけたBIROに惚れ込み、エストリマに直接交渉して日本での輸入販売にこぎつけた。2017年末までの国内販売目標は30台で、2018年度は同100台を見込む。
関東圏で試乗会を開催するのはこれが初めて。9月9日~10日にかけて駒沢公園で一般向けの試乗会が実施される予定(参加受付はすでに終了)だが、桂田氏によると上限の50件を大きく上まわる申し込みがあり、見積もり依頼もすでに50件ほどに達しているという。販売開始からすでに10台の予約注文があるが、現在は納車まで5カ月待ちの状態だ。
当初は本国のイタリアとオランダのみで販売されていたBIROだが、現在はイギリス、スペイン、ポルトガル、フランスでも販売が始まっている。旧モデルは鉛バッテリーを電源としていたため性能面で不十分だったものの、リチウムイオンバッテリーに切り替えるなどして性能向上が図られ、さらに人気が高まったという。
エストリマはイタリアのローマ、ミラノに直営店舗を設けるとともに、2018年の販売目標を数千台規模に据える。イタリアでは消費税額が日本よりも大きいことから、実質の販売価格は170万円台と日本よりも高額になるとのことだが、狭い道が多い土地柄もあって小型EVのBIROは利便性が高く、気軽に乗り出せる作りであることや、屋根付きで比較的安全に移動できることも合わせて需要は多い。主に経営者からの引き合いが多いという。
桂田氏によると、日本国内でも経営者からの注文が目立つとのこと。標準仕様ではラゲッジスペースは少ないものの、車体後部にオプションのラックやケースを装着することで積載性を高めることができる。車体の側面や後方に広告などを大きく貼れるスペースもあるため、日本国内では周囲の道幅が狭い料理店が配達に利用することや、宣伝カーとして活用することが想定されているようだ。
見慣れた景色も新鮮に感じられる、まったり街乗りに最適な小型EV
試乗会で体験したのは、サイドドアのあるWINTERでオレンジカラーの車両。スタンダードカラーはホワイト、ブラック、グリーンの3色から選べるが、スタンダードモデルで塗装されるのはフレームのみで、ボンネットやその他の車体各部はブラックが基調となる。ただし、オプションでフレームとボンネットのカラーを99色から選択することが可能だ。
車外でカードリーダーにカードキーをかざして認証後、カードキーを車内にあるカードリーダーに差し込むことで発進できるようになる。車内の装備はステアリング(角度固定式)、マルチファンクションメーター、ホーン、メーター内ディスプレイの表示切り替え用モードスイッチ、フロントウィンドウの曇り止めヒーターのON/OFFスイッチ、ライト・ワイパー・ウインカー兼用レバー、パーキングブレーキレバーなど。
カーオーディオやカーナビがない代わりに、Bluetoothスピーカーとスマートフォンホルダーが標準装備されるのは面白い。手持ちのスマホとペアリングして、ネットラジオや定額音楽配信サービス、端末内のデジタルミュージックなどを再生するのに便利だろう。なお、Bluetoothスピーカーはマイクを内蔵しており、ハンズフリー通話にも対応する。
車内にルームミラーはなく、後方確認はサイドミラーを見るか、振り返って目視する。右側サイドミラーは、サイドドアの装着状態では位置関係やドア形状の点から視認性が落ちるため、右側後方を確認しにくいので注意が必要だ。エアコンはなく、夏場の走行時はルーフや後部窓を開放するのが基本になるだろう。もしくは着脱式のサイドドアを取り外して走行するのもOKだ。
BIROはEVのため、シフトチェンジの操作はもちろん必要ない。「D」(通常走行。最高速45km/h)、「亀マーク」(20km/hまでの低速走行)、「R」(後退)の3つの走行モードをスイッチで切り替え、あとはステアリングとアクセル&ブレーキで操縦する。坂道発進時などで一時的にパワーが欲しいときは、ステアリング前方の「BOOST」ボタンを押すことでもたつきなく走行できる。
平地ではアクセルを大胆に踏み込んだとしても加速は制御され、じわじわと速度が上がるイメージ。クイックな挙動がないことから急発進する心配はなく、誤ってラフにアクセルを扱っても戸惑わずに済みそうだ。ただ、それだけにEVらしい魅力であるパワフルなトルクは体感しにくい。
サスペンションは装着されているものの、路面の凹凸はダイレクトに感じられる。このあたりは小型コミューターらしいむしろ好ましい部分で、軽いハンドリングや視界の広さともあいまって、走り慣れた市街地の道でも新鮮な気持ちになり、移動そのものを楽しめるだろう。
ブレーキには前後ディスクブレーキを装着しているが、制動力はやや弱めに設定されているようで、かなり強くブレーキペダルを踏み込まないと減速しない。そもそも速度があまり出ない・出さないタイプのクルマではあるが、早めのブレーキングで安全に減速したいところだ。