ETスクウェア、自動車向け音楽配信サービス「ミュージックシェフ」開始
ドライブのシチュエーションに応じてお薦めの音楽をストリーミング

専用車載ホルダーに取り付けられた専用端末「レリビィ」

2011年10月19日開始



 ETスクウェアは、自動車向け音楽ストリーミングサービス「music-Chef」(ミュージックシェフ)を、10月19日に開始する。

 ETスクウェアは豊田通商、豊通エレクトロニクス、イーライセンスの3社が共同出資して10月1日に設立した、自動車向けコンテンツサービスを手がける会社。4社は10月11日、都内で発表会を開催した。

ユーザーの状況に応じて、シェフが音楽をお薦め
 ミュージックシェフは、ドライブ中の車内向けに特化した音楽ストリーミングサービス。専用端末「レリビィ」か、Androidを搭載したスマートフォンで配信を受ける。サービス料金は次のとおり。

 レリビィスマートフォン
1泊2日350円350円
7泊8日600円600円
30泊31日1000円
月額(継続)1000円

 ミュージックシェフの最大の特徴は、「シェフ」と呼ばれる音楽ナビゲーターが推奨する楽曲が、ユーザーのドライブ状況に応じて配信されること。

 ユーザーの状況は、端末のGPSレシーバーなどから得た位置、速度、時刻、季節、天候などの情報をもとに、例えば「夏の朝に海岸線を走行中」「冬の夜の高速道路の渋滞にいる」などと判断する。

 サービス開始時のシェフはm-floのVERBAL、MINMI、charといったミュージシャンのほか、小林克也、はるな愛、デーブ・スペクター、道端アンジェリカ、深澤里奈と、様々な分野の“目利き”が、J-POP、洋楽、ジャズ、歌謡曲など幅広いジャンルの楽曲から推薦する。ミュージックシェフはこれからも増え、20~30人が揃う予定。スポーツ選手といった、直接音楽とは関係ない分野のシェフも予定されているようだ。

専用端末「レリビィ」でミュージックシェフを利用しているところ。好みのシェフや特集をタッチすると(左)、楽曲がダウンロードされ(中)、再生される(右)
これはデモ用に用意された特集。左が冬の山間部、左が夏の海沿いで提供される楽曲

 こうした仕組みにより、ユーザーが知っている、あるいは気に入っている楽曲だけでなく、未知の楽曲に出会う機会を創出することができる。

 また「特集」と呼ばれるレコメンデーションリストがあり、こちらはラジオ番組の「オールナイトニッポン」「走れ歌謡曲」で流れた楽曲や、「ヒーリング」「青春80's」といったテーマの楽曲が配信される。

 さらにジャズ、ユーロビート、ラブソング、邦楽ロック、K-POP、映画音楽といったジャンルで選ぶこともできる。

 サービス開始時にはユニバーサル ミュージック、エイベックス・マーケティングをはじめ18のレーベルが参加し、50万曲を提供する。

 車内で運転中に利用することを考慮し、インターフェイスは大きめのボタンを採用し、1タッチ、2タッチで望みの音楽に辿りつけるよう設計されている。

 なおこのサービスは自動車向けのため、車内にいるときのみストリーミングを受けることができる。GPSで「20km/h以上で移動している」こと、また「端末に充電ケーブルが接続されている」ことの2つが確認されれば、車内にいると判定され、視聴できる。またストリーミングが配信された後でも、60分間以上走行していることが確認できないときは、配信が打ち切られる。

ミュージックシェフのコンセプト参加するレーベルとシェフ。今後も増えるというミュージックシェフを利用する流れ
車内であると判定されなければ配信を受けられない専用端末レリビィのほか、Androidスマートフォン用アプリも用意される。アプリは無料だが、サービス料金は必要スマートフォン用アプリ

専用端末はAndroidタブレット
 ミュージックシェフ専用端末の「レリビィ」は、10月19日に豊通エレクトロニクスから発売される。価格はオープンプライス。

 Android 3.2を搭載し、7インチTFT液晶を持つタブレット端末で、車載用の専用ホルダーが用意される。ディスプレイの解像度は1024×600ピクセル。CPUはNVIDIAのTegra2 1GHz、メモリは1GB、バッテリーはリチウムイオンで、5メガピクセルと2メガピクセルのカメラ、microSDスロット、microUSB端子、microHDMI、3.5mmオーディオジャック、8GBのストレージ、Bluetooth、IEEE 802.11b/g/nの無線LANを搭載する。

レリビィ。ホルダー上部の左右が「耳」のように広がっているのは、レリビィ本体のスピーカーの音を車内に向けるためレリビィの使用イメージ

 3Gなどの通信機能はないため、ミュージックシェフの配信を受けるためには別途、モバイルルーターなどが必要となる。

 音声は、3.5mmオーディオジャックなどからカーオーディオに出力して利用することが推奨されているが、レリビィにも2つのスピーカーが搭載されており、専用車載ホルダーは、スピーカーから出された音声を車内に向ける形状となっている。

 基本的にはAndroidタブレットであるため、Androidタブレットとしての機能はすべて使え、アプリをインストールすれば様々な機能が拡張できる。またレリビィには、カーナビアプリ「いつもNAVI(PND)」がプリインストールされており、バックグラウンドでミュージックシェフを利用しつつ、PNDとしても使うことができる。

ミュージックシェフは「ミュージックシェフステーション」アプリで利用する。ミュージックシェフステーションにはランチャー機能を持っており、インストールしたアプリを登録することができる。「いつもNAVI」がプリインストールされるミュージックシェフステーションを終了させ、Android 3.2のホーム画面を表示したところ

クルマ離れから引き戻す。デンソーも採用?
 発表会で豊田通商の加留部淳社長はミュージックシェフを「モビリティ事業、ライフ&コミュニティ分野に重なる事業であり、当社ならではのシナジーが期待できる」と紹介。

 「近年、ITの進歩により自動車の基本機能として“繋がる”という機能がますます重視されている。繋がるという機能により、自動車そのものの性能向上、さらには交通インフラとの連携によってより安全な社会づくりが可能になるとともに、自動車で移動しながらいろいろな情報にアクセスできるというライフスタイルの変化が生み出される」との展望を提示、「ミュージックシェフを通じて、ドライバーの皆様に様々なスタイルのドライブを楽しんでいただく、さらにはクルマへの興味・関心が薄くなった皆様に対しても、ドライブしたいという気持ちを喚起し、より豊かなライフスタイルを送る一助になればと思っている」と、自動車の魅力とユーザーを増やす意気込みを語った。

 また発表会にはデンソーの若林宏之常務執行役員も出席。「ミュージックシェフの拡大の一翼を担うべく、来年からの搭載に向けて積極的に採用を視野に入れて検討させていただくと考えている」と同社の製品にミュージックシェフを採用する可能性を示唆した。

加留部社長若林常務

(編集部:田中真一郎)
2011年 10月 11日